軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

701 それぞれの戦い ローザ視点

わたしたちは受け持った見張り台に向かっている。

気付かれたら奇襲が失敗するので、目立たないように動く。

奇襲するなら夜が最適だが、見張り台に攻撃を仕掛け終わったあと、屋敷に残っている騎士を呼び出す目的もある。

夜にもメリットがあるので、どちらがいいかは一概に決められないが、ユナちゃんたちが屋敷に侵入しやすく、プリメちゃんのお姉さんが見つけやすくさせるため、奇襲は昼となった。

「ユナちゃんたち大丈夫かしら」

「大丈夫だろう」

「くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんもいるから大丈夫」

「ユナは強い」

みんなユナちゃんを信頼している。わたしだって信頼はしているけど、心配もしている。

ノアちゃんを連れて、プリメちゃんのお姉さんを見つけて説得しないといけない。

最悪、騎士や領主に見つかれば説得どころではなくなる。だから、見張り台にある魔力を奪う魔法陣を壊し、この見張り台が襲われたことを屋敷にいる騎士に気付いてもらわないといけない。それがユナちゃんたちを助ける事にも繋がる。

「それよりも、これからは会話は厳禁だ。屋敷のことはユナに任せて、俺たちも自分たちの仕事をするぞ」

ブリッツの言う通りに、わたしたちがしっかりと仕事をしないといけない。

ユナちゃんたちがプリメちゃんのお姉さんを説得することができれば、この街は魔力を奪われるこんな生活から抜け出すことができる。

ここからは、わたしたちはハンドサインで意思を疎通し合いながら進む。

先頭をブリッツ、グリモスが務め、後方確認と援護はわたしとランが務める。

これがわたしたちのパーティーの戦闘態勢だ。

木の裏に隠れているブリッツがこっちに来いとハンドサインを送ってくる。

グリモスが先に動き、わたしとランがそれに続く。

少し先に見張り台の中に入る扉がある。ギルマスの情報通りにドアの前には見張りはいない。

ギルマスの話では当初は見張りもいたらしいが、最近は誰も近寄らなくなったことで、見張りもいなくなったとのことだ。ただ、扉には鍵は掛かっているとのこと。

初めは扉を壊して突入するのかと思ったけど、ギルマスが合い鍵を用意していた。

いつでも作戦が実行できるよう準備していたそうだ。

それだけ、今回の作戦に勝負をかけている。

もし、失敗すれば、ギルマスたちは大変なことになる。

領主や騎士は、わたしたちの素性を知らないから逃げればいいだけだけど、ギルマスたちはそうもいかない。

だから、今回の作戦は失敗できない。

ブリッツはギルマスから預かった鍵を取り出す。そして、上を確認すると、小走りに扉に向かって走る。そして、扉に耳を当てて聞き耳を立てる。扉の近くに人がいないのを確認したのか、鍵を差し込みゆっくりと回す。

