軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

671 クマさん、出発する

翌日、わたしたちはクマハウスに集合した。

ノアは動きやすい服装に着替えている。赤と白を基本とした服でノアには似合っている。貴族には見えないかもしれないが、どこぞのお嬢様って雰囲気は漂っている。

中身が違うからかな?

そして、腰にはプリメを運ぶポシェットもある。

「わたしの家でもよかったと思うのですが」

「わたしの家にあったほうが、何かと便利だからね」

「そうなんですか?」

プリメが言うには妖精の鏡があれば、どこからでも移動はできるとのこと。だから、ノアの言う通りにノアの家でもよかった。

でも、もしもクマの転移門で戻ってくることがあれば、妖精の鏡から出てこなかったことをクリフに説明をしないといけなくなる。そうなれば面倒くさいので、妖精の鏡での移動はわたしのクマハウスにしたのだ。

何事も、先読みは必要だ。

クリフのセリフじゃないけど、わたしは行く先々で、トラブルに巻き込まれている。

まあ、今回は流石にないと思うけど。そう何度もトラブルに巻き込まれては、たまったものではない。

今のわたしは旅行気分だ。

ノアは納得していないようだけど、深くは追及してこなかった。

「それじゃ、プリメ、お願い」

わたしがプリメに頼むと、壁に立てかけてある妖精の鏡に近づき触れる。すると鏡は波打ったように揺れる。

「繋がったわ。まずはユナからね。わたしを手に乗せたまま、鏡の中に入って。ノアは少し待っていて」

プリメがわたしのクマさんパペットの上に乗るのを確認すると、ゆっくりと妖精の鏡に触れる。すると鏡の中に吸い込まれるように鏡の中に入っていく。

「ここは?」

わたしは周りを見渡す。

「湖?」

わたしは湖の中心にある小島にいた。その湖の周囲は森のようだ。

後ろを振り向くと、鏡と同じぐらいの大きさの水でできた鏡のようなものが浮かんでいた。

これが水の鏡。ここから、出てきたみたいだ。

ファンタジーだ。

「妖精の森にある湖よ。詳しい説明は後にして、ノアを連れてくるわ」

プリメはそう言うと、水の鏡の中に入っていく。

わたしはスキルで地図を確認するが、案の定地図は真っ黒で、わたしがいる場所だけが表示されている。縮小できないから、ここがどこかも分からない。

地図を見ていると、プリメがノアと一緒に水の鏡から出てくる。

「ここが妖精の森ですか」

ノアもわたし同様にキョロキョロと周りを見る。

「ノア、まずは確認。何かを感じることができる?」

もし、何も感じることができなければ、このままノアにはクリモニアに戻ってもらうことも考えている。

「待ってください」

ノアは胸に手を当て、目を閉じる。

「遠くに何かを感じます」

「本当?」

「はい」

「よかった。それじゃ、早く森を出ましょう」

プリメがそう言うと水の鏡に触れる。水の鏡は壊れ、普通の水となって地面に落ちる。

どうやら、常時出現させておくわけにはいかないみたいだ。

「でも、どうやって、向こうに行くんですか?」

わたしたちは小さい湖の中心の小島にいる。

「わたしは飛べるけど……考えていなかったわ」

妖精は飛べるけど、わたしたちは飛べない。

でも、わたしはスキルで水の上を歩くことはできる。

「大丈夫だよ。ノア、ちょっとごめんね」

わたしはノアをお姫様抱っこする。

「ユナさん!」

「落ちるから、暴れないで」

わたしはノアがしっかり掴むのを確認すると、湖の上を歩き出す。

「湖の上を歩いています」

「人って、水の上を歩けたのね。知らなかったわ」

プリメはわたしたちの周りを飛びながら言う。

「いえ、歩けませんよ。ユナさん、どうして水の上を歩いているんですか!?」

「魔法みたいなものだよ」

スキルの説明は面倒くさいので、そう説明する。

「魔法、そんなこともできるんですね」

わたしは湖を渡り、岸にやってくるとノアを下ろす。

「早く、出ましょう。2人も人間を連れてきたと女王様に知られたら、怒られるわ」

妖精の森を探索できないのは残念だけど。こっちに来ることができたので、クマの転移門を設置して、今度、1人で来るのもいいかもしれない。歓迎してくれるかどうかは分からないけど。

今はプリメのお姉さん探しだ。

「プリメ。人間を連れてきたら、紹介するように伝えたはずですが」

わたしたちが歩き出そうとしたとき、どこからともなくプリメに話しかけてくる声がする。

「女王様!」

プリメが見ている先に、綺麗な透き通るような緑色のドレスを着ている妖精が浮かんでいた。

プリメの言葉通りなら、妖精の女王。一番偉い妖精になる。

「プリメ、どういうことですか。1人だけと言ったはずですが」

「申し訳ありません。こちらのクマの格好をした人間が、わたしのことを見ることができたのですが、お姉ちゃんのハンカチが、こっちの人間の中に入ってしまって」

プリメはわたしたちを連れてきた理由を説明する。

「わたしたちは妖精の森を出ることはあまりありません。優しい人間もいれば、残虐な人間もいます。過去には人と幸せに共に暮らしたことがある妖精もいますが、見世物にされた妖精もいます」

