軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

685 クマさん、プリメ、動く

わたしたちはそれぞれ分かれて行動を開始する。

ブリッツたちは魔物討伐に向かい、わたしとノアは領主のお屋敷を調べに行く。

「プリメさんのお姉さん、この街の領主様のところにいるのでしょうか」

お屋敷に向かう道すがら、ノアが尋ねてくる。

「ここまで妖精の情報があって、ノアがこの街からプリメのお姉さんを感じたなら、いると思うよ」

これで、居なかったら反対に困る。

「お姉ちゃん。どうして、こんなところにいるのかな」

「プリメさんのお姉さんって、どんな人なんですか?」

「優しいお姉ちゃんだよ。悪いこともしないし、わたしがイタズラすると注意するし。だから、悪い人間のために力を貸すなんて思えない」

そうなると、やっぱり、領主の無理矢理の線が濃厚なのかな。

でも、人って、周りの環境に影響されやすいって言うし。

自分が見える人間に会えて、嬉しくなって、言うことを聞いているとか。

なんにしても、プリメのお姉さんの状況を把握しないことには、先に進めない。

「あそこみたいだね」

わたしたちはカーラさんに教えてもらった領主のお屋敷近くまでやってくる。

領主のお屋敷は街の中央から離れて、大きな土地の一画を占めており、少し離れた場所には森林がある。

ここだけが、別の世界のような場所にお屋敷がある。

「これ以上近づくと、気づかれるから、この辺りから確認しようか」

「ここからですか?」

ここからと言っても、離れているので、確認することはできない。

わたしは大きめの木に目を向ける。

「あの木の上から見ようか」

すると、ノアが木を見上げながら口を開く。

「わたし、木に登れません」

確かに、わたしもクマ装備が無ければ木に登ることなんてできない。

なので、木の裏に土魔法で階段を作る。

「ユナさんって、本当に簡単に魔法を使いますよね」

「ノアも練習すれば、できるようになるよ」

わたしとノアは土の階段を上り、木の上からお屋敷を窺う。

お屋敷の門の前には騎士が1人、暇そうに立っており、塀の中は広く、庭園のようになっており、門からお屋敷まで100メートルぐらい離れている。

お金持ちって家だね。

「あの家にお姉ちゃんが……」

「ノア、感じることはできる?」

近寄れば、魔力を感じ取れるかもしれない。

ノアは目を瞑り、集中を始める。

そして、すぐに目を開け、ジッとお屋敷のほうを見る。

「どうだった?」

「昨日と同じように、周りからも感じますが、あのお屋敷の中からも感じます。それと」

「それと?」

「あの騎士から感じます」

ノアは門の前に立っている騎士に目を向ける。

「もしかすると、わたしが感じたプリメさんのお姉さんの魔力は、街にいる騎士たちから感じたものなのかもしれません」

ギルマスやカーラさんが言っていたとおりに、プリメのお姉さんが妖精の力を与えているのかもしれない。

「お姉ちゃんが、あんな人間たちに力を……」

「それで、お屋敷から感じるって言っていたけど、プリメのお姉さんは居そう?」

「プリメさんのお姉さんがお屋敷にいるのか、騎士たちがたくさんいるためなのかわかりませんが、お屋敷からは強めの繋がりを感じます」

ハッキリと分からないが、あのお屋敷にプリメのお姉さんが関わっているのは間違いがないってことだ。

「わたし、お姉ちゃんを探してくる。ユナたちは、先に戻っていて」

プリメは飛び出していく。

「ちょ」

わたしが止める間もなく、プリメはお屋敷に向かって飛んでいく。プリメの姿はどんどん小さくなり、見えなくなっていく。

騎士がいるので、飛び出すことはできない。

「プリメさん、大丈夫でしょうか」

「心配だけど。妖精の姿は見えないし、空を飛ぶこともできるし、小さいから、お屋敷を探索するなら、わたしたちがするよりは最適だと思うよ」

プリメのことは心配だけど、ノアにも不安にさせることはないので、安心させる言葉をかける。

「心配するのは分かるけど、追うことはできないから」

「……そうですね。それじゃ、わたしたちは、どうしますか? プリメさんを待ちますか?」

「もう少し、情報を得たいところだけど、ここはプリメに任せようか。それで、プリメから情報を聞いてから動いても遅くないと思うし」

まだ、慌てて行動するには情報が少なすぎる。

「そうですね」

現状では、わたしたちができることは、なにもない。

※プリメ視点※

お姉ちゃん、どこなの。