鍵は開けることができたみたいで、ゆっくりとドアを開けて、隙間から中を確認する。

ドアの近くに人がいないことを確認したブリッツはハンドサインで、こちらに来るように伝える。

グリモス、ラン、わたしは周囲を確認して、小走りにドアに向かう。そして、ブリッツが開けてくれていたドアの中に入る。

中に入ると螺旋階段になっている。

ギルマスの情報では上に部屋があり、そこに騎士たちがいると言っていた。

ブリッツが先頭を歩き音を立てずにゆっくりと階段を上っていく。その後を、わたしたちもついていく。

階段を上って行くと、ブリッツがハンドサインする。

この先に騎士がいるらしい。ゆっくりと上って行くと話し声が聞こえてくる。

「暇だな、俺も魔物討伐のほうに加わりたかった」

「別に見張りは楽でいいだろう」

「そうは言っても、魔物襲撃があるわけじゃないし」

「魔物襲撃だけが、ここにいる理由じゃないだろう」

「そうだが、誰がここを襲うっていうんだ?」

「わたしたちだよ」と話しかけたくなる。

「初めの頃は冒険者ギルドがうるさかったが、今じゃ寂れて、俺たちの言いなりだろう」

「まあ、ほとんどの冒険者が街から出ていって、街に残っているのは文句一つ言えない、だらしない冒険者だけだからな」

笑い声がしてくる。

あなたたちが魔力を奪うから、冒険者が街から出ていったんでしょう。

怒りが出てくる。

ハンドサインで隙間から中の様子を窺っていたブリッツが指を2本立てる。正面に1人、右側に1人。そして、誰がどこを攻撃するか指示をもらう。

わたしたちは、その指示に頷く。

そして、ブリッツの合図で部屋の中に突入する。

「なんだ!」

男たちは椅子に座っていたので反応が遅れる。

わたしが正面にいる騎士に風魔法を、ランが右側にいた騎士に同じく風魔法を放つ。

騎士は風の衝撃で後ろの壁にぶつかり、倒れる。

ブリッツ、グリモスがそれぞれ、わたしたちが魔法を放つと同時に騎士たちに向かって駆け出しており、倒れている騎士たちに剣を向け、立ち上がることをさせない。

「仕事を任されている騎士が、手の届かない位置に剣を置くなんて、騎士の風上にも置けないな」

ブリッツが壁に立てかけてある剣を見ながら言う。

騎士が立ち上がったとしても、剣を握ることはできなかった。

「なんだ。お前たちは」

「名乗るわけがないだろう。ただ、この見張り台にある魔力を奪う装置を壊しにきた冒険者とだけ教えておこう」

その言葉に男たちは驚愕の表情をする。

「そんなことをして、ただで済むと思っているのか」

「思っていない。だが、全て破壊し、この街から妖精が消えればどうなると思う」

ブリッツが言っていることを理解したんだろう。

男の表情が変わる。

「お前たち、ローネ様を……」

「奪いにきた」

「たった、4人で何ができる」

「俺たちだけじゃない。俺の指示で、多くの人が動いている」

ブリッツは悪役っぽく言う。

今回、ブリッツは悪役になるつもりらしい。

どこから来たか分からない冒険者が妖精を奪って街から立ち去る。ブリッツが考えたシナリオだ。

それが、街に残るギルマスたちのためらしい。

たとえローネを連れ去ることができたとしても、この街の見張り台へ侵入し、騎士に怪我をさせた罪は消えない。ギルマスたちの責任になれば、この街から出ていかないといけないかもしれない。

