軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

592 クマさん、廃墟を探索する

壁の中に入り、探索しながら町の中央までやってきた。

どこも同じ風景が続き、壁は崩れていた。たまに建物の中に入って確認もしたけど、この町のことを示す物はなにもなく、分からないままだ。

骨になった人とか、あるかもしれないと思ったりしたけど、それもない。

「誰も町に住まなくなったら、こんな風になっちゃうんだね。なにか、寂しいです」

フィナが少し、寂しそうに見ている。

森などの自然に誰もいないのと、建物がある町に誰もいないのとでは違う。

経験はないけど、もしかすると、誰もいない学校でも、こんな気持ちになるのかもしれない。

「目ぼしいものはなにもないね」

「すでに誰かに持っていかれたのか。風化して消えたのか、分からぬが。つまらぬのう」

「とりあえず、あの大きな建物まで行ってみようか」

わたしは進む先に見える、大きな建物に目を向ける。

「偉い人が住んでいたのかな?」

「そうかもね」

お城とは言わないけど、それなりに大きな建物がある。

この廃墟の中で一番大きな建物なのは間違いないと思う。

「それじゃ、お宝があるかもしれぬのう」

「この町の状況を見ると、それも怪しいけどね」

この町が廃墟になって、一番初めに発見したのがわたしたちとは限らない。

「まあ、お宝がなくても珍しいものでもあれば、サクラへのお土産になるんじゃが」

それには同意だ。別にお金や宝石はいらないけど、珍しい物でもあると嬉しい。

そんなわけで、わたしたちは一番大きな建物に向かうことにした。

建物に向かっていると、わたしを乗せているくまゆるが小さく「くぅ〜ん」と鳴く。

「どうしたの?」

鳴き方が判断に困る。

危険を知らせる鳴き方ではない。でも、何かを知らせる鳴き方だ。

とりあえず、探知スキルを使ってみると、後ろに人の反応が2つあった。

いつのまに?

どうやら、このことを教えてくれたみたいだ。

わたしは教えてくれたくまゆるの頭に手を伸ばして撫でる。

横ではくまきゅうが羨ましそうに見ている。

後で撫でてあげるからね。心の中で言う。

わたしの気持ちが伝わったのか、くまきゅうは納得する。

歩きながら、探知スキルを見ていると、2つの反応はわたしたちの後ろを付いてくる。

さて、どうしたものか。ここはくまきゅうに乗るフィナとカガリさんに先に行ってもらい、わたしが対応するのが無難かな。

「カガリさん」

「先には行かんぞ」

「わたし、まだ、何も言っていないんだけど」

「先ほどから、お主のクマたちが後ろを気にしておる。それに、先ほど鳴いておったじゃろう。それと、お主はお礼と言わんばかりに、クマの頭を撫でた。そして、お主は後ろを軽く確認した。そうなれば、後ろから、何かが来ているから、妾たちを先に行かせようと声をかけたところじゃろう」

