軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

593 クマさん、建物の中を探索する

「それにしても、騒がしい小娘じゃったのう」

カガリさんは、去っていく2人の背中を見ながら、そんな感想を漏らす。

幼女姿のカガリさんに小娘呼ばわりされるのは同情するけど、それには同意だ。

この世界にツンデレの概念があるのか分からないけど、ミアはツンデレぽかった。「別にあなたたちのことなんて、心配してないんだからね」と脳内変換されていた。

「でも、わたしたちのことを気にかけてくれていました。優しい人だと思います」

フィナの言葉にも同意だ。

もう一人の女の子、キャロルが言っていたとおりに、わたしたちを心配してくれたんだと思う。

でも、くまゆるとくまきゅう、それから、わたしの格好が気になったのも事実だと思う。

「それで、わたしたちはどうする?」

「そんなのは決まっておるじゃろう。あやつたちよりも先に、お宝発見じゃ」

まあ、わたしも宝探しは嫌いではない。

お宝があるのを知って、取りに行かないゲーマーは僅かなはずだ。

レアアイテムを手にするために、たくさんの魔物と戦ったこともある。元ゲーマーとしては、お宝に反応してしまうのも仕方ないことだ。

「ユナお姉ちゃん。お宝探し、するの?」

「そのつもりだけど」

「なんじゃ、フィナは嫌なのか?」

「ううん、面白そうだと思うけど、さっきの人たちも探しているんだよね。それを見つけるってことは、あの人たちよりも先に……」

「ふふ、フィナ、甘いぞ。お宝探しは、早い者勝ちと相場が決まっておる。妾たちが参加すると思った時点で、あやつたちは 競争相手(ライバル) じゃ」

「でも、わたしたちがお宝を持ち帰ったら、可哀想じゃ……」

「お主は優しいのう。まあ、お金には困っていないから、妾たちに必要がない物だったら、譲ってあげればいいじゃろう。宝探しは見つけるのが醍醐味じゃからのう」

わたしもお金は必要としていない。それにお金を稼ぐなら、お宝を売らなくても、クマの転移門やクマのアイテム袋、元の世界の知識を使えば、お金を稼ぐ方法なんていくらでもある。

でも、面倒くさいから、そんなことをするつもりはない。

だから、カガリさんのお宝を譲る案も問題はない。

それに、お宝といっても魔道具だ。遠くに行けるクマの転移門はあるし、遠くにいる人と話せるクマフォンはあるし、たくさん入るアイテム袋はあるし、欲しいと思う魔道具はない。

あっ、でも、空を飛べる魔道具とか掃除をしてくれる魔道具なら、欲しいかも。

とりあえず、フィナも譲ってあげるって言葉に納得したみたいで、わたしたちの目的は、廃墟探索から、お宝探しに変更になった。

「それじゃ、出発じゃ~~」

「はい」

「「くぅ~ん」」

わたしたちはお宝探しに出発する。当初の目的通りに、目の前の大きな建物に向かうことにする。

ミアたちも向かった先だ。お宝があるとしたら一番大きな建物だよね。

「それにしても、近くに街とかあるのかのう?」

「その辺りの話も聞きたかったけど、逆にわたしたちがどこから来たのか尋ねられても、答えられないからね」

相手から話を聞いて、同じことを聞かれても答えられないのでは、情報交換として成立しないし、答えないのは怪しまれる。さらに3人とも違う服装だし、くまゆるとくまきゅうがいるし、 幼女(カガリさん) と 少女(フィナ) と 大人(わたし) の訳が分からない構成だし。怪しいもの以外の何者でもない。

「上から見えなかったんだよね?」

「建物らしきものは、ここぐらいしか見えんかった。もしかすると、もっと高い位置から見れば見えたかもしれぬが。まあ、とりあえずはあやつたちがどこから来たかは置いておいて、今はここのことじゃのう。確か、へれ、なんとかの町じゃったか?」

「へら、なんとかじゃなかった?」

「違うよ。ヘシュラーグだよ」

この町の名前をうろ覚えのわたしとカガリさんと違って、フィナはちゃんと覚えていたらしい。

横文字を一回聞いただけで覚えられるなんて、フィナは記憶力がいい。

「そうじゃった。そんな名前じゃったのう。たしか、魔道具の技術者が集まって作られた町とか言っておったのう。そうなると、お宝は魔道具じゃが、どんなものがあるんじゃろうな」