わたしたちはこの街を立ち去るが、この街にはギルマスたちが必要だ。

必要なのは、わたしたちでなく、街のことを考えるギルマスたちだ。

だから、ブリッツは責任を全て負うことにした。

話を聞いたわたしたちは、了承した。

そして、抵抗もできない騎士を土魔法で足と手を縛り上げ、ブリッツが布で口を塞いでいると、

「どうした」

階段から1人の男が降りてきた。

だが、グリモスが誰よりも速く反応し、斬りかかる。

声をかけてきた騎士は反応ができずに、鎧の上から斬られ、階段を転げ落ちていく、それを追いかけるようにグリモスも階段を下りていく。

わたしたちは階段下に落ちた男のことをグリモスに任せ、わたしとランは階段の上を見張り、ブリッツは騎士の口を塞ぐ。騒がれて、助けを呼ばれたら面倒だ。

でも、誰も上から下りてくることもなく、階段の下からグリモスが戻ってくる。

「気絶していたから、縛ってきた」

「これで3人だな」

ギルマスの情報では3人。

これで全員。でも、多少前後すると言っていたから油断はしない。

わたしたちはさらに階段を上り屋上に出る。

先ほどのグリモスが対処した騎士が最後だったみたいで、屋上には誰もいない。

見晴らしがいい。

屋上の床には魔法陣が描かれている。

たくさんの魔石もある。

「これが魔力を奪う魔法陣……」

「これを壊せばいいんだな」

「魔法研究者としては、壊したくないけど仕方ないわよね」

ランが魔法陣を見ながら言う。

「残しておいてもいいことはない。初めに話し合ったとおりに壊す」

「待って、せめて魔石だけでも!」

ランの言葉はブリッツに届かず、ブリッツは剣で魔法陣を壊す。

「時間がない。魔石はこの街の住民のものだ。俺たちが持っていくわけにはいかない」

「少しぐらいいいと思うんだけど」

ランの言葉は却下され、それに続くようにわたしたちも魔法陣を壊す。

「あとは、見張り台で何かあったことを知らせるために、煙を出せばいいのね」

「そこらにある物を燃やせばいいかしら」

箱や布が積み上げられた山がある。

騎士がサボる用に椅子まである。

わたしたちは箱や布、椅子を燃やし、煙を出す。

「急いで次の場所に向かうぞ」

煙が出れば、お屋敷や街の中にいる騎士がここに集まる。

その間に、ユナちゃんたちがお屋敷に入り込み、わたしたちは次の見張り台に向かう手筈になっている。

本当なら、全ての見張り台にある魔法陣を同時に壊したかったが、人手が足らなかった。

わたしは嫌がらせをするように、土魔法で階段を塞いでから見張り台をあとにする。

少しは手間取って、確認するまでに時間を稼げるはずだ。

そして、2箇所目の見張り台に着き、同じように魔法陣を壊すことに成功する。そのときにはすでに、数カ所の見張り台から煙が出ていた。

ギルマスたちも無事に成功しているみたいで、ホッとする。

わたしたちが2箇所目の魔法陣を壊し終えて、見張り台の外に出ると、5人ほどの騎士が待ち構えていた。

「男1人に、女が3人」

騎士の一人が舐め回すように、わたしたちを見る。

「お前たちが街の周辺の魔物討伐をした冒険者だな。やっと顔を拝めたぜ」

わたしたちのことを知っている?

「確かに、綺麗どころの3人の女を連れているな。男のほうは、俺のほうが格好良いから情報違いだな」

鏡を見たことがないのかしら?

それとも、目が悪いのかしら?

でも、わたしたちのことを綺麗どころって言っているところを聞くと、目は悪くないみたいだから、自分のことを鏡で見たことがないんだろう。

「だが、隊長の指示通りに動いてよかったぜ」

「隊長の言う通り?」

「お前たちの作戦をうちの隊長が見抜いて、魔物討伐に行くフリをして、街に戻ってきたんだよ」

つまり情報が漏れて、街の外へ魔物討伐に行っていた騎士たちが戻ってきたってこと?

「その割には、魔法陣がわたしたちに壊されているんだけど」

わたしたちの目的はほぼ達成されている。

「そんなの直せばいいだけだろう。苦労するのは領主様だけどな」

男は笑う。

「でも、ここで、あなたたちが負けて妖精が連れ出されたら、魔法陣を直しても意味がないんじゃないかしら」

「屋敷には隊長が残っているから大丈夫さ。あの人は強いからな」

ギルマスの話では隊長は頭一つ分抜けて強いと言っていた。

だから、その騎士隊長が街の外に出ている間に決着を付けるはずだった。

「そうか。なら、そのお屋敷に残った隊長も運がなかったな。そして、俺たちは運がいい。雑魚を相手にすればいいだけだからな」

ブリッツが剣を構える。

もし、隊長がギルマスの言う通りに強ければ、ここにいたら厄介だったかもしれない。

でも、ユナちゃんなら、どんなに強い相手でも負けない。わたしたちが知る限り、誰よりも強く、優しい冒険者だ。

「何を言っているんだ」

「屋敷に向かったのが、俺が知る限り、もっとも強い人物だということだ。そして、俺の目の前にいるのは雑魚だということだ」

「貴様!」

騎士たちが襲いかかってくる。