軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

686 それぞれ行動を開始する

※門番視点※

本当にムカつく。

後ろに領主様がいるからといって騎士たちは横柄で、威張っている。

しかも、強いので本人たちの前では文句も言えない。

そもそも、その力はどうやって得た。

元々は、そんなに強い騎士ではなかった。それが数年前に、いきなり強くなった。

みんな、口にして言わないが、俺たちの魔力が騎士たちに使われていると思っている。

魔力を奪われたあと、強くなった騎士たちが現れれば、誰しもがそう思う。

俺が持っている魔力なんて、微々たるもので魔法も使えないが、その微々たる俺の魔力が、あいつらのものになっていると思うとムカついてくる。

俺たちを見下し、笑っている。

「周辺の魔物を倒してやった」と、「おまえたちを守ってやった」と言う。

冒険者たちの中にも横柄な奴らはいたが、奴らは自分たちで得た力だ。

努力して得た力でもない騎士たちには言われたくない。

なにより問題なのは、その騎士たちに命令をしている領主様だが、魔石を集めだし始めた。そのことで、街の中は魔石不足になり、価格が上がって生活に支障がでている。

商業ギルドや商人たちが頑張っているが、中には悪い商人、金儲けを企む商人、足元を見て高く売る商人もいる。

でも俺も、そんな商人たちのことは悪く言えない。

あんな嬢ちゃんを騙してまで魔石を得るなんて、俺も落ちぶれたものだ。

クマの格好をした女の子のことを思い出す。

街に入るお金がなく、魔石を差し出してきた女の子。

この街での魔石の価値を知らないんだろう。

女の子2人を街の中に入れるために魔石を4つ貰った。

そのうちの2つは女の子2人が抱いていた小さいクマの分だ。

街の中に入るのに、そんな魔石の数は必要はない。

正規の街に入るために必要なお金は俺が自腹で払い、嬢ちゃんからもらった魔石は懐に仕舞った。

最低だ。

俺がやっていることは、俺が嫌っている商人と同じことだ。

そんな俺が騙していることを知らない女の子は俺のことを疑うこともしなかった。逆に街に入れたことに感謝までしていた。

怪我をした父親のために街にやってきた。あの可愛らしいクマの格好した純粋無垢の少女を騙して、罪悪感が湧く。

これも全て領主様が悪いんだ。

そう、自分に言い聞かせる。

翌日、門番の詰所に冒険者ギルドのギルマスがやってくる。

もしかして、昨日騙した嬢ちゃんの件かと思って、緊張したが違った。

ギルマスから冒険者を紹介される。

たしか、朝方に街に入ってきた冒険者たちだ。

男1人に、綺麗な女性が3人、羨ましいと思ったが、それ以上に騎士たちが嫌いなので、騎士たちには注意しろと忠告したのを覚えている。

そもそも、この街にやってくる冒険者は少ない。

どんな用件かと思っていると、この冒険者たちの街の出入りを騎士団に尋ねられても知らないと言ってほしいと頼まれた。

なんでも、この街の命運を握っているらしい。

元々、騎士たちのことは気に入らないし、ギルマスには世話になっている。だから、俺たちは詳しい話は聞かずに了承した。

※ローザ視点※

「魔物の討伐は終わりました」

「あ、ありがとうございます。助かりました」

村の人たちは頭を下げながらお礼を言う。

ギルマスとカーラさんにもらった情報を基に、騎士たちが来るだろうと思う場所を先回りして依頼を横取りしている。

「いえいえ、偶然、通り掛かってよかったです」

冒険者ギルドから来たことにすると、冒険者ギルドに迷惑がかかるので、わたしたちは偶然に通り掛かった冒険者を装って、魔物討伐をしている。

ギルマスとカーラさんからは、後日、ちゃんとギルドカードに討伐記録は載せるから安心してと言われているが、わたしたちは気にしてない。

今回のことは別に登録されなくてもよいと思っている。

