軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

424 クマさん、ノアとお出掛けする その1

「ユナさん、どこに行っていたんですか!」

わたしが家でのんびりとしているとノアがやってきた。

「この数日間、家に来てもいないし、お店の人に尋ねれば、フィナと出かけているって言うし。いつもフィナだけ、ズルいです。わたしもユナさんとお出かけがしたいです」

シュリに続いてノアにまで言われてしまった。

でも、わたしはのんびりしたい。

「ユナさん、ユナさん」

ノアはわたしの体を掴むと左右に揺らす。揺らすのは止めてほしいんだけど。

「ちなみに、どこに行きたいの?」

「王都!」

「却下!」

「うぅ、くまゆるちゃん、くまきゅうちゃん。ユナさんが意地悪するよ~」

ノアはわたしの服を離すと子熊化しているくまゆるとくまきゅうを抱きしめ、ソファーの上で足をバタバタさせる。

「そんなに足をバタバタしたら、はしたないよ。ノアはお嬢様なんだから」

「うぅ、それなら、どこかに連れていってください」

ノアは頬を膨らませる。

どこかに連れていってあげたいけど、フィナやシュリと違って貴族のご令嬢を連れまわすわけにはいかない。それにクリフの許可が必要になる。

それにクマの転移門のことは秘密だし、難しいところだ。

「わたしは少し出掛けるけど、ノアは残る?」

「えっ、どこかに行くんですか? わたしも行きます!」

「くまゆるとくまきゅうのハチミツを買いに行くだけだよ」

「え~~~~」

わたしとノアはそれぞれくまゆるとくまきゅうを抱いて、ハチミツを売っているお店に向かう。

隣を歩くノアは頬を膨らませて、くまきゅうを抱いている。

「ほら、海に連れていってあげたでしょう」

「そのあとに、フィナはお出掛けしています」

「クリフに連れていってもらったら?」

「ユナさんとくまゆるちゃんとくまきゅうちゃんと一緒がいいです」

ノアは腕の中のくまきゅうを抱きしめる。

う~ん、街の外にピクニックぐらいなら大丈夫かな?

わたしがいろいろと考えていると、ハチミツが売られているお店にやってくる。

「ここでハチミツを売っているんですね」

お店の中に入ると、レムさんと他の店員さんの姿がある。わたしがお店に入るとレムさんがすぐにわたしに気づく。

「クマの嬢ちゃんか。今日もクマのハチミツか」

「うん、お願い」

わたしはクマボックスから空の壺をカウンターの上に乗せる。

「いつも、ありがとうよ」

「くまゆるとくまきゅうの大好物だからね」

たまに、わたしはくまゆるとくまきゅうの食べるハチミツを買いに来ている。この前、トウヤからもらったハチミツは食べ終わってしまったので補充だ。

「相変わらず、嬢ちゃんのクマは可愛いな」

レムさんはわたしが抱いているくまゆるの頭を撫でる。そして、ノアが抱いているくまきゅうの頭を撫でようとして、気付く。

「うん? もしかして、ノアール様ですか?」

「お久しぶりです」

ノアがくまきゅうを抱いたまま挨拶をする。

「ノア。レムさんを知っているの?」

「はい。お父様とお話をしているところをお見かけして、挨拶をしたことがあります」

たしか、仕事の関係でクリフとレムさんは知り合いだから、ノアが知っていてもおかしくはない。

レムさんはくまゆるとくまきゅうを抱いているわたしとノアを見る。

「お二人は知り合いだったのですね」

「はい。ユナさんにはお世話になっています。今日はユナさんとくまゆるちゃんとくまきゅうちゃんのハチミツを買いに来ました」

さっきまで、「買い物ですか~」って感じに頬を膨らませていたのに、礼儀正しく、会話をしている。これが貴族の教育なのかな?

「そういえば、ハチミツでしたね」

レムさんは壺を持ってハチミツが入っている大きな壺に移動する。そして、わたしが持ってきた壺の中にハチミツを入れてくれる。当たり前だが、壺を持参すると、安く購入することができる。

「ほら、くまゆるとくまきゅうだったな。俺のおごりだ」

レムさんはそう言うとお皿の上にハチミツを垂らし、くまゆるとくまきゅうの前に置いてくれる。

「いつも、いいの?」

「嬢ちゃんと嬢ちゃんのクマには、お世話になったからな」

わたしとノアはくまゆるとくまきゅうを離すと、くまゆるとくまきゅうはハチミツを舐め始める。

「ユナさん、なにかしたんですか?」

「ちょっと前に、蜂の木に住み着いた魔物を倒しただけだよ」

「あのときは本当に助かった」

「仕事だから、そんなに気にしないでいいよ」

「そういえば、嬢ちゃん。明日は暇かい?」

「とくに予定はないけど、なに?」

一応、冒険者及び、お店の経営をしているけど。冒険者の仕事はないし、お店はティルミナさんにモリンさん、アンズがいるから、わたしが口を挟むことはなにもない。実際にルドニークの街に行っている間もお店は任せっぱなしだ。わたしがいなくても、基本問題はない。

