軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

436 クマさん、かまいたちと戦う その1

かまいたちとの距離がある。

わたしは走る。

逃げる牛が、また一頭倒れる。

見えた。

地面を速い動きで移動している。

あれが、かまいたち?

動きが速くて、ハッキリとは認識はできないが、イタチのような小動物なのは間違いないようだ。

数は3、4、5匹以上いる。

わたしは走りながら氷の矢を飛ばす。命中補正があるのにもかかわらず、かまいたちは避ける。

速い。

かまいたちは鎌のような腕を振るうと、風の刃が飛んでくる。風の刃は牧草の草を切りながら、迫ってくる。わたしは魔法で土の壁を作り、風の刃を防ぐ。

壁を壊すほどの威力はなく、風の刃は消える。

わたしは壁の横を通り抜け、かまいたちに向けて、攻撃を仕掛けようとすると、かまいたちが左右に分かれる。

「右はわたしが行くっす!」

わたしが一瞬悩むと、シノブが後ろから声をかけて、右に駆け出す。わたしは左に駆け出す。そこに再度、かまいたちの風の刃が飛んでくる。

面倒くさい!

わたしはクマの爪をイメージして、クマの爪の風魔法を飛ばす。3本の爪の刃はかまいたちの風を切り裂き、そのまま、かまいたちを斬る。

まずは一匹。

次のかまいたちに攻撃を仕掛けようとしたとき、かまいたちは凄い速さで地面を駆けて、森のほうへと逃げていく。

追い掛けようと思ったが、深追いはやめる。

これは思っていたよりも面倒な相手かもしれない。襲ってくるなら、返り討ちにするだけだけど。数が分からず、動きが速く、逃げるときは逃げる。逃げる相手ほど、戦い難い敵はいない。

他に逃げたと思ったら、数日後に現れる。普通に相手をしたら、疲れる相手だ。

「逃げられたっすね」

シノブのほうを見ると、地面に倒れているかまいたちに、クナイのようなものが三本刺さっていた。シノブのほうも一匹倒したみたいだ。

シノブはかまいたちに刺さっているクナイを引き抜き、布で拭くと、胸の中に仕舞う。

本当に忍者っぽい。

ちなみに、胸の大きさは大きくないので、そこだけは共感が持てる。

「ユナは動きも速いし、魔法の威力も強いっすね」

わたしのクマ魔法を使ったことで、地面にその名残がのこっている。防ぐよりは攻撃と思ったからだ。クマ魔法は相手の攻撃を防ぎ、さらに相手を攻撃できる。一石二鳥だ。

本当なら、あのまま攻撃を仕掛けて、かまいたちを全て倒したかった。

わたしたちの戦いが終わったと見ると、男性がやってくる。

「倒したのか?」

「わたしとユナが一匹ずつっす。他は森に逃げたっす」

シノブが地面に倒れているかまいたちに視線を移しながら説明する。

「そうか。でも、助かった。もし、二人がいなかったら、もっと被害が出ていた」

男性は倒れている牛に視線を向ける。

「それにしても、よくかまいたちが来たと分かったっすね」

「それは、この 子(くまゆる) が教えてくれたからね」

わたしは男性と一緒にやってきたくまゆるの頭を撫でる。

「くまゆるはそんなことまで分かるっすか?」

「魔物が近くに来たら教えてくれるよ」

「もしかして、人の気配とかも」

「一応」

「それじゃ、旅館の部屋にも召喚してたっすか?」

「さあ」

コノハに言われたら困るので、わたしは誤魔化す。

「やっと、すっきりしたっす」

シノブはなにか納得したようで、うんうんと一人で頷いている。

取り敢えず、自分が倒したかまいたちをクマボックスに仕舞う。

「解体処理はしないっすか?」

「今はしないよ。このまま追いかけて、倒してくるよ」

このまま放置するのも、待つのも面倒だ。

「やっぱり、行くっすか?」

シノブが確認する。

「ここでかまいたちを待つのは時間の無駄だからね?」

いつ現れるか分かっていれば、待つことはできる。でも、いつ来るかも分からないものを待つのは嫌いだ。時間の無駄だ。

わたしは守るより、攻める派だ。

それに無謀なことではない。わたしには探知スキルがあるから、死角から攻撃されることもないし、心構えもできる。それに今だったら、森に入ったばかりだ。かまいたちもそんなに森の奥には行っていないかもしれない。

「シノブは残っていて。もし、わたしがいない間にかまいたちが村に来たら、お願い」

「いや、一緒に行くっすよ。依頼を受けたっすからには、お供します」

「お供はくまゆるがいるから、大丈夫だよ」

わたしはくまゆるに視線を向ける。

和の国で熊がお供って言うとマサカリをかついだ金太郎を思い浮かべてしまう。そう考えるとわたしが金太郎役だ。それだけは嫌だ。

くまゆるがなに? っていう表情でわたしを見る。

わたしはくまゆるの頭を撫でて「なんでもないよ」と言って、誤魔化しておく。

そんなわけでわたしとくまゆる、シノブは森の中にやってくる。結局シノブも付いてくることになった。

男性からは心配そうにされたが、「お願いします」と言われた。

ちなみにハヤテマルは送還されたのでいない。

「くまゆる、魔物がいたら、教えてね」

「くぅ~ん」

探知スキルで分かるけど、シノブもいるのでくまゆるにお願いしておく。

「一つ、確認っす」

「なに?」

「ユナはくまゆるの言っていることが分かるっすか?」

「伝えたいことは分かるよ」

「凄いっすね」

「長いこと一緒にいるからね」

くまゆるとくまきゅうとは、まだ出会って数ヶ月だけど、何年も一緒にいるような感覚だ。今ではくまゆるとくまきゅうがいない生活は考えられない。

探知スキルで確認すると、かまいたちの反応がある。どうやら、森の奥までは逃げ込んでいないようだ。あの移動速度で逃げていたら、探知スキル外に簡単に出ていただろう。

森の中に入って安心しているのかな?

