軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

695 クマさん、行動を開始する

わたしたちは決行日に向けて話し合う。

「それじゃ、二日後に行動を起こす」

魔力を奪われる間隔を考えて、その前に行うことになった。

「わたしとしては、明日でもいいんだけど」

「こっちもやることがあるからな、一日は時間がほしい」

「わたしのほうも騎士たちに渡す依頼を精査しないと、遠すぎず、近すぎない場所」

あまり遠いと向かわない可能性もあるとのこと。その辺りのことを考えて騎士に行かせる場所を決めるらしい。

「まあ、そういうわけだから、おまえたちは当日までゆっくりと休んでくれ」

ギルマスとカーラさんは席を立ち、部屋からでていく。

「それじゃ、お言葉に甘えて、俺たちは休ませてもらうが、ユナたちはどうするんだ?」

「う〜ん、目立つ行動は避けたいから、わたしたちも宿屋に戻ろうかな」

今、やれることはない。下手に厄介ごとに巻き込まれでもしたら、今日、話し合ったことが無駄になってしまう。

そんなわたしの言葉にノアは残念そうにする。

「やっぱり、街の中を歩くのはダメですよね。勉強のため、街の中を少し探索したかったのですが」

そういえば、ノアは他の街に行くと、その街のことを勉強するようにクリフに言われている。

もしかすると、今回もそうなのかもしれない。

「ねえ、ノアールちゃんって、どこかの商家の令嬢?」

「言葉遣いといい、ものの考え方。普通の子供じゃない」

ローザさんとランがノアの素性を尋ねてくる。

「もちろん、話したくなければ、話さなくてもいいけど。少し気になって」

どうやら、ノアが素性を隠していることには気づいているみたいだ。

どうしたものかと、わたしとノアは顔を見合わせる。

「ユナさんが大丈夫なら、わたしは別に話しても問題はありません」

ローザさんたちはわたしたちがこの街の住民ではないことは知っている。妖精の力を使って、この国に来たことも知っている。どっちにしても、一緒にクリモニアに帰れば知られることだ。それに、ローザさんたちならノアのことを知られても問題はない。

「ノアは、クリモニアの領主の娘だよ」

わたしの言葉に、ローザさんたちは驚く。

「それじゃ、ノアールちゃんは貴族の令嬢ってこと?」

「はい。 クリフ・フォシュローゼの娘、ノアール・フォシュローゼです」

ノアは令嬢らしく自己紹介をする。

「もしかして、わたし、不敬罪で処罰されたりする?」

「楽に死なせてほしい」

ローザさんとランが、変なことを言い出す。

グリモスだけは口を開いていないので、なんとも言えない表情をしている。

「いや、みんなは悪くない。処罰するなら俺だけにしてくれ」

「えっと、別に皆さんを不敬罪で処罰するつもりはありません。それに、わたしが名乗らなかったのがいけませんから」

「えっと、ノアール……様、ありがとうございます」

ローザさんはぎこちない言葉で礼を言う。

「それと今までどおりにノアールとお呼びください」

「それは……」

ローザさんたちが助けを求めるように、わたしを見る。

「別にいいんじゃない。わたしもノアって呼んでいるし、ノアの父親もクリフって呼び捨てだし」

「「「「…………」」」」

ブリッツたち4人は信じられないような目で見る。

まあ、貴族を敬称なしで呼び捨てなんて普通ならありえないことなんだよね。

「ユナさんは仕方ありませんが、もし、お父様の前とか、他の人の前だったら、呼び方を変えていただければ大丈夫です」

「わたしは仕方ないの?」

「えっと、わたしはともかく、お父様を呼び捨てているところを聞かれて、少し家で仕事をしている人が怒っていたことがありました。でも、お父様は気にするなと言って、笑っていました」

「えっと、それじゃ、わたしもお屋敷に行ったら、ノアール様って呼んだほうがいい?」

「やめてください。もし、そんな呼び方をしたら怒ります」

ノアが頬を膨らませる。

「分かったよ。ノア」

わたしがそう呼ぶと、ノアは嬉しそうにする。

「それじゃ、わたしたちも今までどおりにノアールちゃんと呼ばせてもらうけど、いいかしら?」

「はい」

ノアの件も終わり、ノアの希望も少しだけ叶えてあげるため、少し遠回りしながら宿屋に戻った。

宿屋に戻ってきたわたしとノアはのんびりとまったり過ごしている。

プリメは落ち着かないのか、そわそわしている。

「ねえ、本当に2人とも一緒に付いてくるの? 危ないよ」

「だから一緒についていくんでしょう。もしものときはわたしが守ってあげるから、プリメはローネをちゃんと説得するんだよ」

「本音を言えば怖いですが、わたしがローネさんを必ず見つけますから、プリメさんはローネさんを」

「……二人とも、ありがとう」

プリメは笑顔になる。

その日は、ノア、プリメ、くまゆる、くまきゅうと過ごした。ただ、ローザさんとランにグリモスも途中で部屋にやってきて、まったりとはいかなかったけど、プリメは楽しそうだった。

