軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

453 クマさん、カガリ様と話す

カガリと呼ばれた女性はサクラたちのおかげで、先ほどまでのだらしない格好は消え、綺麗に服を整えられた。でも、女性はあぐらをかくように座るので、美人が台無しだ。でも、いつものことなのかサクラは小さくため息を吐く。

「サクラ、この国から逃げろと言ったはずじゃぞ」

「カガリ様を置いて逃げることはできません」

「妾のことはどうでもいい」

「カガリ様……」

「それにサクラを守るって、サクラの母親との約束もある」

「お母さまの……ですか」

「そうじゃ、あやつに死ぬ前に頼まれている。だから、妾はお主を守らないといけない。この身を挺してでも」

「カガリ様。でも、わたしは」

「大蛇が復活すれば、どうなるかは妾でも分からん。多くの人が死ぬ。その中にお主はいてほしくない」

カガリさんは優しくサクラに言う。その顔は心から心配している表情だ。

「それで、その奇妙な格好した 女子(おなご) は誰じゃ? クマなどを引き連れて」

「先日お伝えしました。予知で見た希望の光のユナ様です。それと白いクマがくまきゅう様、黒いクマがくまゆる様です」

次にサクラはわたしたちのほうを見る。

改めて希望の光とか言われるとムズかゆいものだ。否定しても、サクラの夢の中ではわたしは光っていたらしいから、否定も難しい。

「ユナさん、この島で結界を管理しているカガリ様です」

お互いに紹介され、お互いに正面から見る。

「サクラ、お主が予知できることを知っておる。だが、お主には、このクマが希望に見えるのか?」

カガリさんはわたしのことを怪訝そうに見る。

「はい、見えます」

でも、サクラはカガリさんの言葉にハッキリと答える。

「お主、予知の力が無くなったのではないか? こんな変な格好した 女子(おなご) が大蛇を倒すと思っているのか?」

「思っています。きっと、カガリ様の手助けをしてくれると思います」

カガリさんは真っ直ぐな目でわたしのことを見る。

「確かユナと言ったな。お主は大蛇の話を聞いて、自分が本当に倒せると思っておるのか? サクラの言葉に調子に乗って、自分なら倒せると思っているのか? もし、そんなことを考えているなら、大馬鹿者か、死を恐れない大馬鹿者じゃ」

どっちも大馬鹿者なんだね。

「見たこともない大蛇を倒せるかなんて分からないよ。無理だったら、逃げるつもりだし。ただ、サクラの気持ちには応えたいと思っているよ」

実際に戦ってみないことには分からない。でも、命をかけるかと言われれば、NOだ。

だけどサクラのためにできるならしたい。

「先日も、他の者が大蛇と戦う者を連れてきたが、誰もが大蛇と戦えるほどの力は持っていない。戦えば命を落とすだけじゃ。お主もそんな若いうちに命を落とすこともない。悪いことは言わないから、早々に国から出ることを勧める」

「カガリ様! ユナ様は本当に希望の光です。実力もあります」

「いくら、サクラの言葉が正しくても妾は疲れた。希望はない。あの大蛇の強さを知っているのは妾だけじゃ。あの強さは、戦った者しか分からない」

「そうですが」

「戦った者って、百年以上前のことなんだよね? カガリさんだっけ、そんな年齢には見えないんだけど」

どう見たって20代の女性だ。どこかのエレローラさんみたいに若作りしたとしても30代だ。それで100年以上前の大蛇と戦ったってどういうこと?

エルフかと思って、耳をみるが長くない。

「サクラ、妾のことは話していないのか?」

「はい、嘘を言っていると思われて、引き受けてくれなくなりましても困りますので」

サクラは申し訳ないようにわたしのことを見る。

「それにカガリ様のことは一部の者しか知りません。簡単に話すことはできません」

「サクラが誰も彼も話さないことは知っておる。サクラ、お主の目から見て、この小娘は信じられるのか?」

サクラはジッとわたしのことを見る。

「信じられます」

「そうか。なら、いいじゃろう」

カガリはそう言うと、頭から茶色の長い耳が出る。さらに着物の下がもそもそすると、茶色の毛皮らしきものが見える。

動物の耳と尻尾?

「妾は何百年も生きておる狐じゃ。だから、数百年前、大蛇と戦い。大蛇の恐ろしさを知っている」

「狐……」

それって、妖狐ってこと?

「そうじゃ、妾は狐の化け物じゃ。怖くないのか?」

着物の下から見える尻尾が揺れる。

「別に怖くはないけど」

魔物が住む世界だ。人間に化ける狐がいても驚かない。

「なんじゃ、つまらないのう。ここは妾を嘘つき呼ばわりをするかと思ったのじゃが。でも、これで分かったじゃろう。妾が何百年も生きていると」

まあ、エルフもいる世界だし、何百年も生きている化け狐がいてもおかしくはない。

「そして、あの魔物と戦った妾が言う言葉の重みが分かるじゃろう。倒せぬとは言わぬ。前だって弱らせて封印することができた。でも、それでも被害は大きかった。なにより、違うのはあのとき、共に戦った仲間はもう誰もいない」

