軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

573 クマさん、フィナにプレゼントする 王都編 その2

お礼?

わたしは首を傾げると、ウラガンは腕を伸ばして、太い腕をわたしに見せる。

ウラガンの腕には、黒い小手のようなものが付けられている。

「あのスコルピオンで作った防具だ」

「それじゃ、その胸も?」

胸の防具も黒い。

「ああ、軽くて、動きやすい。しかも頑丈ときている。この前、タイガーウルフに腕を噛まれたが、この防具のおかげで助かったぜ」

小手を摩りながら笑いながら言う。

いや、危ないよ。と思ったけど、 黒虎(ブラックタイガー) のときに同じようなことをした記憶があるので、人のことは言えない。

「それはよかったよ」

下手をすれば、腕が使い物にならなくなった可能性もある。まあ、鉄でも簡単に噛み砕けないと思うけど。そこに軽さが加わったことで恩恵が得られているなら、譲ったかいもあったものだ。

素材なんて、使ってこそ意味があるからね。誰かさんみたいに、仕舞っておくだけじゃ意味がない。

……今度、クマボックスに入っている素材の使い道を考えよう。

……売るしかないような。

「全員、この防具のおかげで、高ランクの依頼も受けやすくなった。もうすぐ、ランクCになれるぜ」

ウラガンは嬉しそうに言う。

良質な防具を装備して、ランクが上がるのは悪いことではない。その防具を身につけるのだって、普通なら大変なことだ。

それがわたしが譲ったことで、手に入れたとしてもだ。

人生には運が良い者、悪い者は絶対にいる。運は平等ではない。もし、平等なら、全員が宝くじが当たり、全員がお金持ちになれる。でも、そんなことは絶対にない。外れる人の方が多い。何より、人生なんて、生まれたときから不平等だ。

運も生まれ持った力だと思う。

もし、ウラガンに運のパラメータがあったら、高いかもしれない。

でも、それには行動があってこそだ。

あのときにウラガンが依頼を受けていたからこそ、わたしに出会えて、素材を渡すことができた。依頼を受けなければ、わたしと出会うこともなかった。そうなれば、巨大なスコルピオンの素材を渡すこともなかった。

宝くじも、購入しなければ当たらないと同じことだ。

「まあ、頑張って。それじゃ、わたしは行くね」

「ああ、引き止めて悪かった。今度、何か困ったことがあれば言ってくれ」

「そのときはお願いするよ」

今は頼むようなことはないけど、頼むことができるかもしれない。だから、厚意は素直に受け取っておく。

ウラガンと別れ、フィナとシュリを連れて、冒険者ギルドの外にでる。

「顔は怖かったけど、優しい人でした」

「うん、顔、怖かった」

だから、珍しく、シュリは静かだったんだね。

まあ、顔は厳ついが、性格は悪くない。

クリモニアにいたゴブリン顔の冒険者よりは、まともだ。

約束を守って、巨大なスコルピオンのことも話していないようだし。もし、話していたら、サーニャさんが騒いでいたと思う。ルイミンとムムルートさんに会えて、それどころではなかったって話かもしれないけど。

「それじゃ、どこ行こうか。行きたい場所はある?」

「シア姉ちゃんに会いたい! あと、お城に行きたい! あの高いところに行きたい」

フィナに尋ねたのに、シュリが手を挙げて答える。

シアに会うのはいいけど、城は簡単に入ることはできない。いや、できるけど、さすがに、城の上のほうは無理だと思う。

「シアは学校だと思うから、後だね。お城は保留かな? フィナは、行きたいところは?」

「お母さんやお父さんにお土産を買っていきたいです」

たしかに、王都でお土産を買うのはいいかもしれない。ティルミナさんはともかく、ゲンツさんにエルフの村や、デゼルトの街、和の国に行ったことは話せない。でも、王都なら行動範囲内だ。

