軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

681 クマさん、話し合う

ブリッツたちにも手伝ってもらうことになったので、この街に来た経緯を説明する。

「それじゃ、ノアールちゃんの体の中に入ったハンカチの反応の手がかりで、この街までやってきたのね」

「それって、わたしたちが手伝うことはある? ノアールがプリメちゃんのお姉ちゃんのいるところ? 方向って言うか? 分かるんだよね?」

ランが確認するようにノアのほうを見る。それに対してノアは首を横に振る。

「プリメのお姉さんの魔力は感じるのですが、この街のどこにいるかは分からないんです。魔力が拡散? 魔力の中? 説明が難しいんですが、いろいろな方向から感じるんです」

ノアが申し訳なさそうに説明する。

「だから基本、ノアにはお姉さんの魔力を感じるかどうかを調べてもらって。あとは妖精の情報を調べる予定だよ。それで、昨日は妖精騎士って言葉を聞いたんだけど、ローザさんたちは、妖精騎士って聞いたことある?」

「妖精騎士?」

「なにか、いきなり核心つく名前がでてきたわね」

「妖精騎士か。俺たちは、今日この街についたばかりだからな」

「でも、どこかで聞いたことがあるような」

「わたしはない」

ランは知らないみたいだけど、ブリッツとローザさんは聞き覚えがあるみたいだ。でも、どこで聞いたか覚えていないみたいだ。でも、今まで黙って聞いていたグリモスが口を開く。

「街に入るときに聞いたときのことだと思う」

「……ああ、あのときか」

「あの忠告のときね」

「覚えていない」

グリモスの言葉で、ブリッツとローザさんは反応するが、ランは覚えていないみたいだ。

「何か知っているの?」

「いや、街の中に入るときに、俺たちが冒険者だと知ると、この街にいる騎士には関わらないほうがいい、と忠告されたんだ」

「そのときに、妖精騎士って言葉を聞いたのよ」

あの門の入り口にいたおじさんかな。

「あのう、その理由はなんなんですか?」

「尋ねようとしたが、後ろから街に入ってくる人がいてな、詳しく尋ねることはできなかった」

ノアの質問にブリッツが答える。

「それに、ここがどこなのか気になって、それどころじゃなかったしね」

「妖精騎士……もしかして、プリメのお姉さんが関わっているのかしら?」

やっぱり、そう思うよね。

「昨日、冒険者ギルドに行ったときに、その妖精騎士を見たんだけど、横柄であまりいい感じはしなかったんだよね」

「だから、街の人も忠告してくれたのかしら?」

「昨日はタイミングが悪くて、妖精騎士のことを聞くことができなかったから、あらためてこれから聞きに行こうと思っていたんだけど」

その途中で、ローザさんに出会って宿に戻ってきてしまった。

「それじゃ、俺たちも一緒に行こう」

「そうね。わたしたちも冒険者ギルドの情報は欲しいし」

ローザさんたちが一緒に来てくれるなら、わたしとしても助かる。

わたしとノアだけだと、見た目と年齢のせいで妖精騎士のことを尋ねるのは難しい。理由を尋ねられても答えることができない。

なにより「村から来た普通の女の子」設定にしてしまったので、そんな村の女の子が妖精騎士のことを尋ねるのはおかしい問題がある。

でも、冒険者のローザさんたちがいれば尋ねやすい。

「ありがとう。一緒に来てくれるなら助かるよ」

これからのことも決まり、ベッドから立ち上がろうとしたとき、ノアが口を開く。

「あのう、一応確認なのですが。ローザさんたちは、今日この街に到着したのですよね」

「ええ」

「この街のことは知らなくても、ここがどこの国なのかは知っていますか?」

クリモニアに帰れる手段を持っているから、あまり気にしていなかったけど、ここがどこか気になるところだ。

「名前とか」

「たしか、国の名前はサーヘルだったかしら」

サーヘル。聞いたことがない名前だ。

もっとも、わたしが知っている国名なんて、ほぼないけど。

勉強していなければ、そんなものだよ。

誰に言うわけでもなく、わたしは言い訳をする。

「ノアは、その国の名前に聞き覚えは?」

ノアは首を横に振る。

貴族の令嬢なら、知っているかと思ったけど、知らなかったみたいだ。

「あまり、隣国とは関わりがない国で、周りも小国の集まりみたいだな。大国の名前は知っていても、行き方などは知る者もいなくて、地理の情報も手に入らなかった」

わたしだって、元の世界の国の名前を全て知っているわけではない。中東とかアフリカあたりの小さい国の名前なんて知らない。名前を聞いたことがあったとしても、正確にどの位置にあるかは分からない。

そもそも、小国を含めた世界中の国の位置を、正確に全て知っている人なんて、どれほどいることか。

まして、この世界に世界地図があるかも分からないし、あったとしても、一般的に出回っていないだろうし。そもそも、一般人に世界地図は必要はない。そんな教育もされているわけでもないだろうし。

商業ギルドなら、横の繋がりがありそうだから、分かるかもしれないけど。それも、隣国までぐらいかもしれない。情報源のテレビもラジオもネットもない。他の国のことなんて、自分の人生に関わってこなければ、調べようともしない。そんなものだ。

