軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

611 クマさん、今後のことを話し合う

くまゆるとくまきゅうに起こされることもなく、普通に朝を迎える。わたしの横では子熊化したくまきゅうが気持ちよさそうに寝ている。どうやら、スライムはやってこなかったみたいだ。

隣のベッドを見ると、フィナが珍しく、くまゆるを抱いたまま寝ている。カガリさんも子供らしい顔で寝ている。本当は大人とは思えない顔だ。

でも、いつまでも寝かせておくわけにもいかないので、2人を起こして、下の階に移動する。

フィナには、昨日と同様にミアとキャロルを起こしに行ってもらい、その間に朝食の準備をする。

何事も、朝食をしっかり食べてからだ。

お腹が減っては、いいアイディアも浮かばないし、いざ戦うにしてもお腹が減っては力がでない。

腹が減っては戦はできぬって言葉があるぐらいだ。

朝食がテーブルに並ぶと、フィナがミアとキャロルを連れてやってくる。わたしたちは朝食を食べながら、今後の話をする。

「スライムは来なかったの?」

「来なかったよ。実はこの家がスライムの中ってことじゃなければね」

わたしの冗談にミアが窓から外を見る。

「驚かせないでよ」

「冗談だよ。それに、くまゆるとくまきゅうがいるから、そんなことになる前に、教えてくれるよ」

ミアは通常サイズで丸くなっているくまゆるとくまきゅうを見て、安心すると椅子に座り直す。

「それで、どうするの?」

「このまま、この場所にとどまって、スライムの行動を確認する予定だよ」

フィナがミアたちを起こしに行っている間に、少しだけカガリさんと話し合った。

「どうして? 追ってこないってことは、もう安心ってことでしょう?」

「まだ、分からぬ。もしかすると、スライムは夜は寝ていたのかもしれぬ」

カガリさんがわたしの代わりに説明をする。

「スライムは寝るの?」

「そりゃ、スライムだって、休息はするじゃろう。魔物だって寝る。動き続ける生物なんぞ、稀だと思うぞ」

海の中には泳ぎ続けないと死んじゃう美味しい魚がいるね。

でも、カガリさんの言う通りに、動き続けることができる生物なんて、そうはいないと思う。

動けば疲れる。どんな生物でも言えることだ。だから、わたしとカガリさんは、もうすこしスライムの様子を見ることにした。

「それじゃ、夜に攻撃を仕掛けたら、あのスライムを倒せるってこと?」

「流石に、攻撃を仕掛ければ、スライムも動くと思うよ。ミアだって、寝ているときに襲いかかられたら、目が覚めるでしょう?」

「そうだけど」

もちろん、反応が遅かったり、目覚めるのが遅かったり、いろいろとあると思うけど、攻撃を仕掛ければ、間違いなく目を覚ますと思う。

もし、攻撃を仕掛けるとしても、前にわたしがワイバーンを倒したときみたいに、初撃で倒せる時だけだと思う。

寝ているワイバーンと起きているワイバーンとでは、どっちが楽に倒せるかと言ったら、当たり前だけど、前者のほうだ。

「それに、どうやって暗闇の中で戦うと言うのじゃ? 夜ってことは、妾たちも暗闇で戦うってことじゃぞ」

当たり前だけど、街灯はなく、光は一切ない。あるとしたら月や星の光ぐらいだ。雲があったら、暗闇と言ってもいいぐらい暗い。

その中で戦うのは危険だ。

「光魔法で照らして、戦えば」

「お主はバカか。光を照らせば、スライムだって起きるじゃろう」

「うぅ」

カガリさんの返答に、ミアは言葉を詰まらせる。

スライムが明るさをどうやって判断しているかは、実際のところ分からない。

光、温度、はたまた紫外線などの他のことで判断している可能性もあるけど、そんなことは知る由もない。

どっちにしろ、光の魔法で暗闇を全てカバーできるわけではないので、暗闇で戦うのだって危険なのは変わりない。

相手が起きれば、こちらのメリットは無くなる。逆にデメリットになる可能性だってある。

「あのう、もし、スライムが来なかった場合はどうするんですか?」

キャロルが静かに尋ねてくる。

「その場合は、ミアたちは自分たちの街に帰っていいと思うよ」

このぐらいの距離を離せば追ってこないと分かれば、街に帰っても問題はない。

「ユナさんたちは?」

「わたしたちは、あのスライムをどうにかするよ」

「どうにかするって、どうするのよ。ユナが強いからと言って、あんな大きいスライムを倒せるわけがないでしょう」

「昨日の夜にカガリさんと話したんだけど、スライムに試したいことがあるから、それを試してみるよ」

「もしかして、スライムを海の中に落とすってこと? それなら、わたしも考えたわよ」

ミアが自信満々に言うが。

「……」

「……」

「……」

部屋が静まり返る。

「スライムの体の多くが水分でできていることを知らぬわけじゃなかろう。そんなことをすれば」