だから、わたしは毎日が日曜日だ。だからと言って、ニートじゃないよ。

「それなら、明日は一緒にハチミツを採りに行かないか?」

「ハチミツ?」

「それと、クマにも会いたいだろう」

蜂の木に現れた魔物を討伐してから、熊たちを何度か見に行ったりしている。そのうちの一回はレムさんと行っている。

そのときに、レムさんは嬉しそうに熊に触っていたことを思い出す。

わたしを誘うってことは近くで熊に会いたいってことかな? それまでは遠くから見守っていたらしい。

「あのう、熊ってなんですか?」

「ハチミツが採れる木の近くに熊の親子がいるんです」

「その熊さんは危険ではないんですか?」

「いえ、とっても優しい熊ですよ。下級な魔物なら、倒してくれます。蜂の木の番人ですね」

ノアの疑問にレムさんは自慢するように答える。そのレムさんの答えにノアの顔が徐々に変わっていく。次に出てくる言葉が予想できてしまった。

「わたしも、その熊さんに会いたいです」

想像通りの言葉が出た。

「えっと、それは」

ノアの言葉に困ったのはわたしでなく、レムさんだった。

それはそうだ。貴族のご令嬢を野生の熊がいる所に連れていくわけにはいかない。

行きたいと言われても困るだろう。

「ユナさん……」

ノアが少し悲しそうな表情でわたしを見る。

どこかに連れていってあげたい気持ちもある。ドワーフの街に行っていたので、ノアに構っていないのは事実だ。

「……わかったよ。ただし、条件があるよ」

「条件ですか?」

「クリフの許可をもらうこと。クリフがいいよって言ったら、連れていってあげる」

さすがに勝手に連れ出すことはできないから、これが最低条件だ。

「お、お父様の……」

「クリフの許可がなければ、連れていくことはできないよ。一応、出発前にクリフに確認しに行くからね。嘘を吐いてもだめだからね」

「わかりました、必ず、お父様の許可を手に入れてみせます」

ノアは小さな手を力強く、握り締める。

ハチミツを購入したわたしはお店を出る。ノアはクリフに許可をもらうために家に帰っていく。

翌日、レムさんとの約束の時間の前にノアの家に行く。ちゃんとクリフの許可が下りたか確認するためだ。

ノアの家に着くと嬉しそうにしているノアが待っていた。

「ユナさん、お父様の許可はもらえました」

ノアは満面の笑みで答える。

わたしは一応、クリフに確認を取ると。

「ああ、いいぞ」

会う早々に言われてしまった。

「えっと、ノアから、ちゃんと話は聞いた? 野生の熊に会いに行くんだけど」

「おまえさんが一緒なんだろう」

「そうだけど」

「なら、問題はない。さんざん魔物を倒しておいて、熊ぐらいで慌てることじゃないだろう」

「……」

「それにレムから大人しい熊だって報告は受けている」

「……」

「ノアが蜂の木を見るのは勉強になる。レムだけなら不安だが、おまえさんが連れていってくれるなら、なにも問題はない」

そんなわけで、クリフの許可も下りたので、わたしとノアはレムさんと合流して、蜂の木及び、熊に会いに出発する。

レムさんは馬車に乗り、わたしはくまゆるに、ノアはくまきゅうに乗る。レムさんの馬車には大きめの壺がいくつも載せられている。

「ユナさん。熊さんって、どんな熊さんなんですか?」

「子熊が二頭いる4人家族だよ。子熊は数か月前に生まれたばかりだから、まだ、小さいかな?」

「うぅ、早く見てみたいです」

「蜂の木を見るのも忘れないでね」

「もちろんです。お父様にちゃんと報告しないと怒られます。それに、もし、ちゃんと報告ができなかったら、勉強漬けにさせられます」

さすが、貴族と言うべきか。ちゃんと教育しているね。

わたしたちは森の近くまでやってくる。レムさんの馬車は一本道を通り、わたしたちはその後ろを付いていく。

しばらく進むと、綺麗な花が一面に咲く場所にでる。

「綺麗です」

「そう言っていただけると嬉しいです」

ノアの言葉にレムさんが笑顔でお礼を言う。

「この花は美味しいハチミツが採れるように、レムさんたちが管理しているんだよ」

「話は聞いていましたが、綺麗です」

「そうだね。綺麗だね」

タールグイの島の花の光景を思い出す。タールグイには蜂の木は無いのかな?

「あれが蜂の木ですか?」

ノアが花が咲く先に目をやる。大きな木があり、蜂がたくさん飛んでいる。

「そうだよ。危ないから、近付いたら駄目だからね」

一応、専門家のレムさんじゃないと近寄るのは危ない。

「嬢ちゃん。熊に会う前に先にハチミツをいいか?」

「それじゃ、手伝いますよ。ノアは、ここでくまゆるとくまきゅうと一緒に見学ね」

「わかりました。でも、早くしてくださいね」

わたしは馬車に載せてある空の壺を、一度クマボックスに仕舞う。

そして、蜂の木の傍まで行き、壺を出す。

「嬢ちゃん。ありがとう。助かる」

レムさんは蜂を怒らせないようにハチミツを壺の中に入れていく。そして、ハチミツが入った壺をクマボックスに入れる。それを繰り返し、全ての壺にハチミツが入ると馬車に戻ってきて、馬車の上に出す。

「嬢ちゃんのおかげで、早く終わった。昨日、買ったばかりだと思うが、この壺を持っていってくれ」

レムさんはハチミツが入った壺を差し出す。

「いいの?」

「ああ、手伝ってくれたお礼だ」

わたしは小さなハチミツが入った壺をもらう。

くまゆるとくまきゅうの方を見ると物欲しそうに壺を見ている。

「帰ってからね」

「くぅ~ん」

そんな悲しそうに鳴かなくても。それにハチミツなら昨日も食べたでしょう。