軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

637 クマさん、魔物を渡す

昨日は緊急の依頼などで、コカトリスを渡すタイミングを逃してしまったので、再度冒険者ギルドを訪れる。

「ユナちゃん、いらっしゃい」

冒険者ギルドに来ると、受付嬢がすぐにサーニャさんを呼んでくれる。

トラブル回避なのか、サーニャさんに言われてなのか、行動が早い。前者でなく、後者であることを願う。

「ユナちゃん、何度も手間をかけさせてごめんなさい」

昨日はいろいろあって遅くなってしまったから仕方ない。

「それじゃ、ユナちゃん、こっちに来て」

サーニャさんが歩き出すので、その後ろを付いていく。王都の冒険者ギルドは大きい。冒険者が集まる場所から離れ、通路を歩く。

サーニャさんはこの王都の冒険者ギルドのギルドマスターをやっているというんだから、本当に凄い。もっとも、そんな凄い人には見えないんだけど。

「そういえば、デボラネって帰ってきた?」

「受付にはデボラネがギルドに来たら、わたしを呼ぶように伝えてあるけど、まだ連絡はないわね」

まあ、昨日のことだ。処理や色々と話し合って村に残っているのかもしれない。

「あと、ギルド職員を村へ行かせることにしたから、連絡はあると思うわよ。戻ってきたら教えようか?」

「別にいいよ。もし、デボラネが村のためにお金を使わなかったら、教えて」

そのときは、クマパンチが待っている。

会話をしながら通路を進み、サーニャさんは大きな扉の前で止まる。そして、扉の近くの壁に嵌められている拳ほどの大きさの水晶に触れると、扉が開き始める。

「こっちよ」

扉の先は地下への階段が出てきた。

サーニャさんが地下に降りていくので、その後ろを付いていく。

「どこに行くの?」

「地下に保管部屋があるのよ。コカトリスは、そこでお願い」

階段を下りると、体育館ぐらいの広さがある。

「冒険者ギルドの地下にこんな場所が」

「ふふ、普通の冒険者は滅多に入れない場所なのよ。貴重な魔物を討伐したときなど、この場所に出してもらって、保管するのよ」

「保管なんてできるの?」

「ユナちゃんのアイテム袋もできるんでしょう?」

「できるけど」

わたしのアイテム袋は神様からもらったものだ。だから、できるのはなんとなく分かる。

「それと同じようなものよ。魔法陣、魔道具を使って、保管しているのよ。保管している理由は様々だけど、今回のようなイベントで使ったりするために保管したり、城の研究機関と魔物の研究するために保管したりしているわ」

「研究、そんなことをしているんだ」

「魔物を調べて、弱点などが分かれば、次に戦うときに楽になるでしょう。どの箇所のダメージが大きいとか、この箇所は攻撃を受けているのに、ダメージは受けてないとか」

ゲームでもあったね。その部位は20%の攻撃しか通らないとか、ここは弱点だから80%のダメージが通るとか。

魔法耐性などもある。火、水、風、土、電撃、どの耐性が強いのか、弱いのか。刃が弱点なのか、槍のように奥まで突き刺さないといけないのか、ハンマーのような鈍器が有効なのか。見ただけでは分からないこともある。見た目が炎系とか水系の魔物とかなら、分かりやすいが、そうでない魔物は弱点が分からない場合が多い。

ゲームの攻略サイトを見ていたわたしには、その重要性はよく分かる。

「それは冒険者ギルドとしても国としても、魔物の弱点は貴重な情報なのよ。まあ、研究されるような魔物は一生のうちで何度も出会うことはないけど、未来は分からないからね。もしかすると、今日、研究されたことが数十年後に役に立つかもしれないし、一生役に立たないかもしれない。でも、明日役に立つかもしれない。そればかりは分からないことよ。でも、現れた場合、知識があるのとないのとでは、倒せる確率は違うし、なにより生存の確率が変わってくるわ」

知識はそれだけ、大切ってことだ。

ゲームだって、敵の情報を知っているのと知らないのでは、勝率は変わってくるし、勝てたとしても、戦う時間も違う。

「それじゃ、コカトリスをここに出せばいい?」

「ええ、お願い」

わたしはコカトリスをクマボックスから出す。

倒したときのままだ。

「ありがとう。それで、昨日確認を忘れていたけど。他に持っている魔物ってあるのかしら?」

サーニャさんが微笑みながら尋ねてくる。

「…………」

わたしはゆっくりとサーニャさんから目を逸らす。

「ふふ、やっぱり持っているのね。なにを持っているのかしら? ほら、ユナちゃん出して」

サーニャさんが悪い顔をしながら近寄ってくる。

「だって、渡したら、素材も全部持っていかれるんでしょう」

今のわたしにはお金はいらないけど、ゲーマー心が素材だけは渡したくないと言っている。(蜘蛛は除外)

