軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

583 クマさん、フィナにプレゼントする デゼルト編 その5

翌日、わたしたちはピラミッドに行く準備をする。

「大きなトカゲさんだ〜」

昨日、街の中で見かけていたので、見るのは初めてではないが、目の前にいるラガルートを見て、シュリは騒ぎ始める。

「えっと、どうしましょうか?」

カリーナはラガルートを見ながら尋ねる。

ピラミッドまで、どうやっていくかだ。くまゆるとくまきゅう、それかラガルートで行くことになっている。

「できれば、くまゆるちゃんかくまきゅうちゃんに乗せていただけると嬉しいんですが」

カリーナが少し遠慮がちに言う。

普通に考えれば、カリーナがラガルートに乗ることになる。でも、カリーナはくまゆるとくまきゅうに乗りたいみたいだ。でも、その気持ちを察する人物とラガルートに興味を持つ人物が手を挙げる。

「久しぶりに、わしはラガルートに乗せてもらおうかのう」

「わ、わたしも、大きなトカゲさんに乗りたい!」

ムムルートさんが気を使ってくれたのに対して、シュリはラガルートに興味があるようだ。

「わたしはくまゆるとくまきゅうに乗りたいです」

「わたしも、くまゆるちゃんと、くまきゅうちゃんのほうがいいです」

フィナとルイミンはラガルートがダメらしい。まあ、わたしも、ふわふわのくまゆるとくまきゅうのほうがいい。そう考えると、シュリは強い子だ。

そんなわけで、ラガルートには、ムムルートさんとシュリが乗り、くまゆるとくまきゅうには、わたし、フィナ、ルイミン、カリーナが乗ることになった。

「大きいさんかくだ~?」

街を出たシュリがピラミッドを見ながら、そんなことを言う。

確かに三角だけど。

「ムムルートお爺ちゃん、来たことがあるんだよね?」

「ああ、もう、百年以上前のことじゃ」

「ムムルートお爺ちゃんって、もの凄いお爺ちゃんだったんだね」

そのシュリの言葉で、みんな笑い出す。

もしかすると、エルフが長寿だということも、どれだけ生きることができるかも知らないかもしれない。

わたしだって、エルフがどのくらい寿命があるかは知らないし、ムムルートさんがどのくらい生きているのかも知らない。だから、シュリが言っていることは正しい。

そして、わたしたちは魔物に遭うこともなく、ピラミッドまでやってくる。

それほど時間は経っていないけど、ジェイドさんたちとピラミッド探索をしたのを懐かしく感じる。

「それでは入りましょう」

ラガルートは前回と同じく、小屋に餌と水を用意して置いていく。くまゆるとくまきゅうを小さくして、一緒にピラミッドの中に入る。

「うわぁ、凄いです」

「思ったより広いです」

ムムルートさんは懐かしそうに歩き、ルイミン、シュリはキョロキョロと周囲を見ながら歩き、フィナとカリーナは話をしている。

「こんなに大きな物、どうやって作ったのかな?」

「フィナちゃんもそう思いますか?」

「はい。不思議です。カリーナちゃんはご存知なんですか?」

「いえ、残念ですが、知りません。ムムルート様はご存知ですか?」

「さすがのわしでも、知らないのう」

まあ、ムムルートさんは作ったところを見たわけじゃないしね。

わたしたちは、ピラミッドの話をしながら進むと、広い空間に出る。

周りを確認すると、たくさんの入口がある。最初の第一関門だ。水晶板の地図がないと、正解の入口を見付けるのも難しい。

「それじゃ、ここから一時間ほど歩くことになりますが、頑張りましょう」

「はい!」

「うん!」

「頑張ります」

フィナたちは返事をするが、それに水を差す人物がいる。

「どうしてじゃ?その水晶板があれば、そんなに歩くこともないじゃろう」

ムムルートさんの言葉に、カリーナはなんとも言えない表情をする。

「……えっと、ムムルート様。それはどういう意味でしょうか?」

「言葉どおりじゃ。その水晶板があれば、目的地まで簡単に行くことができるはずじゃが。シアンのやつは何度も行っておったし、わしも何度も連れていってもらったぞ」

ムムルートさんの言葉で、カリーナが固まっている。

「ちなみに、ムムルート様が言っている場所は水が出る場所で間違いないですか?」

「そこが目的地じゃからのう」

「それで、簡単に行けるとは、どのくらいの時間でしょうか?」

「階段を登ったりするが、数分、長くても10分かのう」

短い、短いよ。前回、行ったときはカリーナの言う通り、一時間はかかったと思う。

「それは本当ですか?」

カリーナも信じられなそうに聞き返す。

「本当じゃが、知らぬのか?」

「ムムルート様、申し訳ありません。その、わたし、いえ、お母さまも知りません。わたしたちが知るのは、この入口から水晶板の地図に従い、長い迷宮を歩いて目的地に向かう方法だけです。ムムルート様は、その簡単に行く方法をご存知なのでしょうか?」