どこに行ったと聞かれたら、王都と答えて、お土産を渡すのもいい。

そこまで考えているなんて、さすがフィナだ。

「それじゃ、適当に買い物しながら、シアに会いに行こうか」

わたしたちはシアが学園から帰ってくるまで、適当に歩くことにした。

相変わらず、わたしの格好が視線を集めるが、被害がない限り無視をする。指を差されるのは慣れたものだ。

ただ、わたしと一緒にいるフィナとシュリが可哀想かもしれない。

「ごめんね」

「なにがですか?」

「なんで、謝るの?」

二人はいきなり、謝罪するわたしに、意味が分からないようだ。

「わたしの格好のせいで目立って」

「少し恥ずかしいけど、ユナお姉ちゃんと一緒にいて、嫌とは思わないから大丈夫です」

「……フィナ、ありがとう」

わたしは嬉しくなり、フィナの頭を撫でる。

「わたしも、嫌じゃないよ。ユナ姉ちゃん、大好きだから」

「シュリもありがとうね」

シュリの頭も撫でてあげる。

「それじゃ、あっちのほうに行ってみようか」

「はい」

「うん!」

わたしたちはいろいろな店を覗いたり、中に入ったりする。フィナとシュリは楽しそうにしている。

何度か王都に来ているといっても、王都は広い。1日や2日で全てを回ることはできない。それに同じ場所だって新しい発見がある。

久しぶりのフィナとシュリとのお出かけも楽しいね。

ただし、視線がなければだけど。

まあ、これも自分の格好のせいだから仕方ない。

本当に、どうして神様は、クマの防具にチート性能を付けたのか、会ったら問い詰めたいところだ。

「フィナ、シュリ。ちょっと悪いけど、そこを曲がって」

わたしの指示で道を曲がり、少し進む。

「ユナお姉ちゃん。ここは……」

フィナが小さな、一軒の店の前で止まる。

「モリンさんのお店だね」

ここで、モリンさんとカリンさんに会い、二人をクリモニアに誘った。

「ちょっと、中を確認してもいいかな?」

モリンさんに王都に行くようなら、たまにでいいから店を見てほしいと言われている。

最近、来ていなかったので、確認に来た。

「はい、いいですよ」

「うん、いいよ」

二人の許可をもらったので、預かっている鍵で、ドアを開け、中に入る。

なにも変わっていない。

少し、埃が被っている。今度、掃除に来ないとダメかな。できれば、空気の入れ替えもしたいところだけど、今日のところは時間がない。

でも、わたしの気持ちを読んだのか、フィナが、

「ユナお姉ちゃん、少し掃除をしませんか?」

「掃除?」

「はい。このままじゃ、お家も可哀想なので」

優しい子だ。

「そうだね。それじゃ、少しだけ掃除をしていこうか」

「わたしもやるよ」

シュリも手をあげる。

わたしたちは軽く、掃除をすることにした。

モリンさんたちは、いつかは、ここに戻ってくるかな?

もちろん、引き止めるつもりはない。

でも、なるべく長く、クリモニアにいてほしいものだ。

掃除を終えたわたしたちは、行きたい場所があるので、フィナとシュリに尋ねる。

「ちょっと、ガザルさんのところに寄ってもいい?」

ガザルさんは、わたしのミスリルナイフを作ってくれたドワーフの鍛冶職人だ。少し前に、ガザルさんに好意を持っているリッカさんを連れてきてあげたことがあった。二人の様子も気になるし、ドワーフの街に行く予定なので、その前に二人に会っておこうと思った。

「はい、わたしもリッカさんに会いたいです」

「お姉ちゃん、リッカってだれ?」

シュリは知らないのも仕方ない。

「えっと、わたしとシュリのナイフを作ってくれたゴルドおじさんは知っているよね?」

「うん、知っているよ。ゴルドおじちゃんのところに行くと、ネルト姉ちゃんがお菓子くれるんだよ」

「もう、ちゃんと、断らないとダメだよ」

お菓子を貰った話を聞いたフィナはシュリに注意する。

「でも、お母さんに内緒だって、ネルト姉ちゃんがくれるから」

ここで違和感が。夫婦なのにゴルドさんはおじさんで、ネルトさんはお姉ちゃんと呼んでいる。

ゴルドさんは髭づらのおじさんだ。ネルトさんは若い女の子に見える。

見た目からなのか、それともネルトさんが、そう呼ばせているのかは分からないけど、理由は聞かないでおく。知らないほうがいいこともある。

「そのゴルドさんの知り合いがガザルさん。そして、リッカさんは、そのガザルさんの奥さんだよ」

フィナが分かりやすく、説明する。

シュリは分かったような、分かっていないような感じだった。

でも、とりあえずは、二人からガザルさんのところに行く許可は貰えたので、わたしたちは職人通りにあるガザルさんのお店に向かう。

「ここだね」

わたしはドアを開けてお店の中に入ると、アイアンゴーレムが出迎えてくれる。

ちゃんと飾ってくれているんだね。

「あっ、ゴルドおじさんのお店にあるのと同じだ」

シュリは驚くこともなく、アイアンゴーレムに近づき、触る。

「わたしが同じのをプレゼントしたからね」

シュリは楽しそうにアイアンゴーレムを触っている。

ここで、後ろから「わっ!」とやったら、さすがのシュリも驚くかなと思ったりしたが、自重する。

もし、シュリが泣きでもしたら大変なことになる。でも、やりたくなるんだよね。

いつまでも入り口にいても仕方ないので、ガザルさんを呼ぼうと思ったが、奥から、カ〜ン、カ〜ン、と鉄を叩く音が聞こえてくる。

ガザルさんは仕事中みたいだ。でも、ここは一人じゃない。

「リッカさ〜ん、いますか〜」

「は〜い、ただいま行きます」

お店の奥に向かって声をかけると、奥から返事が聞こえてきて、可愛らしい女の人がやってくる。

「ユナちゃん?」

「リッカさん、久しぶり」

「うわぁ、本当に久しぶり」

ドワーフの街に行って、和の国で大蛇討伐をして、魔法の交流会でユーファリアに行って、いろいろ忙しかったせいで、本当に久しぶりの感じがする。

「それから、フィナちゃんもお久しぶり」

「はい、リッカさん、お久しぶりです」

「えっと、こっちの子は、フィナちゃんに似ているから、もしかして、妹さん?」

「妹のシュリです。ほら」

フィナはシュリの背中を押す。

「シュリです」

「わたしはリッカ。よろしくね」

「うん、よろしく」

挨拶も終わり、わたしは本題に入る。

「ガザルさんは、手が空きそう?」

奥から、カ〜ン、カ〜ンと鉄を叩く音がする。仕事中なのは分かる。もし、手が空けば少しだけ会話がしたい。

「う~ん、今は無理かな、でも、もう少しすれば終わると思うから、お茶でも飲んで待ってて」

少し待てば、終わると言うので、待たせてもらうことにする。