コカトリスだって、渋々と了承した。

「素材の件はユナちゃんの希望通りにするから。でも、一部は譲ってほしいかな」

サーニャさんは手を合わせながら、お願いをする。

コカトリスと同じってことだ。

まあ、いつかは解体して、素材にしようと考えていた。いくら保存ができるからといって、そのままクマボックスに入れていても仕方ない。

流石にフィナに大きいスコルピオンを解体してもらうわけにもいかないし。

「わかったよ。素材の件はもちろんだけど、もう一つお願いがあるかな」

「なに? もちろん希望はできるだけ聞くわよ」

「解体するところ、フィナに近くで見させてあげて」

フィナが今後、解体するかは分からないけど、解体するところを見るのは勉強にはなるはずだ。もちろん、無理強いをさせるつもりはない。フィナの気持ちを尊重するつもりだ。

「そんなことでいいの?」

サーニャさんは、わたしの条件を呑んでくれたので、わたしは持っている魔物をサーニャさんに教える。

魔物一万の時の魔物とコカトリスを除外すると、ワイバーン、アイアンゴーレム(これは解体は無理)、ヴォルガラス、スコルピオン、巨大なスコルピオン、サンドワーム、かまいたち。

「…………はぁ」

わたしの話を聞いたサーニャさんはため息を吐くと、信じられないといった顔をする。

「どこに、そんな数の魔物と遭遇して、戦って、倒して、持っている冒険者がいるのよ」

サーニャさんの目の前にいるよ。

「ウルフの数もそうだけど。ワイバーンだって、何度も遭遇するものじゃないわよ」

「それに、スコルピオンの大きいのって、二倍や三倍じゃないのよね」

めちゃくちゃ大きかったよ。

三階建ての建物ぐらい?

「ユナちゃんって、ブラックバイパーや黒虎、ゴブリンキングに、キングスパイダーも倒しているのよね」

さらには、クラーケンやオロチも倒している。言わないけど。

素材は持っていないし、倒したと知られると、さらに面倒臭いことになる。

「よく、それだけの魔物と出会って命があったわね」

わたしもそう思うよ。

まあ、生きているのも、倒すことができたのも、神様がくれたクマ装備のおかげだ。だから、脱げずに困っている。

温度管理から、攻撃から防御まで、アイテム袋もあり、くまゆるとくまきゅうも召喚でき、至れり尽くせりだ。

見た目さえ気にしなければ、最高の装備だ。

……そう、見た目さえ気にしなければ。

「そういえば、ユナちゃんの冒険者ランクって?」

「……C」

「えっ、どうして? なんで?」

「魔物一万のことや、スコルピオンやサンドワーム、コカトリスのことは報告してないし」

大型魔物については報告をしていないし、口止めをしている。ランクが上がるわけがない。

「そうだったわね。ごめんなさい。コカトリスは完全にわたしのミスだわ。国王陛下もスコルピオンのことを黙っているなんて。それじゃ、後でBランクの手続きをしましょう」

「別にCのままでいいよ」

「どうして?」

「Cでも、信じられない目で見られるのに、Bになっても誰も信じてくれないよ」

「それは仕方ないけど。ユナちゃんが実力あるのは間違いないでしょう?」

「それに、ここに来たときに、ランクのことで冒険者に絡まれたでしょう?」

わたしがCランクだから、わたしを倒せばランクCだと言って、絡んできた冒険者がいた。その冒険者には空を飛んでもらった。戦いを挑まれても面倒くさいだけだ。

ランクを上げるメリットがない。

ランクを笠に威張ったりするつもりはないし、高ランクだからと言って、無理難題を頼まれても困る。わたしのモットーは自由だ。

「わかったわ。無理矢理ランクを上げたりはしないわ。でも、いつでもランクを上げられるようにしておくことぐらいはいいでしょう?」

「まあ、そのぐらいなら」

「それじゃ、次は魔物の交渉をしましょう」

冒険者ギルドのギルドマスターなのに、商売人のような表情をする。

だてに長いこと冒険者ギルドのギルドマスターをしていないってことだろう。

「魔石は譲らないよ」

それから、大きなスコルピオンはジェイドさんに教わった価値がある部位なども断る。そんな感じで、わたしとサーニャさんは魔物の交渉をし、お互いが納得したところで、契約書を書く。

クマボックスには、フィナの解体用のウルフとアイアンゴーレム、それから一部の魔物が残った。流石にアイアンゴーレムの解体はできないからね。

「ユナちゃん、ありがとうね。お金はイベントが終わるまで待ってね」

一部は売ることになっているので、そのお金は貰うことになっている。

「別に急いでいないから、大丈夫だよ」

そして、帰る前にサーニャさんはわたしのギルドカードに何かをしてくれる。

カードを見ただけでは、変わったことは分からない。ギルドにある水晶板がないと見られないみたいだ。

「もし、他の場所でランクを上げたいときが来たら、その場所のギルマスにギルドカードを見せればいいからね」

そのときが来るか分からないけど、お礼を言って、クマハウスに帰る。