軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

574 クマさん、フィナにプレゼントする 王都編 その3

リッカさんとガザルさんに少し話があったので、お茶をいただくことにする。

「それで、リッカさん、王都には慣れた?」

「人が多くて大変だよ。でも品物が多いし、いろいろあって楽しいよ」

王都は広いし、いろいろな物が集まっている。何度か王都に来ているけど、知らないことは多い。

「ガザルさんとは、仲良くしている?」

「ええ、もちろん。背中を押して、わたしを連れてきてくれたユナちゃんには感謝しているよ」

それは良かった。連れてきたのに仲が悪かったら、いたたまれなくなる。数年ぶりに会うんだから、気持ちがすれ違ったりしているかもしれない。でも、そんなことがないことは、少し照れたように話してくれるリッカさんの顔を見れば分かる。

「でも、どうやって、連れてきてもらったかは謎なのよね」

「それは内緒です」

リッカさんを連れてくるとき、目隠しをしてもらった。なので、クマの転移門のことは知らない。

「それが、約束だったからね。それで、ガザルには仕事を頼みに来たの?」

「今日はガザルさんと仲良くしているか、リッカさんの様子を見に来たんだよ」

「ふふ、ありがとう」

「それと、ルドニークの街に行く予定だから、手紙でも書いてくれれば、ロージナさんに届けてあげようと思って」

ロージナさんはルドニークの街にいるリッカさんの父親であり、ガザルさんの師匠でもある。

「ユナちゃん、ルドニークの街に行くの?」

「うん、フィナの誕生日プレゼントの一つで、いろいろな場所に連れていってあげているの」

「それは最高のプレゼントね。わたし、自分の街しか知らなかったから、王都に来たときは本当に驚いたよ。人が多いし、いろいろな物があるし、他の街を見るのは良い経験になると思うよ。一回じゃ、全てを知ることはできないけどね」

