軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

617 クマさん、スライムと戦う その1

フィナたちをクリモニアのクマハウスの地下に移動させたわたしは、戻ってくると防壁にあがり、カガリさんを捜す。

カガリさんは、スライムがクマハウスに近寄らないように誘導するように飛んでいた。

スライムは町に広がり、スライムの中心が盛り上がっている。

例えるなら、巨大なプリンのようになっている。

素直に山でいいかな?

スライムの一部が伸びて、空を飛ぶカガリさんを捕獲しようとする。

カガリさんはスライムの攻撃?を上手に躱し、わたしのところにやってくる。

「カガリさん、大丈夫?」

「あのぐらい簡単に避けられるわい。それで、3人は?」

「安全なところに移動させてきたよ」

クリモニアのクマハウスの地下室だ。スライムに襲われることはない。

「そうか。それなら、安心してスライムの相手ができるのう」

流石に、3人がいては足手まといになる。

「それじゃ、魔道具探しを始めるとしようかのう。妾は上から魔道具を探す、お主は危険を冒さずに周りから探してくれ」

カガリさんは飛んでいく。

わたしは建物や前もって作っておいた円柱を足場にして、移動する。

クマ装備がなかったら、できない芸当だ。

下を見ると、地面にはスライムがうようよと動いている。

落ちたら、クマ装備でもどうなるか分からない。

フードの中にスライムが入ってくるのを想像しただけで、身震いする。

絶対に落ちたくない。

わたしがぴょんぴょんと、クマだけどウサギのように飛び跳ねながら移動していると、スライムの一部が腕のように伸びて、わたしを襲ってくる。

わたしはぴょんぴょんと跳びながら、スライムの攻撃?を躱したり、風魔法で切り落としたりしていく。

切られたスライムはただの水のように落ちていく。

本体から切り離すと、それほど脅威にはならないみたいだ。

ただ、スライムは切ってもダメージを与えられないみたいだ。

スライムのプリンの山を回りながら、魔道具らしきものを探す。

せめて、どんな形をしているか、分かればいいんだけど。

でも、スライムの中には青の魔石が無数にあるだけだ。

「うん?」

スライムの周囲を走っていると、拳ほどの大きさの四角い黒い物が浮かんでいるのを見つけた。

もしかして、あれが魔道具?

「カガリさん!」

「ユナ!」

わたしとカガリさんが同時にお互いの名前を叫ぶ。

「あったぞ!」

「こっちもそれらしいものがあったよ」

カガリさんがわたしのところにやってくると、四角い黒いものを見る。

「やっぱりか……」

「やっぱりって?」

「スライムに近づいて分かったが、妾の耳があっちこっちから、何かあると感じ取った。近づいてみたら、魔道具らしきものがあった」

「それって、つまり」

「スライムを操る魔道具が複数あるってことじゃな」

「でも、あの黒いので間違いないの?」

「間違いないじゃろう。あれと同じものが地下室に転がっていた。ただ、見つけたときは、ただの箱だったから、妾は重要性を感じなかったが。この目でスライムの中にあるのを見ると、あの黒い四角い物がスライムを操っている魔道具の箱じゃろう」

地下室は研究室にもなっていたし、スライムの体内でも溶けない、命令式を描くことができる入れ物をたくさん作っていたことは、十分にありえることだ。

「それじゃ、あの魔道具が複数あるってことは……」

「まあ、全て壊すしかないじゃろうな」

「全てって、何個あるの?」

わたしが尋ねると、カガリさんの耳が動く。

「はっきりした数は分からん。ただ、多いことは確かじゃ」

この巨大なスライムだ。その中から見つけるのはかなり困難な作業だ。

それをカガリさんが見つけられるなら、マシと考えたほうがいいかもしれない。

「とりあえず、攻撃じゃな」

カガリさんはスライムの中にある黒い魔道具に向けて、炎の玉を飛ばす。

スライムの体に入った瞬間、水の中に入った火のように消える。

「やはり、ダメか。普通のスライムなら、これで倒せるんじゃが」

「水みたいなものだから、火は効果がないのかも」

「それじゃ、水にはなにが有効じゃ?」

ゲームなら、水(青)属性だと緑属性が弱点なのが定番だ。緑だと風とか木とかゲームによって異なる。もちろん、弱点はゲームによっても違うし、現実でも違うことがある。

あと電撃も有効だ。

「風魔法?」

とりあえず、弱点ぽいことを言ってみる。

カガリさんは風魔法を放つが、スライムの体内の途中で止まり、泡と化す。

風の威力が弱まり、魔道具まで届かない。

「やはり、妾の魔法の威力が落ちておる。本来の力があれば……」

本来の力があっても、難しいかもしれない。

「今度はわたしがやってみるよ。カガリさんは、スライムの気を引いて」

わたしは距離を保ちつつ、手始めに魔法でサッカーボールほどの大きさの土の塊を作り出し、スライムに向かって放つ。

土の塊はスライムの中に入ると、まるでクッションに受け止められるかのように勢いがなくなり、スライムの体内で止まってしまう。

水が勢いを殺してしまっているみたいだ。

そして、土の塊は徐々に溶け出して、消えてしまう。

「どうして? 建物は溶けていないのに」

「魔力で作りあげたせいじゃろう。スライムにとって魔力は餌なのかもしれぬ」

「でも、わたしが作った柱は」

「いや、徐々に溶け出し始めているぞ」

カガリさんが視線を向けた場所を見ると、わたしが魔法で作っておいた柱の一部が溶けていた。

それじゃ、餌を放り込んでいるわけ?

