軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

694 クマさん、話し合う

わたしたちは冒険者ギルドに集まり、ローネ奪還作戦の話し合いをする。

「あんな男、お姉ちゃんにふさわしくない。叩いてでもお姉ちゃんの目を覚まさせてあげるんだから」

プリメは気持ちを入れ替えて、やる気でいる。

もし、悪いことに加担しているなら、止めないといけない。

「そう願いたいものだ」

「でも、あんな男のどこがいいのかしら」

「そうだよな。俺みたいな男がいいよな」

ギルマスが同意を求めるように皆に言う。

でも、誰からも同意の言葉は出ない。

「いや、そこはブリッツみたいな男でしょう」

カーラさんの言葉に、みんながブリッツに目が向く。

ブリッツたちも戻ってきており、ローネ奪還の話に参加している。

「俺は、どこにでもいる冒険者です。男としてはギルマスには敵いませんよ」

「ブリッツには俺の良さが分かるんだな」

ブリッツみたいな無意識に女をたらしこむ冒険者が、どこにでもいたら大変なことになる。

まあ、わたしは大丈夫だけど、多くの女性にはブリッツのような男性が好まれるかもしれない。

ただ、ブリッツが女性に刺されたと聞いても、「やっぱり」「いつかは」としか思わないと思う。

女同士の争いも起こりそうだ。関わらないのが一番だ。

「なんだユナ?」

わたしが見ていることに気づいたブリッツが尋ねてくる。

「いや、ブリッツが死ぬときは、魔物じゃなくて女性関係かなと思って」

わたしの言葉に、ブリッツは「?」という顔をするが、ローザさんたちは頷いていた。もしかすると、わたしが知らないところでは、いろいろな女性問題があったのかもしれない。

「それで実際問題、これからどうするんだ?」

「ローネちゃんの説得よね」

「説得と言っても、簡単には会えないわよね」

「わたし一人で、あの家に行って」

「それはダメ。その男、プリメに気づいていたんでしょう」

わたしはプリメの提案を却下する。

「もしかすると気のせいかもしれない」

ローネのことが見える男、領主。プリメが部屋に隠れていたら、探すような行動をしたと言う。姉妹だから、波長が近くて、プリメのことも見える可能性もある。話を聞く限り、見つかれば危険だ。

「それじゃ、どうするの?」

「う~ん。やっぱり、正面から屋敷に突入するとか。『ローネを返せ!』って感じで」

それが手っ取り早いと思う。

それでローネを無理やりでも捕まえて逃げる。

でも、みんなはわたしの案に呆れた表情をしている。

「冗談だよ」

誤魔化すように言う。

「そうだよな」

「そうよね」

「えっ、冗談なんですか。ユナさんなら、やるかと思いました」

ノアだけ、違ったみたいだ。

実際、半分は本気だったから間違いではない。

「だって、ユナさん。ミサが攫われたとき、貴族のお屋敷に正面から入り、兵士や貴族を倒したとお聞きしましたし」

「……」

「……貴族のお屋敷に殴り込みとか、それこそ冗談よね……」

「うん、冗談だよ。ノアもそんな冗談が言えるようになったんだね。あははははは」

わたしは目を逸らしながら言う。

ノアはミサの誕生日パーティーのことを言っているんだと思う。

あのときはノアとフィナが殴られ、ミサが攫われ、ブチ切れて冷静じゃなかったので仕方ない。

普通に考えれば、貴族の屋敷に殴り込むなんて考えられない。

『ノア、あまり変なこと言わないでよ』

わたしは隣に座っているノアに小声で言う。

『ごめんなさい。他の魔物の件もあるから、ユナさんならやるかなと思って』

やるかなと思ってって、わたし、ノアからそんなふうに見られているの?

わたしは、平和主義だよ。争いは嫌いだよ。本当だよ。

なんでもかんでも暴力で解決しようとは思わないよ。

……最終的には力が解決方法と思っているけど。

「でも、正面から行くか行かないかにしても、実際問題ローネに会うにはお屋敷に行かないとダメだと思うよ」

ローネがわたしたちに会いに来てくれない限り、こちらから会う方法は今のところない。まして、別れの挨拶までして姿を消した。わたしたちに会いに来ることはないと思う。

「それじゃ、殴り込みがダメなら、こっそり侵入するとか?」

第二の案を提案してみる。

「う~ん、それしか方法がないかしら?」

「まあ、嬢ちゃんが強いことは知っているが、騎士たちがいるから正面から行くのはよしたほうがいいだろうな」

騎士か。そんなに強そうには見えなかったから、正面突破もありでもある。

ただ、あの隊長だけは、他の騎士とは違うような気がする。

わたしの魔法に気づいたから、引っ掛かっているだけかな。

「そういえば、騎士といえばブリッツたちのおかげで、魔物討伐ができていないから、怒っていたわね」

カーラさんは思い出したように笑う。

そして、何かを思いついたように表情が変わる。

「そうだ。それじゃ、騎士たちを遠くの場所に行かせるのはどうかしら? 騎士たちは、基本的に近場の依頼をこなしている。でも、今はブリッツたちのおかげで、近場の依頼は無意味となっているでしょう。だから、遠くの場所の依頼を渡せばすぐには戻ってこないと思うの」