村からのお礼としては、少量のお金と討伐した魔物の素材。それから、冒険者ギルドには、通りかかった冒険者が討伐してくれたことを報告するようにお願いをしてある。

そうすれば、騎士たちも冒険者ギルドに文句も言えない。

「騎士様が来てくださると聞いていたのですが、いつ来るか分からないと言われていたので助かりました」

騎士たちは気まぐれで、確実に来てくれるとは限らないらしい。

あと、横柄な態度で丁重に扱わないといけないから、わたしたちが魔物討伐したことに感謝された。

騎士たちには会ったことはないが評判は悪いみたいだ。

村の人たちには、お礼に食事をしていってほしいと言われたが、村に長居するわけにはいかなかったので、丁重にお断りした。

わたしたちは気持ちだけもらって、村を後にした。

「今日は、この辺りで野宿しよう」

馬から降りる。少し腰が痛いので、腰を伸ばす。

わたしたちは馬を使い、移動している。

移動は馬車が多いので、馬はあまり乗り慣れていない。

乗れないわけではないが、馬車の方が楽だ。

でも、馬の方が移動するのは早いし、小回りも利く。車輪が溝に嵌ることもないし、道が舗装されていない場所も移動できる。

ただ、馬車の操作を他の人に任せて、休むことができないのは難点だ。

今回は、のんびりとした移動ではないので仕方ない。

「野宿か~、村で食事をして、そのまま泊まっていけばよかったに」

ランが面倒くさそうに、馬に水と餌を用意する。

「騎士と鉢合わせしたら、面倒なことになるだろう」

「でも、夜に来ることはないんじゃない。それなら朝早くに出発すればよかったと思うけど」

ランの言葉も一理あるが、ギルマスからも騎士たちとの鉢合わせだけは避けるように言われている。少しでも出会う可能性は減らしたほうがいい。

それに出くわしたら、野宿より面倒くさいことになるのは間違いない。

「それにしても、こんなところで、ユナちゃんに会うとは思わなかったわね」

野宿の準備をしながら、話しかける。

「本当だな。どこにでも出没するな。俺たち以上にあっちこっちに行っているんじゃないのか」

「ユナちゃんには、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんがいるからね」

「くまゆる、くまきゅう、羨ましい」

「砂漠も歩けるし、強いし、人の言葉も理解できるし、凄いクマよね」

ユナちゃんは、いつもあの可愛らしいクマに乗って、移動している。

「何より、乗り心地最高。柔らかい」

「小さいクマ、可愛い」

言葉が少なめのグリモスもユナちゃんのクマを褒める。

まあ、ランとグリモスの言葉に同意なんだけど。

「だけど、こんな遠くの場所で知り合いに会えただけで、ホッとするね」

ユナちゃんに会えたことで、わたしたちの心は落ち着いている。

不安が完全に消えたわけじゃないけど、帰る方法が見つかったのは大きい。

問題としては妖精の女王様が、わたしたちを受け入れるかどうかだ。

それには、ちゃんとプリメちゃんのお姉さんを見つけて、連れ戻さないといけない。

※カーラ視点※

「ギルマス、本当に、あの子たちを巻き込むの?」

「妖精を連れているんだ。手伝ってもらう。いや、違うな。俺たちが、あの子たちに手を貸す。それに危険なことをさせるつもりはない。危険と分かれば俺が守る」

「でも、危険なことには変わりないわよ」

「分かっている。だが、あの妖精がこの街にいる妖精を連れていってくれれば、現状を変えることはできる。おまえだってこのままでいいとは思っていないだろう」

「そうだけど……」

「それに、あのクマの嬢ちゃんの実力は、本物だ」

ギルマスが遠くを見るような目で見る。

今でも、この目で見たのに信じられない。あんな可愛らしい女の子がギルマスに勝つなんて。あの動き、判断力、ギルマスと対峙しても怖がらない。武器を持っている者に立ち向かう強さ。

