軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

544 クマさん、ぬいぐるみを作る

翌日、シェリーがくまゆるとくまきゅうの等身大のぬいぐるみを作るのを手伝うため、朝早くからクマハウスにやってきた。

それから、昨日プレゼントの相談をしたフィナと、フィナから話を聞いたシュリもいる。

「それじゃ、サイズを測らせてもらいますね。くまゆるちゃん、動かないでくださいね」

「くぅ〜ん」

シェリーはメジャーを取り出し、くまゆるのサイズを測り始める。

「くまゆるちゃん、足をこちらに、向けてください」

「くぅ〜ん」

右足の裏から始まり、足の長さ、太さ、いろいろな箇所のサイズが測られていく。くまゆるはシェリーの指示に従って、サイズが測りやすいように体を動かしていく。

そして、フィナとシュリも、シェリーの指示書に従って、くまきゅうのサイズを測っていく。くまゆるとくまきゅうは同じ体型なので、シェリーが測ればいいのだが、間違いがおきないようにダブルチェックって意味合いがある。二度確認すれば、サイズの間違いもおきない。

まあ、それは表向きの理由で、シュリが自分も測りたいと言い出したからだ。

これも一つの勉強なので、やらせることにした。今回の経験がシュリの成長の糧になるかもしれない。やりたいという気持ちが大切だ。

シュリはくまきゅうを座らせて、メジャーを当てる。

「お姉ちゃん、ここでいいんだよね」

「もう少し、下かな?」

フィナがシェリーの指示書を見ながら答える。

シェリーの指示書にはどこの部分を測るか事細かく書いてある。クマの絵付きだ。

シェリーは一人で、どんどん、くまゆるのサイズを測っていく。フィナとシュリは二人でやっても、シェリーの速度には追い付かない。

「くまきゅうちゃん、尻尾動かしちゃダメ」

「くぅ〜ん」

シュリがくまきゅうの尻尾を測ろうとするが、小さい尻尾が小さく動いている。

「シュリ、優しく、測らないとダメだよ」

「うぅ、分かってるよ」

微笑ましい光景だ。

でも、このままでは進まないので、わたしもくまきゅうのサイズを測るのを手伝うことにする。

「うぅ、体が大きいよ」

「シュリ、こっちに渡して」

シュリとフィナは二人がかりで胴体のサイズを測る。

シェリーのほうも一人では測れない場所はわたしが手伝う。

「この肉球のサイズも測るの?」

「うん、必要だからね」

まあ、無いよりは、あったほうがいい。そっくりに作るなら、必要だ。

シェリーの細かい指示が書かれた紙に従い、サイズを測っていく。

そして、なんだかんだで苦労したけど、くまゆるとくまきゅうの協力もあって、サイズを測り終える。紙にはくまゆるとくまきゅうのあらゆるサイズが記入された。前に子熊化したくまゆるとくまきゅうのぬいぐるみを作るときに思ったけど。もし、自分の体のサイズだったら、破り捨てていたね。

ちなみに、くまゆるとくまきゅうのサイズは誤差程度だった。シュリは、ちゃんと測れたみたいだ。

とりあえず、一区切りついたので、休憩をする。ちょうど、お昼の時間だ。

わたしは昼の準備をする。テーブルの上には簡単な昼食が用意された。

「でも、本当に、こんなに大きなぬいぐるみを作るんですか?」

シェリーはくまゆるとくまきゅうのサイズが書かれた紙を見ながら、あらためて尋ねる。

「ノアが欲しがっているからね。もし、シェリーが作れないって言うなら断るけど。わたしとフィナだけじゃ作れないし」

スキル、クマの裁縫。イメージしたぬいぐるみなどが作れるようになる。とかがあれば別だけど、そんな都合が良いスキルは覚えていない。

まあ、あったとしても、活用できる場面は、ほとんどなさそうだけど。

「いえ、大丈夫です。作れます。ただ、いつも作っているくまゆるちゃんたちのぬいぐるみの何個分の材料になるか、考えてしまうので」

まあ、その気持ちは、分からないでもない。人は大きいものを見ると、なにかと比較してしまう。元の世界でも東京ドーム何個分とか、よく表現されていた。もっとも、東京ドームに行ったことがないわたしには、大きさは想像できなかった。

「でも、これだけの大きさになると、中に入れる綿は軽いほうがいいですよね」

「たしかに、重いと動かすのも大変だから、軽いほうがいいね」

「いつも、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんのぬいぐるみに使っている綿だと重くなりそうです」

「軽い綿ってあるの?」

「ありますが、値段が高いです」

「フィナにも言ったけど、費用のことは考えないでいいよ」

お店の売り上げもあるし、ミリーラの町へ行くトンネルの通行料の一部が入金されている……はず。それに、元の世界から持ってきたお金もある。もちろん、わたしだって、仕事をしている。

くまゆるとくまきゅうのぬいぐるみの一つや二つ、大したことはない。

問題は技術的に作れるかと、材料があるかどうかだ。

「分かりました。それじゃ、帰ったら、テモカさんにお願いしておきます」

昼食を終え、シェリーは型紙作りを始める。

「テーブルを借りますね」

型紙用の紙や道具も用意してあり、シェリーは測ったサイズを基に型紙を描いていく。

基本、大きいだけで、小さいくまゆるとくまきゅうのぬいぐるみと作り方は変わらない。パーツごとに作って、縫い合わせる。

でも、今回は一つのパーツが大きい。

「大きな布が必要ですね」

「大丈夫?」

「大丈夫ですよ。お店はいろいろな種類と大きさの布を扱っていますから」

もう、お店のことは把握しているんだね。

本当に、頼もしくなったものだ。

流石に型紙作りは素人のわたしたちが手伝えることはないので、ここは専門家のシェリーに任せる。

なにもすることがないフィナとシュリは解体の仕事がしたいというので、ウルフの解体をお願いする。最近はほとんどの肉は孤児院とお店に運んでいる。毛皮と魔石だけがクマボックスに溜まっていく。

