軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

452 クマさん、リーネスの島に向かう

「それじゃ、船を手配しておくっすね」

島には船で行くことになった。

でも、サクラが何か言いたそうにしている。

「あのう、ユナ様。お尋ねしてもよろしいでしょうか?」

「なに?」

「ユナ様はくまゆる様とくまきゅう様に乗って、海の上を渡って、この国に来たとお聞きしたのですが、本当ですか?」

「本当だけど」

シノブに見られて、報告済みなら誤魔化しても仕方ないので、頷く。

「その、できましたら……」

今にも消えそうな小さな声だ。

「もしかして、乗りたいの?」

サクラの表情を見ていると、そんな表情をしている。

乗りたいけど、我が儘は言えないって感じだ。

「えっと、あの、その、はい」

サクラは下を向きながら、遠慮がちに小さく頷く。

「お話を聞いたとき、海の上を走るって、夢のような話だと思いました。その、ご迷惑でなければ」

チラッとくまきゅうを見る。

「別にいいけど。人前じゃ乗せられないよ。クマが現れたら、驚かれるし、海の上を走るところ見られたら、困るから」

「それなら、いい場所があるっすよ。人に見られずに、海に出られる場所があるっす」

シノブがくまゆるとくまきゅうに乗っても、誰にも気づかれない場所があると言う。

「シノブ、ありがとう」

「いいっすよ。わたしも乗りたいっすから」

それが目当てだったみたいだ。

召喚馬のハヤテマルがいるのにいいのかな?

わたしたちはくまゆるとくまきゅうに乗って、リーネスの島に行くことになった。

「そういえば、くまゆるとくまきゅうのことは全員知っているの?」

シノブがどこまで報告したのか気になったので尋ねる。

「自分が報告したのは国王陛下とサクラ様だけっす。国王陛下とサクラ様が誰にも話していなければ、お二人しかしらないはずっす」

「わたしは誰にもお話はしていません」

「シノブの他に監視は?」

「ないっすよ。海からいつ来るかも分からない人を待ったりは誰もしないっす。監視が付いたのは師匠と戦うときだけっす。そこは自分が保証するっす」

「一応、国王様に口止めしてもらえる?」

このお願いがどこまで叶えてもらえるか分からないけど、お願いしておく。

「でも、サクラも一緒に島に行くとは思わなかったよ」

てっきり、シノブが案内してくれるものと思っていた。

「わたしが行かないと、カガリ様はユナ様のお話を聞いてくれないと思います。それにユナ様の格好は、その、クマさんですから」

サクラは少し言いにくそうに言う。

確かにクマの格好したわたしが、『サクラの言っていた希望の光です』と名乗っても、信用はされないはずだ。サクラ本人が言えば信用してくれる可能性が高い。そもそも、わたしが自分で希望の光って、名乗るなんて恥ずかしくてできない。

「それにカガリ様は好き嫌いがハッキリとしている人っすからね。それで、男の出入りを禁止する結界を作ったと言われているっす」

「魔物が瘴気を吸うからじゃなかったの?」

「それも本当っす。船を動かせる人は男性が多いっすから、盗みも男性が多かったっす」

「そういえば結界って、どんな感じなの? 入ったら死ぬの?」

「そんな怖いものではありません。体力と言いますか、体が怠くなって、動けなくなります」

わたしが尋ねるとサクラが答えてくれる。

そんな結界があるんだ。もし戦争になったら防御陣として作ったら無敵だね。

「なので、島に船で近づくことはできても、島に上陸することはできません。入ったら盗採どころじゃなくなります。なので、死に至ることはありません」

安心、安全設定なんだね。

それから話も終わり、食事をいただき、時間は寝る時間になる。

「よろしいのですか?」

サクラは子熊化したくまきゅうを抱きしめながら尋ねる。

サクラはくまきゅうと一緒にいると楽しそうにしているし、くまきゅうも嫌そうにしていない。なので、一緒に寝ることを提案した。ちなみにわたしとではなく、くまきゅうとだ。

