軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

641 クマさん、フィナを応援する 一回戦終わりと二回戦開始

フィナの番号と名前が呼ばれた。

「お姉ちゃんの名前が呼ばれた!」

「ふぅ」

シュリは大喜びし、ティルミナさんはホッとした表情をする。

フィナがわたしたちに向けて、小さく手を振ってくれる。シュリは大きく手を振り返し、わたしは手を上げる。

解体し終えた順位を考えれば、一回戦突破は確実と分かっていたけど、やっぱり名前を呼ばれるまで不安だった。

「フィナちゃん、解体が出来るのは知っていたけど、ここまで上手だったのね。お金目的で参加する人もいるけど、それなりに自信がある人が参加する中で、13位は凄いわ」

エレローラさんが感心したように口にする。

「お金が出るの?」

「あら、サーニャから聞いていないの? 自分が解体した素材が売れた場合、一部のお金が入ることになっているわ。臨時収入みたいなものね。だから、上位に行けば行くほど、お金が入ってくることになるわよ」

上位にいくほど、お金が入ってくることを考えると、賞金みたいなものかな。

参加者を集めるには必要かもしれない。

そして、進行役の男性によって、60位までの番号が呼ばれたようで、参加者は一喜一憂している。

番号を呼ばれた人は様々な反応をする。合格が当たり前だと思っている者は反応がなく、小さくガッツポーズをする者。60位ギリギリで番号と名前を呼ばれた者は大きく喜ぶ。

進行役の男性が紹介した女性冒険者と受付嬢の女性は無事に一回戦を突破したみたいだ。ほかにも何人か女性が一回戦を突破している。

わたしより、少し年上なだけなのに凄いものだ。

まあ、一番凄いのは、うちのフィナだけど。

「それでは、一回戦を突破した60人は30分の休憩後、二回戦を始めますので、少しお待ちください。一回戦落ちした人は、係員より採点用紙を受け取り、どこが悪かったのかを正しく理解して、解体技術を磨いてください。そして、来年には成長した姿での参加をお待ちしています」

それぞれが係員より採点用紙をもらう。

騒いだり、文句を言う人はいないみたいだ。

まあ、冒険者ギルドが仕切っているし、冒険者ギルドに喧嘩を売る者もいないだろう。

そして、参加者は一度解散になる。

フィナを見ていると、フィナの周りに人が集まり出す。

もしかして、生意気な小娘とか、貴様のせいで落ちたとかいちゃもんをつけたり、集団リンチとか。冒険者ギルドに文句を言えないから、本人に直に!?