わたしはシェリーの仕事風景を眺めながら、くまゆるとくまきゅうに寄りかかりながら、のんびりとしている。

やっぱり、平和が一番だね。

最近、いろいろあったので、なおさらに、そう思ってしまう。

くまゆるとくまきゅうに寄りかかって、ウトウトとしていると、フィナとシュリに起こされる。半分寝ていたみたいだ。外を見ると、夕刻になっており、解体も終わったそうだ。

シェリーのほうを見ると、黙々と真剣な目付きで仕事をしていた。

「シェリー、今日はここまでにしよう」

声をかけると、我に返ったようにわたしたちのほうを見る。

「ユナお姉ちゃん? でも、まだ、終わって」

シェリーはペンを持って、仕事の続きをしようとする。

「ダメだよ」

「それじゃ、続きは家に帰って」

「だから、ダメだよ」

シェリーには、ぬいぐるみ作りを徹夜で作った前科がある。仕事を家に持って帰らせてはいけないタイプだ。

「でも、もう少しで終わるから」

そのもう少しが、どのくらいか分からない。それにそんなに慌てる必要はない。

それでも、シェリーはやりたそうにしている。

「分かったよ。でも、孤児院に仕事を持って帰るのは禁止。今日はわたしの家に泊まればいいよ」

「泊まって、いいんですか?」

「部屋もあるしね。ただし、仕事はわたしが寝るまで。わたしが寝ると言ったら、寝るよ。それが許せる範囲だよ」

もう少しで終わるなら、泊っていけばいい。もし、終わらなくても、仕事はわたしが寝るまでだ。

「ユナ姉ちゃん。わたしも泊まりたい」

わたしがシェリーに泊まるように言うと、シュリも泊まりたいと言い出す。

「別にいいけど」

部屋は余っているし、寝る場所もある。シュリが泊まることになるなら、フィナも心配して泊まることになる。

わたしはフィナたちをクマハウスに残し、ティルミナさんと院長先生に許可をもらうため、フィナの家と孤児院に向かう。

こういうとき、電話の有難みが分かるね。

手土産はフィナとシュリが解体したウルフの肉を持っていく。

ティルミナさんと院長先生は快く許可をくれる。

そして、わたしはすぐにクマハウスに戻ってくると、夕食の準備に取りかかる。

ちゃちゃっと肉と野菜を炒め、モリンさんが焼いてくれたパンを用意する。パンに挟めば美味しい。

夕食を終えると、フィナたちはお風呂に入らせ、寝るまで、約束通りにシェリーに仕事をさせる。

わたしたちはやることがないので、寝る時間になるまで、絵本をフィナとシュリに渡す。

「絵本ができたんですね」

「あ~、わたし、見る!」

絵本の表紙を見て恥ずかしそうにするフィナ。絵本を見て、喜ぶシュリ。

そういえば、絵本を作ったときにはシュリは居なかったから、初めて見ることになる。

シュリは絵本を手にするとソファの上に座り、フィナは隣に座り、絵本を読み始める。

「みんなで、冒険者ギルド。お父さん、じゃなくて、ギルドマスターのおじちゃん?」

絵本を読みながら、独り言を言う。

「お姉ちゃんだけ、一人でクマさんと散歩ずるい」

「わたしじゃないよ。絵本の中の女の子だよ」

絵本の女の子=フィナ。なので、シュリの言い分も間違っていない。

シュリは絵本を捲る。

「馬車が襲われている……」

馬車が魔物に襲われているシーンだ。

そして、女の子は冒険者ギルドに呼ばれ、領主の娘さんに会いにいくことになる。

「この女の子。ノア姉ちゃん?」

「一応、そうなるかな?」

そして、最後まで読み終わる。

「わたしもノア姉ちゃんと友達になりたかった」

少し、残念そうにしていた。

「女の子の妹も、いつかは友達になれるよ」

「本当?」

「シュリもノアと友達でしょう? だからなれるよ」

わたしの言葉にシュリは嬉しそうにする。

そして、時間も遅くなる。

「それじゃ、そろそろ寝るよ」

「終わりませんでした」

シェリーはペンを置く。

約束は寝るまでだ。

「続きは、明日の朝からやればいいよ。休息も大切だからね」

ゲームだって、休息は必要だ。集中力は落ちるし、長くは続かない。それに何度も言っているが、猶予はまだある。

わたしは3人を二階の部屋に案内する。

「この部屋は」

3人を案内したのは和室だ。和の国で畳を購入したので、一部屋を和室にしてみた。たまに、わたしも、この部屋に布団を敷いて、くまゆるとくまきゅうと寝ている。わたしは3人分の布団を出し、畳の上に並べる。

「ここで寝るのですか?」

「落ち着かないなら、ベッドもあるけど」

他の部屋もある。

「いえ、大丈夫です。足も気持ちいいですし」

シェリーは畳の上を歩きながら、そんな感想を漏らす。

「フィナもシュリも大丈夫だよね?」

「はい」

「うん、大丈夫だよ」

シュリは嬉しそうに布団の上に倒れている。

「夜更かしはしないで、ちゃんと寝るんだよ」

「はい」

「はい」

「うん」

3人は返事をする。

大丈夫かな?

わたしは自分の部屋に戻り、子熊化したくまゆるとくまきゅうと一緒に寝る。