「多くの冒険者を見てきたけど、あんな規格外の女の子は初めてよ」

クマの格好した女の子は強かった。間合いの取り方。ギルマスの懐に入るタイミング。どれも一級品だった。

ギルマスが、手も足も出なかった。ギルマスが手加減せずに戦っていたのは長年一緒にいたわたしには、分かる。

そもそも、あんな怖い顔のギルマスと戦ったら、男の冒険者でも怖がる。

でも、あのユナはギルマスを怖がる様子もなく戦った。

「才能って一言では片付けられないだろうな」

「ブリッツが言っていた、場数」

「どんなに才能を持っていても、経験がなければ恐怖するものだ。それが練習でもだ」

人は剣を向けられれば、怖がる。剣を目の前で振り下ろされれば怖がる。そんな冒険者たちを何人も見てきた。でも、ユナは怖がることもなく、目を背けることもなく、ギルマスの攻撃をかわし、ギルマスの攻撃を防いだ。

初めから恐怖心を持たずに、戦える者はいない。

戦いとは死と隣り合わせだ。

あの年齢で、どれだけの場数を踏んできたのか分からない。

「さらに、魔法まで使える。それも高いレベル。しかも、まだ力を隠し持っている」

「今以上の力があると?」

「手合わせしたから分かる。手加減されていた」

余裕そうに見えていたが、手合わせしたギルマスが言うなら事実なんだろう。

「あんな、女の子がいるもんなんですね。初めて見た時は、可愛らしいクマの格好した女の子だと思ったのに」

初めてギルドに来たとき、ひ弱なクマの格好をした可愛らしい女の子が来たと思った。

でも、蓋を開けてみれば、口調は違うし、演技だったと知ったときは、なんとも言えない気持ちだった。

あのときのわたしの気持ちを返せと言いたくなる。

「あと、もう一人の女の子も。普通の村の娘ではないな」

「ああ、それは分かる。なんと言うか。どこかの令嬢。もしくはしっかり教育を受けた商家の娘って感じでしたね」

普通の村で暮らしている女の子には何人も会ったことがあるが、会話が聡明すぎる。

「魔石のこともそうだが、普通の暮らしをしている村娘では出てこない言葉がいくつも出てきたからな。何より、あのたたずまい。姿勢、言葉遣い。いったいどんな組み合わせなんだよ」

ああ、見ていたら分かる。あの年齢ぐらいだと、ジッとしてられない子が多い。でも、静かに話を聞き、自分の意見を言い、物事の全体が見えている。

「どこかの令嬢を護衛する、クマの格好をした女の子ってところですかね」

「それが、なんでこんな街に」

「妖精に頼まれたからでは?」

それ以外に考えられない。

「そんな令嬢を護衛なしにか? 普通、親が許さないだろう」

「それは、クマの女の子の実力を知っている両親が許したとか」

「いや、それでも、見知らぬ場所に行かせるなら、もっと護衛を付けさせるのが親というものだろう」

「それだけ、あのユナって女の子が凄いってことでは? ギルマスに勝っちゃうほどですから」

「それを言うな。本当に強かったんだからな」

「分かっていますよ。わたしだって、多くの冒険者たちを見てきたんですから」

普通の冒険者ではない。

ギルドカードの確認をさせてほしいと頼んだが、やんわりと断られた。

それ以上、強くは言えず、ギルドカードは確認することができなかった。

「ただ、言えることは、希望が見えてきたってことだな」

「その希望が、あんな小さい女の子に頼らないといけないってところが情けないけどね」

「俺たちも動くぞ」

「今度は、隠し事はなしですよ」

「領主のことを調べていたことなら、謝っただろう」

「分かっています。わたしに被害が及ばないようにですよね。でも。ここからは一蓮托生ですよ」

「ああ、頼りにしている」

わたしたちは動く。