軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

542 クマさん、王都に戻ってくる

ユーファリアの街を出発したわたしとノアは、その日のうちに王都に到着して、エレローラさんの家でのんびりしていた。

「くまゆるちゃん、気持ちいいですか?」

「くぅ~ん」

「次はくまきゅうちゃんをしますから、少し待ってくださいね」

「くぅ~ん」

ノアは子熊化したくまゆるにブラッシングをしている。

「はい、終わりです。くまきゅうちゃんの番です」

ノアは楽しそうにくまきゅうのブラッシングを始める。そんなノアを見ながらのんびりしているとシアが帰ってきた。

「お姉様、お帰りなさい」

「お帰り」

「どうして、ユナさんとノアが家にいるんですか!?」

「どうしてって、シアたちを追い越して、先に帰ってきたからだよ」

そう、わたしとノアは途中で学生たちの乗る馬車を追い越してきている。もちろん、気づかれないように、街道の外れを移動した。

「追いついたなら、声をかけてくださいよ」

「くまゆるとくまきゅうが一緒だったし」

なにより、クマの格好をしていた。ユーナでなく、ユナの状態だ。シアだけなら声をかけたけど、他の学生たちがいるなら、面倒だから声をかけるつもりはない。

「わたしも、馬車じゃなくて、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんに乗って、帰ってきたかった」

シアはそう言うと、ブラッシングを終えたくまゆるを抱きかかえる。

「ああ、ふかふかで気持ちいい」

ノアがブラッシングをしてくれたからね。

それから、シアは着替えてくると、くまゆると遊び始める。わたしはソファーの上でのんびりとしていると、エレローラさんが帰ってくる。

「あら、賑やかと思ったら、娘が三人も帰ってきていたのね」

あなたの娘は二人ですよ。三人もいませんよ。面倒なので、ツッコミはしない。

「お母様、おかえりなさい」

「ただいま」

エレローラさんは駆け寄ってくるノアの頭を優しく撫でる。

「それでシア、交流会はどうだったの?」

「頑張ったよ。でも、ユナさんのほうが活躍したのかな?」

「ユナちゃん?」

「ユナさんも、交流会に参加したんですよ」

シアの説明が足らないところをノアが付け加える。

「あら、もしかして学園に入学したの? わたしに言ってくれれば、手続きぐらいしたのに」

「違いますよ。王都の学生の一人が魔力の使いすぎで競技に参加できなくなったから、臨時の助っ人で、参加しただけですよ」

「あら、そうなのね」

少し残念そうにする。

エレローラさんは娘たちの話を聞くと自室に戻る。わたしは追いかけるように部屋を出て、エレローラさんに声をかける。

「エレローラさん、あとで少し時間をもらえますか?」

エレローラさんにユーファリアの件を話しておこうと思った。

一応、エレローラさんは魔物が一万集まった経緯を知っているし、わたしが関わっていることも知っている。エレローラさんに説明しておいたほうが、セレイユの父親が報告しに来たときに、信憑性が増すと思ったからだ。

わたしが真面目な話をしようと思っているのに、この人は、バカなことを言い出す。

「あら、愛の告白かしら、わたしは夫も娘もいるのに困ったわ」

頬に手を当てて、困ったポーズを取る。

「違います」

「冗談よ。あとじゃなく、今聞くわよ」

わたしは話をするため、エレローラさんの部屋に移動する。

「それで話とは何かしら? 娘たちに聞かれたくない話?」

「ノアは少し知っているけど、シアはなにも知らないから。話すことじゃないからね」

「それで、話とはなにかしら」

わたしはユーファリアの街で起きたことを話す。

「そんなことが……」

「だから、セレイユの父親が報告に来たら、信じてあげてほしいんだけど」

「ふふ、わかったわ。それに国王陛下もバカではないわ。あのことがあったんだから、信じてくれるわ。それにしても、ユナちゃん。相変わらず、人助けをしているのね」

「好きでしているわけじゃないですよ。目の前に、たまたま困っている人がいるだけですよ」

「困っているからといって、魔物の群れと一人で戦ったり、クラーケンと戦ったり、トンネルを掘ったり、村を襲っているブラックバイパーを一人で倒しに行ったり、鉱山のゴーレムは、わたしからの依頼だったわね。それから、砂漠のことも聞いているわよ。この数ヶ月で、何人の人がユナちゃんに救われているのかしら」

