軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

591 クマさん、新しい陸を発見する

昼食も食べ終わり、くまゆるに寝そべりながら、隣に座っているフィナを見る。フィナの髪の毛が海風によって揺れている。髪の毛、伸びたかな?

そんなフィナを見ていると、いきなりフィナが立ち上がり、遠くを見始める。

「フィナ?」

「ユナお姉ちゃん、陸が見えます」

島?

わたしは起き上がり、フィナが見ているほうへ目を向ける。

「本当じゃのう。陸が見えるのう」

わたしと同様に寝そべっていたカガリさんも起き上がって、フィナが見ているほうを見る。

たしかに、二人の言うとおりに陸が見える。

「ここはどのあたりなんじゃ?」

「動いているんだから、分からないよ」

「たしかに、そうじゃのう。それじゃ、あれは嬢ちゃんも知らない陸ってことじゃのう」

カガリさんが遠くに見える陸を見ながら、笑みを浮かべる。

「行ってみるか? 食後の運動にちょうどいいじゃろう」

カガリさんがそんなことを言い出す。

まあ、わたしも行ってみたい。新しい土地にはどんなことがあるのか、見知らぬ世界が広がる。楽しみでもある。

「でも、この島は動いているから、戻ってこられなくなったら」

フィナが心配そうに言う。

「クマの転移門は何個でも作れるから大丈夫だよ」

「そうなの?」

どうやら、魔道具だと思って、数の制限があると思っていたみたいだ。

「お主、非常識だと思っておったが、超非常識な存在じゃったんじゃな」

「何百年も生きたり、狐になったり、空を飛んだり、幼女になったりするカガリさんに言われたくないよ」

「幼女になったのは妾が好きでなったわけじゃない」

「わたしからしたら、どっちも信じられないです」

フィナの言葉に、わたしもカガリさんも否定することはできなかった。

一般常識を持つフィナからしたら、どっちも非常識な存在かもしれない。

戻ってこられることを知ったフィナとカガリさんから反対意見もでなかったので、見えた陸に行くことになった。

「それじゃ、くまゆる、くまきゅう、あの島に向かって」

「「くぅ〜ん」」

わたしたちを乗せたくまゆるとくまきゅうは、海の上に飛び込み、海の上を駆けていく。

タールグイは止まる様子もなく、進んでいく。お別れのようだ。と言っても、クマの転移門があるから、戻ってこられるけど。

わたしたちを乗せたくまゆるとくまきゅうは陸に向かって駆けていく。

徐々に陸が近付いてくる。

陸を見渡すが、港みたいな人が住んでいる場所は見えない。

わたしたちは砂浜を見つけ、そこから上陸する。

くまゆるとくまきゅうの反応がないから大丈夫だと思うけど、探知スキルを使って周囲を確認する。

うん、大丈夫みたいだ。

わたしを乗せたくまゆると、フィナとカガリさんを乗せたくまきゅうは歩き出す。

砂浜を越えると草原が広がる。

海からも港らしきものは見えなかったし、陸にあがっても近くに人がいる気配がない。

さらに興味を引くものも見えないので、どっちに行けばいいか分からない。

「どっちに行こうか?」

ここはフィナとカガリさんの意見を聞いてみる。

フィナは困った顔をするが、カガリさんは「ちょっと待て、見てくる」と言って、体を浮かび上がらせる。

どうやら、上から確認してくれるらしい。

空を飛べるのは、本当に羨ましい。

本当にクマのスキル、飛空とか欲しいものだ。

カガリさんは上空でぐるっと360度、見渡す感じで見ていると、一点で止まる。

「なにか、見つけたのかな?」

「そうみたいだね」

カガリさんが降りてくる。そして、フィナが乗っているくまきゅうの上に乗っかる。

「カガリお姉ちゃん、何かあったの?」

「向こうのほうに建物らしきものが見えたが、遠くてよく分からんかった」

カガリさんが指す方向は森が見える。

「あの森の奥の先じゃ。どうする? 行くか?」

別に、目的がある上陸ではない。

なにかあればいいなぐらいだ。カガリさんが何かを見つけたなら、行くしかない。

「まあ、せっかく上陸したんだし、行ってみようか?」

「うん」

「せっかく来たことだしのう」

わたしたちを乗せたくまゆるとくまきゅうは、カガリさんが指さした方角に向けて走り出す。

くまゆるとくまきゅうに、危険なことが近付いてきたら教えてくれるように頼み、わたしは目視で周りを見る。

「カガリさん、建物が見えたんだよね?」

「それじゃ、人がいるのかな?」

「それにしては、森に囲まれておったのう」

わたしたちは、森の中を進み、川を越え、道なき道を進んでいく。

そんなとき、周りを見ていたフィナが声をあげる。

「あっ、ユナお姉ちゃん、あそこ、道じゃないかな?」

フィナが指差す先を見ると、たしかに、道っぽいのがあった。

道っぽいというのは、長い間使われていなく、廃れていたからだ。

「これは、長い間、通った形跡はないのう」

カガリさんもわたしの考えと同じらしい。

「じゃが、この道を進めば、目的地にいけそうじゃ」