カガリさんが呆れるように言う。

「想像もしたくないね」

「だから、ミアちゃん。昨日の夜に言ったでしょう」

「じょ、冗談よ。もしかして、そんなことを考えていたら、無理だと言うことを指摘してあげようと思っただけよ」

ミアは吹けない口笛をしながら誤魔化す。

絶対に本気だったよね。

でも、海水を取り込まなくても、スライムが溺死するとは思えない。

「それじゃ、どうするのよ?」

「方法は二つ。まず、あのスライムの中にある魔道具の破壊。スライムの中にある魔道具から浄化する命令が出ているなら、それを壊せば」

「つまり、スライムの中にある魔道具を破壊すれば、わたしたちを追ってこなくなるってことですか?」

「その可能性があるという話だよ」

実際はやってみないと分からない。

人間を浄化することが体に染み込んでしまって、命令が解けないってこともありえる。

「それで、もう一つの案は?」

「ミアが見つけた杖があったでしょう?」

「あの白骨死体が持っていた杖ね」

ミアは憎たらしそうに口にする。

「そう。その杖をもう一度使えば、スライムが止まる可能性だよ」

「それには、スライムをあの町に?」

キャロルはわたしが言おうとしていることを理解したみたいだ。

「スライムを連れて町に戻り、確かめてみる価値はあるじゃろう」

カガリさんはニカっと笑うと、ミアが立ち上がる。

「それよ! クリュナ=ハルクの杖でスライムの行動を止めたのも、動かしたのも、あの杖なら、もう一度使えばいいのよ。実はわたしも、そう思っていたのよね」

「嘘だね」

「嘘じゃな」

「えっと……」

「ミアちゃん……」

それぞれが、嘘と理解したみたいだ。

「ふふ、対処方法が分かれば、スライムなんて怖くないわ」

今まで暗かったミアの表情が、一気に明るくなる。

「それで、もしもの場合は、お主たちはどうする?」

「もしもの場合って?」

「もし、スライムが現れた場合のときに、この場に残るかどうかじゃ。先ほども言ったが、スライムが追いかけてくるにしろ、こないにしろ、妾たちはスライムの対処をするつもりじゃ。はっきり言って、お主たちがいても役に立たぬし、お主たちを守れるとは言い切れぬ」

自分の身を守れないのは危険だ。

わたしだって、守ってあげるとは約束はできない。

「そうだけど、そんなにはっきりと言わなくても」

「ですが、ここに残ったとしても、スライムがわたしたちのほうにやってくる可能性も」

キャロルが一番の心配事を尋ねてくる。

それも想定済みだ。

「わたしたちがスライムの近くまで行って、引き付けるから、大丈夫だよ」

スライムの近くを通れば、離れた位置にいるミアたちに反応はせずに、わたしたちを追いかけてくると思う。

遠くにある餌より、近くにある餌だ。

「ちなみに、フィナちゃんは」

「連れていくよ。フィナだけは、なにがあっても守らないといけないからね。わたしの傍にいてもらうよ」

クマの転移門で逃げるときに、フィナには傍にいてくれないと困る。

それに、ミアたちがいなければ、クマの転移門も気にしないで使うことができる。

「分かりました。スライムがやってきた場合、ここに残って、みんなを待っています。そのぐらいはいいですよね?」

「そうね。このまま街に帰ることもできないし、スライム討伐の報告を待っているわ。でも、倒せないと分かったら、逃げてきなさいよ」

「当たり前じゃろう。妾はまだ若いんじゃ、人生これからじゃ、スライムなんかに殺されるわけにはいかぬ」

そこは、カガリさんなりの気を使ったジョークなのかな?

笑うところなのかな?

見た目が幼女だけど、何百年も生きている長寿だし、狐だし、判断に困る。

でも、カガリさんの言葉には同意だ。

スライムに殺されるつもりもなければ、追い続けられる人生もお断りだ。

ミアとキャロルも見捨てるつもりはない。

「いざとなれば、妾が空を飛んで逃げることぐらいできる。それに、妾とユナは最高のパートナーじゃからのう。安心して任せておけ」

カガリさんが、わたしに目を向ける。

カガリさんとは共に和の国にいた大蛇と戦った。お互いの力を把握している。

問題があるとしたら、カガリさんが本調子ではないことぐらいだ。

でも、そのカガリさんの言葉に、くまゆるとくまきゅう、さらにはフィナまでが反応する。

「「くぅ〜ん」」

「わたしのほうがカガリさんより、ユナお姉ちゃんと長く……」

くまゆるとくまきゅうが抗議するように鳴き、フィナが小さい声で呟いている。

なにこれ、三角関係ではなく四角関係。くまゆるとくまきゅうを別々に考えると、五角関係?

いやいや、そんな泥沼関係はいらないから。

そして、わたしたちの願いも空しく、話し合いが終わるタイミングを見計らったように、くまゆるとくまきゅうが立ち上がり、外を見ながら「「くぅ~ん」」と鳴いた。