軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

556 クマさん、ぬいぐるみ作りを再開する

ミサの家に行くと、レオナルドさんに挨拶をする。レオナルドさんは今回の話を聞くと「何日でも泊まっていってください」と言ってくれた。でも流石に何日も泊まるわけにはいかないので、丁重にお断りした。

レオナルドさんに挨拶を終えたわたしは、ミサの部屋に移動する。

ミサはワクワクしながら、わたしのことを見ている。くまゆるとくまきゅうに会いたいとお願いされたので、ミサの部屋で召喚することになったのだ。

わたしが、くまゆるとくまきゅうを召喚すると、ミサはくまきゅうに駆け寄り、体を撫で、次にくまゆるの体を撫でる。

「くまきゅうちゃん、くまゆるちゃん、久しぶりです。ノアお姉様の誕生日パーティーまで会えないかと思いましたが、会えて嬉しいです」

「「くぅ~ん」」

くまゆるとくまきゅうも嬉しそうに鳴く。

「いつでも、くまきゅうちゃんとくまゆるちゃんに会えるノアお姉様とフィナちゃんが、羨ましいです」

ミサはくまゆるとくまきゅうを嬉しそうに抱きしめる。

部屋を見渡すと、誕生日にプレゼントしたくまゆるとくまきゅうぬいぐるみがベッドの枕元に置いてあった。ちゃんと、使ってくれているみたいだ。

クローゼットの中とかに仕舞われていたら可哀想だ。だから、ベッド上に置かれているのを見ると嬉しくなる。

「ユナお姉様。くまきゅうちゃんの背中に乗ってもいいですか?」

「いいよ」

わたしが許可を出すと、くまきゅうは乗りやすいように腰を落とす。ミサはよじ登るようにくまきゅうの背中に乗る。

「久しぶりのくまきゅうちゃんの背中です。ユナお姉様、お屋敷の中を歩いてきてもいいですか?」

「別にいいけど、驚かれたりしない?」

「大丈夫です。お屋敷にいる人たちは、くまきゅうちゃんのこともくまゆるちゃんのことも知っていますから」

そういえば、誕生日パーティーのときに召喚してあげたし、ガマガエルから救い出してあげた後も、召喚している。

だから、わたしが思っているよりも大丈夫なのかもしれない。

わたしはくまゆるを子熊化させると、抱き抱え、ミサとくまきゅうと一緒にお屋敷の中を散歩する。

そして、二階にアイアンゴーレムがあるのを見たとき、一瞬驚く。

そうだった。グランさんにプレゼントしたんだった。すっかり忘れていた。ゴーレムに驚いたけど、たまにメイドさんたちもくまきゅうに触ったりして、怖がられることもなく、散歩は何事もなく終わった。

夜は、くまゆるとくまきゅうと一緒に寝たいというミサの願いを聞き、四人で一緒に寝る。

そして、翌日の朝。わたしは、グランさんたちにお礼を言って、お屋敷を出る。ミサが少し寂しそうにしていたけど、こればかりは仕方ない。

商業ギルドに行くと、ギルドマスターの部屋に通される。

「ミレーヌさん、ずるいです」

「そうです。横暴です」

「ここは公平にするべきかと」

部屋に入ると、ミレーヌさんを問い詰めているローザさん、ラン、セニアさんがいる。ジェイドさんなど男たちは呆れるように見ている。

何かあったの?

もしかして、なにか問題が起きたとか?