試しに何度か土魔法を放つが結果が同じだ。

「これは、簡単にはいかぬかもしれぬのう」

カガリさんはスライムを見て、そんな感想を漏らす。

なんでもそうだけど、どんな生物だって弱点はあるはずだ。

全ての属性に耐える魔物はいないはず。

物理攻撃が有効な敵、魔法攻撃が有効な敵、火、水、土、風などの属性攻撃が有効な敵。

ラスボスにだって、攻略方法はある。

まして、スライムだ。絶対に攻略方法はあるはずだ。

「これならどう!?」

クマ魔法なら、簡単に溶けないはず。

わたしはクマをイメージし、土魔法でクマを作り出す。

「クマ、行け!」

土魔法で作りあげたクマがスライムの中に入ると、弧を描くように方向を変えて、プイっと不味いものが吐きだされるように、スライムの外に排出された。

吐き出されたクマは放物線を描くように飛び、建物にぶつかって、崩れていく。

「ちょ」

「どうやら、お気に召さなかったようじゃのう」

好き嫌いはよくないよ。

次にカガリさんが確かめた風魔法を使ってみる。

だが、空気弾はスライムの体内で止まり、水泡のようにゆらゆらと上がって、スライムの体内から出ていく。

クマの爪をイメージした風の刃を飛ばす。水の中にエアーカッターを飛ばしているようなもので、奥深くまではいかない。カガリさんの風魔法と同じように、途中で空気の泡となって消えていく。

風魔法は空気を飛ばしているようなものだ。水の中では浮力で上がってしまう。

本来なら優勢属性なのに、体が大きいスライムには弱点にはならないみたいだ。

「なら、炎のクマ魔法ならどう!」

水には効果が薄いけど、クマの炎なら、水を蒸発させることができるはず。

可哀想だけど、スライムを沸騰させて、クラーケンを討伐したときみたいに、茹であげてあげる。

わたしはクマの炎を作って、スライムに向けて放つ。

クマの炎がスライムの体内に入ると、土クマ同様にプイっと吐き出された。

建物がクマ魔法によって燃え始める。

美味しくないと思うけど、酷い。

体内を焼くほうが酷いというツッコミはなしだ。

次にクマ魔法が吐き出されないように操作しようとするが、土のクマはスライムの体内の奥に行けば行くほど、操作ができなくなり、最終的にプイっと外に吐き出される。

スライムの体が魔法の操作の邪魔をしている?

弱い魔法だと吸収され、クマ魔法などの強力な魔法だと、360度、どこからでも吐きだされてしまう。

ブラックバイパーやワームと違って、体のどこからでも不純物を吐き出せるって厄介かも。

次に氷魔法を試してみたが、表面の一部が凍って、氷のクマは動くことができなかった。

自分の周囲を凍らせて、自分は動けなくなる感じだ。

流石に、クマ魔法でも、表面ならともかく、これだけ大きいスライムとなると、中心深くまで凍らせることはできなかった。

「それなら、秘密技、電撃魔法」

わたしはクマさんパペットに電撃を集め、クマの形を作る。

スライムの中の魔道具に向けて、クマの電撃魔法を放つ。

クマの形をした雷がスライムの中に入っていく。

電流が魔道具まで届けば、破壊できるはず。

だけど、クマの電撃は放電するように拡散し、スライムの表面を走っただけだった。奥にある魔道具まで届いていない。

「あは」

笑いが出てくる。

これは想像以上にやばいかも。

クマ魔法や電撃魔法があれば、どうにかなると高をくくっていたけど。

まさか、効かないとは思わなかった。

巨大なスライムとなると、ここまで厄介になるとは思わなかった。

ワイバーンやブラックバイパー、クラーケンより、今まで戦ってきた魔物より、確実に厄介だ。

討伐はもちろん、スライムの体内にある魔道具を壊すことさえできない。

スライムは小さければ最弱かもしれないが、大きくなれば最強だ。

これで、環境に適した体に変化し、生きていけるんだから、最強の生物と言ってもいいかもしれない。

試しに、何発か電撃魔法を撃ち込んでみたが、奥にある魔道具まで電撃が届くことはなかった。