軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

425 クマさん、ノアとお出掛けする その2

「それで、ユナさん。熊さんはどこにいるんですか?」

先程から待ちきれないのか、くまゆるを抱いているノアが尋ねてくる。

クマならノアが抱いているでしょう。とツッコミをしたくなるが止める。

まあ、くまゆるとくまきゅう以外のクマは見たことが無いから、楽しみなんだろう。

「居場所はわからないけど、くまゆるとくまきゅうに呼んでもらうよ。くまゆる、くまきゅう、お願い」

「「くぅ~ん」」

くまゆるとくまきゅうは返事をすると「「くぅ~~~~~~~~ん」」と大きな声で鳴く。

「な、なんですか?」

「熊を呼んでもらったんだよ」

探知スキルでは熊の居場所は分からない。それなら、呼べばいい。

くまゆるとくまきゅうは熊だ。会話もできるから、呼ぶこともできる。

「それじゃ、熊さんが来るんですね」

ノアはキョロキョロと周辺を見る。

わたしもどこから来るのかと思っていると、右側の木々の間から熊の親子が顔を出した。大きい熊が二頭に子熊が二頭の親子だ。

「ユナさん、熊さんです! 熊さんです! 熊さんの親子です」

興奮するノアはわたしの腕を掴んで揺らす。

嬉しいのはわかるけど、揺らすのは止めて。

「見ればわかるよ。興奮して、熊たちを驚かせないでね」

熊が驚いて、ノアを襲ったら危ない。一応、大人しいけど、野生の熊ってことには変わりない。

「わかっています。大丈夫です。優しく撫でますから」

撫でる気でいるよ。

「くまゆるとくまきゅうとは違って、野生の熊ってことは忘れないでね。わたしが良いって言うまで触ったら駄目だからね」

今にも走り出しそうだから、注意しておく。

「わかっています」

わたしの忠告に、ノアが気を引き締める。

そして、熊の親子はゆっくりとわたしたちのところにやってくると、くまゆるとくまきゅうと体を擦り合う。

どうやら、わたしたちのことは忘れていなかったようだ。

「くぅ~ん」

子熊の二頭がわたしのところにやってくる。子熊化したくまゆるとくまきゅうも可愛いけど。こっちの子熊たちも可愛い。あれから、少し成長したかな。熊はやっぱり、小さい方が可愛い。

「ユナさん、わたしも触ってもいいですか?」

わたしが子熊を撫でていると、ノアが今にも子熊に手を出そうとしているが、ちゃんと、わたしとの約束を守って我慢をしている。

「くまゆる、くまきゅう。ノアがこの子たちに触るけど、危険はないって言ってもらえる?」

わたしは親熊と仲良くしているくまゆるとくまきゅうにお願いする。

するとくまゆるとくまきゅうは親熊と話を始める。

「くぅ~ん」「くぅん」「くぅ~ん」「くぅん」

よくわからないけど、なにか会話をしている。

こういうとき、クマ語スキルがあればと思ってしまうが、くまゆるとくまきゅうの本心が聞けたら、聞けたで、怖い気もする。そう思うと、クマ語のスキルは無いほうがいいのかもしれない。

そして、熊との会話が終わると、くまゆるはノアの所にやってくる。くまゆるはノアの後ろに回り、背中を押す。

「くまゆるちゃん?」

「熊に触ってもいいって」

「本当ですか?」

ノアは少し怖がりながら、ゆっくりと手を伸ばしてわたしの腕の中にいる子熊に触る。

「くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんと感触が違います。少し、毛が硬いです」

「くまゆるとくまきゅうは、お風呂にはいっているからね。野生の熊と比べると違うね」

さらに召喚すると、綺麗な状態になっている。いつも、ふわふわのモコモコの状態だ。

「でも、柔らかいです」

まあ、モフモフだね。わたしも子熊の背中を撫でる。

「あと、こっちの熊さんは顔がカッコいいです」

「くぅ~ん」

ノアの言葉にくまゆるとくまきゅうが少し怒る。

「ごめんなさい。くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんはカッコいいってよりは、可愛いです」

「それで、嬢ちゃん。俺も触っても大丈夫か?」

先程から黙って、わたしたちを見ていたレムさんがノアの後ろで熊を触りたそうにしている。

「くまゆる、くまきゅう。レムさんも触りたいって」

「くぅ~ん」「くぅん」「くぅ~ん」「くぅん」

今度はくまきゅうがレムさんの後ろに回り込み、背中を押す。

「いいみたいだよ」

「そうか」

レムさんは親熊を触り、子熊を触る。レムさんは満足げな表情をする。

やっぱり、レムさんも熊に触りたかったんだね。

「いつも、蜂の木を守ってくれて、ありがとうな。でも、あまり危険なことはしないでくれな」

言葉が通じないけど、レムさんは優しく熊に話しかける。

「熊さんは蜂の木を守る番人なんですね」

「ああ、前に魔物と戦ってくれました」

でも、それって自分の縄張りを守るために戦ったんだよね。

まあ、わたしとしても、ゴブリンやオークと熊の中から選ぶなら、熊を応援する。

「でも、次に現れる魔物を熊が倒せるとは限らないからな。もし、魔物が住み着いたら、冒険者に依頼すればいいことだ。熊たちが無理をすることもない」

「そのときは、わたしが依頼を受けるよ」

「嬢ちゃんが引き受けてくれるなら、安心だな」

下手に冒険者と熊が遭遇して、戦いになっても困るしね。

「まあ、危険なのは魔物だけではないけどな。もし、冒険者が熊討伐に来たら、逃げるんだからな」

たしかにその可能性もある。人のほうが魔物より、危険かもしれない。

「でも、あの街の冒険者で熊さんを討伐しに来る人っているんですか?」

ノアがわたしとくまゆる、くまきゅうを見る。それに反応するようにレムさんもわたしたちに視線を向ける。

「冒険者ギルドで依頼があれば、討伐に来るかもしれませんが、別に暴れもしていない熊さんを討伐に来る人はいないと思います」

わたしは心の中で熊を食べたりしないのかなと思ったりしたが、返答が怖いので聞くことはしない。

「それにユナさんのことを知っている冒険者なら、熊さんに手を出さないと思います」

「たしかに」

ノアの言葉にレムさんは頷く。

今更だけど、わたしって、他の冒険者にどう思われているのかな? あまり、良いイメージは持たれていなさそうなんだけど。

それ以前に、なんでレムさんが頷くの?

