軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

618 クマさん、スライムと戦う その2

わたしとカガリさんは一度、スライムと距離をとる。

「ユナ、お主、他に方法はないのか? 変なクマの力を持っておるじゃろう」

「そういうカガリさんこそ、なにかないの? 狐でしょう」

「さっきも言ったが、妾は思っていた以上に力は戻っていない。簡単にいえば、空を飛びながら、魔法を使っても威力がでぬ。なにより、どう頑張っても、お主ほどの威力も出ぬからな。妾ではスライムの中にある魔道具を壊すことは無理じゃろう。スライムだからと甘く見ていたようじゃ」

それはわたしも同様だ。

まさか、ここまで魔法が効かないとは思いもよらなかった。

体内破壊をしようと思っても、すぐに吐き出されてしまう。電撃魔法を使っても途中で拡散してしまう。

実際のところ、クマ魔法や電撃魔法があるからと、楽観的に考えていた。

巨大なスライムがこれほどまでに厄介だとは思いもよらなかった。

ゲームだってこんなに大きなスライムと戦ったことはない。せいぜい、人と同じぐらいか、それより少し大きいぐらいだ。

町の一部とはいえ、覆い尽くすほどの大きいスライムなんて、戦った者なんていないと思う。

「さて、どうするかのう」

カガリさんが離れた位置にいるスライムを見る。

せめてもの救いは動きが思っていたよりも遅いぐらいだ。

本当に強さは見た目と比例しないね。

一番の問題はスライムの奥深くに行くと魔法操作ができないことだ。

遠くの魔法を操作をする方法……。

操作するって言葉で、シーリンの街でマリナたちとモグラ討伐したときのことを思い出した。

エルがモグラの穴に水魔法を入れて、魔法を操作していた。

ミサに、手から離すと操るのは難しくなるが、手と繋いだままなら操作はしやすいと説明した。

確かに言われてみれば、その通りだ。

「カガリさん、試したいことがあるんだけどいい?」

「ああ」

カガリさんに魔道具を探してもらい、わたしは魔道具が見える位置に移動する。

「この辺りでいいかな」

わたしはクマさんパペットからロープを作り出す。ロープと言っても土魔法で作ったものだ。

その土魔法で作ったロープ状の細い土をスライムに向けて伸ばす。

クマさんパペットの口から出たロープはスライムの中に入っていく。

溶けていくが、その度に魔力を込めて土魔法を補強していく。

そして、スライムの奥に行っても、わたしと土魔法は繋がっているので魔法の操作ができる。

まあ、簡単に言えば無線がダメなら有線でということだ。

ゲームでも、無線より有線のほうが調子もよかったし、切れることもなかった。

他にも例をあげれば、携帯のワイヤレス充電器だ。充電器台から離せば、充電はできなくなる。でも、ケーブルで繋がっていれば、どんなに離れていても充電はできる。

今回は、わたしが魔力を込める機械で、土魔法のロープがケーブルの役目をしている。

そして、無線で繋がらないなら有線で指示を与える。

そのケーブルのように伸びた土魔法がスライムの体内奥深くに入っていく。

どんなに奧に進んでも操作はできる。わたしは魔道具に向けて土魔法を伸ばす。

「なるほど、魔力を流し続けるわけか。魔力が大量にあるユナだからできることじゃな」

でも、意外と土魔法が溶けるので魔力を流し続けるのは辛いところだ。

だけど、土魔法で魔道具を掴んで握り潰せば終わりだ。

「あと、もう少し」

ロープのように伸びた土魔法が魔道具を捕まえようとしたとき、魔道具が動いた。

「避けた!?」

土魔法のロープは魔道具の横を通り抜ける。

わたしは土魔法のロープを引き戻すように魔道具に狙いを定めるが、またしても避けられる。

そして、最終的には視界から離れた奥に移動してしまう。

わたしは土魔法に魔力を込めるのを中断する。魔力を込められなくなった土魔法は溶けていく。

「守っておるのか?」

そうとしかみえない。

「じゃが、スライムに魔道具を守る知能があるとは思えんが」

「もしかしてだけど、作った人が壊れないように守るような命令式も一緒に作ったんじゃない?」

魔道具を大量に作っていたのだ。それだけ多くのスライムを操るつもりだった。通常のサイズのスライムとはいえ、魔道具が壊れでもしたら、大変なことになる。

「ありえるかもしれぬ。厄介なことをしてくれたものじゃ」

まあ、カガリさんの言う通りに、スライムに意思があり、魔道具を守っている可能性もあるけど。

それから、何度か試してみたが、遠くに移動されることが一番の問題だった。

距離が離れれば、追うことはできなくなる。

さらに、死角に入られると、なにもできない。

