軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

710 ベルング

小さいときから妖精が好きだった。

見てみたいと思っていた。

手のひらほどの大きさで、綺麗な羽を持ち、神秘的で綺麗。

そんなおとぎ話のような話の妖精は実在している。

街の領主の息子だった自分は、王都の学園に行くようになると図書館に毎日のように通い、妖精のことを調べるようになった。

妖精に出会った人は少ない。

あるときは見せ物として存在した。

あるときは冒険者と共に旅をした。

あるときは宿屋の看板妖精をしていた。

あるときは花畑に飛んでいる妖精を見た。

あるときは街の中に飛んでいる妖精を見た。

そんな記録が残っている。

見せ物小屋や冒険者のときは、いろいろな人が姿を見ている。

でも、街中や花畑では自分一人しか見えていないと書かれていた。

情報がいろいろと錯綜する。

妖精が見える者、見えない者がいる。

そして、資料には、そのときに見えた妖精の絵が描かれていた。

人とは違う美しさ。可愛らしさ。神秘的だった。

そんな妖精のことを調べるために図書館に通っているときに出会ったのが、学園の後輩のリヤンだった。

俺が妖精の話をすると、他の人は俺のことをバカにしたり、変な目で見てきたりしたが、リヤンは楽しそうに聞いてくれた。

それから何度も図書館で会い、その度に妖精の話をしていると、次第にリヤンも妖精に興味を持つようになってきた。

それから、リヤンと共に妖精のことを調べるようになった。

俺は学園卒業後も家には帰らず、王都で妖精のことを調べていた。妖精の噂を聞けば向かい、妖精を見たと言う者がいれば話を聞きに行った。

リヤンとの関係は俺が学園を卒業した後も続いた。

共に妖精のことを語れる親友、それがリヤンだった。

でも、それも長くは続かなかった。

俺は生まれ育った土地に帰らないといけなくなった。

父親が亡くなった知らせを受けた。母親は小さいときに他界しており、跡継ぎは俺しかいなかった。領主の息子として、街に戻らないといけない。

リヤンにそう言うと、リヤンも学園を卒業したら俺の土地に来てくれると言う。

だから、俺は言った。

「俺の補佐官を空けておくからな」

リヤンは言葉通りに、学園を卒業すると俺の領地にやってきてくれた。

久しぶりの再会に嬉しくなる。

リヤンには約束通り俺の補佐をしてもらい、妖精の研究を再開する。

しばらくすると、リヤンはときおり休みを得て、街を数日間離れることがあった。

尋ねても「もう少し待ってほしい」と言われた。

しばらく後に、街を離れていた理由を話してくれた。

なんでも、妖精と会っていたとのこと。

どうして、教えてくれなかったんだと尋ねると、

妖精は相性が良くないと見えないとのこと。だから、俺には見えないから落ち込むと思い、話せなかったと言う。

そのようなことは本にも書かれていた。

でも、見せ物小屋や、冒険者の妖精や、宿屋の妖精など、いろいろな人に見られている話もあった。

だけど、別の話では自分にしか見えず、誰に言っても信じてくれなかったという話も多くあった。

でも、リヤンの魔力を使えば俺でも見ることができるかもしれないことを教えてくれた。

見せ物小屋との矛盾が解かれた。

相性の話と見せ物小屋の話が合っていないと思っていて、どちらかが違うのではと思っていた。

でも、妖精を見ることができるパートナーの魔力を使えば、他の人でも見ることができるなら、どちらも正しかったことになる。

それから、リヤンは妖精に会いに行くと言い、妖精の許可をもらえたら、連れてきてくれると約束してくれた。

ただし、妖精の気持ちを尊重するので、断られたら、諦めてくれと言われた。

諦めたくない気持ちが湧き上がるが、こればかりは妖精の気持ちに任せるしかない。

俺が見たいと言っても、妖精が姿を見せたくないと思えば、見ることはできない。

それから、俺はリヤンが妖精を連れてくるのを心待ちにしていた。

その間は領主としての仕事も手がつかなかったほどだ。

そして、リヤンが帰ってきた。

でも、妖精の姿はどこにもない。

「妖精は?」

俺が尋ねると、リヤンは何もない場所に目を向ける。

もしかして、そこに妖精がいるのか?

