軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

543 クマさん、ノアの誕生日プレゼントを作ることにする

わたしとノアはクリモニアに戻ってきた。

クリモニアに帰ってきたわたしはクマハウスの部屋の空気の入れ替えと、洗濯、掃除、布団を干す。たまにフィナが来ていたようで、布団がふかふかだった。

そして、午後は帰り際にエレローラさんから受け取った絵本の4巻を孤児院に持っていくことにする。

わたしが孤児院にやってくると、幼年組が集まってくる。わたしはみんなの頭を撫でてあげ、新しい絵本を渡してあげる。幼年組の子たちは嬉しそうに絵本を受け取ると、ニーフさんのところに行き、絵本を読んでもらい始める。

「ユナさん、いらっしゃい」

幼年組の相手をしていたら、院長先生がにこやかに声をかけてくれる。

「院長先生。なにか、困ったことはありますか?」

「ふふ、なにもありませんよ。毎日、美味しい食事も食べられ、暖かい部屋で寝ていますから。子供たちも元気にしてますよ」

絵本を読む子供たちも笑顔だし、本当に困ったことはないんだろう。

それから、わたしはフィナに戻ってきたことと、ノアの誕生日パーティーについて相談しようと思い、コケッコウの小屋に会いに行こうとしたが、来るのが遅かったこともあって、既にフィナとティルミナさんは帰った後だった。

なので、わたしはフィナの家に向かう。

フィナの家に着くと、フィナが笑顔で出迎えてくれる。

「ユナお姉ちゃん!?」

いろいろとあったせいで、フィナに会うのも久しぶりの感じがする。でも、実際は10日ぶりぐらいだ。

「ただいま。なにもなかった?」

フィナの顔を見れば、なにもないと思うけど。セレイユのこともあったので、一応、確認する。

「なにもないですよ」

想像通りの返答が返ってくる。

「今、大丈夫? フィナに相談があるんだけど」

「相談ですか?」

王都からノアと帰ってくるときに、こんなやり取りがあった。

「誕生日パーティーは誰を呼ぶの?」

「ユナさんは、もちろん、お呼びしますよ」

まあ、それは分かっていた。問題は他の参加者だ。わたしの知らない人がいたら、なるべくなら、参加は辞退したいところだ。

「あと、ミサにフィナ、あとはシュリでしょうか」

「それだけ?」

予想外だ。貴族なんだから、もっとたくさんいてもいいと思うんだけど。

「ユナさんとフィナを呼ぶのは決まっていました。だから、お父様にお願いして、他の人を呼ぶのはお断りしました」

気を使ってくれたみたいだ。

「あと、孤児院の皆さんもお呼びしようとしたのですが、お父様にやめたほうがいいと言われました。孤児院のみんなは家族がいません。中には自分の誕生日を知らない子もいます。それなのにわたしは自分の誕生日に誘おうとしてしまいました。そのことをお父様に言われて、自分に配慮がなかったことに気づきました。あんなに明るく元気でも家族がいないんですよね」

確かにクリフの言う通りだ。まして、ノアは貴族だ。裕福な家庭で育ち、家庭に恵まれている。そんなノアの誕生日パーティーに参加しても、中には良い気持ちにならない子もいるだろう。妬みも出てくるかもしれない。こればかりは繊細で難しいところだ。ノアが嫌われる可能性もある。せっかく、お店の子たちと仲良くなり、海でも一緒に遊んだりしたのに。仲が悪くなったら、今まで、積み上げてきたものが崩れ落ちてしまう。

そう考えると孤児院の子供たちの参加は控えたほうがいいかもしれない。

わたしみたいに大人なら、両親のことは気にならないけど、孤児院にいる子供たちは、年齢もそうだが、精神的にも子供だ。

「だから今回はフィナたちだけになります。でも、孤児院で祝いごとがあったときには、何かしら、してあげられたらと思っています」

「そのほうがいいかもね」

とりあえずは、ノアの考えは理解した。

そんなわけで、ノアの誕生日パーティーにお呼ばれされる予定のフィナに、ノアの誕生日プレゼントについて相談することにした。

フィナはわたしの話を聞くために、家の中に入れてくれる。

「フィナ、一人?」

いつも、フィナたちが食事をする部屋に案内されるが、部屋の中には誰もいない。

「お父さんは仕事で、お母さんとシュリは、買い物に行ってます。わたしは家の洗濯物を片付けようと思って」

本当に、良い子だね。

わたしも家に帰ったら、布団を片付けないといけないね。

「それで、相談って、なんですか?」

「ノアの誕生日が近いんだけど」

フィナは驚きの表情を浮かべる。

今更だけど、話してよかったのかな?

まあ、口止めされていないし、いいよね?