遠くの場所に向かうことになる。

「そうなれば、簡単には戻ってこられないな」

「かなりの数の騎士が出払うことになると思うから、侵入はしやすくなると思うわ」

「その間にローネさんに会いに、お屋敷に入り込むってことですか?」

カーラさんとギルマスの言葉にノアが確認する。

「ローネちゃんに会うために、お屋敷に行くつもりなんでしょう?」

みんなに止められても、行くつもりだった。

それが正面突破なのか、こっそり入り込むのかは別として。

「それなら、騎士たちが少しでもいないほうがいいでしょう」

100人より50人。50人より10人。人がいなくなればなるほどに見つかりにくくなる。

「それじゃ、カーラさん、頼める? わたしとプリメでローネに会ってくるよ」

「待ってください。わたしも一緒に行きます」

ノアが声をあげる。

「いや、ノアはダメだよ」

子供に手を出すとは思わないけど、この世には子供に手を出す大人もいる。

でも、ノアは引き下がらない。

「もし、ローネさんが隠れて出てこなかったら、どうするんですか。わたしなら、どこにローネさんがいるか分かります」

そう言われると、反論できない。

妖精は小さい。タンスの中、小さい箱の中、庭にある木、お屋敷は広い。隠れられたら見つけることはほぼ不可能だ。

でも、方角だけとはいえ、ローネの位置が分かれば、見つけ出すことは容易になる。

「それに、もしかすると、ローネさんのことが見えないかもしれないんですよね」

本来なら、見ることができなかったかもしれない。ローネが領主の魔力を使ったままだったのか、分からないけど、プリメに会いに来たときは、わたしは見ることも会話もできた。

もし、遮断したら見えなくなる。

そうなれば、探すことができるのはプリメだけになり、見つけ出すのは、さらに困難になる。

今回はわたしの負けだ。

「分かったよ。でも、危険と思ったら、あの約束は守ってもらうよ」

クマの転移門の中に逃げてもらう。

「はい。約束は守ります」

なら、わたしから、これ以上言うつもりはない。

それに、なにがあってもノアは守るつもりだ。

「なら、少しでも危険は減らしたほうがいいだろう。俺のほうでも動かさせてもらおう」

ギルマスがそんなこと言う。

「なにをするの?」

「前々から、準備を進めていたことがある。それを実行する」

なんでも、魔力を奪う場所を破壊する計画をしていると言う。

「だから、調べていたんだね」

ギルマスは見張り台を調べていた。

「ああ、プリメのおかげで、見張り台の中の構造と魔石が置かれている場所も分かったからな。壊すことができれば、騎士の力も消耗していくだけだ」

「魔物討伐で騎士たちの魔力が消耗していれば、戦う力は残っていないってことね」

「ああ、嬢ちゃんたちが妖精を連れ出し、魔力を奪う装置を破壊すれば、領主も騎士たちも何もできないはずだ」

力で抑え込むことはできない。

「でも、ローネさんを連れていけば、騎士たちは強くならないと思うのですが」

ノアの言う通りに、ローネがこの街から消えればいいだけだ。

無理に壊す必要はない。

「少しでもお前さんたちが、ローネを連れて逃げてもらうためだ。もし、ローネが逃げるのを嫌がって、騎士たちに力を与えでもしたら面倒なことになるだろう」

ローネが領主と一緒に居たいために、騎士たちに力を与え、わたしたちを追い払うかもしれない。そうなれば、面倒くさいのは確かだ。

「それに、騎士たちが強くなければ、俺たちでも相手ができる」

前までは、そんなに強くはなかったらしい。

「それなら、わたしが全部の見張り台を壊そうか?」

クマ魔法を使えば、簡単に壊れると思う。

「待て、嬢ちゃんがどれほど強いか知らないが、壁を壊されでもしたら困る。修復に時間がかかる。魔物がくれば、騎士たちは弱く、冒険者たちの数が少ない現状では避けたい」

わたしが魔法で直せると思ったが、もしかするとローネを奪還した後、この街に戻ってこられないかもしれない。そのまま街を出ることになれば、直すことはできない。

「だから、こっちのことは俺たちに任せてくれ」

そう言われると、無理にわたしがすることではない。

話し合いの結果、わたしとノア、プリメはお屋敷に侵入してローネ奪還。

ギルマス、ブリッツたちは街の住民から魔力を奪う装置を破壊することになった。

「でも、魔力を奪う装置がある見張り台は5箇所あるんでしょう。ギルマスたちだけじゃ足らないんじゃ」

一つでも壊せば、使えないかもしれないが、ギルマスは全部破壊すると言う。

街全体ではなくても、その近くの住民から奪う可能性もあると言う。それでは意味がなくなる。

「何を言っている。残っている冒険者たちがいるだろう」

思い出す。昼から酒を飲んだり、隅っこにいた冒険者たちが。

「あいつらは、いつかこの街に冒険者ギルドの再建を願って、残ってくれた者たちだ。もちろん、どこにも行くあてのもない者もいるが、この日のために残ってくれた」

「少ないお金で、今まで残ってくれていたわ」

「だから、プリメ、頼む。お前さんのお姉ちゃんを恨むつもりも、何かするつもりもない。まして、罰を受けさせようとは思わない。ただ、この街から出ていってほしい」

「うん、お姉ちゃんを説得して、絶対に連れ帰るから」

「ありがとうよ」

わたしもできる限りのことをする。