そして、決行当日。わたしたちは宿屋で連絡を待つため待機する。

わたしたちはともかく、ブリッツたちは目を付けられている。下手に行動して、見つかれば面倒なことになるのは間違いない。なので冒険者ギルドから連絡があるまで宿屋に待機中だ。

「ローネさんの繋がりが……、街の外に移動していきます」

ノアは目を閉じ、騎士の行動を感じている。

ローネから力を得ている騎士の行動をノアは分かる。

「あと、お屋敷のほうと、街の中からも反応があります」

お屋敷に残っている騎士と、見回りをする騎士、見張り台にいる騎士の反応かもしれない。

でも、ノアが言うには半分以上の反応が街の外に出ていったと言う。

戦力が半分になったと思えば、上出来だ。

「それじゃ、そろそろかもね」

騎士たちが街から出ていって、しばらくしてから行動を移すことになっている。

戻ってこられても困るので、すぐには動かない。

そして、しばらくすると、ドアがノックされ、ギルド職員の受付嬢がやってきた。

「カーラから伝言です。騎士たちが街から出ていきました。この後、ギルマスと冒険者たちが見張り台を襲います。騒ぎになれば、お屋敷に残っている騎士や街の中に残っている騎士たちもギルマスたちのところに集まってくると思います。そうしましたら、お屋敷に入り込んでください」

予定通りの内容を女性は説明してくれる。

「ねえ」

「なんでしょうか?」

「こんな、格好しているわたしを信用するの?」

「実はギルマスと戦うところを見ていました。初めは可愛らしい女の子がと思ったのですが、ギルマスと戦うところを見て、本物だと思いました。これでも、カーラ同様に多くの冒険者を見てきましたから、実力の有無は分かるつもりです」

この受付嬢も冒険者ギルドに残った数少ない職員ってことだろう。

「どうか、昔の活気がある冒険者ギルドに」

「冒険者ギルドの未来は約束はできないよ。わたしができるのは領主の傍にいる妖精を街から連れていくだけだよ」

妖精がいなくなっても、冒険者ギルドに冒険者が戻ってくるとは限らない。それは、わたしにはどうにもできないことだ。

「はい。それはわたしたちの仕事です」

受付嬢は微笑む。

「どうか、街を救ってください」

受付嬢は頭を下げると、部屋から出ていく。

「頑張らないといけないですね」

「うん、絶対にお姉ちゃんの目を覚まさせるんだから」

今回のことは、プリメやわたしたちだけの問題ではない。いろいろな思いが乗せられている。未来のことは分からないけど、ローネだけは何があっても街から連れ出さないといけない。

準備を整えたわたしたちは部屋を出ると、ちょうどブリッツたちも部屋から出てくる。わたしたちは一緒に一階に移動する。そして、一階ではこれから何が起きるか知らない宿屋の娘さんが「行ってらっしゃい」と笑顔で送り出してくれる。

この子の未来のためにも、元の街に戻さないといけない。

わたしたちは「行ってきます」と言って宿屋を出る。

ブリッツたちと別れ、わたしは子熊化したくまゆるとくまきゅうを召喚し、屋敷の近くの森林の中に身を潜める。

静かなものだ。

探知スキルで、お屋敷の中を確認する。

散らばったりしているが、軽く数えてみても30人前後の反応がある。

メイドや料理人などの使用人たちもいると思うから、騎士たちはこの数よりは少なくなるはずだ。

「うぅ、人の家に侵入とかしたことがないので緊張します」

「他人の家に無断で侵入って、泥棒がすることだから、普通は誰もないと思うよ」

「ふふ、わたしはあるわよ。村に行ったとき、家の中に入ったことがあるからね」

「それ、自慢にならないから」

それに普通の人には妖精は見えないんだから、侵入し放題だ。

「ユナさん、煙です」

屋敷とは反対方向を見ていたノアが小さい声を上げる。

ギルマスやブリッツ、冒険者たちが魔力を奪う装置が設置されている見張り台に攻撃を仕掛けた合図だ。

離れたわたしたちに知らせる目的と、街の中にいる騎士たちに、見張り台で何かあったと思わせるためだ。お屋敷にいた騎士たちも煙に気付いたのか、10人ほどの騎士たちが屋敷から出てくる。

「あの騎士たちが離れたらお屋敷の中に入るんですよね」

それがギルマスたちと話し合った作戦だ。

でも、あの人数を見ると、ここで倒したほうがいいような気がした。

「そのつもりだったけど、わたしが対処してくるよ」

もし、この騎士たちがギルマスたちのところに行けば、挟み撃ちになる。

それでなくても、街の中にも騎士たちはうろついている。そんな騎士はギルマスたちのいるところに向かっているはずだ。その数が少なければ、少ないほど勝ち目が出る。

「ですが、ユナさん。それでは作戦が……」

分かっている。ギルマスたちも、その危険を承知で囮を引き受けた。

でも、その囮作戦が失敗すれば、ギルマスたちの命が危険にさらされる。

「ノアたちは、ここにいて。くまゆるとくまきゅうはノアとプリメをお願いね」

「「くぅ〜ん」」

わたしは森林から出て、お屋敷から離れた場所で、騎士たちの前に立ち塞がる。