軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

454 クマさん、約束をする

「それじゃ、確認するから、少し待っていて」

わたしは部屋から出ようとする。

「どこに行くのじゃ?」

「ムムルートさんに確認しようと思って」

「どうやって、確認するのじゃ。もしかして、これからムムルートの奴のところに向かうのか?」

う~ん、クマフォンで確認するんだけど、普通はどうやって確認するか気になるよね。

「そうじゃないけど、連絡方法も秘密だから?」

「なんじゃ、妾たちのことを信用してないのか? 妾たちはお主の秘密は守る」

「はい、お約束します」

「しまっす」

なにか、シノブだけが言葉が軽いような気がするのは気のせいだろうか?

でも、後で追及されたり、いろいろと尋ねられても面倒なので、契約魔法のことも頭に入れる。

わたしはクマフォンを取り出して、ルイミンに通話する。しばらくすると、ルイミンの声がクマフォンから聞こえてくる。

『ユナさん?』

「今、ちょっといい?」

『はい、大丈夫ですよ。どうかしたんですか?』

クマフォンからのんびりとした声で、ルイミンが尋ねてくる。

「ムムルートさんに会いたいんだけど、行っても大丈夫?」

『お爺ちゃんですか? 大丈夫だと思いますよ。今、一緒に魚釣りをしているところですから』

どうやら、一緒に魚釣りをしているみたいだ。

『ああ、ユナさんもお魚、食べますか? わたし、大きな魚を釣ったんですよ』

こっちのメンバーは不安や 大蛇(オロチ) に悩んでいるのにクマフォンからルイミンの楽し気な声が聞こえてくる。ルイミンはいつも明るく楽しそうだ。

「それもいいんだけど。それじゃ、今から会いに行くって、ムムルートさんに伝えてもらえる?」

『はい、分かりました。今から帰りますね』

「ごめんね。それで、できれば神聖樹のところまで来てもらえないかな?」

『神聖樹ですか?』

「あと、悪いんだけど、前にルイミンやムムルートさんにした契約魔法があったでしょう。それを用意してもらえるようにムムルートさんにお願いしてもらえる?」

『契約魔法ですか?』

「そう、わたしの秘密を話したら『死ぬ』やつ」

わたしは『死ぬ』って言葉の部分を強調して、シノブのほうをチラッと見る。

『ああ、ユナさんのことを話したら苦しくて死にそうになる契約ですね。誰かと契約をするのですか?』

「うん、わたしの秘密を話さないといけないんだけど、ここに1人、話しそうな人がいるから」

わたしは再度チラッとシノブを見る。

「だから、話したら『死ぬ』契約魔法を用意してもらえる?」

『分かりました。お爺ちゃんに言って、すぐに用意してもらいますね』

死ぬって連呼しているのに、クマフォンから聞こえてくるルイミンの声は明るい。

「ごめんね。魚釣りをしているところ」

『魚釣りはいつでもできますから大丈夫ですよ。それより、ユナさんに会えるほうが嬉しいです』

「それじゃ、お願いね」

わたしはクマフォンの通話を切る。

これでムムルートさんを連れてくれば大丈夫だ。

「なにか、わたしのほうを見て物騒なことを言っていたことが気になるっすが、その変な道具から聞こえてきた声は誰っすか?」

「可愛らしい女の子の声でした」

「ムムルートの奴と話すのでは、なかったのか?」

「今の声はムムルートさんの孫娘だよ」

「あやつ結婚して、孫娘までおるのか!?」

「孫は3人いるよ。子供は何人いるか知らないけど」

子供が他にもいれば、孫の数はさらに増える。

「それよりも、みんなは言うことがあるんじゃないっすか? そのクマの形をしたものはなんっすか?」

みんなの視線がわたしの手の上に乗っているクマフォンに集まる。

「可愛いクマさんですね」

「狐のほうが可愛いぞ」

「「くぅ~ん」」

カガリさんの言葉にくまゆるとくまきゅうが反論の鳴き声をする。

「わたしはクマが好きだよ」

わたしの言葉にくまゆるとくまきゅうは嬉しそうにする。

「それで、それはなんっすか?」

シノブは話を元に戻してクマフォンを見る。

「遠くの人と会話ができる魔道具だよ」

「そんな魔道具を持っているっすか。それじゃ、どこにいても、すぐに報告ができるってことっすか? わたしも欲しいっす」

シノブはクマフォンに手を伸ばそうとするので、クマフォンを隠すようにクマボックスに仕舞う。

「ああ~」

「残念だけど、わたしにしか使えないよ」

「そうなんすか? うぅ、そんな便利な魔道具があれば仕事が楽になるんすが」

シノブは悲しそうな顔をするが、シノブにプレゼントしても、わたしとしか会話はできない。

でも、仕事って、やっぱり忍者?