未だに、わたしも王都のこと、分からないことが沢山ある。

東京に行っても、一回ぐらいでは全てを知ることはできない。

大きい街や王都なら、なおさらだ。

「でも、フィナちゃんの誕生日か。それじゃ、プレゼントが必要ね。お店にある何か持っていく?」

店の中って、武器ばっかだよ。

「リッカ、何、勝手なことを言っている」

リッカさんに話しかけてきたのは、ガザルさんだった。リッカさんと話をしていて、鉄を叩く音が止まったことに気づかなかった。

「ガザルさん、久しぶり」

「ああ、嬢ちゃんも、相変わらずの格好をしているんだな」

わたしのクマの格好を見ながら言う。

まあ、これが私服だし。

「ガザル、ユナちゃんがルドニークの街に行くから、お父さんに手紙を届けてくれるって」

「俺はいい。リッカが書いてやればいい」

「もう、そう言って。まあ、いいわ。それじゃ、書いてくるから、ユナちゃんたちはつまらないと思うけど、ガザルと話でもして待ってて」

そう言って、リッカさんは奥の部屋に行ってしまう。

ガザルさんはわたしを見て、フィナを見る。

「確か、そっちの小さい嬢ちゃんは解体用のミスリルナイフを作ろうとしたときの」

ガザルさんはフィナを見て、思い出したようだ。

「ゴルドにナイフは作ってもらえたのか?」

あのときは、挨拶をしただけだった。

「はい、作ってくれました」

「わたしのも作ってくれたよ~」

シュリの言葉にガザルさんは驚きの表情をする。

「お姉ちゃんと一緒に解体をしたいって言うから、一緒に作ってもらったんだよ」

「そっちの嬢ちゃんに、ミスリルナイフを渡すことも驚いたが、そっちの小さい嬢ちゃんにまでとはな」

ガザルさんは呆れてものが言えなそうにする。

「ゴルドが作ったミスリルナイフは持っているか? あれば、見せてもらってもいいか?」

「はい、持っています」

フィナはアイテム袋から、ミスリルナイフを出して、ガザルさんに渡す。

ちなみにシュリのミスリルナイフは、持ち歩くのは危険なので、クマハウスの倉庫に置いてある。

ガザルさんは、ミスリルナイフを真剣な目で見る。いろいろな角度で見たり、窓から入ってくる光に照らしたりする。

「あいつにしては、良い出来だな」

ガザルさんはフィナにナイフを返してくれる。

「嬢ちゃんのほうのミスリルナイフはどうだ?」

ガザルさんは、今度はわたしに尋ねる。

「別に、問題はなにもないよ」

「見せてみろ」

わたしはクマボックスから、二本のミスリルナイフを取り出し、ガザルさんに渡す。

「あれから、使ったのか?」

「少しだけね」

ルドニークの街と和の国で少しだけ使っただけだ。

「扱いも問題はない。綺麗なものだ」

「ガザルさんが作ったナイフの出来が良いんだよ」

「良いものでも、扱いが悪ければ刃は欠けるし折れることもある」

名刀だって、斬り付ける角度が悪ければ折れるって言うしね。

「少しだけ手入れをしてくる。つまらないと思うが、嬢ちゃんたちは、店の中でも見ててくれ」

ガザルさんは、ミスリルナイフを二本持って、奥の部屋に行ってしまう。

「それじゃ、店の中を見させてもらおうか。でも、危ないから、触っちゃダメだからね」

「はい」

「うん、ネルト姉ちゃんに見るのはいいけど、触ると危ないからダメって言われているから分かっているよ」

まあ、鍛冶屋は興味が引かれるものも沢山あるが、危険な物も多い。

「あれ、あるかな?」

フィナは何かを探すように、店内を歩きだす。でも、フィナの足がすぐに止まる。

「これは?」

「お姉ちゃん、なにかあったの?」

シュリがフィナのところに行く。

「きれい」

「うん、綺麗だね」

二人は何かを見ている。わたしは気になったので、二人に尋ねる。

「二人とも何を見ているの?」

「アクセサリーです」

「きれいだよ」

この店にアクセサリー?

わたしはフィナとシュリのところに行くと、フィナたちの後ろから覗き込む。

そこには、この店には似合わない綺麗な細工がされたアクセサリーが並んでいた。

「ガザルさんが作ったのかな?」

「それ、わたしが作ったの」

答えてくれたのは、リッカさんだった。

手には手紙がある。

「ユナちゃん、書いてきたから、お願いできる?」

わたしは手紙を受け取り、失くさないようにクマボックスの中に仕舞う。

「それで、これ、リッカさんが作ったの?」

「これでも、鍛冶職人ロージナの娘だからね」

リッカさんは、小さな胸を張る。

「と言っても、趣味程度だけどね。でも、結構、お店に来てくれた人が買ってくれるのよ」

「値段は、うぅ、高い」

フィナが値段を見て、呟く。

「細かいから、結構時間がかかっているのよね」

確かに、一つ一つが細かい。

作るのに時間が掛かれば、価格も上がる。

フィナがアクセサリーと書かれている値段を交互に見ている。

フィナがアクセサリーに興味を持つなんて、珍しいこともある。

「フィナ、欲しいの? 買ってあげようか?」

フィナには高くても、わたしなら払えない金額じゃない。

でも、わたしの言葉に、フィナは首を横に振る。

「ううん、お母さんとお父さんにプレゼントしたいと思ったの。このお揃いの」

綺麗な細工がされたアクセサリー。

二つ買うと、確かに高い。

「お姉ちゃん、わたしも出すよ」

シュリが自分の小さなお財布を取り出す。

「ありがとう。でも、二人が一緒に出しても買えないかな」

ここで、わたしがお金を払ってあげて、それをフィナとシュリからティルミナさんとゲンツさんにプレゼントしても、わたしからなのか、フィナからなのか、分からなくなってしまう。

ここは、フィナ貯金の出番か、と思ったら、リッカさんが口を開く。

「そんなに高かった?」

リッカさんは、アクセサリーに付いている値札を見る。

「あれ、これ間違っているわね。ごめんね」

リッカさんは、ポケットからペンを取り出すと、一桁数字を消す。

「これは商売人として、失格ね。ごめんね。これなら、フィナちゃんとシュリちゃんのお金でも買えるでしょう?」

絶対に違うよね。この細工されたアクセサリーが1/10の金額になんてならないよね。

そのことはフィナも分かっている。

「でも、その金額は……」

「お礼を、させてくれないかな」

「お礼?」

「フィナちゃんがゴルドのナイフを、ユナちゃんがガザルのナイフをお父さんに見せてくれて、お父さんがまた剣を作るようになってくれたから、わたしは安心して、ここに居られるの。だから、ユナちゃんにも、フィナちゃんにも感謝しているの」

