軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

682 クマさん、受付嬢に話す

わたしたちは近くの席に座り、受付嬢は話を始める。

「あの騎士たちは、自分たちが強いと思って、冒険者をバカにしているのよ。なにも知らずに来た冒険者に絡んでくるから気を付けて」

「強いの?」

昨日、ウルフと戦うところを見たけど、それなりの実力なのは分かる。だからと言って、誰も相手ができないってことはないと思う。

「強いわよ。だから、誰も文句が言えないの」

受付嬢は断言する。

「そんなに?」

「一人ならなんとかなっても、あの数を相手にはね」

確かに、一人ならまだしも、騎士全員を相手にすることはできない。わたしが見た騎士だけとは限らない。もっと数はいると思うのが普通だ。

だから、昨日、受付嬢も騎士たちに怒ることもできず、黙っていたのかもしれない。

「ムカつくわよね。自分たちの力じゃないのに」

「……自分たちの力じゃない?」

ブリッツが口にする。

「そっちの冒険者たちは知らないみたいね。昨日、お嬢ちゃんたちには言ったけど、他人の力を使っているのよ」

「昨日も言っていたけど、そんなことができるの?」

昨日尋ねることができなかったことを尋ねる。

受付嬢は少し悩んだと思うと、小声で話し始める。

「噂だけど、妖精が街の住民の魔力を奪い、その魔力を騎士たちに与えているって言われているわ」

「……!?」

受付嬢の言葉に、わたしたちは顔を見合わせる。

「妖精がいるの?」

「実際のところは見たことがないから噂程度の話よ。でも騎士から『妖精の力を与えられた俺たちに逆らうのか』とか妖精に関する言葉を何度も聞いているし、それに本人たちも妖精騎士と名乗っているから、わたしたちは実際に妖精はいると思っているわ。なにより、妖精の力を借りでもしなければ、弱かった騎士たちがいきなり強くなったりしないと思う」

プリメのお姉さんが騎士たちに力を与えている?

あの妖精騎士たちを調べれば、プリメのお姉さんの情報が得ることができるかもしれない。

「でも、どうして妖精騎士のことを尋ねるの?」

「それは……」

「もしかして、妖精がいる噂を聞いて、昨日の騎士から妖精のことを聞こうとした? それならやめたほうがいいわよ。女、子供関係なく、絡んでくるやつらだからね。それに、尋ねたとしても教えてくれないわよ。たまに自分たちで漏らすのに、尋ねると口が堅くなるんだから」

悩む。

本当のことを言うべきか。

「それと、昨日はすぐに街を出るかと思って言わなかったけど、街から早く出ていったほうがいいわよ。とくに、そっちの魔法使い2人はね」

ローザさんとランを見る。

「どうして?」

「街の住民とは関係なく、この街の中にいれば魔力を奪われるからよ。生活するだけなら問題はないけど、魔力を使う仕事をする人にとっては死活問題。だから、この街の魔法使いは出ていったのよ。まあ、困っているのは魔法使いだけじゃなくて、魔力を使う職人も困っているけどね」

「それじゃ、今も奪われているの?」

「昨日、今日はないわね。数日に一度、深夜に魔力が奪われるの。もし、朝に、体がだるいと思ったら、魔力を奪われたと思ったほうがいいわよ。知らない人は体調を壊したと思うかもしれないけど」

「えっと、妖精が直に奪うんじゃなくて、街にいるだけで奪われるってこと?」

「妖精から直に奪われた話も聞くけど、実際は街の中にいるだけで奪われるわ。だから、あなたたちも早く街から出ていったほうがいいわよ」

この街に冒険者がいない理由も分かった。

街にいると魔力を奪われる。

あの騎士が妖精騎士と名乗っている理由も分かった。

魔力を騎士に与えているのがプリメのお姉さんの可能性が出てきた。

詳しいことを尋ねたいが、どこまで尋ねてたらよいか分からない。

「すまないが、街から出ていくわけにはいかない。実は、俺たちはその妖精を探している」

わたしが悩んでいると、ブリッツが代わりに言ってくれる。

「妖精を探している? やめたほうがいいわ。過去に同じような人がいたけど、戻ってきた人はいないわ。命が大切だったら、街から出ていったほうがいいわ」

それって、妖精のことを探ったら殺されたってこと?

