軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

575 クマさん、フィナにプレゼントする 王都編 その4

ガザルさんの店を後にしたわたしたちは、屋台でお腹を満たしていると、学生服を着た生徒が歩いているのを見かけるようになった。

「そろそろ、シアも帰ってきているかもしれないから、シアの家に行こうか?」

「はい」

「うん!」

わたしたちがシアの家に向かって歩いていると「いた!」「本当にいました」と声がする。

聞き覚えがある声だと思っているとわたしたちのところに学生服を着た女の子二人がやってくる。

「シアにカトレア?」

「やっぱり、ユナさんでした」

少し息を切らした二人が嬉しそうにわたしを見る。

「どうして、二人がここに?」

「それはこっちのセリフですよ」

「わたしたちは、お腹が空いたので」

つまり、買い食いってことだね。

「お母様には内緒ですよ」

貴族のお嬢様が屋台で買い食いっていいのかとツッコミをしたくなるが、本人もいけないことだと知っているみたいなので、スルーすることにする。

話によると、屋台にお腹を満たしに来ていたシアとカトレアは、周りから「クマ」という単語を聞いたそうだ。耳を澄ませれば、クマの格好した女の子が小さな女の子と一緒に歩いていると耳に入ってきたという。

「それで、ユナさんがいると思って、探していたんです。でも、一緒にいる小さな女の子ってノアとフィナちゃんかと思ったんですけど、シュリちゃんだったんだね」

「うん、わたしだよ」

「ノアはしばらくは外出はできないかな?」

最近はお出かけをし過ぎだ。しばらくは長時間のお出かけはできないかもしれない。

「フィナはカトレアのことを知っているよね。シュリは初めて?」

「はい、何度かお会いしたことがあります」

「フィナちゃんとは学園祭と鍛冶屋さんに案内したときに会っていますね」

「わたしは学園祭のときに、会ったよ」

シュリも学園祭のときに、会っているんだね。でも、よく覚えているね。シュリの記憶力もなかなかのものだ。

「でも、軽く挨拶をしただけですね。改めて、わたしはカトレア、シアの友人です。二人ともよろしくお願いします」

「フィナです」

「シュリです」

カトレアが名前を名乗ると、フィナとシュリも真似をして、名前を名乗る。

「それで、どうしてユナさんは、フィナちゃんとシュリちゃんと王都にいるんですか?」

わたしは今回のことを説明する。

「フィナちゃんの誕生日プレゼントで、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんに乗って、お出かけですか。羨ましい」

「フィナは高価なものをプレゼントしても、遠慮しちゃうからね。フィナにはお世話になっているから、なんでも買ってあげたかったんだけど」

「うぅ、お世話になっているのは、わたしです」

どれだけわたしがフィナに感謝しているかは、本人には分からないものなんだね。

「ユナさん、これからどうするんですか?」

「シアの家に行くところだったんだよ」

「そうだったんですか?」

「学園が終わる頃に行こうと思っていたところ。でも、二人が用事があるなら後で行くよ」

わたしの言葉にシアは確認するかのようにカトレアのほうを見る。

「ユナさん、シア。わたしも一緒にシアの家に行ってもいいですか? 久しぶりにくまゆるちゃんとくまきゅうちゃんにお会いしたいです」

もちろん、カトレアのお願いは許可した。わたしたちはシアの家に向かって歩きだす。

「ノアの誕生日パーティーにはフィナちゃんやシュリちゃんも参加してくれたんですよね。ありがとうね」

「きれいな、ドレスを着たよ」

シュリはクルクルと回りながら、楽しそうに話す。

「ドレスはノアが小さいときのドレスを貸してくれたんだよ」

そのドレスをノアがシュリにあげようとしたが、ティルミナさんが丁重に断っていた。

まあ、もう着ないからといっても、ドレスは簡単にはもらえないよね。

わたしとフィナは脅迫される感じに押し付けられたけど。

「フィナちゃんとシュリちゃんのドレス姿見たかったな」

「ユナ姉ちゃんのドレスも綺麗だったよ」

「えっ、ユナさん、ドレス着たんですか!?」

シアとカトレアが驚いた表情をする。

「ノアにミサの誕生日パーティーのときに、ドレスを渡されたからね」

それがなかったら、着ていなかったと思う。

「ああ、学園を休んででもクリモニアに帰ればよかったです」

わたしのドレス姿に、学園を休んでまで見る価値はないよ。

でも、なぜかカトレアまで同意していた。

「それで、ノアの誕生日プレゼントに、大きなくまゆるちゃんとくまきゅうちゃんのぬいぐるみをプレゼントしたんですよね?」

「知っているの?」

「手紙に書かれていました。ユナさん、フィナちゃん、シュリちゃん、後、シェリーちゃんって子と一緒に作ったと、楽しそうに書かれていましたよ。わたしも見てみたかったです」

「今度、クリモニアに来たら、ノアに見せてもらうしかないね」

さすがに持っていないので、見せることはできない。

そんなノアの誕生日パーティーの話をしていると、シアの家に着く。

メイドのスリリナさんに挨拶をして、客室にやってくる。

カトレアのお願いもあって、通常サイズのくまゆるとくまきゅうを召喚する。

「明日は、マリクスたちに自慢ができますね」

カトレアはくまきゅうに抱きつき、シアはくまゆるに抱きついている。

「ふわふわです」

「くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんと一緒にお出かけできるなんて、フィナちゃんとシュリちゃんが羨ましいです」

