軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

557 クマさん、貴族の令嬢とくまパンを食べる

等身大くまゆるとくまきゅうのぬいぐるみが完成した。シェリーにも確認してもらい、お墨付きをもらった。「上手にできています」と言ってくれたときは嬉しかった。

それから数日後、ミサとグランさん、それから二人の身の回りをお世話をするルーファさんがクリモニアにやってきた。

ルーファさんはミサを攫ったガマガエルのところで働いていた女の人だ。

ガマガエル貴族はミサを攫ったことや、他の悪事も露見し、取り潰しになった。ガマガエルのところで働いていたルーファさんは行き場を失ったが、グランさんが引き取り、今ではグランさんの身の回りのお世話をしている。

そして、ミサたちの護衛には、いつもどおりにマリナたちがついている。マリナたちはグランさんたちが帰るまで、クリモニアの冒険者ギルドで仕事をするとのことだ。

一応、グランさんのほうから滞在費は出るらしいので、仕事をしなくても大丈夫とのことだが、自由にしていいと言われたので、お金を稼ぐそうだ。

どうしてそんなに詳しいかといえば、ノアがミサを連れてわたしの家にやってきて教えてくれたからだ。

「ユナお姉様、ぬいぐるみは完成したのですか?」

「したよ」

「ミサ、聞いてください。ユナさん、ぬいぐるみが完成したら、すぐにアイテム袋に仕舞って触らせてくれなかったんですよ」

「少しは触ったでしょう」

「ほんの少しだけです。もう少し堪能したかったです」

「それは、誕生日まで我慢だよ。誕生日前に堪能したら、当日の感動がなくなるでしょう」

それでなくても一緒に作ったのだから、感動は薄れる。

「そうですが。早くほしいです」

「わたしも見てみたいです」

「誕生日までの我慢だよ」

本当ならノアにも誕生日に初めて見せる予定だった。それが一緒に作ることになって、少しだけ台無し感がある。

でも、一緒に作ったのは良い思い出になったと思う。

それから、二人の願いでお昼までくまゆるとくまきゅうを堪能し、昼食を「クマさんの憩いの店」に食べに行くことになった。

「クリフやグランさんたちに伝えないで大丈夫?」

家に昼食が用意されてるかもしれない。

「大丈夫です。ちゃんと外で食べてくることは伝えてあります」

「わたしもお爺様に許可をもらいましたから、大丈夫です」

それじゃ、帰った後に怒られる心配はないね。

わたしたちは「クマさんの憩いの店」にやってくる。

お店の入り口ではお店の名前の通りに、大きなクマの石像が出迎えてくれる。

「わたしの家にも欲しいです」

「ミサもそう思いますよね。ユナさんに作ってもらおうとしたのですが、お父様にダメと言われて作ってもらえませんでした」

「わたしも、家に置くならゴーレムじゃなくて、クマさんがよかったです」

ゴーレムって、わたしがグランさんの誕生日にプレゼントしたアイアンゴーレムのことだよね。

どうやら、ミサにはアイアンゴーレムは不評のようだ。

まあ、10歳の女の子なら、アイアンゴーレムより可愛いクマのほうがいいのかもしれない。

店の中に入ると、クマの格好した子供たちが仕事をしている。

「クマさんがいっぱいです」

「そういえば、プレゼントしたクマの制服って、どうしているの?」

「えっと、たまに寝るときに着ています。今回も、ノアお姉様に言われて、持ってきています」

「夜は、みんなでクマさんの格好して、クマさんパーティーをするんです。フィナとシュリも誘う予定なので、ユナさんも参加してください。もちろん、ユナさんはそのままの格好で大丈夫ですよ」