「でも、ユナ様。先ほど、会いに行くとおっしゃっていましたが、どうやってムムルート様にお会いになられるのですか? もしかして、ここから近い場所にいるのですか?」

「なんじゃ、ムムルートのやつ、この近くにいるのか!?」

サクラの言葉にカガリが体を起こす。

「いないよ。離れた場所にいると思うよ」

タールグイがどのような移動をしているか分からないけど、エルフの村の近くではないと思う。

「それじゃ、どうやって、会いに行くと言うのじゃ?」

クマの転移門だけど。でも、その前に確認することがある。

「わたしからも確認だけど、ムムルートさんを島に連れてきても大丈夫なの? 男の人は入ると力が抜けて動けなくなるんだよね?」

この島には男性禁止の結界が張られている。ムムルートさんを連れてきても、動けないなら意味がない。

「お主が言うムムルートが妾がいうムムルートと同じなら大丈夫じゃ。さっきも言った通り、大蛇を封じる結界を作ったのはムムルートじゃ、その結界にはムムルートの魔力が籠っている。その魔法陣に妾が男性除けの魔法陣を重ねがけした。その結界に籠っている魔力と同じ人物なら、なにも影響はない。それにそんな結界があったら、あやつが入ってこれないじゃろう。妾はムムルートがやってくるのを百年以上も待っていた」

百年以上前って、もしかして、恋愛感情があったりするのかな?

カガリさんは未来のわたしみたいにプロポーションはいいし。ムムルートさんと何かあってもおかしくはない。

だけど、ムムルートさんには奥さんも子供も孫もいる。でも、結婚する前ならセーフかな?

「それなら、ムムルートさんを連れてきても大丈夫なんだね」

「ああ、大丈夫じゃ。ムムルートを含め、あの結界に携わった者は入れる。もっとも、生きているのはムムルートぐらいじゃろう」

人はエルフみたいに長生きはできない。だから、結界の中に入れる男性はムムルートさんだけになる。

「それでユナ様、ムムルート様をどうやって連れてくるのですか?」

「本当は秘密なんだけど。今回は多くの人の命がかかっているし、ムムルートさんがいればなんとかなる可能性があるんでしょう? だから、わたしの秘密も教えるけど、さっきも言ったけど誰にも言わないでほしい。本当なら契約魔法をしてほしい」

「先ほど言っていた、ユナ様の秘密を話したら死ぬと言うものですか?」

「うん、知られるといろいろと面倒臭くなるから」

「先ほども言いましたが、わたしは誰にも言いません。ですので、ユナ様が安心するのでしたら、その契約魔法を受けます」

「妾もじゃ、ムムルートを連れてくることができるなら、どんな契約でもしよう」

サクラもカガリも悩むこともせず、わたしが「死ぬ」と言った契約魔法に了承する。

「本当にいいの? 言っておいてなんだけど、死ぬかもしれないんだよ」

「構いません。そもそも、話すつもりはありませんから、死ぬことはありません」

「妾はそんなに口が軽い女じゃない」

二人は絶対に口にしないという気持ちがあるから、契約を怖がっていない。

そして、残ったシノブに視線が集まる。

「考えることはないっすよ。わたしはユナに命を救われているっす。ユナはこの国を救ってくれる人っす。ユナが黙ってほしいと言うなら、誰に聞かれても話さないっす。話せと言うなら、死ぬっす」

「本当にいいんだね?」

「わたしの命はユナのものっすよ」

シノブは右手で心臓を押さえる。

「そんな命はいらないよ。わたしは黙っててほしいだけ」

皆と約束をしたわたしはクマの転移門を出す。

「扉が出てきました」

「クマじゃのう」

「クマっす」

3人がクマの転移門を見て、それぞれ感想を漏らす。

「この門を開くと、ムムルートさんが住んでいる村につながるよ」

「それじゃ、この扉の先にムムルートが……」

カガリさんは門を開けようとする。

「その扉はわたしにしか開けられないよ」

「そうなのか?」

「さっきの遠くにいる人と話せる魔道具もそうだけど、わたしにしか使えないんだよ」

会話をしていると、クマボックスに仕舞ったクマフォンが「くぅ~ん、くぅ~ん、くぅ~ん」と鳴く。

わたしはクマフォンを取り出す。

『ユナさん、神聖樹の近くまでやってきましたけど』

「それじゃ、今から行くね」

『はい、待っていますね』

再度、通話が切れる。

「それじゃ、行ってくるけど、他の人が来ないようにしてね。くまゆるとくまきゅうはシノブが怪しい行動をしないか見張っていてね」

「「くぅ~ん」」

「どうして、わたしだけっすか?」

「……冗談だよ」

「酷いっす。これだけ命をかけて、ユナのことを信じていると言うのに、そんな冗談を言うなんて」

シノブは悲しそうな顔をする。少しからかい過ぎたみたいだ。

とにかく、3人のことはくまゆるとくまきゅうに任せて、クマの転移門を使って、神聖樹の中にあるクマハウスに向かって扉を開ける。

扉の先は神聖樹があるクマハウスの中だ。扉の先が別の部屋になっていて、扉の中を覗いた3人は驚きの表情をする。

「この先にムムルートが」

カガリさんが動こうとするので止める。

「エルフの結界の中だから、入れないかもしれないから」

「そうなのか?」

「連れてくるから待っていて」

わたしはクマの転移門の中に入り、神聖樹のクマハウスに転移する。

そして、神聖樹の外に出る。神聖樹の中には3人いないと入れないため、ルイミンとムムルートさんは入ってこられない。

神聖樹の外に出るとルイミンとムムルートさんの姿があった。