軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

703 クマさん、ベルングと戦う その1

「ユナ、本当に戦うの?」

「あなたが強いことは、さっきの戦いで分かったけど、あの男と戦ってはダメ。わたしの力であの騎士よりも、もの凄く強くなっているの」

プリメとローネが心配そうにする。

「だから、あなたは隙を見て、プリメを連れて逃げて。……あと、プリメを連れてきてくれてありがとう。会えて嬉しかった」

ローネは優しく微笑み、プリメを突き放そうとする。

「……お姉ちゃん」

そんな二人を見た上で、わたしのやることは変わらない。

あの男の自信は騎士同様にローネからもらった力があるからだろう。

だからと言って、あの騎士より多少強くてもなんともない。

「ローネ、安心していいよ。あの男をぶっ倒して、みんなで帰るつもりだから」

なんたって、こっちには最強クマ装備がある。

妖精の力を得たからといって、クマ装備を持つわたしが負ける要素はない。

2人に安心するように声をかけてから、くまゆるとくまきゅうの後ろにいるノアのところに向かう。

「……ユナさん」

ノアは心配そうにわたしのことを見る。

わたしはノアの頭の上にクマさんパペットを置く。

「ノアは、ここまで。クリモニアのわたしの家で待ってて」

「……はい」

ノアは唇を噛み締めると、小さい声で頷く。

「ありがとうね。ノアのおかげで、ここまで来ることができたよ」

わたしの言葉にノアは少しだけ、嬉しそうにする。

貴族の令嬢が見知らぬ土地で、大変だったと思う。でも、ノアは我が儘も言わず、帰りたいとも言わず、一緒に来てくれた。ノアがいなかったら、ローネを見つけ出すのはもっと苦労したと思う。

「プリメもノアと一緒に、ひとまず避難……」

クリモニアにと言葉を続けようとするが、

「わたしは逃げないわよ。逃げるときはお姉ちゃんと一緒よ」

プリメの意志は固そうだ。ここで言い争っても仕方ない。

「分かったよ。でも、危ないと思ったら、姿を消して逃げるんだよ」

わたしはクマの転移門の扉を開けて、ノアを送り出す。

「ユナさん、気を付けてくださいね。待っていますから、必ず戻ってきてくださいね」

「うん」

「プリメさんも、気をつけてくださいね」

「うん、ノアもありがとうね。お姉ちゃんに会えたのはノアのおかげ」

「ローネさんも。必ず、みんなで戻って来てくださいね。わたし、待っていますから」

心配するノアの表情を見ながら、クマの転移門の扉を閉め回収する。

「それじゃ、さっさとあの男をぶっ倒してみんなで帰ろうか」

わたしは歩きながらクマボックスから毛布を出し、殺された騎士に被せると階段を上っていく。

そのあとをくまゆる、くまきゅう、プリメ、ローネが付いてくる。

「遅いので、逃げ出したのかと思いました」

階段を上がった先にある扉の前で男が待っていた。

「地下室に逃げ場はないでしょう」

「魔法が使えるなら、穴を掘って逃げることぐらいできるのでは?」

まあ、確かに可能だ。

「もう一人のお嬢さんの姿が見えないのですが」

「さあ、どうしたんだろうね」

説明するつもりはない。

「まあ、いいでしょう。あなたとプリメ嬢がいるなら、問題はありません」

ノアには興味がないみたいだ。

でも、ローネのハンカチを取り込んで、ローネの居場所を知ることができる体質と知ったら、研究対象になったかも知れない。

「それで、どこで戦うの?」

「庭でいいでしょう」

男は無言で歩き出す。

無防備な背中を攻撃したいけど、わたしのちっぽけな正義感が拒む。

わたしにも、そんな良心があったんだね。

「ふふ、攻撃をしてこないんですね」

わたしの心を読んだのか話しかけてくる。

「してもよかったの?」

「そのときは、反撃をさせてもらいます。ですが、お屋敷が壊れてしまいますから、やめてほしいですね」

「庭で戦えば、屋敷が壊れないと思っている?」

クマ魔法を使えば、こんな屋敷を壊すのは簡単だ。でも、壊せば地下に寝ているリヤンが生き埋めになり、他の使用人たちも、崩れた建物の下敷きになってしまう。

そのことを考えても、わたしとしても屋敷の中で戦うのは得策ではない。

「まあ、屋敷の中で戦うよりはいいでしょう」

気に食わないが、男と意見が合った。

わたしたちは屋敷の外にやってくる。

「あの煙は、あなたのお仲間ですか?」

男は遠くの上がっている煙を見ながら尋ねてくる。

街の方から、いくつか煙が上がっているのが見える。どうやら、ブリッツさんたちも上手くいっているみたいだ。

「そうだよ。今頃、住民から魔力を奪う魔法陣は壊されていると思うよ」

「まあ、作り直せばいいだけです。今後は奪う魔力も増えますからね。強力にしないといけません」

男はプリメとローネに目を向ける。

「それなら不要になるから、作り直す必要はないよ。わたしもローネのパートナーのリヤンもここから出ていくから」

「……ふふ」

男とわたしはお互いに笑う。

そして、屋敷の庭の中央までやってくる。

花壇があるが、今では、雑草が生えているだけだ。昔は花が咲いていたのだろうか。主人が変わって、使用人の数も減って、管理する者がいなくなったのか、花は咲いていない。

「それにしても、よくわたしみたいな変な格好した女と戦いで勝負しようと思ったね」

普通はわたしの格好を見て、戦おうなどとは思わない。

笑って、馬鹿にして、あの場で捕まえようとすると思う。

「何を言ってますか。その溢れんばかりの魔力。普通の女の子ではないことは分かっています」

「溢れんばかりの魔力?」

「ローネ、彼女のおかげで、魔力が見えるんですよ」

それって、あの騎士がわたしの魔力を感じていたのと同じ?