そのままの格好と言われても、いつもクマの格好で寝ている。

想像してみる。全員がクマの格好……。

パジャマパーティーじゃなくて、本当にクマパーティーだ。

そんなことを考えていると、子供たちが店に入ってきたわたしたちに気づく。

「いらっしゃいませ? ユナお姉ちゃん!?」

「今日はノアたちと一緒に食事をさせてもらうよ」

「ノアールさまに、ミサーナさま? いらっしゃいませ」

女の子は頭を下げる。

「美味しいパンを食べに来ました」

ノアの言葉に女の子は嬉しそうにする。

「気を使わないでいいからね。みんなにも言ってもらえる?」

わたしがお願いすると、女の子は「うん」と返事をすると、みんなに伝えに行ってくれる。それと入れ違いにカリンさんがやってくる。

「ユナさん、ノアールちゃん、いらっしゃい。それから、ミサーナちゃんでしたよね。海のときに一緒だった」

「はい、あのときはお世話になりました」

ミサもカリンさんのことを覚えていたようで、挨拶をする。

「それで、ユナさん。今日はどうしたんですか?」

「普通に食事に来ただけだよ」

「この時間なら、好きなものが選べますよ」

「クマさんはありますか?」

「ありますよ。いろいろとありますから、食べていってくださいね」

ノアは何度も店に来ているようなので、カリンさんは慣れたようにミサ相手でも普通に対応している。

「それじゃ、パンを選んで食べようか」

「「はい」」

わたしたちはパンが並んでいる場所に移動する。

「ミサ、くまパンはこちらですよ」

ノアはミサを連れて、くまパンが並んでいる場所に移動する。

「ミサ、どのくまパンがいいですか?」

「どの?」

「中身が違うんですよ。こっちが、ピザに使っているチーズが入っているくまパン。こっちは果物とクリームが入ったくまパン。それから揚げくまパンに、肉が入ったくまパンです」

ノアはミサにくまパンについて説明していく。

実は、くまパンは人気で、種類が増え続けている。初めは普通のくまパンだった。それが、チーズが入り、女性でも食べやすいように果物とクリームが入ったフルーツパンが作られ、男の人でもお腹が膨れるように、コケッコウやウルフの肉が入ったくまパンが作られていった。

他にもいろいろなくまパンがある。

これもカリンさんにくまパンが人気だから、他のパンを作りたいと相談を受けた。初めは他の動物を作ればいいとアイディアを出したら、「このお店はクマなんですよ。クマ以外作ってどうするんですか?」と、真面目な顔で言われてしまった。

どうやら、違うクマの形を作りたかったらしい。

形を変えるのは難しい。でも、表情を変えるぐらいはできるので、そう伝える。だけど、それだけでは物足りないらしかったので、くまパンの中身を変えることを提案した。

あんぱんとか、カレーパンとかが代表的だ。

でも、材料や作るのが大変なので、それらは候補から外された。それで他のくまパンに入れる中身のアイディアをいくつか出した。

そして、わたしのアイディアを元にカリンさんが味付けや具材の量などを吟味して作り上げた。それが、並んでいる表情が違うくまパンになる。

クマの表情を変えれば、作るときに中身を間違えることもないし、お客さんが持ち帰ったときも、中身がどれかと、困ることもなくなる。一石二鳥だ。

「中身が違うんですね。どれも食べたいです。でも、全部は食べられません」

「クリモニアには、しばらくいるんでしょう。食べるチャンスはあるよ」

「そうですね。それじゃ、今日はチーズくまパンと果物が入ったくまパンにします」

ノアとわたしもパンを選び、飲み物、それからフライドポテトを注文する。

「可愛いです。前も思いましたが、食べるのがもったいないです」

ミサはくまパンを持って、どこから食べようかと悩んでいる。でも、隣にいるノアは耳から食べている。

「ほら、ミサも食べないと」

「はい」

ミサは小さな口でくまパンの耳をかじる。一口食べれば、二口目、三口目と食べていく。

「ああ、美味しいです。いつでも食べに来られるノアお姉様が羨ましいです」

「わたしだって、いつもはこられませんよ。たまにです」

「それでも、わたしより、食べることができます」

同じ街に住んでいるノアならともかく、違う街に住んでいるミサでは簡単に食べに来ることはできない。

こればかりは仕方ないことだ。

昼食を終えたわたしたちは、ミサがフィナたちにも会いたいと言うので、孤児院に向かう。

基本、仕事は午前中で終わり、午後は孤児院の子供たちと遊んだり、勉強したり、家の仕事をしたり、わたしの家で解体の仕事をしたりする。ティルミナさんとゲンツさんが結婚したことで、フィナの解体の仕事は減っている。

ただ、ウルフの素材は減らしたいので、孤児院やお店、フィナの家で使うウルフの食材は無料で提供している。たまに、スコルピオンの解体をしているのは内緒だ。

「お店と同じように、孤児院の子供たちが働いているんですよね」

海に一緒に行くときに、説明はしたけど、ミサにとって、自分と変わらない年齢の子が働くところを見るのは衝撃的なことだった。

「生きていくためには、必要なことだからね。ノアもミサも上に立つ人物だから、親がいない子供たちや生活に苦しんでいる人たちに、少しでも目を向けてくれると嬉しいかな」

最低限の衣食住があれば犯罪は減るし、飢え死ぬ子供たちもいなくなる。初めて孤児院を見たときは酷かった。部下の仕事を全て確認することは不可能だけど、あれは間違いなくクリフの監督責任だった。

まあ、クリフは、その責任を感じて、新しい家を作るときにお金を出してくれた。家具などはクリフのお金で買ったものだ。

「だから、立派な大人になるために、頑張って勉強してね」

「「はい」」

二人は元気に返事をする。

それから、子供たちと遊ぶフィナ、シュリと合流して、一緒に遊ぶことになった。