わたしが飛び出そうとしたら、握手をしたり、フィナの頭に手に置いたり、楽しそうに会話を始める。

どうやら、好意的に見られているみたいだ。

「あら、フィナちゃん。大人気ね」

エレローラさんが囲まれるフィナを見ながら、微笑む。

そうだよね。普通に考えれば、こんなに人が見ている中、集団リンチなんてするわけがないよね。

そもそも、サーニャさんが許すわけがないし。

でも、集団リンチじゃなくてよかった。飛び出して、全員をクマさんパンチの餌食にするところだった。

しばらくして囲まれていたフィナは解放されると、解説席にいたサーニャさんと一緒に戻ってきた。

二回戦の準備があり、その間は小休止だ。

「フィナ、お疲れ。一回戦突破おめでとう」

「ユナお姉ちゃん、ありがとう」

フィナは満面の笑みを浮かべる。

一回戦突破したことで、緊張は解けたみたいだ。

「フィナ、頑張ったわね」

「お姉ちゃん、おめでとう」

ティルミナさんは、フィナの頭を撫でる。シュリはフィナに抱きつく。

「でも、娘が解体しているところを見ているだけなのに、こんなに緊張するとは思わなかったわ」

ティルミナさんは胸をなでおろす。

「……お母さん」

まあ、母親が子供の学芸会とかを見る気分なのかもしれない。失敗しないか、我が子を見守る母親ってところだと思う。

「でも、本当にフィナちゃん、凄いわね」

「うん」

エレローラさんとシアもフィナが一回戦を突破したことで満面の笑みだ。

「それにしても、フィナちゃんの解体技術がここまで凄いとは思わなかったわ」

フィナの解体を見たことがなかったサーニャさんは、少し興奮気味に言う。

「でも、まだ一回戦突破しただけだから」

フィナは自分が「まだ」と言っていることに気づいていないみたいだ。つまり、もっと上を目指しているってことだ。

「なに言っているの、13位よ! それがどれだけ凄いことかわかっているの!?」

サーニャさんはフィナの肩を掴んで揺らす。

「もし、62番ぐらいだったら、わたしの権限で一回戦を突破させようと思っていたのに、13位だから、そんなことをする必要もなかったわ」

「それって職権濫用じゃ」

「別に60番目の子を落とすわけじゃないわよ。点数制だから、ちょっと、フィナちゃんの点数を上げて、同点にすればいいのよ」

「だから、それが職権濫用だと思うよ」

「わたし、ギルドマスターだからいいのよ」

悪人がいるよ。

権力の悪用だ。

まあ、必要悪って言葉がある。盛り上げるためなら、多少の悪事も許されるかもしれない。

もっとも、フィナの実力があったから、今回は必要なかった。

「でも、13位なんて、本当に凄いわね」

「ユナお姉ちゃんが、たくさんのウルフを解体させてくれたから」

孤児院で食べたり、お店で使ったりするので、ウルフの解体をすることが多い。それに、わたしが一番多くウルフを持っているのも一つの理由だ。

「ふふ、でも、予想以上に大成功ね。みんな、フィナちゃんを見ていたわ。フィナちゃんのおかげで、盛り上がったわ」

「盛り上がったといえば、あの進行役の人、上手だったね」

口から流れるように、次から次へと言葉が出ていた。

ある程度、勉強をしていないと出てこない。参加選手の資料も確認済みなのかもしれない。何より、頭の回転が速い。もしくは、考えるより、口が動くタイプ。

「あの人はいろいろなイベントの進行役をしているのよ。だから、この手の盛り上げ方は上手なのよ」

どうりで手慣れた感じだったんだね。

もし、わたしがやれと言われても、絶対にできない。人には適材適所って言葉がある。

わたしの適材適所の場所は引きこもりだ。と言いたいけど、最近、引きこもっていないような。

「エレローラ様、フィナちゃんのことを教えていただき、ありがとうございました」

「わたしも、ノアとシアから聞いただけだったから、ここまでフィナちゃんが凄いとは思わなかったわ」

「フィナちゃん、本当にありがとうね」

フィナはみんなから褒められて恥ずかしそうにする。

でも、この解体技術は病気の母親と幼い妹を養うために、血と汗と涙で手に入れた技術だ。

わたしはフィナの頭に優しくクマさんパペットを置く。

「ユナお姉ちゃん?」

「フィナは凄いなと思って」

解体に限ったことじゃないけど、こんな小さい女の子が頑張っているなら、見ている人も負けられない気持ちになるかもしれない。

「ううん、ユナお姉ちゃんが、たくさん、わたしみたいな子供に解体をさせてくれたからだよ。ユナお姉ちゃん、ありがとう」

フィナが微笑むので、わたしも微笑み返す。

可愛い。妹がいたら、こんな感じなのかもしれない。

何か、いいふうに聞こえるが、11歳の女の子にたくさん解体の仕事をさせていると聞くと、とんでもない人間にも聞こえるから困る。

そして、短い休憩も終わり、二回戦が始まる。

「フィナ、頑張って」

「お姉ちゃん、頑張ってね」

「フィナ、行ってらっしゃい」

「フィナちゃん、頑張って」

「フィナちゃん、応援しているわ」

わたしが声をかけると、みんなも声をかける

あまり、プレッシャーをかけるのもよくないし、頑張っている人に頑張れと言うのはよくないのは分かっているけど、応援する言葉しか出てこないから仕方ない。

それに頑張らなくてもいいなんて言えない。

でもフィナは、みんなの言葉を受け止めて「うん、頑張ってくる」と言うと、サーニャさんと行ってしまう。

「みんな、しっかり休んだか!」

進行役の男性が声を上げる。

「次の解体は一角ウサギだ!」

係員によって、台車に乗せられた一角ウサギが運ばれてくる。

「一角ウサギもウルフに続いて、解体することが多い魔物だ。またかと思うかもしれないが、このぐらい素早く綺麗に解体ができないと一人前とは言えないぞ!」

一角ウサギはウルフほど数は多くはないが、よく見かける魔物だ。頭にある角が長く、直線上にいると飛び跳ねる力を利用して、角で突き刺してくる危険な魔物だ。

しかも、左右に飛び跳ねながら移動するので、倒すのも困難だと言われている。わたしの場合は魔法で一発で終わっちゃうけど、新人冒険者にはウルフより難しい魔物と言われてる。

「二回戦突破は40人だ。簡単な魔物だからと言って、手を抜くと二回戦突破できなくなるぞ。一生懸命にやる女の子に負けずに頑張れ!」

盛り上げるためとはいえ、あまり参加者をけしかけないでほしい。フィナの二回戦突破の可能性が下がってしまう。

一角ウサギがそれぞれの解体するテーブルの上に載せられる。

「それでは一角ウサギの解体、始め!」

進行役の男性の合図で一角ウサギの解体が始まる。