「その誕生日パーティーにわたしもフィナもシュリも、お呼ばれされることになっているんだけど」

「ノア様の誕生日パーティー……参加しないとダメですよね」

「断ったら、悲しむと思うよ」

流石のわたしもノアの誕生日パーティーは断れない。

「そんなに不安にならなくてもいいと思うよ。参加するのはわたしとフィナとシュリ。それからミサだけになるみたいだから」

わたしはノアから聞いた誕生日パーティーに参加するメンバーの名前を教えてあげる。それを聞いて、フィナは安堵する。

どうやら、わたしと同じで、いろいろな人が参加すると思っていたみたいだ。

「それで、ノアに誕生日プレゼントを贈ろうと思うんだけど。ミサの誕生日プレゼントのときと同じように、一緒にプレゼントしたら、どうかなと思って。フィナ、ミサの誕生日プレゼントで困っていたでしょう?」

「うん、ユナお姉ちゃんが一緒でいいなら、助かります。でも、プレゼントは何にするんですか?」

「それなら、本人から希望を聞いているから、大丈夫だよ。ノアには普通の大きさのくまゆるとくまきゅうのぬいぐるみを頼まれたよ」

わたしの言葉にフィナは目を大きくする。

「思い出しました。ミサ様の誕生日パーティーのとき、大きなくまゆるとくまきゅうのぬいぐるみが欲しいとノア様は言っていました」

ああ、確かに言っていたような。

「でも、本気だったんですね。材料費がすごくかかりそうです」

お金のことに、考えがいくのはフィナらしい。

「お金の心配はフィナはしないで大丈夫だよ」

お金はノアが出すと言っていたけど、貴族の娘でも、10歳の女の子から受け取るつもりはない。これがわがまま娘だったら、お金のうんぬんでなく、そもそも、プレゼントはしないし。誕生日パーティーにも参加はしない。

「フィナは作るのを手伝ってくれれば、それが誕生日プレゼントだよ」

「分かりました。一緒に作ります」

よかった。シェリーにもお願いするつもりだったけど、基本は自分たちだけで、作ろうと思っていた。

「一応、シュリも誘おうと思うけど、シュリって、裁縫って」

「たまにお母さんと一緒にやってるから、少しなら。それに話を聞いたら、手伝うって言うと思います」

それにシュリだけ仲間外れにしたら、可哀想だ。

とりあえず、わたしとフィナは等身大くまゆるとくまきゅうのぬいぐるみを作るため、シェリーに相談しに行くことにする。

わたしとフィナはシェリーがお世話になっている裁縫屋に入り、ナールさんに挨拶をして、シェリーに会いたい旨を伝える。

ナールさんは嫌な顔一つせず、すぐにシェリーを呼んできてくれる。

「ユナお姉ちゃん、それにフィナちゃんも、どうしたんですか?」

「シェリーにお願いがあって。シェリーにぬいぐるみ作りを手伝ってもらおうと思って」

「ぬいぐるみですか? くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんのぬいぐるみなら、作ってありますよ。今、持ってきますよ」

「ちょっと待って!」

奥の部屋に戻ろうとするシェリーを止める。

「作ってほしいのは、くまゆるとくまきゅうのぬいぐるみだけど、ちょっと大きさが違うの。普通の大きさのくまゆるとくまきゅうのぬいぐるみを作る予定なの」

「えっと、普通のくまゆるちゃんとくまきゅうちゃんって、こんな大きさのですか?」

シェリーは両手を使って、大きなくまゆるとくまきゅうの大きさを表そうとする。多分、もっと大きいと思うけど、小さなシェリーでは、そこまでの大きさは表現できない。

でも、言いたいことは伝わるので、頷く。

「うん、その大きさのぬいぐるみ」

「どれだけ、材料費がかかるか分かりませんよ」

「その辺りは気にしないでいいよ」

フィナにも言ったけど、お金の心配は必要ない。材料さえあれば、作れるかどうかだ。

「それで、作れる?」

「大きなくまゆるちゃんとくまきゅうちゃんのサイズを測らせてもらえれば、作れると思います」

なんとも、心強い言葉だ。

わたしは仕事をしていたテモカさんとナールさんに、シェリーの貸し出し許可をお願いする。

「でも、そんな大きなぬいぐるみは、どうするのですか?」

「この街の領主の娘の誕生日プレゼントだよ」

「領主の娘……それって、ノアール様の!?」

その言葉に話を聞いていたテモカさんとナールさんも驚く。

いつも一緒にいるから、忘れがちだけど。普通の人からしたら、領主の娘は、近寄りがたい人物だ。初めて、フィナがノアに出会ったときのことを思い出す。

フィナは、今は普通に会話しているけど、初めの頃は緊張しながら話をしていた。

ノアはわたしのお店に食べに来たりしているから、お店で接客をしている子供たちは意外とノアと普通に接している。でも、シェリーはノアとの接点は少ない。前に一緒に水着選びをしたぐらいかもしれない。

そう考えると、これが普通の反応かもしれない。

領主の娘のプレゼントってこともあって、シェリーの貸し出し許可は簡単に下りた。