カガリさんが上から指示を出してくれるが、わたしのほうから見ることはできない。

移動するにしても、大回りをしないといけない。

魔道具を追うことができるのは、空を飛ぶことができるカガリさんだけだった。

あと、問題として、土魔法が長くなればなるほど、土魔法を守る部分が溶けないように魔力を注ぎ込み続けないといけないので、土魔法が長いほど魔力が減る。

「カガリさん、わたしを乗せて、空を飛ぶことはできる?」

スライムの中にある魔道具に攻撃することができるのはわたしだけだ。

そして、魔道具を追うことができるのは空を飛べるカガリさんだけだ。

なら、わたしがカガリさんに乗ればいいことだ。

「お主、幼女の妾に乗るつもりか?」

「いや、別に幼女姿のカガリさんに乗るつもりはないよ。短い間だけでも、あの大きな狐になってわたしを乗せることはできないかなと思って」

幼女姿のカガリさんに乗る趣味はない。

そもそも、幼女姿のカガリさんの上にクマの着ぐるみの格好したわたしが乗るって、絵面的に、人には見せられない。

「あまり、体調が戻っていない現状で、あの姿にはなりたくないのじゃが」

「ダメ?」

そうなると、他に案を考えないといけなくなるけど、すぐには思いつかない。

「……できないことはない。ただし、魔力をかなり消費するから、空を飛ぶこと以外は何もできぬぞ」

「わたしを乗せて、魔道具を追いかけてくれるだけでいいよ」

「分かった。それで、あの魔道具を壊せるなら、妾に乗せてやろう」

カガリさんは、了承してくれると、服を脱ぎ捨てる。

裸になったカガリさんの体が金色に輝き、体が変化していく。顔はとんがり、腕と足は動物の足になり、体は金色の毛に包まれ、狐へと変わっていく。それと同時に体も大きくなっていき、わたしが乗れるほどになる。

「ほれ、早く乗れ」

わたしは、カガリさんが脱ぎ捨てた服をクマボックスに仕舞うと、狐となったカガリさんの背中に乗る。

「いくぞ。しっかり掴まっておれ。スライムに落ちても助けることはできぬからな」

くまゆるとくまきゅうと違って、落下防止はついていない。

気をつけないといけない。スライムの中に落ちたら終わりだ。

カガリさんは、わたしを乗せて飛ぶ。

今更だけど、初めて空を飛んだかも。これがスライムを討伐するときじゃなければ、楽しんだのに。

くまゆるとくまきゅうと違って不安定だ。ちゃんと乗っていないと本当に落ちそうだ。

「あったぞ」

カガリさんの耳が動き、魔道具を発見する。わたしは、落ちないようにしっかりと足でカガリさんの体を挟み。クマさんパペットに魔力を込め、土魔法をロープのように伸ばし、スライムの中にある魔道具を追いかける。

すると、魔法が近づくと、先ほどと同じように避ける。

カガリさんに乗ったわたしは、魔道具を追いかける。

「どうして、そんなに速く動けるのよ!」

触れる瞬間に避けられる。

なかなか、捕まえることはできない。

土魔法が長くなれば長くなるほど、わたしが不利になる。

ならば、一本でだめなら二本だ。

わたしは、左右のクマさんパペットから土魔法を出し、魔道具を追い込んでいく。それでも、広いスライムの体内だ。

奥には行かせないで、スライムの表面に追い込む。

そして、逃げ場を失った魔道具をスライムの外に押し出した。

「やった」

あとはそのまま、壊すだけと思った瞬間、スライムの一部が体を伸ばして、魔道具を捕獲すると、魔道具を体内に戻してしまう。

一瞬の出来事で、カガリさんもわたしもなにもできなかった。

「もう一度じゃ」

わたしは同じように魔道具をスライムの外に弾きだすが、すぐに体内に取り込まれてしまう。

「ユナ、体内で捕まえることはできぬのか?」

「無理、魔導具の動きが速すぎるのと、魔法が長くなれば長くなるほど、溶けないように魔力を注ぎ込まないといけなくなって」

魔道具を追いかけてると、どうしても土魔法が長くなる。

長くなれば溶ける箇所も面積も増える。そうなれば魔力を増やさないといけない。

さらに、スライムの中のせいか、思っていたより魔法の操作が難しい。

水の中より、動きが鈍いような気がする。

あの独特なスライムの粘りが鈍くしているみたいだ。

「カガリさん、やっぱり魔法は使えないの? 飛び出した瞬間、魔法を当てるとか」

「この姿になって、空を飛んで、魔道具を追いかけるので精一杯じゃ。大蛇と戦う前だったら、そのぐらいできたんじゃが」

狐の耳が項垂れる。

なにか他に方法は?

わたしは両手で魔道具を追い込むのが精一杯だ。

わたしが空を飛べれば。

でも、クマは空を飛べないし。

空を飛べないブタはただのブタって名言があったけど。

本当に、空を飛べないクマはただのクマだよ。

「それじゃ、カガリさん。もう一人、乗せることはできる?」

「もう一人じゃと?」