「俺たちが、その妖精を倒すと言ったらどうだ」

「そんなことができるわけがないわ。妖精の居場所は分からない。妖精を倒そうとすれば、あの妖精騎士がでてくる」

プリメのお姉さんを探すにはあの妖精騎士をどうにかしないといけないってことだ。

「あのう、ちょっといいですか?」

「なにかしら」

黙って聞いていたノアが口を開く。

「騎士って、国の国王、その街の領主に従うものですよね。この街の領主様は、どのような方で、騎士たちにどんな命令をしている方なんですか?」

たしかにそうだ。

妖精に気を取られすぎて、騎士の考え方が間違っていた。

「それは口にしちゃダメよ。これ以上は話せない。あなたたちが危険になるわ。妖精に興味が湧くのは仕方ないけど、これ以上はダメ。村に帰りなさい」

受付嬢は優しく言う。

「あなたたち冒険者もそう。仲間を大切に思うなら、これ以上、深入りはしないほうがいい」

受付嬢が、わたしたちのことを本当に心配してくれているのが分かる。

受付嬢にプリメのことを話して、力になってもらう方法もある。

でも、この街でプリメのことを話すのは得策ではないと思う気持ちもある。

もし、プリメと妖精騎士と関わりがあると思われて、妖精に悪い気持ちを抱いている者に知られたら、襲われる可能性がでてくる。

受付嬢もいきなり、襲ってくる可能性も否定はできない。

でもプリメのお姉さんが、この街の騎士たち、さらには領主と関わっているなら、街の情報に詳しい人を仲間にしたい。

わたしは決めた。

「誰にも聞かれない部屋ってありますか?」

「もちろん、あるけど。どうして?」

「大切な話があります」

わたしの真剣な表情を見て、ため息を吐くと、「わかったわ。それじゃ、こっちに来て」と言うと奥の部屋に案内してくれる。

「この部屋なら、外には聞こえないわ。それで、話ってなに」

「プリメ、出てきて。情報を引き出すには必要だと思うから」

わたしがそう言うと、ノアのポシェットが動き、プリメが出てくる。

「妖精……」

「彼女はプリメ。妖精だよ」

「嘘、妖精は波長が合わないと見ることができないはず。でも、わたしを含めて、あなたたちみんな見えているわよね」

この部屋にいるみんながプリメに目を向けている。

「詳しいことは話せないけど。そこのユナがいるなら、他の人も見ることができるわ」

「信じられない。それじゃ、もしかして、あなたが街の住民から魔力を奪い、騎士たちに力を与えている妖精……」

受付嬢が目を細め、プリメのことを睨むように見る。

「違うよ。プリメじゃないよ。でも、無関係とは言えないかも。その騎士たちに力を与えているのは、プリメのお姉さんだと思う」

わたしはこの街に来た、本当の理由を受付嬢に話した。

「はぁ、その妖精に頼まれて、子供二人でお姉さんを街まで探しに来たと。そして、偶然にも前に知り合った冒険者とこの街で再会し手伝ってくれることになったと」

クリモニアとか、妖精の森、妖精の鏡などのことは伏せて話した。

「それじゃ、あの解体した魔物は嘘だったのね」

「全てが噓じゃないよ。わたしは冒険者。解体をしたのはわたしじゃないけど、魔物を倒したのはわたしだよ。言っても信じられないと思って、それに言えない理由もあったから」

「妖精に、クマの女の子が冒険者……」

受付嬢は頭を抱え込む。

「おかしいな。今日はまだ、お酒は飲んでいないのに」

現実逃避を始めたよ。

「嬢ちゃんの口調は昨日と違うし」

「…………ああ」

クマもとい、猫を被り、近くの村から来た、何も知らないか弱い少女を演じていたことを、すっかり忘れて普通に話していた。

「ごめん。これが本来の話し方なの。その方が怪しまれないと思って」

「あの可愛らしい女の子は演技だったのね」

なにか、残念そうに思われている。

もしかして、あっちのほうが可愛げがあったのかもしれない。

でも、あんな設定、長続きはしない。いつかはばれるものだ。それなら、早めに知られたほうが楽でいい。

そもそも、すっかり忘れて普通の口調で話していた。

「一応、確認だけど、年齢的にそっちの子は冒険者じゃないわよね?」

受付嬢はノアを見ながら尋ねる。

「はい。わたしは冒険者ではありませんので安心してください。どこにでもいる普通の女の子だと思ってください」

ノアは礼儀正しく答える。

ノアの正体を知っているわたしからしたら、どこにでもいる女の子ってツッコミたくなる。

「もしかして、どこかの良いお嬢様? 口調や雰囲気が違うんだけど」

貴族の令嬢だよ。

でも、そのことは説明するわけにもいかないし、することができないことが分かっているノアは、ニコッと微笑むだけだ。

対応の仕方も、普通の女の子じゃないよ。

「えっ、ノアールちゃんって、どこかの良いお嬢様なの?」

ローザさんは尋ねる。

「いえ、どこにでもいる普通の女の子ですので、今までどおりにノアールちゃんとお呼びください」

ニコッとお嬢様のように微笑む。

貴族の令嬢って、服装を変えてもにじみ出るものなのかもしれない。

わたしが綺麗なドレスを着ても、貴族のお嬢様に見えないことと同じことだ。

「いいのかしら」

後で、貴族令嬢と知ったからと言って、ノアが罰するわけでもないので、大丈夫だと思う。

そもそも、わたし、「ノア」「クリフ」とか呼んでいるわけだし。

今考えると、不敬罪で処罰されてもおかしくはなかったね。