まるで、わたしの頭の中を覗かれているような、回答だ。

「だてに、年はとっていないね」

「つまり、正解ってことか?」

「……」

「ユナお姉ちゃん、本当なの?」

気づいていなかったフィナが、心配げに尋ねてくる。

「魔物か、人か?」

もう、誤魔化すことはできそうもないので、素直に答えることにする。

「人が後をつけているみたい」

「クマども、人数は分かるか?」

「2人だって」

面倒なので、わたしが答える。

「なら、お主と妾で処理をするか」

「処理?」

「カガリさん、言い方に気をつけて。フィナが驚いているでしょう」

「すまなかった。それで、実際のところ、どうするのじゃ?」

「とりあえず、危険かどうかは分からないから、会話だね。襲ってきたら、わたしとくまゆるで対応するよ。カガリさんとくまきゅうはフィナをお願い」

カガリさんは前に乗るフィナを見る。

「仕方ないのう」

「くぅ〜ん」

2人とも了承してくれる。

対応方針も決まったので、わたしたちを乗せたくまゆるとくまきゅうは歩みを止め、後ろを振り返る。

「後をつけているのは分かっているよ。出てきたら」

探知スキルで方角を確認して、そっちに向かって声をかける。

「ミアちゃん、バレているよ」

「落ち着きなさい」

「だから、後をつけるのはやめようって」

「だって、クマよ。しかも、白いクマなんて、珍しいでしょう」

「そうだけど」

周りが静かなせいもあって、女の子2人で話し合っている声がここまで聞こえてくる。

でも、そんなことを知らない2人は話し続ける。

「しかも、クマの上にクマが乗っているのよ。気になるでしょう?」

「だけど」

「もちろん、黒いクマに乗っている子供たちも気になるわよ」

「出てこぬのう」

カガリさんが「どうするのじゃ?」って感じでわたしを見る。

なので、もう一度、声をかけることにする。

「あのう、声、聞こえているんだけど」

「「……!?」」

話し声が止まる。

崩れた壁の後ろから髪を後ろに結んだ高校生ぐらいの女の子が出てきた。その女の子に隠れるように、もう1人の女の子も出てくる。年齢的には同じぐらいだ。

「ふふふ、気づかれているなら仕方ないわね。あなたたちは何者。いえ、尋ねるほうが先に名乗るのが礼儀ね」

自分から質問して、自分で答える女の子。

「わたしの名前はミア。冒険家のミアよ」

「えっと、わたしはキャロルです」

ミアと名乗った女の子は胸を張って名を名乗り、キャロルって名乗った女の子はオドオドしながら、名乗る。

「冒険家? 冒険者じゃなくて?」

「あんな、野蛮な冒険者と一緒にしないでもらえるかしら。わたしたちは、お宝を探す冒険家よ」

たぶん、格好いいと思っているポーズをとる。

「えっと、その冒険家がどうして、わたしたちの後をつけているの?」

「そりゃ、こんなところで、クマに乗ったクマの格好した女の子や、クマに幼女が乗っていれば、気になるでしょう。それに特に白いクマなんて、初めて見たわよ」

ミアと名乗った女の子はくまきゅうを見る。

「それで、え~っと。その白いクマの前に乗っているあなた」

ミアがフィナに指を差して尋ねる。

「わ、わたし?」

「そう、あなたよ。それで、あなたたちは、何者で、何しにここに来たの?」

今、わたしを見てから、カガリさんを見て、最後にフィナを見てから、話す相手を決めたよね。

まあ、わたしはクマだし、カガリさんは幼女で和服だし。

「えっと、それは……」

フィナが困ったようにわたしを見る。

尋ねられたのはフィナだけど、わたしが答えることにする。

「わたしはユナ。今、話しかけてた女の子はフィナ。その後ろに座っている幼女はカガリさん」

「幼女って言うな!」

わたしはカガリさんの言葉を無視して、続ける。

「わたしたちは、近くを散歩(タールグイの上に乗っていたら)してたら、ここを見つけたから、探索をしていただけだよ」

「散歩? わたしをバカにしているの? こんなところまで散歩にくる子供がどこにいるの?」

子供って、わたしも入っているの?

問い詰めたいところだけど、話が進まなくなるのでやめておく。

それに、こんなところと言われても、周辺についてはなにも分かっていないので、どのぐらい非常識なことなのか分からない。

「わたしたちには、この子たちがいるから、遠くても散歩ぐらいできるよ」

わたしはくまゆるとくまきゅうに目を向ける。

「「くぅ~ん」」

ミアはくまゆるとくまきゅうを見て、微妙な表情をする。

「分かったわ。それで、あなたたちはどこから来たの? クマの格好している人なんて見たことがないわよ」

まあ、この世界に着ぐるみを着た人なんていないよね。

「それは……」

「そこの幼女が着ている服も見たことがないし」

それって、和の国を知らないってことになる。

「まともそうな格好しているのは、その女の子ぐらいかしら」

ミアはフィナを見る。

「ミアちゃん、他人の服装に文句を言うのはよくないよ」

キャロルはミアの腕を掴んで止める。

「別に、文句は言っていないでしょう。可愛いと思うけど、見たことがないと言っているだけよ」

「そうだけど」

ミアは強気な女の子で、キャロルは大人しめな女の子って感じだ。

「とりあえず、服装については気にしないでもらえると助かるよ」

「まあ、服装についてはいいわ。それで、本当に散歩に来ただけなの?」

「だから、ここがどこなのか。何も分からないんだけど」

教えてくれると助かるんだけど、教えてくれるかな?

「なら、何も知らないなら仕方ないわね。それじゃ教えてあげる。ここはあのヘシュラーグよ」

と決め顔で言われても、分からない。

わたしはフィナとカガリさんを見るが、2人とも首を横に振っている。

どうやら、知らないのはわたしだけじゃないみたいで、よかった。

「ミアちゃん、普通の人は知らないよ。ほら、三人とも、『なにそれ』って顔をしているよ」

「えっ、魔道具の研究する人が集まってできた町、ヘシュラーグよ。常識じゃないの?」

「わたしたち冒険家は知っているかもしれないけど、普通の人は興味もなければ、滅んだ街のことなんて知らないよ」

なんか、コントを見ている感じで面白い。

「えっと、本当に知らないの?」

ミアが確認するようにわたしたちを見る。

「知らない」

「知らぬのう」

「ごめんなさい。知らないです」

わたしたちの返答にミアは信じられないものを見るかのような目でわたしたちを見る。

「まさか、ヘシュラーグを知らないなんて。なら、教えてあげる」

ミアはわたしたちに目を向ける。

「ヘシュラーグは魔道具の技術者が集まってできた町よ」

「魔道具の技術者?」

「ここにはそんな技術者が作った、未知の魔道具が眠っていると言われているわ」

「わたしたちはそれを探しに来たの」

「見つけて、売って、お金持ちになるのよ!」

ミアは手を高く上げて宣言する。

「そういうわけだから、あんたたちが、どこから来たのか分からないけど、わたしたちの邪魔をしないで、さっさと帰りなさい」

ミアは追い払うような仕草をするように手首を振る。

「だから、ミアちゃん。そんなことをしちゃダメだって。ミアちゃんがごめんなさい」

キャロルはミアの手を掴んで止めて、頭を下げて謝る。

「でも、残るなら、気を付けたほうがいいわよ。この街には謎が多く残されているから、危険な物もあるわ」

なんだかんだで、ここのことを教えてくれたり、忠告してくれるところを見ると、悪い子ではないみたいだ。

「本当は、小さい子もいたから、ミアちゃんは心配して後をつけてきたんです」

「それは言わないでいいのよ」

ミアはキャロルの口を塞ぐ。

「わたしは、クマが気になっただけよ。それじゃ、わたしたちは行くから、本当に気を付けて帰りなさいよ」

ミアはわたしたちの横を胸を張って歩き、わたしたちが進もうとした道を進んでいく。

キャロルはわたしたちの横を通るとき、頭を下げていく。

わたしたちは黙って2人を見送る。