軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

455 クマさん、ムムルートさんに説明する

わたしが神聖樹がある穴から出てくると、ルイミンが嬉しそうに駆け寄ってくる。カガリさんみたいに尻尾があったら、犬みたいに揺れていたかもしれない。

「ユナさん、今日は食事をする時間ありますか? わたし大きな魚を釣ったんですよ」

余程、大きな魚を釣ったのが嬉しいのか、満面の表情だ。

「う~ん、今日はちょっと無理かな。ごめんね」

サクラたちにクマの転移門のことは知られたことになるから、食事のときだけ食べに来ることはできる。でも、和の国の状況を考えると自重したい。

「そうなんですか。残念です」

ルイミンの表情が少し暗くなる。獣耳があったら、垂れたかも。

カガリさんの耳と尻尾を見たから、そんなことを考えてしまう。

「今度、連絡をくれれば、ご馳走になりに来るから。また、釣ったら教えてね」

「本当ですか? 約束ですよ」

耳と尻尾が立った。(わたしのイメージ)

ルイミンと約束をして、わたしはムムルートさんに声をかける。

「ムムルートさん、来てくれてありがとうございます」

「いや、嬢ちゃんには世話になっているから、気にしないでいい。それで契約魔法って、嬢ちゃんの秘密を話さないといけない相手がいるのか?」

「そうなんだけど。あとムムルートさんに会いたがっている人がいるの」

「わしにか?」

「ムムルートさん。昔に和の国に行って、 大蛇(オロチ) って魔物を封印する手助けをしたことはあります? それでカガリって狐の女性を知っていますか?」

「和の国……大蛇……封印……カガリ……狐……」

わたしの言葉にムムルートさんは考え込む。数百年前のことだ。簡単には思い出せないみたいだ。でも、徐々に記憶が戻ってきたようで、表情が変わっていく。

「大蛇か、懐かしいな。そんなこともあったな」

ムムルートさんは懐かしそうに声を出す。

やっぱり本人だったみたいだ。

「だけど、どうして嬢ちゃんが、そのことを知っているんだ?」

「えっと、今、わたしはその和の国にいて、大蛇が復活しそうで、それで倒す? 再封印? することになったんだけど。カガリさんから、当時、冒険者だったムムルートさんって名前のエルフに助けてもらって大蛇を封印したことをきいて、もしかして、ムムルートさんのことかもと思って、ルイミンに連絡したの」

わたしは簡単に和の国の状況を伝える。

「そうか」

「お爺ちゃん、そんなことしていたの?」

「若いときだよ。それにしても、大蛇の封印が解かれるのか。カガリは封印を今まで守ってきたのだな」

「それでムムルートさんには和の国に来てほしいんだけど」

「和の国って遠いんですか?」

ルイミンが尋ねる。

どうなんだろう? わたしには距離は分からない。わたしが返答に困っているとムムルートさんが答えてくれる。

「遠い。当時のわしも旅の途中で偶然に寄っただけだ」

「ユナさん、そんな遠いところに行ったんですね。わたしも行ってみたいです」

タールグイから陸が見えたので立ち寄ったら、和の国だっただけだ。

「でもどうして嬢ちゃんが、今回のことに関わっている?」

「わたしもちょっと和の国に立ち寄っただけだったんだよ。そしたら、わたしのことを希望の光って呼ぶ女の子が現れたり、わたしの実力を確かめられたりして、カガリさんって女性に会うことになって」

今の状況である。

今考えるとサクラが見た希望の光のわたしは、ムムルートさんを連れてくることができるから、希望の光だったのかもしれない。

たぶん、ムムルートさんを連れてこられるのはわたししかいない。

「大体、話はわかったが、ちょっと寄るって、簡単にできぬと思うんだが」

タールグイとクマの転移門のコンボだ。

「ちょっと、動く島に転移門を設置しておいたら、和の国の近くを通ったから、寄っただけですよ」

「ユナさん、島が動くんですか?」

ルイミンは動く島に興味を持ったみたいだ。

「海には動く島もあるんだよ」

「そうなんですね。海、見てみたいな」

ルイミンは海を見たことがないのか、わたしの言葉に納得してしまう。

純粋な女の子を騙している気がする。

ルイミンはクマの転移門のこともクマの水上歩行のことも知っている。タールグイに連れていくことはできる。今度、フィナと一緒に連れていくのもいいかもね。

「それで、嬢ちゃん。確認だが、こちらと行き来は可能なのか?」

「それは大丈夫だよ」

行き来は何度でもできる。

「本当はいろいろと用意したいが、まずはカガリから話を聞かないとならんな」

「それじゃ」

「やり残した一つだ。生きているうちに解決したほうが、心置きなく残りの余生を過ごすことができる」

心置きなく残りの余生って、さっきまで忘れていたよね。それに残りの余生って何年? わたしが死んでも、ムムルートさん生きているよね?

わたしはいろいろと突っ込みたいが我慢する。

「カガリに会いに行こう」

ムムルートさんは和の国に来てくれることに了承してくれる。すると、ルイミンが口を開く。

「ユナさん、わたしもついていってもいいですか?」

「これから戦いになると思うから、ルイミンは残ったほうがいいよ」

それにルイミンがいても役には立たない。

「なにもできないかもしれないけど、ユナさんやお爺ちゃんのお手伝いがしたいです」

「ルイミン……」

「それに、そのカガリさんって方が気になります。お爺ちゃんの昔の彼女さんですか?」

もしかして、そっちが本音?

