軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

610 クマさん、眠りにつく&ミア、眠りにつく

もしものことを考えて、わたしとフィナ、カガリさんは同じ部屋で眠ることにした。フィナはわたしやカガリさんと違って、戦う力がない普通の11歳の女の子だ。

「えっと、フィナはどうする?」

子熊化したくまゆると一緒に布団に入ろうとするフィナに尋ねる。

「どうするって?」

フィナは小さく首を傾げる。

どうやら、わたしの言いたいことが伝わらなかったみたいだ。

「クリモニアに帰る?」

今度は、わたしの言葉にフィナは驚く。

「ユナお姉ちゃんとカガリさんは?」

「ミアたちを見捨てて、帰るわけにはいかないから残るよ」

クリモニアに帰るときは、スライムを討伐したときか、スライムを討伐できずに、ミアたちを連れて逃げるときだ。

「そうじゃのう、とりあえず、命の危険が迫るまでは残るべきじゃろう。先ほども話したが、妾の責任でもある。できるかぎりのことはするつもりじゃ」

「カガリさんの指示とはいえ、杖に魔力を注ぎ込んだのはわたしだしね。でも、フィナは」

光の魔法を使ったからと本人は言ったけど、そんなことは残る理由にはならない。

でも、フィナは首を小さく振る。

「ううん、急にわたしが居なくなったら、ミアさんとキャロルさんがおかしいと感じるから、わたしも残ったほうがいいと思う。……でも、ユナお姉ちゃんが邪魔と思うなら……」

フィナはくまゆるを抱きながら、遠慮がちに言う。

フィナの言い分も正しい。いきなりフィナがいなくなれば、2人はおかしく思う。どうやって、帰ったのか、一人で帰らせたのとか、スライムが追いかけてしまうのではないのか。クマの転移門のことを話さないと、2人を不安にさせることにもなる。

それに、フィナは邪魔ではない。

どちらかというと、邪魔なのはミアとキャロルのほうだ。

「2人に説明するのも面倒だし、残ってくれるのは助かるよ。でも、危険と思ったときは、クリモニアに帰ってもらうよ」

フィナに危険が迫れば、クマの転移門のことを隠すより、フィナの命のほうが最優先だ。

「そうじゃのう。妾たちが危険と思ったときは、帰るんじゃぞ」

「約束できる?」

「うん!」

フィナは、素直に頷く。その表情は、少し嬉しそうに見えた。

「実際のところ、カガリさんはどうにかなると思う?」

「対処方法はいくつかあるが、できるかどうかは別じゃな」

「対処方法あるの?」

わたしとカガリさんの話を聞いていたフィナが尋ねてくる。

「まず、ユナが持っている杖にもう一度魔力を込めて、スライムの行動を止める方法じゃな。クリュナ=ハルクの魔道具が、町のどこかに設置されておるはずじゃ。だから、町に戻らねばならんがのう」

「それじゃ、ここでユナお姉ちゃんが杖に魔力を込めてもダメなんだね」

「そうなるのう」

「あとは、直接スライムの中にあるという魔道具の破壊じゃな。破壊すれば、人を浄化する命令がなくなるかもしれぬ」

命令がなくなれば、わたしたちを追いかけてこなくなる可能性がある。

「問題はあの巨大なスライムのどこに魔道具があるかじゃな」

ちょっとした、小さい湖の中から、探すようなものだ。

まあ、砂漠から小石を探すよりは楽だけど。

「見つけることができたとしても、壊すことができるかの問題もある。ノートに書いてあったが、魔法がスライムに吸収されたと書かれておった。妾たちの魔法が、スライムにダメージを与えられるか分からん」