でも、この男は感じるのではなく見えていると言った。

「これほどの、あなたのような魔力を持った人は初めて見ました」

「この街に閉じこもっているんだから当たり前だよ。だって、ローネがこの街に来てから、街を出たことはないんでしょう」

「確かにそうですが、あなたの魔力量は規格外ですよ」

他の人と魔力を比べたことがないから分からないけど、強力な魔法やクマ魔法が使えるんだから、多くの魔力があると言われても驚きはしない。

なんと言っても、神様からもらったものだ。

「ですので、あの部屋で暴れでもしたら困ってしまうので、外に来てもらったんですよ」

「でも、わたしの莫大な魔力が見えているなら、負けを認めてローネを返したら?」

「いえ、その魔力をわたしの物にさせていただきます」

男、……ベルングが構える。

「そんなことができると思っているの?」

わたしも構える。

「魔力量と戦う技術は比例しません。あなたは幼すぎる。経験が少ない」

普通は、そう考える。

でも、戦う経験なら誰よりも多くしている。

「プリメたちは下がっていて。危ないと思ったら、この場から離れてね。くまゆるとくまきゅうもだよ」

「「くぅ〜ん」」

「ユナ、負けたら、承知しないんだからね」

「無理はしないで」

プリメたちは下がる。

「それじゃ、戦おうか」

わたしは小手調べに風魔法を放つ。

ベルングは手を前にかざすと、何もなかったように風魔法の防壁で防ぐ。

このくらいの魔法なら簡単に防ぐのか。確かに口だけではないみたいだ。

なので、立て続けに風魔法を放ってみるが、同様に防がれる。

「その程度ですか」

イラっ。

わたしは風魔法から土魔法に切り替える。

地面から土魔法が槍のように突き出してベルングを襲う。

だけど、ベルングの間合いに入った瞬間、槍の土は普通の土となって崩れ落ちていく。

「…………!」

なにが起きた?

魔法が解かれた?

「あなたの魔力は見えると言ったはずですよ。だから、地面から魔法が来るのは分かっていましたので、わたしの魔力で相殺して普通の土に戻しました」

言うのは簡単だけど、そんなことが瞬時にできるの?

「莫大な魔力という才能に胡座をかいていると、そうなるんですよ!」

ベルングが叫ぶと、わたしの周りの地面が動く。わたしはとっさに動き、その場を離れる。地面から土が槍のように突き出る。

わたしの攻撃を、そのままお返しした?

「ほう、避けますか。反応がいい。それに魔法使いとは思えない動きですね」

ベルングは面白がるように言う。

「別に莫大な魔力に胡座をかいたつもりはないよ」

でも、この魔力量も、わたしの武器だ。

わたしはクマ土魔法でベルングの周りにクマを出現させる。流石にベルングでもクマ魔法は相殺できないはずだ。

「うっ」

ベルングが動く。今度は相殺するのではなく、囲むクマを躱した。

「なんですか。その膨大な魔力量の魔法は?」

ベルングの目にはクマ魔法は、膨大な魔力の塊に見えるみたいだ。だから、相殺できないと分かったから、躱した?

「あなたも、魔法使いの動きじゃないよ」

「わたしは、領主の息子として幼いときから剣術や体術も習ってきましたからね。もちろん、魔法も座学も」

そう言いながら、風魔法を放ってくる。

わたしは腕を振り、風魔法で相殺する。

魔法だけでなく、剣も使えるってことか。

あの腰にある剣はお飾りではないってことだ。

「剣は抜かないの?」

「間違ってあなたを殺したらいけませんからね。魔法なら手加減ができますから」

「手加減なんて、そんなことを言っていると負けるよ」

わたしは風魔法を放つ。

「無駄です」

相殺され、ただの風となる。

火の玉を放つ。

相殺され、火が消える。

風、火、土、水、基本となる魔法。その全ての魔法が防がれる。

あとは電撃魔法があるが……。

「それもローネの力を得てからなの?」

「そうです。わたしはローネとリヤンの魔力を研究しました。どんな些細なことでも。そして、いつかはリヤンの魔力を借りなくても、ローネを見ることができると思っていました。でも、その夢は叶うことはなかった。だから、この力はその産物です。わたしにはどうでもいいものですが、ローネを、連れ去ろうとする者から守るのには必要な力です」

天才。

妖精の研究という自分の欲望のためだけに思考が動く、最悪な研究家となっている。さらに領主で、金と力を持ち合わせた最悪な組み合わせ。

もし、別の方向の分野で研究すれば、住民に好かれる領主になったかもしれない。

でも、この男は妖精以外に、その才能は使わなかった。その狭い中の限定的な中での天才。

手加減ができないかも知れない。