「ちょっと待ってくれ。今、思い出す」

ムムルートさんは、頭を捻りながら、考え込む。

「たしか、シアンのやつは、ああやって、こうやっていたような」

ムムルートさんは過去の記憶を絞り出すように、独り言を言いながら、思い出そうとする。

「なんとなくじゃが、思い出した。言ったとおりにしてみてくれ」

「わかりました」

それから、一応、わたしたちには聞かれない場所に二人は移動し、水晶板を操作していく。

「そう、それをそうして」

「こんなことが……」

「次に……」

「はい……」

「それで大丈夫じゃ」

「本当にこれで……」

どうやら、できたみたいだ。

「お待たせしました」

「その近道はできそうなの?」

「はい、たぶん。まだ通っていませんから、わかりませんが、ムムルート様の言うとおりにしましたら、水晶板に見たことがない表示がでました」

「まあ、行ってみればわかるよ。ムムルートさんの記憶が正しかった証明になるし。でも、危険だから、わたしが先頭を歩くよ」

「はい、お願いします」

「信用がないのう」

「ムムルート様、ち、違います! 別に信じていないわけでは」

「お爺ちゃん、カリーナちゃんを苛めるの、よくないよ」

「別に、苛めていないじゃろう」

周りから笑いが起きる。

「それじゃ、行きましょう」

カリーナは水晶板を持って歩き、わたしたちはついていく。

そして、前回同様に、1つの入口の前に立つ。カリーナは中に入り、すぐに止まる。

「全員、中に入れ。取り残されることになるぞ」

ムムルートさんの忠告で、わたしたちは入口の中に入る。

すると、石の扉が横にスライドして、入口を塞ぐ。

「お爺ちゃん! 入口が」

「大丈夫じゃ、他の者が入ってこられないようにするためじゃ。もし、水晶板を持っているときに襲われたら、水晶板を操作して、逃げ込むためのものだとシアンのやつは言っておった」

「でも、扉を壊されたら」

「大丈夫じゃ、進めば、通った道は塞いでくれるし、変わる」

ムムルートさんの言うとおりに、わたしたちが少し進むと、後ろで道が変わるような音がする。

「ちなみに、離れ離れになったら」

「そんなことは知らん。そもそも、道は一本道じゃ、迷うことはないし、離れて行動したこともない。もしかすると、閉じ込められるかも知れぬな」

「シュリ、わたしの手を握って」

ムムルートさんの言葉を聞いて、一番行動が怪しいシュリの手をフィナが握りしめる。

「それじゃ、道は一本道だって言うなら、わたしが先頭を歩くから、カリーナが一番後ろね」

「はい、分かりました」

カリーナが一番後ろにいれば、閉じ込められることもないはずだ。

それに、前で何かあれば、わたしなら対処できる。

わたしが先頭を歩き、くまゆるとくまきゅう、フィナとシュリ、ルイミンとつづき、最後にムムルートさんとカリーナが歩く。

通路はムムルートさんの言った通り、一本の通路と階段だけだった。

そして、しばらく歩くと、水の魔石がある部屋に出る。出た場所は、前回、部屋から出るときに使った出口だった。

「本当に、こんなに簡単に。今までの苦労は……」

カリーナは水の魔石がある部屋を見ると落ち込む。

その気持ちは痛いほど分かる。こんな裏道があれば、水晶板を落とすこともなければ、わたしが巨大なスコルピオンと戦うこともなかった。

わたしたちは前に出て、盃から水が出ている様子を見る。

ちゃんと、クラーケンの魔石は役に立っているみたいだ。

「うわぁ、大きなお皿から水が出ているよ」

シュリが大きな盃から溢れ出る水を見ながら言う。

位置的に水の魔石は見えないので、盃から水が出ているように見える。

なので、シュリたちは不思議そうに盃を見ている。

「カリーナ姉ちゃん。喉が渇いたから、水を飲んでも大丈夫?」

そんな水を見ながらシュリが尋ねる。

「大丈夫ですよ」

カリーナが許可を出すと、シュリにルイミン、それからフィナも、湧き出す水を手で掬って、水を美味しそうに飲む。

「それにしても、こんな方法で、この部屋に来られるとは思いませんでした」

「だが、シアンの奴が、このピラミッドのことや水晶板について、いろいろとノートに書いていたはずじゃが、カリーナ嬢ちゃんたちには伝わっていなかったようじゃな」

「そのようなノートがあったのですね。ですが、お父さまも、お母さまも、知らないと思います」

まあ、知っていたら、前回通った道を通らないよね。

「それじゃ、誰かに盗まれたとか?」

話を聞いていたわたしは、なんとなく口を挟む。

「いえ、そんな大切なものが紛失すれば、大騒ぎになって、言い伝えで残っていると思います」

「とりあえず、あるかどうかは、確認してみればよかろう」

「確認ですか?」

「あやつは、大切な物はこの部屋にしまっておいたからのう。この部屋なら、簡単に盗まれることもないし、隠すには一番じゃ」

確かに、この部屋なら簡単に盗まれることも、大切なノートを読まれることもない。

「ですが、この部屋にわたしが来たときには、そのような物はありませんでした」

たしかに、この部屋には、それらしきものはない。そもそも、そんな物があれば、カリーナたちが気づかないわけがない。

「この部屋と言っても、隠し部屋のほうじゃが。わしの目的の物も、その部屋にあるはずなんじゃが」

「隠し扉ですか? 申し訳ありません。その話も初めて聞きました」

「裏道のことといい、どこかで言い伝えが途切れてしまったのかもしれぬな」

「申し訳ありません」

「カリーナ嬢ちゃんが謝ることではない」

「はい。……それで、隠し扉はどこにあるのですか?」

「そこの台座に水晶板を嵌めて、魔力を流せば、隠し部屋に行く階段が出る」

「その台座に水晶板を嵌めて、魔力を流すと、水が止まってしまいますが」

「ああ、そうだ。確か、水晶板は反対に嵌めるんじゃ」

カリーナはムムルートさんに言われたとおりに裏返しにして水晶板を嵌める。そして、水晶板に手を触れると、ガガッと音がしたかと思うと、床の一部がずれ、下に向かう階段が現れた。