わたしはユナとの魔力を切断し、人間に見つからないように建物に向かう。

建物は大きく、窓はいくつもあり、ユナのクマの家より、遙かに大きい。

わたしには、人間のドアは開けることはできない。

どこか、入れる場所は……。

建物の周りを飛んでいると、上の方の窓が開いているのに気付いた。

窓に近づくと、人間の女性が布で窓を拭いている。

わたしは、気にせずに、その開いている窓から建物の中に入る。

建物の中に入ったわたしのことに人間の女性は気づかない。

わたしは長い道を進む。

人間が住む家は広く、たくさんの部屋があるが、外から入れなかったように、内側のドアも窓も閉まっており、中に入れない。

ユナとノアがいれば、開けてもらえるのに。

でも、二人を置いて、一人で来てしまった。

二人に言っても、止められたと思う。

でも、ここにお姉ちゃんがいると分かったら、行かずにはいられなかった。

お姉ちゃん、どこなの。

どうにか、開いているドアや小窓や隙間から部屋の中に入るが、どれも同じような部屋ばかりで、お姉ちゃんがいる気配はしない。

ノアがいれば、お姉ちゃんの居場所が分かったかもしれない。

もしくは、お姉ちゃんのハンカチを、わたしが持っていれば。そんなことを考えてしまう。ユナもノアも、お姉ちゃんを探すために、わたしに付いてきてくれた。

そんなことを言うのは違う。

ノアは断ることもできたはずだ。でも、断らなかった。ユナもそうだ。

これは、わたしの我が儘だ。

ユナとノアがいなかったら、この街に来ることはできなかった。

いや、妖精の森から、こんな離れた場所まで、一人で来ることはできなかった。

勇気はなかったと思う。一人だったら、怖くて引き返したと思う。

二人に感謝することはあっても、文句を言うことはない。

この部屋は?

少し立派なドアがある。でも、他のドア同様に開けることはできない。どこかに、入れる場所はないか、探す。

……あった。

他の部屋同様に上に小窓があり、開いていた。

わたしは、その小窓からゆっくりと部屋の中に入る。

人間はいない。部屋の中を見渡す。他の部屋とは雰囲気が違う。

なにかあるかもしれない。

部屋の中を見渡すと、壁に掛けられている一枚の絵が、わたしの目に入ってきた。

「お、お姉ちゃん」

その絵には妖精が描かれており、その妖精はお姉ちゃんだった。

わたしは、絵に近づく

絵の中のお姉ちゃんは凛々しく、綺麗だった。

「お姉ちゃん……」

わたしはお姉ちゃんの絵に触れる。

やっぱり、お姉ちゃんは、ここにいるんだ。

この部屋のどこかに、お姉ちゃんの手がかりがあるかもしれない。

部屋の中を調べるが、人間のことを詳しくないわたしには、分からないものばかりだ。

ユナやノアがいれば分かるかもしれないが、二人はここにはいない。

お姉ちゃんの手がかりを探していると、カチャと音がして、次いでドアが開く音がする。わたしはとっさに物陰に隠れる。

見えないと分かっていても、もしかしてと思ってしまう。

部屋に入ってきたのは人間の男だった。

男は部屋の中に入ってくると、壁に掛かっているお姉ちゃんの絵の前に立ち、絵をジッと見ている。

「……君は、わたしのものだ」

この男が、ユナたちが言っていた、この街の偉い人間で、お姉ちゃんのことが見え、連れてきた人間。

飛び出して、お姉ちゃんのことを尋ねたいが、怖い。

どうしてか分からないが、この人間から離れたい気持ちがでてくる。

早く、どこかに行って。

でも、人間はジッと、お姉ちゃんの絵を見て動かない。

今、逃げる?

そう思って、動いたとき、なにかに触れる。

カタと小さい音がする。

その音に人間が反応して、後ろを振り返る。

気付かれた?

気付かれたとしても、わたしのことは見えないはずだ。

でも、もしかして見えてしまうのではという気持ちがある。わたしは小さい体を使って、物の後ろに隠れながら移動する。

人間は、先ほどまでわたしがいた場所にやってくる。

そして、何かを探すように、その周辺をキョロキョロとし始める。

わたしのことは見えないし、隠れているんだから気づくはずがない。

チラッと人間の顔を見たが、目が怖かった。

ユナやノアとは違う。

二人が優しい目をしていることに、気付く。

人間は何かを探すように、部屋を歩き回る。

男が近づいてくる。

逃げないと。わたしは周りを見る。

窓が開いていることに気付く。

わたしは一気に飛ぶと、開いている窓から外へ飛び出す。

後ろは振り向かない。

早く、この人間から離れたい。