「たまたまですよ。この世には、わたしが知らないところで、もっと理不尽に困っている人や死んでいる人が、たくさんいると思うよ」

「そんな全ての人を救うことは誰にもできないわ」

「だから、せめて、目に見えるところは守っているだけ」

チートの力があっても万能ではない。もし、この瞬間、フィナが悪人に襲われていても、気づかずに助けることはできない。あくまで、目に見える危険からしか守ることはできない。

「ふふ、カッコいいわね。わたしが男だったら惚れているわね」

「こんな格好でもですか?」

「可愛いわよ」

返答になっていないような気もするが、追及はしなかった。

そして、食事の時はノアとシアによる、交流会の話が行われた。

翌日、エレローラさんは久しぶりに会ったノアのために時間をとり、一緒におでかけすることになった。

「ユナちゃんも一緒でもいいのに」

「そうですよ」

「久しぶりに会えたんだから、二人でおでかけしてください」

親子水入らずなのでわたしは不要だ。それにクマの格好したわたしが一緒では目立って仕方ない。

「わたしはフローラ姫のところに顔を出してきますよ」

「それなら、フローラ様も喜ぶわね。ユナちゃんに会えないから、少し寂しがっていたからね」

前回来たのは和の国のお土産を持ってきたときだっけ。時間が経っているようで、経っていないような。でも、子供のときの1日は長く感じられるからね。わたしが思っている以上に長く感じているかもしれない。

ちなみにシアは寂しそうに一人で学園に向かった。学生だから、仕方ない。

わたしは一人でお城に向かい、門番の人に軽く挨拶をして、お城に入っていく。

それと、いつもの門番の一人が走る光景もある。

わたしはフローラ姫の部屋にやってくると、ノックをする。アンジュさんがドアを開けてくれ、部屋の中に通してくれる。

「フローラ様、ユナさんが来てくださいましたよ」

「くまさん!」

フローラ姫はくまきゅうぬいぐるみを抱いている。そんなフローラ姫がわたしに気づくと、わたしのところに駆け寄ってくる。わたしの腹に飛び込んでくるので、受け止める。

こうやって嬉しそうにされると来てよかったと思う。今日来なければ、次回はいつ王都に来るかは分からない。

まあ、クマの転移門を使えば、いつでも来ることはできるけど、タイミングってものがある。

まずは、通常サイズのくまゆるとくまきゅうを召喚して、一緒に遊んであげる。

フローラ姫はくまゆるの背中に乗り、楽しそうだ。ティリアもいれば、会いに行ったけど、シアが学園に行っているので、ティリアも学園に行っている。本当にタイミングって難しいね。

しばらく、フローラ姫と遊んでいると、王妃様が一人でやってきた。

「えっと、一人ですか?」

「フォルなら、エレローラが午後から仕事に来ると連絡があったから、エルナートが逃がさずに仕事をさせているわよ」

どうやら、エレローラさんがノアとお出かけをしたことで、国王は逃げられずにいるらしい。

「ふふ、それで今日はなにがあるのかしら?」

王妃様は嬉しそうに椅子に座る。

最近は王妃様まで、わたしが来ると何かを持ってくると思っているみたいだ。

ニコニコとしている。

そんなに楽しみにされても困るんだけど。

ケーキもプリンもゼレフさんが作っているだろうし、飴細工の在庫はあるけど、前に持ってきたばかりだし、そうなるとあれかな?

王妃様が椅子に座ると、フローラ姫もやってくる。

「なにかたべるの?」

もしかして、フローラ姫も同じ?