リッカさんはフィナを真っすぐに見つめる。

本当は、お金なんていらないのかもしれない。でも、それだと、フィナは受け取らないから、あんな下手な演技までしたんだと思う。

「フィナ、リッカさんの気持ちを受け取ってあげないと、可哀想だよ」

「ユナお姉ちゃん。……わかりました。リッカさん、ありがとうございます。買わせてもらいます」

「お礼はわたしが言うんだよ。購入ありがとうございます」

リッカさんは店員さんっぽく言い、微笑む。

フィナとシュリはお互いにお金を出し、アクセサリーを二つ購入した。

本当に仲が良い姉妹だね。

無事にアクセサリーを購入すると、ガザルさんが戻ってくる。

「少し、磨いておいた」

ガザルさんが二本のミスリルナイフを返してくれる。

「ありがとう」

わたしは受け取り、クマボックスの中に仕舞う。

「そういえば、フィナ、さっきは何を探していたの?」

アクセサリーを見つける前に、何かを探していた。

「雑貨屋さんに売っていると思うけど、ナイフもあるから、ペーパーナイフがあるかなと思って」

「ペーパーナイフ? そんなの使うの?」

「えっと、誕生日パーティーのとき、ミサ様がわたしに手紙を書くので、返事をくださいと言われたので、もしかすると必要になるかなと思って」

「確かに、雑貨屋で売っているのかな?」

なにぶん、手紙を書いたことがないので、ペーパーナイフがどこに売っているかも知らない。そもそも、手紙を開けるとき、ペーパーナイフを使わない。

ここで、性格の差がでるね。

フィナの言葉じゃないけど、刃物を扱う店だから、売っていてもおかしくはない。

「だから、ちょっと探そうかなと思っただけです」

そしたら、リッカさんが作ったアクセサリーを見つけたわけか。

「刃物だから、ゴルドさんのところでも売っているかもね」

「はい。クリモニアに帰ったら、雑貨屋さんか、ゴルドおじさんに聞いてみます」

わたしとフィナの言葉に、ガザルさんの眉が動く。

「確か、フィナと言ったな。ちょっと待っていろ」

そう言うと、ガザルさんは離れ、奥に行く。その行動の理由が分かっているのか、リッカさんは笑っている。

リッカさんに尋ねようとしたが、すぐにガザルさんが戻ってきて、小さな小箱をフィナに差し出す。フィナは困った顔をしながらも、受け取る。

「開けてみろ」

フィナが中を開けると、銀色に輝く、小さなナイフが入っていた。

「ペーパーナイフ?」

「嬢ちゃんにやる」

「でも」

「売り物じゃない。昔、作ったものだから、気にするな」

「でも」

フィナが困ったように、わたしを見る。

握る部分には、綺麗な模様が彫られ、手が込んでいることが分かる。高そうだ。

「ふふ、気にしないで、もらってあげて。ガザルはゴルドに対抗心を燃やしているだけだから」

リッカさんが笑いながら、教えてくれる。

「実はね。あれから一度、ゴルドが来てくれたの」

「そうなの?」

「そういえば、ちょっと前にお店に行ったら、お休みだったときがありました」

フィナが教えてくれる。

「それで、二人は自分たちが作った物の話をして楽しそうにしていたのよ。俺のほうが上だとか。だから、ゴルドのお店に買いに行くって聞いて、対抗心を燃やしたのよ。中身は子供なんだから」

ガザルさんを見ると、頬を赤くして顔を背ける。

どうやら図星らしい。

「だから、フィナちゃん、貰ってくれる?」

「フィナ、もらっていいと思うよ」

「……はい。ガザルさん、ありがとうございます。大切に使わせていただきます」

手紙も預かったので、わたしたちはお暇させてもらう。

「ユナちゃん、また来てね」

「ナイフの手入れはしてやるから、いつでも来い」

「うん、そのときはお願い」

「ガザルさん、リッカさん、ありがとうございました」

「気にするな。昔に作った物で、使わない物だ。使ってくれるなら、それも嬉しいじゃろう」

「わたしも、喜んでもらえたら、嬉しいよ」

確かに、作ったものを使ってほしいと思うのは、普通の気持ちだ。剣だって飾られるだけよりは、使われるほうが嬉しいに決まっている。

わたしが作ったクマのぬいぐるみもそうだ。棚に大切に飾られるよりは、子供たちに使われてほしいと思う。

わたしたちはお礼を言って、ガザルさんのお店を後にした。