目を凝らすが、何も見えない。

リヤンは何もないところを見てから微笑むと「ローネ」と口にする。

すると、俺の目の前に妖精が現れた。

手のひらほどの大きさで、浮かんでいる。

綺麗な羽が動いている。

可愛らしく、美しく、神秘的。

小さいときから会いたいと思っていた妖精だ。

絵で見るより、綺麗だった。

「わたしはローネ、よろしくね」

妖精はそう名乗った。

それから、ローネから妖精の話を聞いた。

やっぱり、妖精を見ることができるのは相性がよい人間だけ。

他の妖精のことは知らないとのこと。

落胆はするが、目の前に妖精がいることに満足する。

そして、俺たちはローネの許可をもらって、妖精の研究をするようになった。

俺はリヤンの魔力を使わなくても、俺自身の目でローネを見るために研究した。

もし、研究が成功すれば、ローネだけではなく、いろいろな妖精を見ることができるかもしれない。

領主の仕事の傍ら、妖精の研究をする。

いろいろと分かってくる。

その研究の副産物として、ローネの魔力を使うと肉体や魔力が強化されることが分かった。

それと同時に、研究をしていくと、リヤンが羨ましく、妬ましい感情が湧き出てきた。

どうして、リヤンなんだ。

どうして、俺じゃないんだ。

どうして、俺の元に妖精が来てくれないんだ。

感情がおかしくなっていく。

まるで、力を増幅すると同時に、心も増幅されていくように。

それら嫉妬、妬ましさ、ローネを自分の物にしたい気持ちが膨れ上がっていく。

感情が抑えられなくなっていく。

研究として騎士たちに同じように魔力を与えると、ある者は攻撃的になり、自分を主張する者が増えてきた。

……副作用。

でも、研究は止められない。

ローネを自分の物に、他の妖精に会うために、欲望を止めることができない。

前に進めと、囁きかけてくる。

副作用を消す方法が見つからないまま時間が過ぎていく。

妖精の研究をするあまり、領主の仕事が疎かになり、注意する者を解雇し、暴君になっていく自分がいる。

そんなある時、とある貴族がどこから妖精の話を聞きつけてきたのか、妖精を譲れと打診してきた。俺が若い領主だからといって、バカにしてきた。

手紙で断ると、騎士を引き連れてやってきた。

ローネには姿を消してもらい、いないと説明するが引き下がらない。

貴族と話したが交渉は決裂。無理矢理にでも奪うと言った。

魔力譲渡の副作用で俺は感情が抑えられなくなっていた。

男に対して、怒り、憎悪、殺意が膨らんでくる。

ローネを奪おうとする者を許すな。

男の命令で騎士が俺とリヤンを囲む。

俺は魔力増幅の力を解放した。

リヤンの魔力とローネの魔力が入ってくる。

感情のまま動く、魔法を使い、剣を振るう。

止めたいが、止まらない。

ローネを奪う者は殺せと囁いてくる。

リヤンが止めようとするが、感情が抑えられない。

もう、自分の意思で止めることはできない。

俺は感情のまま暴れた。

……俺を止めたのはリヤンだった。

リヤンの体から血が流れている。

無理矢理に俺に流れる魔力を止めたみたいだ。

「ベルングさん、大丈夫ですか?」

「ああ」

まるで夢の出来事だったように感じるが、自分が何をしたかは覚えていた。

周りには騎士や男が血を流して倒れていた。

死傷者多数。

俺がやったことだ。

感情を抑えられなかった。

貴族の男は生きていた。

リヤンが止めなかったら、死んでいたと言う。

男は、土下座をして謝罪する。

リヤン曰く、俺の形相が凄く怖かったらしい。

男を守る騎士が次々と殺されていくのを見て恐怖したらしい。

二度と俺たちに手を出さないこと、今回のことは口外しないことを約束させた。

約束を破れば、死んだ騎士のようになると脅迫した。

だが、第二のローネを奪う者が現れるかもしれない。

俺はローネとリヤンを守るために最強の騎士団を作ることにした。

住民から奪う魔力量を増やす、これもローネを守るためだ。

そして、それが切っ掛けで俺の心は壊れていく。リヤンの言葉は俺に届かなくなっていった。

心の片隅で、リヤンの言う通りだと思っても抑えられない。

そんな時、リヤンが妖精の研究はやめようと言い出し、ローネを元の場所に帰すと言い出した。

お前も、俺からローネを奪うのか。

俺のためと言うが、怒りの感情が湧いてくる。リヤンの言葉は聞き入れなかった。

俺はリヤンを地下室に閉じ込め、ローネを脅迫した。

ローネは誰にも渡さない。

ローネは俺の物だ。