森の中を進むよりは進みやすいので、廃れた道を使って進むことにする。所々に木が倒れたりしていたが、くまゆるとくまきゅうは楽々と飛び越えて進んでいく。

そして、かなり進むと森を抜けた。そこには壁がそびえ立っていた。

「壁だ」

「壁じゃのう」

クリモニアや王都にあるような街を囲う壁みたいだ。

それじゃ、カガリさんの言う通りに、壁の中には建物があるみたいだ。

「でも、入れないよ」

フィナが本来入口だと思われる場所を見ている。入口は上から崩れ落ちたと思われる壁の一部が塞いでいるため、中に入ることができない。

「どこかから、入れないかな?まあ、最悪、わたしがフィナを抱きかかえて、ジャンプして飛び越えるけど」

わたしの言葉にフィナの顔が少し青ざめる。

もしかして、ドワーフの国の長い階段から飛び降りたことを思い出したのかもしれない。

「それじゃ、妾が上から確認してくるから、待っておれ」

カガリさんの体は壁の上に浮かび上がっていく。カガリさんは壁の中を確認すると、すぐに降りてくる。

「向こうに、壁が崩れて中に入ることができる場所があったぞ。でも、中は廃墟じゃったぞ」

「廃墟?」

「それほど大きくないが、昔に町があったみたいじゃ。でも、あっちこっちが壊れて、人はいない」

まあ、道は長い間使われていないし、町の入口と思われるところは崩れ落ちていた。人がいるとは思っていない。

わたしにあるのは好奇心だ。

わたしたちは、カガリさんが見つけてくれた壁が崩れている場所から中に入ることにする。

カガリさんの案内で壁が崩れているところまでやってくる。

確かに、カガリさんが言う通りに壁が崩れていた。人が登るには大変かもしれない。でも、くまゆるとくまきゅうは崩れた壁の瓦礫の山を簡単に登っていく。

そして、瓦礫の上から壁の中が見えた。

そこには、昔は町と呼ばれたであろう光景が広がっていた。

でも、カガリさんが言う通りに建物は崩れ、人一人おらず、間違いなく廃墟だった。

「フィナ、中に入るけど、大丈夫? もし怖かったら、クリモニアに戻っている?」

「一人だったら怖いけど、ユナお姉ちゃんとカガリお姉ちゃんがいるから大丈夫だよ。それに、わたしも、ユナお姉ちゃんと一緒に行きたい」

今までは遠慮しがちだったけど、自分の意見をハッキリ言えるように成長したみたいだ。

あっちこっちに連れ回したことで、強くなったかもしれない。

初めて会ったときは、気弱そうな感じだったことを思い出すと、感慨深いものがある。

「でも、ユナお姉ちゃんが邪魔だっていうなら」

「別に、邪魔じゃないよ」

「まあ、何かあれば、妾が守ってやるから安心せよ」

「うん。ありがとう。カガリお姉ちゃん」

「「くぅ〜ん」」

「くまゆるとくまきゅうも守ってくれるって」

「ありがとうね。くまゆる、くまきゅう」

もちろん、わたしだって守るつもりだ。

4人で守れば大丈夫だ。それに、魔物の反応もないし、危険なことはないはずだ。気をつけるとしたら、崩れている建物かもしれない。

「フィナ、建物が崩れてくるかもしれないから、くまゆるとくまきゅうの傍から離れちゃダメだからね」

「うん」

廃墟を調べることになり、わたしたちを乗せたくまゆるとくまきゅうは崩れた壁を降りていく。

とりあえず、わたしたちは街の中心に向かうことにする。

建物は石造りが多い。壁などは崩れて、家の中が剥き出しになっている。大きな瓶や樽などが崩れている。

昔は、ここで多くの人が生活をしていたんだと思う。

「ユナお姉ちゃん。なんで、こんなことになっちゃったのかな」

フィナが倒れている建物を見て、寂しそうな表情をしながら尋ねてくる。

「戦争で逃げ出した。大量の魔物が襲ってきたから逃げ出した。巨大な魔物が襲ってきた。疫病が流行ったから街から逃げた。普通に人口が減っていった可能性もあるし、いろいろと理由が考えられるけど、見ただけじゃ分からないね」

わたしはなるべく、死んだって言葉を使わずに答える。

戦争で攻め込まれて滅んだ可能性もあるし、同様に魔物に殺された可能性もある。疫病で多くの人が亡くなった可能性もある。

「そうじゃの。もし、大蛇が和の国で暴れていたら、この町と同様なことになっておったかもしれぬ」

人が倒せない魔物もいる。逃げるしかない場合もある。

ただ、この町がどんな理由で廃墟になったかは、今のわたしには知る由もない。

「でも、廃墟になってから、どのくらい経っているんだろうね」

わたしは歴史家でもなければ、建築家でもない。その辺りの知識はないので、見ただけではどのくらいの時期に滅んだとかは分からない。

「見た感じ、かなり時間が経っているようじゃが、流石の妾でも分からんのう」

「2人でも分からないことがあるんだね」

フィナが微笑みながら言う。

どうやら、わたしとカガリさんはなんでも知っていると思っていたみたいだ。

わたしだってカガリさんだって、知らないことは多い。まして、わたしはこの世界の住民ではない。知らないことのほうが多いぐらいだ。

こっちの世界のことなら、フィナのほうが詳しいと思う。