妖精は珍しい。もし、相性がいい人間が悪い人だったら、捕まえて、他人に見せるように強要したこともあったかもしれない。

「信じてって言うのは難しいけど。あなたたち妖精にそんなことをしないよ」

「はい。わたしもです」

「わたしたちに危害を加えないなら、何もするつもりはないし、逆に友好的になりたいと思っているからね」

そうでないと、妖精の森、見学ツアーができない。

女王様はわたしのことをジッと見つめる。何かを見すかされているように感じる。

「嘘は言っていませんね」

ジッとわたしたちを見ていたと思ったら、そう口にする。

「見ただけで、そんなことが分かるの?」

「気持ちを色として見ているだけです。今のあなたは、興味津々に、わたしを見ていますね。悪意があれば、わたしを捕まえよう、プリメを騙そうとしているのが分かります」

「妖精って、そんなことが分かるんだ」

「身を守るために、長く生きてきた一部の妖精だけです」

長くって、どれぐらいなんだろう。エルフぐらい。もしかするとエルフ以上生きているのかもしれない。

「でも、どうして、わたしたちにあなたが見えるの?」

相性がないと見ることはできないと言っていた。女王様を見ることも話すこともできている。

わたしの場合クマの加護って可能性があるけど、ノアにも見えているみたいだ。

「ここは妖精の森。この森の中でしたら、誰しもが、わたしたちを見ることができます。なので、この場所を人に知られるわけにはいかないのです」

「それじゃ、本来わたしたちが来ては……」

「人が立ち入ることはできません」

厳しいことを言っているが、正しいことだ。

1人だけという言葉も納得する。わたしたちは、本来は来てはいけない存在だ。許されているのが、奇跡みたいなものかもしれない。

「ですが、プリメが姉のローネを探したい気持ちも分かります」

だから、わたしたちを妖精の森の中へ入る許可を出してくれたのか。

「プリメ、しっかり。ローネを連れ戻してきてください」

「はい」

「でも、幸せに暮らしていたら、ローネのしたいようにさせてあげなさい」

「はい」

プリメに話していた女王様がわたしを見る。

「ユナと言いましたね。プリメは少しおっちょこちょいですが、優しい子です。どうか、プリメのことをよろしくおねがいします」

「うん、どこまでできるか分からないけど。頑張るよ」

女王様は次にノアのほうを見る。

「ノアでしたね。巻き込んでしまい申し訳ありません。ユナ同様にプリメのことをよろしくお願いします」

「はい。妖精さんに会えて嬉しいです。プリメさんのために頑張りたいです」

「ふふ、ありがとうございます。おもてなしができないのは心苦しいですが、他の妖精が怖がりますので、ご了承ください」

「うん、分かっているよ」

先ほどから、木々の後ろから妖精たちが、わたしたちを窺っているのが見え隠れしている。

妖精の森の中に入れてくれただけでも、温情なんだと思う。

「すぐに出ていくから、安心して」

妖精の森、見学ツアーをしたい気持ちもあるけど、妖精たちに嫌われでもしたら、今後もすることができなくなる。友好的になれば、いつか機会があるかもしれない。

「心遣いありがとうございます。プリメ、気をつけていきなさい。そして、ちゃんと戻ってくるのですよ。あなたまでいなくなったら、寂しくなりますから」

「はい、行ってきます。ユナ、ノア、行くわよ」

プリメはわたしたちの前を飛び、移動を始める。

わたしとノアは女王様に、軽く頭を下げ、プリメの後を追う。

「こっちよ。迷うと、出れなくなるから気をつけてね」

「そうなの?」

「ここは、妖精の森と外を繋ぐ通路って言うのかしら? 人間の言うところの迷いの森かしら」

「迷いの森」

怖い名前だ。

「だから、ちゃんとした道を通らないと、同じところを通って迷うのよ」

「道順、決まっているの?」

「決まっているけど、覚えるのは難しいと思うわよ」

クマの地図を確認すると、ちゃんと通った跡がついている。他の場所を通らなければ、このミミズのような跡を辿って進めば、さっきのところに戻れそうだ。

さすが、クマスキルだ。

そして、間も無くして、森を出ると、平原が広がる。

「さて、どうしようか。ノア、方向とか分かる?」

「えっと、少し待ってください」

ノアは両手を胸のところに合わせて、目を閉じる。

そして、少しすると目を開けて、指さす。

「あちらから、何かを感じます」

「それじゃ、行こうか」

わたしはくまゆるとくまきゅうを召喚する。

「あの時のクマが召喚獣とはね。大きくなったり、小さくなったり、本当に凄いわね」

「はい。くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんは、凄いです」

わたしの代わりにノアがくまゆるとくまきゅうのことを褒める。

くまゆるとくまきゅうは褒められて嬉しそうに鳴く。

「それじゃ、途中で交代しながら、乗っていくよ。ノアはくまきゅうに乗って」

「はい」

わたしはくまゆるに乗り、ノアはくまきゅうに乗る。

「それじゃ、出発です!」

ノアが声を出すと、わたしたちを乗せたくまゆるとくまきゅうは走り出す。