軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

670 クマさん、クリフに説明する

わたしとノアはクリフに幽霊騒ぎになっていたお屋敷での出来事を説明した。

クリフはわたしとノアとプリメの話を聞きながら頭を抱え、何度もプリメを見ていた。

プリメの姿は、わたしの魔力を吸収してクリフにも見えるようになっている。

「そんなわけで、この妖精のお姉さんを探しに行くにはノアが必要なの。わたしがちゃんと守るから、ノアを連れていってもいい?」

「お父様、お願いします。危険なことはしません。プリメさんのお姉さんを探すお手伝いをさせてください」

クリフはノアを見てから、テーブルの前に座っているプリメを見る。

「はぁ、妖精か。この目で妖精を見ることができるとはな。本当にノアが必要なのか?」

「まだ妖精の森に行ってみないと分からないけど。たぶん、この子の力が必要になると思う」

実際問題、プリメの言う通りにノアの力が必要になるかは妖精の森に行ってみないとわからない。なにより、ノアの気持ちも尊重してあげたい。

「妖精の願いを叶えよ。妖精の願いを叶えないと不幸になるか……」

「この子たちにも言ったけど。わたしたちに人を幸せにする力も不幸にする力もないわよ」

「いや、妖精本人はそう思っていなくても、そう言い伝えがあるなら、可能性は否定はできない」

火のないところに煙は立たないってやつかな。

人知れずに人を幸せにしたり、不幸にしている場合もある。

「ノアのことは、わたしが守るよ。それにすぐに見つかって、何事もないかもしれないし」

「別に、お前さんの実力を疑っていない。俺は、お前さんのトラブルを呼び込む体質が気になるだけだ」

「トラブル体質?」

なんのこと?

「海に行ったらクラーケン。王都に行けば魔物一万。学園祭に行けば騎士団長とのトラブル。ミスリルを買いに行けばゴーレム。砂漠の一件に。ユーファリアの街に現れた男。お前さんが行くところにトラブルが起きているだろう」

クリフが次々とわたしが関わった事件を並べていく。

「うぅ」

反論ができない。

それにしても、色々と知られているみたいだ。どの件もエレローラさんや国王が知っていることだ。クリフの耳に入っていてもおかしくはない。

クリフが知らないところでは、エルフの森の件、和の国の件、スライムの件などもある。

確かに、わたしが行く先々で、何かが起きている。

でも……。

「それって、別にわたしが呼び寄せるわけじゃないでしょう。元からでしょう」

クラーケンは、わたしが行く前からミリーラの町の海にいたし、王都の魔物一万の件は国王が原因だし、学園の騒ぎだってシアを守るためだ。砂漠の件だって、元から事件は起きていたことだし、ゴーレムだって居たから倒しに行った。ユーファリアの街の件も、男が復讐するために起こしたことだし。和の国だって、大蛇の復活の兆しは元々あったし、エルフの森もサーニャさんがエルフの森に行くと言うから、付いていっただけだ。

わたしが原因になったことは一つもない。わたしは悪くないよね。

「そうだ。お前さんは悪くない。ただ、お前さんが行くところに、不安を感じるのは仕方ないだろう」

父親としては当たり前の反応だった。

「だが同時に、お前さんがどれだけの人を救ったか知っているつもりだ。お前さんがいなかったら、多くの者が不幸になっていただろう。シアの件もそうだ」

そう言って、クリフが頭を下げる。

「ノアを頼む」

「それじゃ」

「ああ、お前さんが一緒にいれば、大丈夫だろう」

「お父様、ありがとうございます」

「妖精の森。それから、その土地になにがあるか分からない。気をつけて行くこと」

「はい!」

「ユナの指示には必ず従え、自分勝手な行動はしないように」

「はい。ユナさんから離れません」

そう言って、隣にいるわたしに抱きつく。

「ユナ、娘のことをよろしく頼む」

「絶対に守るよ」

「「くぅ〜ん」」

わたしとノアに抱かれている子熊になっているくまゆるとくまきゅうが「自分たちもいるよ」って感じに鳴く。

「そうだったな。お前たちもいたな。ノアを頼む」

クリフはくまゆるとくまきゅうに向かって言う。くまゆるとくまきゅうは「任せて」って感じに鳴く。

「それからプリメだったな。娘に危険なことはさせないでもらえると助かる」

「させないわよ。ほんの少し手伝ってもらうだけよ」

まあ、魔物討伐に向かうわけではない。

ただプリメのお姉さんと一緒にいる人間が危険って可能性もあるから、その辺りは気をつけないといけない。プリメのお姉さんを監禁している場合もある。そうなれば、話し合いで済むことではない。