「ユナか、おはよう」

わたしに気づいたジェイドさんが挨拶をしてくる。

「うん、おはよう。なにかあったの?」

「簡単に言えば、クマの取り合いだ」

「クマ? もしかしてくまゆるとくまきゅうのこと?」

話を聞けば、誰がくまゆるとくまきゅうに乗ってクリモニアに帰るかという、くだらない話だった。だから、男性陣は呆れた顔で見ていたんだね。

「ユナちゃんは、誰をくまゆるちゃんとくまきゅうちゃんに乗せるの?」

誰がくまゆるとくまきゅうに乗ってもいいやと思っていたら、言い争いがわたしに飛び火してきた。

だからといって、誰しもが納得する解決方法なんてあるわけがない。逆に言えば、誰しもが納得しない方法ならある。

「わたし、一人で帰るよ」

これがお互いに文句がでない方法だ。

わたし一人が恨まれればいいことだ。

「そういうことなんで、わたし帰りますね」

わたしが部屋から出ようとすると、ミレーヌさんが止める。

「ユナちゃん、待って。本当に急いで帰らないといけないの。ほら、わたし、黙って出てきたでしょう」

そういえば、そうだった。置手紙を置いてきたとはいえ、黙って出てきたのは変わりない。

「だから、早く帰らないといけないの」

そう言われると、無下にできなくなるのが心情だ。

わたしはミレーヌさんを連れてきたときの状況を説明する。

「俺がミレーヌさんに報告を頼んだからな」

「それに、同意したのは、みんなだ」

ジェイドさんとブリッツが同情の目をミレーヌさんに向ける。

「だからって、抜け出さなくても」

「簡単に仕事を放り出して抜け出せるほど、商業ギルドのギルドマスターは楽じゃありません」

話し合いの結果、ミレーヌさんはわたしと一緒にくまゆるとくまきゅうに乗って帰ることになった。

二人乗れるかもしれないけど、急ぎならといって、渋々と他の者たちは遠慮することになった。

そんなわけで、わたしとミレーヌさんはくまゆるとくまきゅうに乗って、一足先にクリモニアに戻ることになった。

急げば、半日もせずに戻ってくることができる。

そして、クリモニアに戻り、綿のこともあるので、わたしも一緒に商業ギルドに向かう。

ミレーヌさんは周りを見ながら、商業ギルドの裏口に回る。

「静かにね」

「静かにもなにも、結局は知られることになるんだから、意味がないと思うけど」

中に入って、黙って出てくるわけではない。

「そうだけど。一応ね」

裏口のドアを開けて、中に入ると、女性が一人立っていた。

「ギルマス、遅いお帰りで」

「ええ、急な仕事が入って、大変だったわ」

「別に、行くなとは言いません。ですが、黙って行くのはやめてください」

「手紙を置いていきましたよ」

「何度も言っていますが、口頭でもお願いします」

今回が初めてじゃなかったんだね。

ミレーヌさんは注意を受けたものの、それほど怒られることはなかったけど、机の上に置かれている仕事の山を見て、項垂れていた。

もしかして、ギルド職員は怒るより仕事を優先させたのかもしれない。

わたしは綿の件でナールさんのお店に行き、正式に綿を購入する。盗賊が盗んだ物の権利は取り返した者が貰えると聞いてたけど、今回は依頼料が貰えるので、取り返したものは元の持ち主に返される。なので、正式に購入することになる。

綿を購入したわたしはフィナたちをクマハウスに呼ぶ。

「ユナさん、綿を取り戻すために、盗賊討伐に行っていたんですね」

「盗まれたなら、取り返さないとね」

わたしの物はわたしの物だ。(購入予定も含む)

「それじゃ、最後の仕上げをしちゃおうか」

「はい!」「はい」「うん」

三人は元気に返事をする。

わたしは綿が入った袋をクマボックスから取り出す。

「これがくまゆるちゃんたちに入れる綿ですね。柔らかいです」

ノアは綿を触って感触を楽しんでいる。それを真似してフィナとシュリも綿を楽しそうに触っている。

「ほら、始めるよ」

わたしとノア、フィナとシュリと分かれて、くまゆるとくまきゅうぬいぐるみに綿を入れることにする。

綿を入れる場所として、背中のつなぎ目の場所が少しだけ開いている。ここから綿を入れ、最後に縫い合わせれば完成する。

「それでは、足から入れていきますね」

ノアは綿を取ると、くまゆるぬいぐるみの背中に手を入れて、綿を入れていく。わたしはその手伝いをする。

足が膨らみ、腕も膨らみ、小さな尻尾も膨らみ、大きな頭にも綿が詰め込められていく。

「やっと、頭に綿を入れることができました」

ノアは額に汗を掻きながら、嬉しそうにする。ぬいぐるみが大きいこともあって、結構重労働だ。何度も手を入れ形を整える。小さいぬいぐるみと違って、動作が大きくなる。

ファスナーなどがあれば楽なんだけど、そんなものはないので、綿を入れる穴は最小限の箇所になる。

その小さな穴から綿を入れていくので、意外と大変なのだ。

わたしはハンカチと冷たい水を用意する。

「はい、ハンカチと水だよ」

「ありがとうございます」

ノアは額に浮かぶ汗を拭き、冷えた水を飲む。

「フィナたちも、疲れたら休むんだよ」

ちゃんと全員分用意する。

「はい」

「うん!」

わたしも冷たい水を飲んで、一休みするとノアの手伝いを再開する。

「後は、体に入れるだけですね」

最後に胴体に綿を入れることになる。一番、綿を使う部分だ。

本当に、子熊サイズのくまゆるとくまきゅうのぬいぐるみに使う綿の量の何倍使っているんだろう。

10個分以上は間違いない。間違いなく、それ以上だ。

そんな大量の綿をノアはくまゆるぬいぐるみの中に入れていく。

フィナとシュリのほうを見れば、こちらも一生懸命にくまきゅうぬいぐるみに綿を入れている。

そして、徐々にくまゆるとくまきゅうのぬいぐるみは膨らんでいく。

「このぐらいでいいでしょうか?」

「いいと思うよ」

後は、開いている背中を縫えば終了だ。

ノアにぬいぐるみを押さえてもらい、綺麗に目立たないように、わたしが縫っていく。

ファスナーがあれば、閉めるだけでよかったんだけど。無いものは仕方ない。

そして、最後の箇所を縫い終え、糸を切る。

「できた」

「できました」

等身大のくまゆるぬいぐるみが完成した。

「ユナさん、ありがとうございます。大切にしますね」

ノアは等身大くまゆるぬいぐるみに抱きつく。

「いや、まだだよ。これは誕生日プレゼントだから、誕生日当日まで、わたしが預かっておくよ」

わたしはそう言うと、等身大くまゆるぬいぐるみからノアを引き離し、それをクマボックスに仕舞う。

「ああ、まだ、堪能してないのに。ユナさん、酷いです」

酷いと言われても、これは誕生日プレゼントだ。今、渡すわけにはいかない。

「誕生日パーティーまで我慢だよ」

「そんな~」

ノアはがっくり肩を落とすが、こればかりは仕方ない。等身大くまゆるとくまきゅうのぬいぐるみはノアの誕生日プレゼントだ。

そんなやり取りをしていると、フィナとシュリが作っていた等身大くまきゅうぬいぐるみも完成する。

「こっちもできました」

「やわらかい」

シュリがくまきゅうぬいぐるみに抱きついている。

「シュリ。ノア様の誕生日プレゼントなんだから、ダメだよ」

「うん」

注意すると、シュリは素直に等身大くまきゅうぬいぐるみから離れる。

「それじゃ、こっちも仕舞っちゃうね」

わたしがクマボックスに仕舞うと、ノアは残念そうな表情をしていた。

こればかりはダメだ。堪能するのは誕生日までお預けだ。