軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

442 クマさん、男を見つける

一日、街を歩いたけど、眼帯に頬に十字の傷がある男は見つからなかった。ただ、わたしが通行人に見られるだけだった。

「ユナは人じゃなくて、お店ばかり見ていたっす」

わたしは途中から見学モードに入ってしまった。

だって、人探しより、街の風景を見ていたほうが楽しいんだもん。

「思ったんだけど、わたしがいると目立つから、相手にも気付かれちゃうんじゃない?」

「誰もクマの格好した女の子が、自分を捜しているとは思わないから大丈夫っすよ」

まあ、確かに目立つけど、会ったこともないクマの格好をしている女の子が自分を捜しているとは思わないよね。

「でも、自分が目立つってことは一緒にいるシノブも目立つってことじゃない?」

「それはそれっす」

「それに、この大きな街の中から、人を1人捜すには、ちょっと無理がない? 誰かに手伝ってもらうことはできないの?」

一人より、二人。二人より、三人。探す人数が多ければ、それだけ見つかる可能性も高くなる。

「どこから情報が漏れるか分からないから、あまり大人数で探したくないっす。もし、探していることに気づかれて、隠れられたり、街から逃げられでもしたら、また、一から情報集めをしないといけないっす」

確かにそうだけど、難しいところだ。探す人が増えれば、見つけられる確率も高くなるけど、それと同時に情報が洩れる可能性も高くなる。どっちがいいかは、判断できない。

本当に3日以内で見つかればいいけど。そう、願うばかりだ。

一日を終え、温泉に入って、くまゆるとくまきゅうを抱いて、一日の疲れを取る。

そして、二日目の探索が始まる。

昨日と同じように街を歩く。

「シノブはその男を殺したいとは思わないの?」

わたしの両親はとんでもなかったので、もし殺されたとしても、相手を殺したいとも、捕まえたいとも思わない。もし殺されるなら、うちの両親が悪い可能性が高い。

「そうっすね。殺したらそれで終わりっすから、捕らえていろいろと自白してほしいっす」

「確認だけど、半殺しはいいんだよね?」

「半殺しって、どんな酷いことをするつもりっすか?」

考えてみる。

「心の底から、恐怖を染み込ませるとか?」

もう、二度と悪さができないように、心の底に、恐怖を植え付ければ、二度としないはずだ。その前に、悪いことをしていれば、死刑なのかな?

それ以前に、どうしてシノブの父親が殺されたんだろう?

無差別な人殺しなら、大事になっていそうだ。

シノブの父親が悪いことをして、殺された可能性もある。う~ん、でも、それだと捕らえる理由がない。シノブの父親が悪で、傷の男が正義なら、捕らえても無罪になる。そうなると、やっぱりシノブの言う通り、男が悪なのかな?

「シノブの父親は、どうしてその男に殺されたの?」

「……分からないっす。だから、そのことも捕まえて、聞き出したいっす」

それじゃ、シノブの父親が悪人の線もある?

でも、他にも殺しているっていうし。その人たちも悪人?

似顔絵は悪人面だった。それは書いた人の気持ちが入っている可能性もあるし、人を見た目で判断してはいけない。わたしだって、見た目で判断されて何度も困ったことがある。

考えれば考えるほど、分からない。これは男を見つけても冷静に見極めないといけないね。

そして、今日も男を見つけられずに、日が沈み始める。

「もう少し探してから、夕食にしようか」

わたしは隣にいるシノブに声をかける。でも、返事はない。シノブのほうを見ると、歩みを止めていた。

「シノブ?」

「いたっす」

シノブは視線が一点に向けられている。シノブが見る先に目を向けると、長身の侍のような格好をした男性がいる。

あの男?

