軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

640 クマさん、フィナを応援する 一回戦

司会者の開始の声と共に参加者が動き出し、フィナもウルフの解体を始める。

「一斉に始まりました! 去年優勝した1番デッド君は二連覇を狙います。デッド君は今年で19歳。来年は19歳以下に出場することはできません。最後に優勝し、二連覇をして、来年のベテランの部に出場したいそうです。ですが、それを阻止したいのが11番の去年二位のガルド君。年齢はデッド君の一つ下の18歳。デッド君の勝ち逃げをさせないためにも、今年こそ勝ちたいところだ!」

進行役は上手に参加者のプロフィールを言っていく。

そのおかげで会場は盛り上がっている。

番号を言ってくれるので、テーブルの横にある番号が書かれている旗のおかげで、どこを見ればいいのか分かるのがありがたい。

「他にもデッド君とガルド君に負けないため、この一年技術を磨いてきた者たちもいる。勝負の行方は誰にも分からないぞ!」

他の人に目を移すと、負けじと解体をしている。参加を希望するだけのことはあって、みんな上手だ。

「おっと、そんな参加者の中、負けない素早いナイフ捌きでウルフを解体する人物がいるぞ! 番号は51、えっと、資料は」

何か、探し出す進行役の男性。

「えっと、名前はフィナちゃん。最年少の11歳の女の子だ。出身地は不明、うちのギルドマスターの推薦だ。そんなわけで、ギルドマスターに聞きましょう。フィナちゃんはどんな女の子なんでしょうか?」

進行役の男性は少し離れた位置に座っているサーニャさんに振る。

打ち合わせがあったようにテンポよく流れていく。

サーニャさんは進行役の男性が持っているのと同じ、声を大きくする拡声器を持つと、話し始める。

「フィナちゃんは幼いときから、解体をして家族を支えていた女の子。だから、この11歳という年齢で、解体技術を身に付けたのよ」

「泣ける話です。むさ苦しい男どもの中に咲いた一輪の花。頑張ってほしいものです」

進行役の男性がそう言うと、解体をしている女性たちから文句の声があがる。

「ここにも可憐で綺麗な花がいるでしょう!」

「そうよ」

もちろん、男性だけではなく、女性も参加している。フィナが一番若いってことは正しい。

「これは失礼いたしました。冒険者からは新人冒険者のクレアさんが参加しています。女性メンバーのみですが、メキメキと頭角を現している冒険者です。この女性冒険者メンバーを狙っている男性冒険者も多いことでしょう。わたしもその一人です」

会場が笑いに包まれ、盛り上がる。

他にも女性冒険者が何人か参加している。

もちろん冒険者だけでなく、冒険者ギルドの制服を着て参加している女性もいる。

「他にもギルド職員から参加しているエリザちゃん。彼女は受付嬢をしながら、時間があると解体までする女の子。頑張ってほしいものです。他の可憐な綺麗な花たちも男性に負けずに頑張ってもらいましょう」

口が上手だ。

ナンパ師になれそうだ。

「サーニャさん、フィナのこと詳しく知っていたけど、エレローラさんに言われるまで、フィナが解体できること知らなかったはずだよね。もしかして、エレローラさんが話したの?」