「掃除を勝手にやってくれるとか?」

先ほど考えていた魔道具を口にしてみる。

「ほほう、それはいいのう。それなら、料理を作ってくれるのもいいかもしれぬぞ」

「2人とも、怠け過ぎです。掃除も料理も、自分でちゃんとやらないと」

「うぅ、ごめん」

「希望を言っただけじゃぞ」

わたしたち大人が11歳になったばかりの女の子に怒られる。

「それじゃ、フィナだったら、どんな魔道具が欲しい?」

「わたしですか?」

尋ねられたフィナは考えだす。

「えっと、遠くの場所にはユナお姉ちゃんに連れていってもらえるし、遠くにいるユナお姉ちゃんとお話しできる道具もあるし。……なにもないかも」

「言っておくが、ユナが持っている魔道具は、どれも規格外じゃからのう。そんなものがあれば、本当にお金持ちになれるぞ」

「やっぱり、そうなんだ」

「当たり前じゃろう。はっきり言えば、ユナがどこで手に入れたか、尋ねたいぐらいじゃ。じゃが、お主は答えるつもりはないのじゃろう?」

「うん、秘密だからね」

「だから、お主も、こ奴が持っている魔道具を基準に考えてはダメじゃぞ。それ以上の物はないと思ったほうがいいぞ」

酷い言われようだけど、神様が作った物と、一般人が作った物では天と地の差がある。こればかりは仕方ないことだ。

わたしたちは、どんな魔道具なら欲しいか話をしながら、目的の建物にやってきた。

建物を囲う壁もあったけど、やっぱり崩れている。わたしたちは、崩れている壁を乗り越え、中に入る。

「大きい」

建物は大きく、塔みたいなものも見える。でも、それも半壊している。

「どこを調べる?」

「あの嬢ちゃんたちの後を追いかけるか、別の場所を行くかじゃな」

ミアたちも、このどこかにいるはずだ。

「つまり、あの子たちの後を追いかけて、ハイエナのようにお宝を横取りするか、別の場所を探すかってことだね」

「まあ、あのうるさい嬢ちゃんに絡まれても面倒だし、別の場所に行ったほうがいいじゃろう」

「でも、どっちに行ったか分からないよ?」

フィナがキョロキョロと周りを見る。

見ただけでは、ミアたちがどっちに行ったかは分からない。

「あの小娘たちの居場所なら、このクマたちなら分かるじゃろう」

カガリさんは乗っているくまきゅうの体を触る。

わたしの探知スキルでも分かるけど、くまゆるとくまきゅうは「「くぅ~ん」」と鳴くと右手を一定の方向に向ける。

「それじゃ、くまゆる、くまきゅう、あの子たちがいない方向に行って」

「「くぅ〜ん」」

くまゆるとくまきゅうは返事をすると歩き出す。

ミアたちの反応は左側にあるので、わたしたちは右側の通路を移動する。

「中は思ったよりは、崩れていないのう」

確かに外と違って、中は原形を残している。

天井も高く、崩れた様子もない。

「誰もいないと、静かだね」

廃墟探索なんて元の世界でもしたことはないけど、静まり返っている。

所々、部屋があり、覗くが目ぼしいものは何もない。

壊れたテーブルや椅子に棚、割れた壺。

「なにもないね」

もう、誰かが探した後なのかもしれない。

ゲームでは1プレイヤーにつき一つ手に入るが、現実では一つのものを全員で奪い合うことになる。わたしたちより先にお宝を手にいれた人がいれば、この場所にはお宝がないことになる。

「階段があります」

フィナが先を指す。

「崩れないかな?」

「たぶん、大丈夫じゃろう」

カガリさんは、浮かび上がり、壁や柱などを触って確認してくれる。

「魔力で強化されている」

「そうなの?」

「まあ、一部壊れているのを見ると絶対とは言えぬが、気をつければ大丈夫じゃろう。ただし、クマがドカドカと歩かなければのう」

「「くぅ〜ん」」

「冗談じゃ、そんなに怒るな」

くまゆるとくまきゅうは、「そんなに重くないよ」っていった感じだったけど、カガリさんも同じように感じ取ったようだ。

まあ、クマだし、大きいから、十分に重いと思うけど。そんなことを言うと、くまゆるとくまきゅうがいじけそうなので、黙っておくことにする。

わたしはカガリさんの言葉を信じて階段を上がっていく。

「3階も同じような感じだね」

「これは、あの騒がしい嬢ちゃんたちが向かった方角のほうが正しかったかもしれぬのう」

「まあ、わたしたちよりは詳しいようだったし、仕方ないよ。それにお宝を見つけるなら、横取りじゃなくて、自分で見つけたいしね」

それから、わたしたちは、3階に上がったりして、一時間ほど探索したけど、お宝らしき物は発見できなかった。

本も見つけたけど、野ざらしの状態だったため、読める状態の物は残っていなかった。

ピラミッドのときみたいに、密室じゃないと、状態が良い物を見つけるのは難しいかな。

「何も見つからないとつまらないのう」

「そうだね」

「わたしは、不思議な世界に迷い込んだみたいで、不安で寂しいです。なんで誰もいなくなった、とか気になります」

「フィナは想像力が豊かじゃのう」

「わたしやカガリさんみたいに歳を取ると、感受性が鈍くなるからダメだね」

「ユナお姉ちゃんも若いです」

「妾のことは若いと言ってくれぬのか?」

「えっと、カガリさん。何百年も生きているって言うから」

「そうじゃが、見た目はお主より若いぞ」

「心が年寄りってことだよ」

わたしの言葉にフィナが笑う。