「今日だけね」

「ありがとうございます。くまきゅう様、今晩はよろしくお願いします」

布団を敷き、わたしはくまゆると、サクラはくまきゅうと一緒に寝る。

ちなみにシノブは明日の準備をするために、出ていった。わたしのお世話係じゃなかったのかなと思いつつ。寝るときは必要はないので、追及はしない。

翌朝、朝起きるとサクラがくまきゅうを抱きしめていた。

「おはよう」

「おはようございます」

サクラの表情はなにかあったように感じられる。

「もしかして、夢を見たの?」

「はい、くまきゅう様が守ってくれる夢です」

「くまきゅう?」

「はい。闇の中、わたしが泣いていると、くまきゅう様はわたしを優しく包んでくれました。温かく、不安が消えていくような安心感に包まれました。迫ってくる闇を明るい光で照らし、闇からわたしを守ってくれました。その姿はとても凛々しく、格好よかったです。こんなに安らかに眠れたのは久しぶりです。くまきゅう様、ありがとうございます」

「くぅ~ん」

くまきゅうはそんなことはないよ。って表情で鳴く。

「それじゃ、大蛇の封印は成功するの?」

「分かりません。たぶん、この夢は予知ではないと思います。わたしの不安が見せた夢をくまきゅう様が助けてくれたんだと思います」

くまきゅうやくまゆるが一緒にいると安心して眠れる。安らぎを与えてくれる。もしかすると、くまゆるとくまきゅうにはそんな力があるのかもしれない。

わたしたちは朝食をとると、馬車に乗って、海岸まで行くことになっている。そこから、くまゆるとくまきゅうに乗って、リーネスの島に行く。

用意されている馬車を見ると、馬車にはハヤテマルが繋がれている。

「早く乗ってくださいっす」

どうやら、シノブが馬車を操縦するらしい。

まあ、他の人がいたら、くまゆるとくまきゅうが海の上を走ることはできない。

馬車にはわたし、子熊化したくまゆるとくまきゅう、サクラが乗って、シノブが御者台に座る。

シノブはわたしたちが馬車に乗ったのを確認すると、馬車を動かす。

「サクラ様、くまきゅうのことが気にいったようっすね」

御者台に乗っているシノブが話しかけてくる。

サクラは大切なものを抱えるように子熊化したくまきゅうを膝の上に乗せている。フィナやノアが可愛がるのとは、少し違う感じだ。

ちなみにわたしは膝の上に子熊化したくまゆるを乗せている。

「くまきゅう様と一緒にいると、安心できるんです」

「その気持ちは分かるっす。柔らかくて、気持ちいいっすからね」

その言葉には同意だ。くまゆるとくまきゅうを抱きしめると、凄く気持ちいい。

「それとは少し違います。もちろん、気持ちいいのですが、不安な心を落ち着かせてくれます」

夢に出てきたくまきゅうの活躍のおかげもあるみたいだ。

「あと和の国では白は幸福を運んできたり、穢れのない象徴として崇められたりします。だから、余計にそう思ってしまうのかもしれません」

「くぅ~ん」

「別にくまゆる様が穢れているとか、不幸になるとかじゃありませんから、そんな顔はしないでください」

くまゆるの少し悲しそうな表情を見たサクラが否定して、手を伸ばして、くまゆるの頭を撫でる。

確かに、幸運を運んでくる白い鳥や白い蛇、白猫などは幸福をもたらす話は聞く。縁結びの白ウサギなどもある。そう考えると、白は幸運を運んでくると言われてもしかたない。

それに引き替え、黒はどちらかと言うと悪いイメージのほうが多い。

だけど、わたしには関係ない。

「くまゆる、くまきゅう、2人とも、わたしにとっては幸福を運んでくるクマだよ」

わたしの言葉にくまきゅうはもちろん、くまゆるも嬉しそうに鳴く。

まあ、実際にそうだ。くまゆるとくまきゅうがいることで楽しい。2人がいない暮らしは考えられない。

しばらくして、街から離れた場所にやってくる。

「ここからなら、見られないっすよ。でも、海に出てる船には気を付けてくださいっすよ」

まあ、距離を取れば、気づかれないはずだ。

シノブはハヤテマルを送還する。荷台はわたしのクマボックスに仕舞う。すでに畳を数十枚仕舞うところを見られているので、今さらだ。

そして、海を渡るため、わたしは子熊化しているくまゆるとくまきゅうを通常の大きさに戻す。

「それじゃ、サクラとシノブはくまきゅうに乗って。くまきゅう、いい?」

「くぅ~ん」