細い道があるので、進んでいく。

先頭はわたし、その後ろをくまゆる。最後にシノブが歩く。

「ユナの背中はわたしが守るっすよ」

「くまゆるに守ってもらうから、いいよ」

「くぅ~ん」

くまゆるが任せて、って返事をする。

「うぅ、つれないっす。そこは任せたって言ってほしいっす」

会ったばかりの人に背中を任せられるわけがない。

まして、怪しすぎる忍者もどきだ。忍者は主のために頑張るが、出会って数日のわたしのために命を張ってくれるとは思えない。そもそも、シノブの実力が分からないんじゃ、任せられない。

わたしの後ろを任せるなら、くまゆるとくまきゅうしかいない。

探知スキルで確認しながら、ゆっくりとかまいたちとの距離を縮める。

近くに二匹いる。

くまゆるが小さく「くぅ~ん」と鳴く。

「もしかして、近くにいるっすか?」

くまゆるが鳴いたことで、シノブが小さな声で尋ねてくる。

「いるよ」

少し先にある草木が生えている位置にいる。

わたしは探知スキルで、距離と方向を確認すると、かまいたちの反応がする方へと氷の矢を二本放つ。すると探知スキルから、かまいたちの反応が消える。

無事に命中したみたいだ。避けられなければ、命中する。

わたしは倒したかまいたちを回収しに向かう。

「もしかして、倒したっすか?」

「二匹だけね。でも、まだいるみたいだから、気づかれないように向かうよ。だから、物音は立てないでね」

あの速い動きで森の中を動き回られたら、いろいろと面倒だ。動き回られる前に倒すのが一番だ。

「静かに移動するのは得意っすから、大丈夫っす」

忍び歩くことが得意って、ストーカーだったら怖いね。でも、忍者って、情報集めが仕事だから、一種のストーカーみたいなものかもしれない。

氷の矢で倒したかまいたちを回収すると、次のかまいたちのところに向かう。

その度にくまゆるが「くぅ~ん」と小さく鳴き、わたしはかまいたちを倒していく。

かまいたちを倒しながら、森の中を進み、すでに10匹ほどのかまいたちを倒した。

「わたしの出番がないっす」

シノブの実力も見てみたかったけど、かまいたちに気付かれて、逃げられても困る。

順調にかまいたちを倒し、次のかまいたちに向けて、氷の矢を放つと、草木が動き、かまいたちが動いた。

初めて避けられた!

草木から出た、かまいたちは毛の色が違った。

「銀色?」

草木から飛び出したのは、銀色の毛をしたかまいたちだった。

「銀色のかまいたちっすか? これはやっかいなかまいたちがいたっすね」

シノブが少し面倒くさそうな表情をする。

「どういうこと?」

「とてつもなく、強いと思ってください。動きも速く、感覚も鋭いので、攻撃がなかなか命中しないっす。あとかまいたちの攻撃は安物の鉄の鎧ぐらいなら切り裂くっす」

それって、かなりやばいんじゃ。

でも、探知スキルにはかまいたちとしか表示はされていない。そこはかまいたち亜種とか、かまいたち銀とかならないのかな?

「それが二匹いるみたいだよ」

草むらから出てきたのは、銀色のかまいたちは二匹いた。

「一匹任せても大丈夫?」

少しはシノブにも働いてもらう。もし、断ったり、逃げるようだったら、それでも構わない。それまでの人だったってことだ。

「断りたいっすが、できないっすよね?」

「わたしの手伝いをしてくれるんだよね?」

「……了解っす」

シノブは断らずに、ニコっと笑みを浮かべながら、引き受けた。もしかして、倒せる自信があるのかもしれない。

「わたしを気にしないで倒しちゃってもいいからね」

「がんばるっす」

「くまゆるが、一匹はあの木の辺りにいるって」

探知スキルで逃げた方向を確認して、教えてあげる。

「感謝っす」

シノブはくまゆるの頭を撫でる。

「くまゆるは戻っている?」

わたしはクマさんパペットを見せる。

くまゆるは「くぅ~ん」と鳴き、首を振る。

「それじゃ、他のかまいたちをお願いできる?」

少し離れた場所にもかまいたちの反応がある。

銀色のかまいたちと戦っている最中に現れても面倒だ。

くまゆるはわたしのお願いに「くぅ~ん」と鳴いて、嬉しそうにする。どうやら、わたしに頼られるのが嬉しいみたいだ。

でも、1人じゃ心配なので、くまきゅうも召喚させることにする。

シノブがいるから、召喚をしたくなかったけど、くまゆるの危険度を下げるためだ。

わたしは左手の白いクマさんパペットから、くまきゅうを召喚する。

「白いクマっす」

「くまきゅう、くまゆると一緒に周囲にいるかまいたちをお願い。でも、銀色のかまいたちがいたら、わたしが倒すから、逃げるんだよ」

「くぅ~ん」

くまきゅうはくまゆる同様に「任せて」って表情で鳴く。

「それじゃ、みんな行くよ」

「わたしの疑問には無視っすか……」

シノブが先ほどから、くまきゅうについて、尋ねたそうな表情をしていたことは知っていたけど。今は説明している時間はない。

わたしが動き出すと同時に全員が動き出す。