当時の魔法使いのレベルがどのくらいのものか分からないけど、魔法が効かない可能性もある。

普通の魔法が効かなくても、クマ魔法なら、どうにかなるかもしれない。

「まあ、つまり、試してみないと分からないということじゃ」

「一番いいのは、スライムが諦めて、人がいないほうへ行ってくれることだけど」

「まあ、その辺りの判断は、今後のスライムの行動しだいじゃ。だから、今は休むとしよう。クマたち、もしスライムが来たら頼んだぞ」

カガリさんは、わたしが抱いているくまきゅうと、フィナが抱いているくまゆるに向かって頼む。くまゆるとくまきゅうは任せてと言っているように「「くぅ~ん」」と鳴く。

そして、カガリさんは、有言実行とばかりに、布団を被ると寝てしまう。

「わたしたちも寝よう。フィナも疲れたでしょう。くまゆるとくまきゅうがいるから、安心して寝てていいからね」

「……うん」

部屋を暗くし、今は休息を取ることにする。

ミア視点

布団に入ったけど、スライムのことが気になって、すぐに寝ることはできそうもない。

「キャロル、どうしようか」

わたしは布団を被りながら、隣のベッドにいるキャロルに尋ねる。

「うん、どうしようか」

キャロルから、わたしが問いかけたのと同じ言葉が返ってくる。

スライムから逃げる間もいろいろと考えていたけど、答えはでない。

「でも、倒す方法なんてあるのかな?」

「追いかけてくるなら、船に乗って海に出るとか? そしたら、海の底に沈んで死なないかな?」

海の底に沈めば死ぬかもしれない。

「スライムは水の中でも生きられるから、ダメだと思うよ。逆に、水を吸い込んで、でかくなるかも」

頭の悪いわたしが考えた方法は、すぐに却下される。

あの地下水で大きくなったんだから、十分にその可能性だってある。

「うぅ、今以上に大きくなったら、世界が終わるかも」

想像もしたくない。

「カガリたちは、わたしの責任でないと言っていたけど、わたしの責任だよね。わたしがヘシュラーグに来たから。わたしがお宝を探索しようとしたから」

原因を考えると、わたしが一番悪い気がする。

キャロルはわたしに付いてきただけだから、悪くはない。

「カガリちゃん……、カガリさんが言っていたけど。わたしたちが来なくても、あの2人なら、探索していたと思うよ」

「それじゃ、わたしの責任はないってこと?」

「ううん、わたし たち(●●) に責任はないとは言わないよ。実際にヘシュラーグに行って、カガリさんたちと会って、交渉して、あの部屋に行って、杖を見つけたんだから」

「そうだよね。でも、ユナの魔力がなければ」

わたしたちだけなら、杖は発動しなかったのでは、と考えてしまう。

ユナたちの前ではカッコよく責任はわたしにあるようなことを言ったけど、実際は自分には責任がないと思いたかった。心のどこかで、逃げたい気持ちがある。

もし、あのスライムが街を襲って、多くの人が死んだら、わたしはその責任に耐えられないと思う。だから、カガリがわたしの責任ではないと言ったとき、ホッとした自分がいる。

わたしの心は汚い。

だからといって、あんな化物みたいな大きなスライムを、倒すことなんてできない。

遠くから見ただけでも大きい。高さも横幅もある。あんなのどうやって攻撃するというんだ。

わたしのナイフじゃ絶対に無理だ。キャロルの魔法だって無理だ。わたしたちができることはなにもない。

無力だ。自分の力の無さを痛感する。

「なにもかも、あの研究者のせいよ。あの杖さえなければ、なにも起きなかったのに。最後まで責任を持ちなさいよ」

あの研究者の白骨死体が杖を持っていなければ、わたしが杖を見つけることもなければ、カガリがユナに魔力を込めさせることもなければ、ユナが杖に魔力を込めることもなかった。なにもかも、あの白骨死体の研究者のせいだ。

「でも、3人とも優しいよね。わたしたちを置いて、逃げることだってできるのに。逃げないで、わたしたちが乗ってきた馬のことまで心配してくれるし」

「あれは、お人好しの塊よ」

あのくまゆるとくまきゅうというクマに乗って走れば、逃げることも可能だと思う。

かなりの距離を、わたしたちを乗せて走り続けたけど、疲れた様子はなかった。

だから、わたしは「わたしたちを置いて逃げないのか」と尋ねた。

返答は優しいものだった。

ユナたちの力を借りて、お宝を手に入れることを考えていた、わたしの汚れた心とは違う。

あの、小さいフィナでさえも、光魔法を使ったからと、自分にも責任があるって言う。

本当に、3人ともお人好しだ。

だから、余計に、わたしの心が黒く見えてしまう。

「でも、カガリさんが狐だと思わなかったね」

「本当よ。いきなり大人になるし、狐の耳と尻尾が生えるし」

動物が人間になれるなんて、見たことも聞いたこともない。

「実はユナが本物のクマだったっていうほうが、まだ信じられるわよ」

わたしたちが倒せない甲冑騎士を簡単に倒すし、二頭のクマを従えているし、クマの格好をしているし、カガリが狐っていうより、ユナがクマってほうが説得力がある。

「ふふ、そうだね。実はユナさんが、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんみたいな、可愛いクマさんだったら、信じられたかもね」

その場合はユナがクマのお姫様になるのかな?

想像しただけで、笑みがこぼれる。

「あの3人の関係もよく分からないし」

「人になれる狐に、クマの格好をした女の子に、普通の女の子」

関係性が本当にわからない。

初めて会ったときに、すでに幼女と少女とクマって意味が分からない関係が、カガリが狐だったり、大人になったりしたせいで、余計に関係性が分からなくなった。

「でも、カガリみたいな子がいるって、世界は広いわ。わたしが知らないことがたくさん。もっともっと、世界を見てみたい」

「もしかすると、ミアちゃんのお爺ちゃんも、両親も、今のミアちゃんと同じ気持ちになって、冒険家になったのかもしれないね」

あの両親と同じと言われると、気分は悪くなるけど、お金のことを考えなければ、両親の気持ちも分かるかもしれない。

だからといって、わたしたち子供たちを放置していい理由にはならない。

カガリやユナの話をしていると、スライムのことを忘れ、徐々に眠くなってくる。

もしかすると、緊張してしていた糸が切れたのかもしれない。

キャロルの呼ぶ声が聞こえるが、返事をすることもできない。

「ミアちゃん、おやすみ」

わたしは心の中で、「おやすみ」と言うと眠りに落ちていった。