「わたしも、触る」

二人がくまゆるとくまきゅうに触っているのを見てシュリは我慢ができなくなったのか、シアの隣に行くと、一緒になってくまゆるを抱きしめる。フィナは姉らしく我慢しているように見える。

「わたしも、こんな可愛いクマが欲しいです」

カトレアはくまきゅうの背中を優しく撫でる。

さすがにあげられないし、本物の熊を飼い始められても困る。

「本物は無理だけど、ぬいぐるみでよければあげようか?」

わたしはクマボックスから、くまゆるとくまきゅうのぬいぐるみをテーブルの上に出す。

「カトレアには、子供っぽいかな?」

カトレアはくまきゅうから離れ、テーブルの上にあるぬいぐるみを手にする。

「そんなことはありません。このぬいぐるみ、わたしにくれるのですか?」

「大切にしてくれるならね」

「もちろん大切にします。ありがとうございます」

カトレアはくまきゅうぬいぐるみを手にすると、床の上にいるくまきゅうと比べている。

「そっくりですね」

「作ってくれた子が頑張ってくれたからね」

本当に上手に作られている。シェリーなら、職人としてやっていけそうだね。

「カトレアは、前から欲しがっていたからね」

「そうなの?」

「前に学園祭のときに、ティリア様が持っているのを見て、後、わたしの部屋のぬいぐるみを見て、羨ましそうにしていたよね」

そういえば、前にシアにもあげていたね。

確か、マリクスと試合をしたときだっけ?

「シア、そんなこと言わなくてもいいでしょう」

カトレアは少し、恥ずかしそうにする。

でも、欲しがってくれるなら、嬉しいものだ。

そして、くまゆるとくまきゅうを堪能し、ぬいぐるみを貰ったカトレアは満足気な顔をして帰っていった。

カトレアが帰り、しばらくすると、エレローラさんが疲れた顔をして帰ってきた。

「ユナちゃん、来ていたのね。いらっしゃい」

「お邪魔しています」

「でも、フィナちゃんとシュリちゃんまで、一緒なんて珍しいわね。王都に何か用事でもあるの?」

「フィナの誕生日プレゼントで、王都見物です」

シアに説明したことを、もう一度、エレローラさんにも説明する。

「ノアからの手紙にも書かれていたわね。フィナちゃん、お誕生日おめでとう」

「あ、ありがとうございます」

「それじゃ、フィナちゃんに、何かプレゼントしないといけないわね」

「い、いえ、大丈夫です」

フィナは首を横に振って、断る。

「でも、ノアのために大きなぬいぐるみを作ってくれたんでしょう?」

「わたし一人じゃないです。ユナお姉ちゃんに、シュリ、それから、シェリーちゃんという女の子が一緒になって、作ってくれました」

「ふふ、でも、フィナちゃんには、あの子がいつもお世話になっているから、お礼を込めてプレゼントしたいわね。そうね。倉庫に眠っている、お宝でも持っていく? フィナちゃんが気にいるものがあるかもよ」

貴族の家の倉庫に眠っている物は個人的に興味があったけど、フィナは丁重にお断りしていた。エレローラさんは残念そうにしていたけど、フィナの性格じゃ、貰わないよね。

「それじゃ、せめて食事でもしていって」

「ごめん、連れが他にもいて、もう帰らないといけないの。今日は王都に来たから、シアとエレローラさんに挨拶に来ただけだから」

フィナの代わりにわたしが断る。

ムムルートさんとルイミンがクマハウスで待っている。さすがに、夕食を頂いている時間はない。

「あら、他にもいるのね。その人たちも一緒にってわけにはいかないわよね?」

サーニャさんとエレローラさんは知り合いだから、ムムルートさんとルイミンに会わせても問題はないと思うけど、勝手に決めるのはよくないので、今回は丁重に断る。

「それじゃ、仕方ないわね」

エレローラさんは素直に諦めてくれる。

そして、わたしは帰る前に、エレローラさんに尋ねる。

「エレローラさん、一つ尋ねたいんだけど、お城の上のほうって見学できる?」

「お城の上?」

「フィナ? じゃなくてシュリがお城の上から、見てみたいって言うから」

シュリの希望だけど、フィナも「あの上から見た、景色はどんななのかな?」と小さな声で、言っているのを聞いた。

フィナも見てみたいのかもしれない。

フィナには良いプレゼントになると思う。なにより、わたしも見てみたい。

「そうね。普通は立ち入りは禁止されているわね。一部の者しか入れないのよ」

まあ、普通はそうだよね。

「でも、最上階でなく、途中の階だったら、大丈夫だと思うわよ。あの場所から見る景色も綺麗よ。それじゃ、誕生日プレゼントとして、そこに連れていってあげる」

「いいの?」

「フィナちゃんが、わたしからのプレゼントを受け取ってくれないから、せめてこのぐらいはね」

「みんな、いいな」

話を聞いていたシアが羨ましそうにする。

「シアは行ったことはあるでしょう」

「あるけど、滅多に行けないから」

シアは残念そうにするが、明日も学園があるので一緒に行くことはできない。エレローラさんも学園を休ませようとはしない。サボりはよくないからね。