わたしは一番疑わしい人物に視線を向ける。

「わたしじゃないわよ」

エレローラさんは否定する。

「それじゃ、どうして?」

わたしの質問に、小さく手を挙げる人物がいる。

「えっと、たぶん、わたしかしら? 先日、お茶に誘われたときに、フィナがどうして解体ができるかの話になったの。それで……」

犯人は母親のティルミナさんだった。

これは盲点だった。

「ほら、フィナが恥ずかしそうにして、手が止まっているよ」

「あら」

「あらじゃないよ」

みんなの視線を受けて、フィナの手が止まってしまった。

「お姉ちゃん! 頑張って!」

シュリが大きな声を出して応援する。そのシュリの応援で、我に返ったフィナの手が動き出す。

「おっと、会場から妹さんの声援が飛びました。可愛い姉妹だ」

そのコメントによって、またフィナが恥ずかしそうにする。

「そんな家族思いの女の子が参戦です。大きなお兄さんも、お姉さんも負けずに頑張りましょう」

さらにフィナに注目が集まる。

そして、解体は進む。

初めは進行役の男性のせいで緊張していたフィナも黙々と解体をしている。

その解体には迷いはない。

ウルフの解体は、わたしが知っているだけでも、何百とやってきたはずだ。

そのフィナがウルフの解体ができないはずがない。

できないとすれば、プレッシャーを受けてだと思う。

フィナのことをジッと見ていると、進行役の男性が声をあげる。

「おっと、早いもので、一体目のウルフが終わった人も出たみたいだ! 前回優勝したデッド君だ。だが、すぐに追いかけるようにガルド君も二体目に入る」

どんどんと他の参加者も一体目のウルフの解体を終えていく。フィナはまだだ。でも、もうすぐ終わる。

「次々と、二体目に入るが、慌てて失敗したら、減点対象だから気をつけてください」

フィナが終えた。

それに進行役の男性も気づく。

「おっと、15番目に一体目のウルフを終えたのは最年少の女の子フィナちゃんだ! これは凄いぞ」

会場は盛り上がる。

やっぱり、小さい女の子が頑張っていたら、応援したくなるよね。

「フィナちゃん、凄いわね」

「お姉ちゃん、頑張って!」

「だが、今度は傷ついたウルフだ。先ほどのウルフとは違って、難易度が上がるぞ。フィナちゃんにできるのか!」

司会者が心配するが、フィナは傷ついたウルフの解体をしていく。

そのナイフの動きは迷いがない。

「何度も言いますが、速さだけでなく、丁寧かつ、綺麗に解体できないと、減点対象ってことを忘れずに。しかも、二体目の傷ついたウルフは解体は難しいので、急ぐと失敗するぞ!」

見ているだけで、手に汗を握る。

自分が負けず嫌いなところもあるせいか、やるからには優勝してほしい気持ちと、フィナには無理はしないでほしい気持ちが、わたしの中で葛藤している。

でも、フィナは負けるために参加しているわけじゃない。

「フィナ、頑張って!」

わたしも恥ずかしがらずに声をあげて、フィナを応援する。

フィナが真剣に頑張っているんだ。手を抜いてとは言えない。だから、応援をする。

「お姉ちゃん、頑張って!」

「フィナちゃん、頑張って!」

シュリもシアも声を出す。

気のせいか、フィナの動きが速くなったような気がする。

「上位60人に入れば、一回戦突破です。中には二回戦目を考えて、力を抜いている参加者もいるかもしれない。だが、そんなことでいいのか! ひたむきに頑張っている少女の前で、手抜きをするのか!」

進行役の男性の声で、全員の速度が上がったような気がする。

あの進行役の男性、煽るのが上手い。

でも、盛り上がっているのは間違いない。

フィナ以外の女性たちも頑張っている。フィナ以外だと、同性としては女の人を応援したくなる。

ウルフの解体は進んでいく。

終わりが近いのは、素人のわたしでも分かる。

「おっと、ここで優勝候補デッド君が手をあげた! 貫禄の一番手だ!」

確かに手を挙げている。

「ですが、何度も言っていますが、速いだけではダメです。解体にミスがあれば減点になりますので、1位とは限りません」

そして、少し遅れて、2人目が手を挙げる。

「次に手を挙げたのはガルド君だ。ガルド君、悔しそうだ。ですが、ここで一番をとっても、最終的な優勝には関わりないので、悔しがることはないぞ」

そして、次々と手を挙げていく。

フィナは!?

フィナも終わりに近づいている。そして、解体を終えて、手を挙げる。

「おっと、ここでフィナちゃんが手を挙げた! 13番手だ。先ほどは1体目は15番目だったのに、二人抜いて、13番目に終えた!」

観客席が盛り上がる。

一回戦突破は60名だから、余程の減点がなければ一回戦突破は間違いないはずだ。

そして終わった者から、採点が始まっていく。

解体された毛皮、肉、いろいろだ。

そして全員が解体を終え、採点の集計が始まる。

「緊張しているのは60番前後に解体を終えた選手か、このあたりは採点で前後しますからね。もっとも、上位に解体を早く終えた選手も解体の状態が酷ければ下位に落ちます。売り物にならなければ、0点ですからね」

それはそうだ。素材を売るために解体をする。売り物にならなければ、0点。いやマイナスだ。

本来は金貨1枚だとしよう。でも、それは冒険者たちが命をかけて魔物と戦い討伐してきたものだ。それが無となる。

またはギルドが冒険者から買い取る。それが解体を失敗して、利益が0となれば買い取った金額分マイナスになる。

「それでは、番号と名前を呼ばれた者が二回戦進出だ!」

「お姉ちゃん、何番?」

「51番だよ」

「まず、1位は1番、デッド君」

拍手と歓声が上がる。

「順位の変動はなかった。そして、2位は11番ガルド君」

この辺は予想通りって感じだ。

問題はフィナが解体を終えた13番前後だ

それから、順位と番号と名前が呼ばれていく。

「11位……番……君、12位……番……君」

進行役の男性が順位と番号と名前を読み上げていく。

フィナは、まだ呼ばれない。

ティルミナさんは手を強く握り締めている。シュリは何度も「51番」と口にしている。

呼ばれるとしたら、そろそろだ。

「13位、51番、フィナちゃん」

フィナの番号と名前が呼ばれた。