「ルイミン、何を言っておる?」

「お母さんが言っていました。男が命をかけるときは、好きな女性のときだって」

「べ、別に、昔の女じゃないぞ。困っていたから、助けただけだ」

「お爺ちゃん、どもっている」

「孫から、そんなことを言われたら、誰だってこうなる。嬢ちゃんも、そう思うよな」

わたしに同意を求められても困る。孫はおろか、子供もいない。でも、言いたいことは分かる。

「それじゃ、わたしがカガリさんに会っても大丈夫だよね?」

「……まあ、そうだな」

結局、ムムルートさんが折れる感じで、ルイミンも一緒に来ることになった。

もし、戦いが始まったら、帰せばいい。それにサクラを一時的にエルフの村に連れていってもらい、任せることもできる。そのぐらいの余裕はあるはずだ。

わたしはクマの転移門を出して、カガリさんがいるクマの転移門の扉を開ける。

扉を開けると、目の前にはくまゆるに押さえ込まれたシノブの姿があった。

「なにをやっているの?」

「ユナ、助けてほしいっす」

わたしはサクラを見て、「どうなっているの?」と目で尋ねる。

「えっと、ユナ様が扉の中に入ったあと、不思議に思ったシノブが扉を調べ始めたんです。わたしは止めたんですが、『少しだけっす』とシノブが言って」

サクラがシノブの口癖を真似をする。少し可愛い。

「それで、くまゆる様とくまきゅう様が止めに入って、このようになりました」

くまゆるとくまきゅうが褒めてって、表情をする。

「くまゆる、くまきゅう、ありがとうね」

シノブを押さえ込んでいるくまゆると近くにいるくまきゅうの頭を撫でる。

「うぅ、重いっす。早く助けてほしいっす」

「くぅ~ん」

「重くないって」

「いや、重いっすよ。クマっすよ。クマが乗っているんっすよ。それに体重を気にするって、くまゆるは乙女っすか?」

「さあ」

くまゆるとくまきゅうの性別は分からない。でも男だって、デブと言われれば怒る。誰だって、太っているとは思われたくないものだ。

「くまゆる、どいてあげて」

「くぅ~ん」

くまゆるはシノブの上から降りる。

「重かったっす」

「シノブがいけないんですよ」

サクラがやんわりと注意する。

「だって、気になるじゃないっすか。扉を開けると他の場所に行けるんっすよ。神秘っす」

その気持ちは分からなくはない。わたしだって、魔法を初めて見たり、使ったときは感動したものだ。

「嬢ちゃん、入ってもいいか」

「ああ、ごめん。入っていいですよ」

クマの転移門の外にいたムムルートさんとルイミンが、クマの転移門を通ってこちらにやってくる。

「ムムルートか?」

「カガリ?」

カガリさんはゆっくりとムムルートさんに近づく。

「本当にムムルートなのか?」

再度確認する。

「久しぶりだな」

「妾が何百年待ったと思っているのじゃ。このバカもの」

カガリさんがムムルートさんの胸を叩く。何百年ぶりの再会だ。わたしが思う再会とは違うのかもしれない。わたしには数百年ぶりの再会の気持ちは想像もできない。

「ムムルート、ムムルート」

「すまない」

カガリさんはムムルートさんの胸の中ですすり泣いた。

わたしたちは静かに2人の再会を邪魔をしないように待つ。

「落ち着いたのか?」

しばらくするとカガリさんはムムルートさんから離れる。

「すまぬ。サクラもシノブも今のことは忘れてくれ」

「はい」

「何も見てないっすから、大丈夫っす」

2人は見ぬふりしてくれる。

2人とも優しい。

「それで、そちらの可愛い女の子は、嬢ちゃんが言っていたムムルートの孫娘か」

カガリさんがルイミンを見る。

「えっと、はい。ルイミンです」

ルイミンは小さく頭を下げて名前を名乗る。

「ムムルートに似ず、可愛い孫娘じゃな。妾はカガリじゃ、昔にムムルートに世話になった」

「わたしはサクラと申します。ルイミン様、よろしくお願いします」

カガリさんが名を名乗り、一緒にサクラも名を名乗る。

「さま? ルイミンでいいです」

ルイミンは手を大きく横に振って、敬称付きを断る。

「ですが、過去に大蛇の封印の手助けをしてくださった方のお孫様です。そんなわけには」

「わたしは、そんな呼ばれ方をするほど偉くないんで、やめてください」

「そうですか。それなら、ルイミンさんとお呼びしてもいいですか?」

「うん、それなら。わたしはサクラちゃんって、呼んでもいい?」

「はい」

サクラは嬉しそうにする。もしかして、サクラちゃん呼びが嬉しかったのかもしれない。

「わたしはシノブっす。ルイミン、よろしくっす」

こっちは軽い。でも、ルイミンは気にした様子はない。

「はい、よろしくお願いします。シノブさん」

全員の紹介が終わる。