わたしはクマボックスから、パンが入ったバスケットを取り出す。そして、お皿の上にパンを並べる。

「あら、可愛い」

「くまさん!」

わたしが出したのはくまパンだ。わたしのお店の人気商品のパンだ。

王妃様とフローラ姫がくまパンに手を伸ばす。

「ふふ、可愛いパンね。どこから食べましょうか」

「くまさん、たべるの?」

「パンだから、美味しいですよ。食べないとパンが可哀想ですよ」

フローラ姫は小さな口で、クマの耳をかじる。

「美味しい」

一口食べ始めれば、止まらない。

二人とも、美味しそうに食べている。

わたしもアンジュさんが用意してくれたお茶を飲みながら、くまパンを食べる。共喰いじゃないよ。

アンジュさんと娘さん用にくまパンを渡し、ティリアの分も渡しておく。今度、会ったときに文句を言われても嫌だからね。

エレローラさんの家に戻ってくると、午後から仕事に行くエレローラさんと入れ違いになる。

「ノア、楽しかった?」

「はい、楽しかったです」

ノアの表情から、楽しかったことが窺われる。

午後は、わたしと王都見物したけど、目立ちまくった。

部屋でノアとくつろいでいると、エレローラさんがやってくる。

「ノア、ちょっといいかしら」

「なんですか?」

ノアはエレローラさんのところに向かう。

「明日には帰るのよね」

「はい。あまり、長居すると、お父様に怒られますから」

「それじゃ、少し早いけど、誕生日プレゼント」

エレローラさんは綺麗な小箱をノアに渡す。

「お母様、ありがとうございます」

ノアは嬉しそうに小箱を受け取る。

「開けてもいいですか?」

「ええ、もちろん」

「これは、首飾り?」

「ええ、でも、これは普通の首飾りではないわ。魔法を使うための媒体にするためのものよ。ノアも11歳になるでしょう。魔法を学ぶようになると思うから、わたしからのプレゼントよ」

「お母様、ありがとうございます」

ノアは首飾りを首にかけ、わたしのほうを振り向き、嬉しそうに見せにやってくる。

「ユナさん、見てください」

首飾りは銀色のネックレスのようになっており、無色の綺麗な宝石が付いていた。

「とても、似合っているよ」

「普段は服の中に入れておけば目立たないし、ドレスにも似合うと思うわよ」

ノアは貴族だし、魔法が使えたとしても、護身用ってことになるんだろう。それなら、杖も必要はないし、おしゃれな首飾りのほうがいい。

「ノア、ごめんなさいね。誕生日にクリモニアに戻れるか、分からないから」

「お母様が忙しいことは知っています。だから、大丈夫です。こうやって会うこともできます。それに今日も忙しいのに時間を作ってくれました」

「うちの娘は、どうしてこんなに可愛いのかしら」

エレローラさんはノアを抱きしめる。

「でも、お母様。これで魔法の練習をしてもいいってことですか?」

「ええ、でも、クリモニアに戻って、クリフの許可をもらってからよ」

「はい!」

その日の夜、ノアは嬉しそうに首飾りを見ている。

「そんなに嬉しい?」

「もちろんです。お姉様やユナさんを見てきて、いつも魔法を使ってみたいと思っていました」

「でも、これで、ノアも魔法が使えるんだね」

「はい。でも、練習が必要だから、頑張らないといけません。それに、魔法が使えるほどの魔力があるかも分かりませんし」

「大丈夫だよ。エレローラさんもシアも使えるんだから、きっと使えるよ」

「はい!」

ノアは嬉しそうに返事をする。

翌日、帰り際にエレローラさんから絵本を渡される。

「ユナちゃん。昨日、渡そうと思っていたのだけれど、ノアのプレゼントで忘れていたわ」

そう言って、エレローラさんが差し出したのは「クマさんと少女」の絵本4巻だった。

「ああ、絵本ができたのですね。お母様、わたしにも1冊ください」

「ちゃんと、あるわよ」

エレローラさんは絵本をノアに渡す。ノアは嬉しそうに受け取る。ノアはパラパラと捲り、自分が出ている絵を嬉しそうに見ている。

わたしもいつもどおりに絵本を10冊受け取り、クマボックスに仕舞う。

「それじゃ、クリフによろしくね」

「ユナさん、ノアをよろしくお願いしますね」

わたしとノアはエレローラさんとシアに見送られ、王都を出発する。

わたしたちを乗せたくまゆるとくまきゅうはクリモニアに向けて走り出す。