「それじゃ、準備も必要だろう。ララに言って用意させるといい。あとララが心配するかもしれないから、ちゃんと伝えておくように」

「はい」

ノアは嬉しそうに返事をする。

わたしは席を立とうとして、気づく。

「あっ、冒険者ギルドの報告どうしよう。妖精がいたって言ったら、騒ぎになるよね」

人の目が多くなれば、悪いことを考える人物が出てもおかしくはない。

少し横柄で世間知らずな妖精だけど、そんなプリメを色々な人の目に晒すのはよくない。

わたしの魔力がないと、プリメを見ることができないと言っても、妖精の噂を広めるメリットはない。

「俺のほうから、適当に冒険者ギルドに伝えておく。お前たちが帰ってくるまで、あの屋敷の出入りも禁止にさせておくから、安心しろ」

「ありがとう」

クリフも分かっているのか、妖精のことは伏せてくれるみたいだ。

冒険者ギルドのことはクリフに任せて、わたしたちはノアの部屋に移動する。

「なにが必要なんでしょうか」

「基本的なものは、わたしが持っているから大丈夫だよ」

クマハウスがあるし、食料もクマボックスに大量に入っている。無人島で遭難しても、十分に生きていけるだけの食料はある。

衣食住の食と住の問題はない。

「必要なのは着替えとかかな」

わたしはノアの服装を見て、気づく。

「普通の女の子って感じの服に替えたほうがいいかも?」

「確かに、そうですね」

ノアは今きているドレス風の服を見ながら言う。

旅には向いていない服装だ。

今回は森の中を歩いたり、知らない村や町などに行くかもしれない。そう考えると、普通の服装がいいと思う。

「でも、ユナさんは、着替えないんですよね?」

「わたしは、どこに行ってもこれだから」

今更だ。

それに、今回はノアを守らないといけないんだから、脱ぐわけにはいかない。

……一人でも脱がないけど。

「なにかズルい気がしますが、動きやすい服装にしておいたほうがいいですよね。ララが来たら相談します」

服装のことをこれ以上、追及されたくないので、わたしは話を変えるため、プリメに尋ねる。

「でもどうして、プリメは水の鏡で来ようとしたの? 他の村や町に探しに行こうとはしなかったの?」

「昔から言い伝えがあるのよ。『妖精の水に導かれし先、求めるもの示されん』って。それで、妖精の水を使って、探しに来たの。それに、わたし、人が住んでいる場所って、近くの村ぐらいしか知らないし」

妖精の森って、人里離れた場所にあるのかな。

まあ、人が近くにいたら、もっと妖精のことが広まっていてもおかしくはないし。

そんな話をしていると、ドアがノックされ、ララさんが入ってくる。

「ノアお嬢様。クリフ様より、遠出することになったとお聞きしたのですが……」

ララさんの言葉が止まる。

ララさんの目の先には、わたしたちの周りを飛んでいる、プリメがいる。

「妖精……」

わたしたちはララさんにも説明した。

「そうですか。それでノアお嬢様が妖精を探しに行くのですか。お伽話かと思っていたのですが、本当に妖精はいたのですね」

ララさんはプリメを見る。

「でも、誰彼構わず、プリメの姿が見えるのは面倒くさそうになるね。人によって、見えたり、見えなくすることはできないの?」

今回はララさんだったからいいけど。見知らぬ人に見られる可能性もある。

ララさんのセリフからすると、妖精はおとぎ話レベルみたいだ。もし、プリメを見られでもして、その人が言いふらしでもしたら、大変なことになる。

「そんな、都合よくできるわけがないでしょう。あなたの魔力を使って他の人にも見えるようにしているだけなんだから」

「使えないね」

「なによ」

プリメは頬を膨らませる。

「そういうことでしたら、少々お待ちください」

ララさんは一度部屋をでる。

「なんでしょう」

「さあ」

ララさんは、なにかを持ってすぐに戻ってくる。

「こちらの中に隠れるのはどうでしょうか」

女の子が持つような可愛いポシェットだった。

「ノア様が普通の服装ということなので、持っていても違和感はないと思います」

「わたしに、この中に入れってこと?」

「ダメでしょうか?」

「人前に出るときは、ユナから魔力を止めればいいだけでしょう」

「そのときは、わたしはプリメさんが見えないし、お話もできないんですね」

ノアは少し寂しそうにする。

「うぅ、わかったわよ。その中にいればいいんでしょう」

「プリメさん、ありがとうございます」

「ふっ、別にあなたのためじゃないわよ。あなたと会話ができないと、お姉ちゃんのことを聞くときに、面倒なだけよ」

わたしの脳裏にツンデレって言葉が浮かぶ。

「それで出発はいつになさるのですか?」

「わたしとしては、すぐに出発したいから、明日で大丈夫?」

「お任せください。明日までに準備をいたします」

ララさんに任せておけば大丈夫だろう。