「それで、この国の王都なら知っている人もいるかと思って、向かっている途中だった」

「まさか、その途中でユナちゃんに会えるとは思わなかったけどね」

「ユナに会えて、嬉しかった」

ランの言う通りに、見知らぬ土地でローザさんたちに会えたのは嬉しい。知り合いが誰もいないのは寂しいことだ。

昔は、あまりそんな風に思ったりしなかったけど、最近は知り合いが多くなったためか、そう感じることが多い。

「それじゃ、帰るためにもプリメのお姉さんを探しましょう」

「ええ」

ローザさんたちの言葉にグリモスは頷く。

「それはそうと、くまゆるとくまきゅうを離してくれないかな」

ローザさんとランは、子熊化したくまゆるとくまきゅうを膝の上に乗せて、ずっと撫で回していた。

2人は名残惜しそうに離してくれた。

グリモスが触りたそうにしていたので、触らせてあげると満面の笑みになった。

これからも行動を共にしたり、情報を共有するので、ローザさんたちは、わたしたちが泊まっている宿屋に泊まることになった。

「4人部屋を一つ頼む」

ブリッツはいつも通りなのか、4人部屋を頼んでいた。

流石、ハーレム男だ。

でも、冒険者に男も女もないと言う。命を預け合うパーティーメンバーなら、同じ部屋に泊まるのはそれほどおかしいことではないらしい。

宿屋を出たわたしたちは冒険者ギルドに向かう。

わたしが歩くと、いつも通りに視線を集め、「くま?」「クマ?」「熊?」「ベアー?」って単語が聞こえてくる。

「見られているな」

「そうだね」

「クマって声が聞こえるな」

「そうだね」

ブリッツの言葉に、わたしは何度も相槌を打つ。

「やっぱり、どこに行っても、ユナちゃんの格好は目を引くのね」

「2人が抱いているクマも原因」

ランがわたしとノアが抱いているくまゆるとくまきゅうに目を向ける。

基本、ノアの護衛のために召喚している。

「えっと、分かれて冒険者ギルドに行く?」

見られるのが恥ずかしいなら、わたしと別々に行動をすればいいだけのことだ。

だけど、わたしの言葉に悩むこともなくブリッツが口を開く。

「いや、一緒に行く。見られるからと言って死ぬわけじゃない。ユナたちだけにするほうが心配だ。それに、俺たちがいれば、絡んでくる者もいないだろう」

そう言って、わたしたちから離れず一緒に歩くブリッツ。

流石、漫画や小説の正統派主人公みたいな男だ。

女性が集まってくるのも分かる。

だからと言って、わたしはハーレムメンバーに入らないよ。

ノアにもしっかり注意しておかないと。

だけど、ノアはブリッツに対抗するようにわたしに抱きついてくる。

「わたしも、ユナさんから離れたりしません」

どっちにしても、ノアはわたしから離れちゃダメだよ。

視線を集めながらも、冒険者ギルドにやってくる。

中に入ると、昨日と同様にギルド内は寂れている。

昨日の受付嬢を探すが、案の定受付に姿はなく、普通にギルド内の椅子に座っているのを見つけた。同じく受付嬢もわたしたちに気づく。流石にお酒は飲んでいないみたいだ。

「あら、昨日のクマの格好した女の子? 今日はどうしたの? 村に帰らなかったの?」

目的のウルフの素材を売ったら、普通なら村に帰ると思うから、受付嬢の疑問は正しい。

『どういうこと?』

ローザさんが小声で尋ねてくる。

『えっと、この国のお金が欲しくて、冒険者だということは隠して、魔物の素材を引き取ってもらったんだけど。そのときに、近くの村から来たことにしたんだ』

『ああ、そういうことね』

わたしの説明で、ローザさんはすぐに理解してくれる。

「それと、どうして冒険者と一緒に?」

わたしのことは冒険者とは分からなかったのに、ブリッツたちのことはすぐに冒険者と分かったみたいだ。やっぱり、見た目だよね。

「もしかして、この子たちを騙して、悪いことを考えているならタダじゃおかないわよ」

受付嬢は、わたしとノアを守るように、わたしとブリッツたちの間に入る。

「安心してくれ。この子たちとは知り合いだ」

「本当なの?」

確認するようにわたしとノアを見る。

「うん、だから、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」

「なら、いいけど」

わたしの言葉に警戒を解いてくれる。

優しい人だ。

「あなたたちは、この街の冒険者じゃないわよね?」

「ああ、俺たちは他の街というか、他の国から来た冒険者だ」

「他の国? そんなところから、どうして、こんな街に」

「まあ、いろいろとあってな」

迷子になったとは言えないよね。

「それで、少し聞きたいことがあるんだが」

「わたしに答えられることならいいけど、なにかしら?」

「妖精騎士についてなんだが」

ブリッツの言葉に、受付嬢の顔が強張る。

「なにかあったの? もしかしてなにかされたの?」

受付嬢は、ブリッツにではなく、わたしに尋ねてくる。

「ううん、なにもされていないよ」

もしかすると、騎士になにかされて、ブリッツたちに助けられたと思っているのかもしれない。

「そう、ならよかったわ。それなら、早く街を出ていったほうがいいわよ」

「街にいると、なにかされるの?」

言葉からして、街にいると騎士になにかされると言っているようなものだ。

昨日も騎士が現れたとき、隠れるように言われた。

ブリッツたちも関わらないように言われている。