男は団子屋から出てきたところだった。

男はお店から出てくると歩き出す。すぐに方向を変えて歩き出したので、顔ははっきりと確認できなかったため、頬の十字傷は確認できなかった。でも、左目に眼帯しているのは見えた。

「あとを付けるっす」

「捕まえないの?」

「まだ、人通りがあるっす。騒ぎを起こして、被害がでたら大変っすから、できれば人がいない場所に移動するか、泊まっている宿屋とか突き止めたいっす」

シノブがそう言うので、男の後を付けることになった。

個人的には、後ろから魔法を放って終わりにしたいけど、男が無罪でシノブの逆恨みだった場合、わたしが犯罪者になってしまう。

うぅ、面倒くさい。面倒くさいよ。

「ユナ、行くっすよ」

わたしたちは気付かれないように男から少し離れ、男の後を追いかける。

「本当に間違いないの?」

「間違いないっす。あの風貌、見間違いはしないっす」

力強く答える。

男は尾行されていることも知らずに一人で歩く。

どこに行くのかな。できれば、人通りが少ない場所に行ってほしいものだ。

前を歩く男には気づかれていないけど、相変わらず、前からすれ違う人たちはわたしのことを見ていく。

やっぱり、わたしの格好って、尾行に向いていないよね?

人探しだけならまだしも、クマの着ぐるみで尾行は無理がある。

「シノブ、わたし、離れたほうがよくない?」

「距離を取るから大丈夫っす」

わたしとシノブは男から距離を取り、尾行を続ける。

男は大通りから、小道に入っていく。徐々に人通りも少なくなる。

「本当に手を貸さないでいいの?」

「自分でやるから、大丈夫っす」

それなら、わたしは男を見失わないようにし、逃がさないようにする。探すのは面倒なので二度としたくない。男は後ろを振り返ることはせず、街外れに進んでいく。周囲は木の塀で囲まれている家が多く、古い家が並ぶ。人通りは完全になくなった。

攻撃するにしても、話しかけるにしても、良いタイミングだ。

「シノブ」

シノブに声をかけようとしたとき、男が止まった。

「この辺でいいでしょう」

男が振り返る。

沈みかけていると日の下に、男の顔がわたしの前に現れる。

左目は眼帯があり、頬に傷がある。間違いなく、シノブが持っていた似顔絵の男だ。

「気づいていたっすか?」

シノブは隠れることもせず、出ていくので、わたしも付いていく。

「いつまでもクマ、クマ、クマ、って声が聞こえれば、誰だって気付くでしょう」

どうやら、わたしのせいだったみたいだ。だから、わたしには尾行はできないって言ったのに。

だけど、男がわたしに気づいたようすはなかった。一度も振り向いていない。それなのに、どうして、自分がクマに尾行されたって気づいたんだろう?

男はわたしのほうを見て、笑みを浮かべる。

「それじゃ、尾行されていることを知って、こんな人気のないところに来たっすか」

「お互いに騒がれたくないでしょう」

男にも騒がれたくない理由があるみたいだ。

「それで、どうしてわたしの後を付けていたのでしょうか?」

「わたしのことは忘れたっすか?」

シノブはそう言った瞬間、腕を振った。それと同時に男は腰にある刀を抜く。「キン」と金属と金属がぶつかり合う音がして、何かが地面に落ちる。

クナイだ。シノブはクナイを放った。それを男が刀で防いだ。

シノブの後ろにいたから、分からなかった。シノブの動きには無駄がなく、速かった。でも、それを男が防いだ。

一瞬の攻防だったけど、レベルが高い。

「ああ、あのときの男の 娘(むすめ) ですか。つまり、父親の敵討ちってことですか」

「話が早くて助かるっす」

シノブは懐から、小刀を抜く。

「殺しはしないっす。でも、わたしが勝ったら全てを話してもらうっす」

「それならわたしを見つけたときに、後ろから襲いかかるべきでしたね」

男は刀を構える。

「そんな卑怯なことはしないっす。実力で倒すっすよ」

「ふふ、面白い。相手になってさしあげましょう。それで、そちらの可愛いクマの格好したお嬢さんは見ているだけですか。それとも助けを呼びに行きますか?」

男は刀の先をわたしに向ける。

助けを呼びに行けば、攻撃を仕掛けると、剣先が言っているような気がする。

「ユナは約束通りに手は出さないで、見ててほしいっす。でも、わたしにもしものことがあったら、お願いっす」

つまり、助けを呼ばずに見てろってことね。

「こっちも約束だよ。やられそうになったら、手を出すよ」

「だから、もしもの場合っす」

わたしが手を出す前に、シノブが倒される可能性もある。

もし、力の差があるようだったら、早々に手を出すつもりだ。

それに男が悪人か善人かは、男とシノブの行動で見極めることにする。

シノブが走り、男が待ち構える。