レムさんの心の中にあるわたしのイメージも気になってくる。

しばらく、熊たちと一緒に過ごしていると、熊たちは「くぅん」と鳴くと立ち上がり、蜂の木に向かって歩き出す。

どうやら、食事の時間みたいだ。

「ああ、わたしも一緒に行きたいです」

「危ないから遠くから観察するだけだよ」

「うぅ、わかっています」

ノアは名残惜しそうに熊の親子を見送る。

熊の親子は蜂の木に来ると、ハチミツを食べ始める。

レムさんやクリフはハチミツを食べることを許しているけど、本来は討伐対象なんだろうね。普通に考えたらハチミツを食べる外敵だ。

もし討伐の話が上がったら、タールグイの島に逃がすのもいいかもしれない。

ハチミツを食べる熊たちを見ていると、横から小さく「ク~」と鳴く音がした。

横を見るとお腹を押さえているノアがいる。

「わ、わたしのお腹の音じゃ、ないですよ」

ノアが少し顔を赤らめて、否定をする。

「わたしは何も言っていないよ」

「うぅぅ」

ノアは恥ずかしそうにする。

でも、たしかにお昼の時間だ。お腹が空いても仕方ない。

「それじゃ、わたしたちも、ここでお昼を食べようか」

「お昼ですか?」

「せっかく、ここまで来たんだし、花も綺麗だしね。それに、レムさんに話を聞くこともあるでしょう?」

わたしはクマボックスから地面に絨毯のようなシートを敷き、パンが入ったカゴを取り出す。

「よかったら、レムさんも座って、食べてください」

「いいのか。それは助かる」

レムさんとノアはシートの上に座る。

わたしは小タルとコップを用意する。

「飲み物は果汁と牛乳があるから、好きな物を飲んで」

「ありがとうございます。わたしは牛乳をもらいます」

「俺は果汁を頂こう」

2人のコップにそれぞれの注文通りの飲み物を注ぐ。

「あと、野生の熊に触っているから、パンを手に取る前に、これで手を拭いてね」

わたしは濡れタオルを2人に渡す。

熊を触った手でパンを食べるのは危ない。くまゆるやくまきゅうと違って、野生の熊はお風呂に入っていないからね。

「なにからなにまで、すまない」

「ユナさん。ララみたいです」

2人は濡れタオルで手を拭き、パンに手を伸ばす。

「ああ、くまぱんです」

ノアは籠に入っている、くまぱんを見付ける。

ノアが喜ぶかと思って、持ってきた。

「これが、噂のクマの顔をしたパンか」

レムさんもくまぱんを手にする。

「レムさん、知っているの?」

「ああ、店で働く者の中で話題になっていたからな」

そう言ってレムさんはくまぱんを食べる。

でも、熊を見ながら、くまぱんを食べるって、どうなんだろう。

わたしはくまぱんでなく、サンドイッチを手に取り食べる。

「はい、くまゆる、くまきゅうも」

わたしはくまゆるとくまきゅうの口の中にサンドイッチを入れる。

「ああ、わたしもやります」

ノアもくまゆるとくまきゅうにパンをあげる。

そして、パンを食べながら、レムさんの授業が始まった。

「それじゃ、季節ごとに花を変えているんですか?」

「季節によって咲く花が違います。まあ、冬になれば、蜂も活動が止まりますので、それまでは蜜を集めてもらいます。もちろん、活発な時期や繁殖の時期などがありますから、一概には言えませんが、花があれば蜜を集めてくれますので、花は咲かすようにしています」

「そうなんですね」

ノアは真面目にレムさんの話を聞いている。

レムさんの説明が終わると、熊の食事も終わり、蜂の木から移動し始める。

「ああ、熊さんが行ってしまいます」

熊の親子は森の中に消えていく。

「追いかけちゃ、駄目だよ」

「あの子熊をお持ち帰りしたかったです」

「そんなことをしたら、怒るよ」

「冗談です。そんなことしないです。あんなに仲が良い家族を離ればなれにしたりしません。でも、お持ち帰りしたかった気持ちはありました」

まあ、子熊は可愛いからね。大きくなると、怖くなる。

わたしの心を読んだのか。くまゆるとくまきゅうが擦り寄ってくる。

「2人は大きくても、怖くないよ」

「嬢ちゃん。ご馳走になった。俺は周囲の花を確認しに行ってくるから、少し待っててくれ」

レムさんは立ち上がる。

「わたしも行きます。ユナさん、いいですよね」

「いいけど、レムさんの邪魔だけはしちゃだめだよ」

「もちろん、しませんよ。どんな花が咲いているか、見に行くだけです」

ノアはレムさんのあとを追いかける。

わたしはくまゆるとくまきゅうを背中にして、ノアとレムさんを目を瞑って待つことにする。

耳から、風に乗ってレムさんが花を説明する言葉や、ノアがいろいろと質問する声が聞こえてくる。

ちゃんと、レムさんの話を聞いて勉強をしているようだ。

たまには、外でのんびりするのもいいものだね。