カガリさんは遠くを見るような目をする。

「そんなことはないです。ユナ様とカガリ様なら」

「買い被りじゃよ。今の妾は結界を抑えるだけで精一杯じゃ、妾に戦う力は残っていない」

「その結界ってどのくらいもつの?」

「もう、時間の問題じゃ」

「カガリ様、それならユナ様のお力を借りて」

カガリさんはサクラのことをジッと見る。

「その変な格好した 女子(おなご) を信じているんじゃな。……わかった」

「カガリ様!」

カガリさんを首を縦に頷かせることに成功したサクラは嬉しそうにする。

「なら、お主が本当に希望の光と言うなら、妾にも希望を見せてくれないか」

「見せてって、どうやって? あなたと戦えばいいの?」

「いや、妾が今一番、傍にいてほしい人物を連れてきてほしい。もし、そんなことができれば妾もお主のことを希望の光と認めよう」

いきなり無茶ぶりがきた。

わたしに和の国の知り合いなんていない。

「誰なの?」

わたしは一応確認する。

「当時、大蛇が暴れたときに、妾と共に戦ったものじゃ」

「カガリ様、それは」

「ふふ、分かっておる。絶対に無理なことを。だから、そんな奇跡が起こらないと無理だと言っておる。でも、妾にとってはそれが希望なのじゃ」

「流石に、死んでいる人は無理だよ」

数百年前の人物は流石に連れてくることはできない。

「その者は生きている」

「生きている? もしかして、あなたと一緒で狐?」

カガリさんは首を横に振る。

「その者はエルフじゃ、殺されでもしていなければ、今でもどこかで生きておるはずじゃ」

エルフ……

「今はどこにいるかも分からん男じゃ。この大蛇を封印した結界を作ったのもその男じゃ。だから、その者が来れば、なんとかなる。だから、お主がサクラの希望の光と言うなら、妾にも希望の光を見せておくれ。妾にもう一度、ムムルートに会わせてくれ! 無理なら帰ってくれ」

カガリは悲しそうな顔をする。

でもわたしとくまゆる、くまきゅうはカガリさんが口にした名前で反応する。

「カガリ様、それはいくらなんでも」

「分かっておる。自分で言っていて、夢を見ていることは分かっておる。無理なことも、どこにいるかも、死んでいる可能性もある。ただ、ムムルートがいてくれればと、何度も思った。あの男がいればどうにかなるんじゃないかと。でも、あの男はいない。連れて来るなんて不可能じゃ」

カガリさんの声が小さくなっていく。

ムムルートさんって、あのムムルートさん?

「そのムムルートさんが、この国に来たことがあるの?」

「ああ、妾がまだ若いときにな」

見た目で言えば、今も十分に若い。

「大蛇が現れ、困っているとき、あやつら冒険者はやってきた。ムムルートはエルフの秘術だと言って、この島に封印の陣を張り、弱らせた大蛇を封印することに成功した。その妾はその結界を守るためにこの地に残った」

わたしが知っているムムルートさんなのかな?

「だから、お主が希望の光と言うなら、ムムルートを連れてきてくれ」

「カガリ様……」

「…………」

サクラとシノブは何も言えずに黙ってしまう。

2人とも無理だと分かっているからだ。

でも、わたしは同姓同名同種族のムムルートさんを知っている。

そして、連れてくることも可能だ。

「そのムムルートさんを連れてくれば勝てるの?」

「どうなるかは分からぬ。でも、勝てる可能性は上がる。そして、もしムムルートを連れてきてくれることができたら、妾はお主のことを希望の光として全面的に信用する。ふふ、そんな奇跡みたいなことは天地がひっくり返ってもあり得ぬがな」

さて、どうしたものか。

まず、カガリさんが言っているムムルートさんが、わたしが知っているムムルートさんなら、連れてくればOKだ。でも、それにはクマの転移門のことを話さないといけない。さらに違った場合はどうするって話もある。だけど、ムムルートさんは結界や魔法陣に詳しい。ほぼ間違いないと思う。

「だから、諦めて帰れ」

「カガリさんはどうするの?」

「結界を管理した者のさだめじゃ。一番に相手をするだけじゃよ」

それって、死ぬつもりってこと?

「カガリ様。どうか、ユナ様を信じてください」

サクラが頭を下げる。

「お主は早く、国を出ろ。クマの格好した嬢ちゃん。お主がサクラの希望の光なら、サクラを逃がしてやってくれないか、この通りじゃ」

カガリさんはわたしに向かって頭を深々と下げる。

別にわたしのことを信用してないとか、そういうことではないみたいだ。本当にサクラの身を案じているだけのようだ。

「カガリ様……」

サクラはカガリさんの言葉に黙ってしまう。

「……分かったよ。そのムムルートさんを連れてくればいいんだね」

「……お主、何を言っておる? どこにいるかも分からない男だぞ。それを連れてくるじゃと?」

カガリさんは何かを感じ取ったように立ち上がる。

「お主、まさか、知っておるのか!?」

カガリさんは立ち上がるとわたしの両肩を摑む。

「ムムルートって名前のエルフの知り合いはいるよ」

「どこじゃ、ムムルートはどこにいる!」

揺らす肩の力が強くなる。

「ユナ様、本当に知っているのですか?」

「同名同種族だから、間違いはないと思うけど。確認しないと分からないよ」

「確認を取れるのか? いや、連れてくることができるのか?」

「連れてくるには、この場にいる全員に、わたしの秘密を守ってもらわないとだめだけど」

「ユナ様の秘密ですか?」

「たとえ、国王でも、師匠にでもね」

わたしはこの場にいる三人を見る。

「わたしは誰にも言いません。ユナ様のお言葉に従います」

「もちろん、妾もじゃ。ムムルートに会えるなら、どんな約束でも守ろう」

全員がシノブを見る。

「もちろん、わたしも誰にも話さないっすよ」

「手紙に書いたりするのも駄目だよ」

「も、もちろんっすよ」

シノブには契約魔法が必要かな?

忍者だし。