わたしが確認すると、くまきゅうはサクラの前で腰を下ろす。

「くまきゅう様、よろしくお願いします」

サクラは恐る恐るくまきゅうに乗る。少し、バランスを崩しそうになるが、くまきゅうがフォローする。

「くまきゅう様、ありがとうございます」

「くぅ~ん」

「ふかふかです。乗り心地もいいです」

サクラは年相応の顔になる。

「それじゃ、わたしもお願いするっす」

シノブはサクラの後ろに抱きつくように乗り、わたしはくまゆるに乗る。

「それじゃ、海の上を走るけど、大丈夫だから、暴れたりしないでね」

「は、はい」

「緊張するっす」

わたしを乗せたくまゆると、サクラとシノブを乗せたくまきゅうは海の上を走る。

「本当に海の上を走っています」

「凄いっす」

「夢のようです」

サクラは満面の笑みでくまきゅうに乗っている。子供が遊園地で楽しそうにする笑顔だ。サクラは他の子供と違って、大人っぽい子供だ。口調も礼儀正しい、少しはシノブにも見習ってほしいぐらいだ。

「なんすか」

わたしがシノブに視線を向けたのが気付かれたみたいだ。

「なんでもないよ。それじゃ、速度を上げるから、しっかり掴まっていてね」

くまゆるとくまきゅうはリーネスの島に向かって速度をあげる。

リーネスの島は港から、ここからでも見える位置にあった。見えると言っても、距離は結構離れている。

進むに連れて、島の大きさが見えてくる。タールグイと同じぐらい?

ハッキリと分からないが、そのぐらいの大きさに見える。

そして、島の上を見ると、黒い鳥のようなものが飛んでいるのが見える。少し不吉な感じだ。

それほど時間をかけることもなく、リーネスの島の船着き場に到着する。

「本当に渡ってしまいました」

「くまきゅうとくまゆるは、本当に凄いっす」

「くまきゅう様、ありがとうございました」

「貴重な体験をさせてもらったっす。ありがとうっす」

二人にお礼を言われて、くまきゅうは嬉しそうにする。

「くまゆるもありがとうね」

「くぅ~ん」

リーネスの島に着いたわたしたちは、くまゆるとくまきゅうに乗ったまま、カガリという人がいる場所に向かう。

島は森に覆われている。左右に広がる森の中、整地された一本の道が続く。

「カガリ様って、1人でここに住んでいるの?」

「基本、1人でいることが多いですが、たまにお世話係がやってくることもあります」

でも、基本1人ってことだ。

「こんなところに1人って可哀想じゃない?」

流石に元引きこもりのわたしでも、島に1人で暮らしたくはない。

「たまに 都(みやこ) や街に行っていますから、大丈夫かと」

「そうなの?」

「流石に長い間は離れたりはしませんが、ユナ様が思っているようなことではないので、大丈夫です」

それならいいけど。人を犠牲にして、閉じ込めているようだったら可哀想だからね。

わたしたちを乗せたくまゆるとくまきゅうは道なりに進む。道は島の中心に向かっている。

「もうすぐ見えてくると思います」

しばらくすると神社のような建物が見えてくる。

立派な建物だ。

わたしたちはくまゆるとくまきゅうから降りて、神社のような建物の中に入る。

「カガリ様、いらっしゃいますか?」

サクラは部屋の中に向かって声をかける。

「誰じゃ?」

「サクラです」

「また、来たのか。他の国に逃げろと言ったはずじゃろう」

奥から現れたのは、20代前半ぐらいの綺麗な女性だった。長い黄金のような髪を揺らしながら、わたしたちのところにやってくる。女性は色鮮やかな着物を着ているので、金色の髪が綺麗だ。

でも、女性は着物を着崩して着ているので、大きい胸が今にも見えそうだ。

「ああ、またそんな格好して、服はちゃんと着てください」

女性のわたしから見ても、目のやり場に困る。

でも、その姿は妖艶で色っぽく見える。

なにより、目立つのは胸の膨らみだ。大きい。未来のわたしの大きさぐらいある。

「うるさいのう。別に誰かに見られるわけじゃないから良いじゃろう」

「わたしたちが見ています」

「同じ女性だ。問題はないじゃろう」

「ダメです、ちゃんと着てください。お客様も連れてきたんですから。シノブ、手伝ってください」

「了解っす」

サクラとシノブはカガリって呼んだ女性に近づき、手慣れた手つきで女性の服装を整える。

この金髪のだらしない美人が結界を管理しているカガリ様?