軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

391 クマさん、鍛冶屋地区に向かう

それから、わたしたちは今後の予定の話をする。

わたしの予定はガザルさんとゴルドさんの師匠のロージナさんに会いに行く。鍋やフライパンを買いに行く。あとは街の見学をするのが目的だ。でも、それらを一日でするわけじゃない。予定は決めていないが、数日間は街にいるつもりでいる。

ジェイドさんたちの予定はトウヤのミスリルの剣を作る。商人に頼まれている物を仕入れる。などとやることがあり、ジェイドさんたちも数日間いるらしい。

明日はガザルさんの師匠であるロージナさんの鍛冶屋がジェイドさんたちが行く鍛冶屋の近くにあるってこともあって、ジェイドさんたちと一緒に行くことになった。

ルイミンも鍛冶屋が並んでいる区域の場所は知っていたらしい。前にお父さんのアルトゥルさんと来たらしい。

夕食を終えたわたしたちは部屋に戻り、明日に備えて早く寝ることにする。

夜は安全対策のため、子熊化したくまゆるとくまきゅうは召喚しておく。するとくまゆるとくまきゅうはフィナとルイミンに取られる。

まあ、毎日一緒に寝ているから、たまには2人に譲ってあげることにする。そして、くまゆる、くまきゅうの目覚ましをセットをして、早々に眠りに就く。

翌日、寝ていると先に起きたフィナとルイミンが起こしてくれる。

なんでも、くまゆるとくまきゅうに肉球パンチで起こされたそうだ。ちゃんと、クマ目覚まし時計は発動し、一緒に寝ていたフィナとルイミンを起こしたみたいだ。

二人は気持ちいい目覚めだったと言う。どうやら、お腹にジャンプや顔に覆い被ったりはしなかったようだ。あれは苦しいからね。

くまゆるとくまきゅうを送還し、わたしたちは一階の食堂に移動する。

食堂にはすでにメルさんとセニアさんの姿があった。わたしたちは同じ席に座り、食事を注文する。そして、しばらくするとジェイドさんと眠そうにしているトウヤもやってくる。

そして、朝食を終えたわたしたちは鍛冶屋に向かう。

宿屋を出たわたしはクマさんフードを深く被り、ドワーフの街並みを見ながら歩く。視線を気にしないで歩く方法だ。でも、近くにいる視線は気になる。

「…………」

周囲を見てから、チラッとわたしを見るメルさん。

「…………」

無言でわたしを見るセニアさん。

「みんな見ているな」

呟くジェイドさん。

「嬢ちゃん、その服を脱いだらどうだ? 嬢ちゃんがクマ好きなのは分かるが、毎日着なくてもいいと思うぞ」

クマさんチートのことを知らないトウヤは周囲の視線を気にしながら、そんなことを言い出す。もしものことがあるから、クマの服は脱ぐことができない。

「トウヤ、なにを言っているの!? クマの服を脱いだら、ユナちゃんじゃなくなるでしょう」

メルさんはトウヤの言葉に怒り、セニアさんは無言でトウヤのお尻を蹴り飛ばす。

庇ってくれて嬉しいような。でも、クマの服を脱いだら、わたしじゃなくなるって、それも酷いような気がする。確かにクマ装備をはずせば、フィナよりも体力はない一般人になってしまうけど。

「なんだよ。目立つから言っているだけだろう。みんな、見ているんだぞ」

確かに見られてる。クリモニアではジロジロと見られることは少なくなったが、新しい街に行くと、興味、驚き、珍しさなどの様々な視線を向けられる。ドワーフの子供からも「くまさんだ~」と指を差されたりする。どこでも、同じような反応をされる。

トウヤはその視線や反応が気になるらしい。

「だったら、わたしは離れて歩くよ」

わたしと一緒にいるのを嫌がるなら、一緒にいようとは思わない。寂しいけど、1人で少し離れた場所を歩けば良いことだ。ボッチを舐めないでほしい。

「何を言っているのよ。ユナちゃんにそんなことをさせるわけがないでしょう。目立つのが嫌なら、トウヤが1人で歩けばいいのよ。わたしはユナちゃんと一緒にいるわよ」

「わたしも」

「わたしもユナお姉ちゃんと一緒に歩きます」

「わたしもユナさんといますよ」

「みんな……」

メルさんがわたしに肩から抱きつき、セニアさんが後ろから抱きつき、フィナが手を握り、ルイミンが答えてくれる。

みんなの言葉が嬉しくなる。

トウヤはそんな女性陣の言葉にたじろく。トウヤは助けを求めるようにジェイドさんを見る。

「俺もユナと歩くぞ。俺は別に気にならないからな」

「ジェイド~~~~」

同じ男性であるジェイドさんにも裏切られ、トウヤが少し離れて、1人で歩くことになった。

「それにしても人が多くないか?」

「そうね。前に来たときより多いわね」

「冒険者と商人が多い」

周囲を見ながらジェイドさんとメルさん、セニアさんが会話をする。

確かにドワーフだけじゃなく、普通の人たちも多くいる。わたしはてっきり、買出しに来ているのかと思っていた。

「普通に買いに来ただけじゃないの?」

「う~ん、それでも、多いような」

ジェイドさんは周囲を不思議そうに見ている。

ここで話しても答えはでないので、話は終わり、鍛冶屋が並ぶ区域にやってくる。ここの区域に鍛冶屋は集まっているらしい。いろいろな場所からカンカンと音が聞こえてくる。

こんな音が住宅街で鳴ったら、昼寝もできない。もし、昼寝好きのわたしだったら絶対に住もうとは思わない。

「ジェイドさんが剣を作ってもらった鍛冶屋は有名なんですか?」

ミスリルの武器を作るのは難しいと聞く。だから、それなりの技術を持った職人なのかもしれない。でも、ジェイドさんの返答は違った。

「さあ、どうだろうね。この街の鍛冶屋はどこも優秀だからね」

「そこは一番優秀って言うところだろう」

「そうなの?」って尋ね返そうとしたら、それよりも先にジェイドさんの言葉に返す者がいた。ジェイドさんは驚いたように周囲を見て、言葉の主を発見すると、驚きの表情を浮かべる。

「クセロさん?」

「ジェイド、久しぶりだな。そこは一番優秀な鍛冶屋って言うところだぞ」

立派な顎髭を生やしたドワーフがにかっと笑う。

「それにしても面白い格好をした嬢ちゃんを連れているな」

ジェイドさんがクセロと呼んだドワーフがわたしのことを見る。

「後ろから見たとき、なんだと思ったぞ。クマの格好なんだな」

クセロさんがわたしのことをじっと見る。とりあえずは自己紹介をしておく。

「えっと、ユナです。ジェイドさんにはお世話になっています」

「俺はクセロ。鍛冶屋だ。ジェイドからすると一番じゃない鍛冶屋みたいだがな」

「クセロさん……、俺は一番と思っていますよ」

「ふん! お世辞はいらん。俺は俺が作った剣を大切に使ってくれれば、それだけでいい」

「ちゃんと、使っていますよ」

ジェイドさんは腰にある剣に軽く触れる。

「わたしも使っている」

セニアさんも答える。

「それでどうして、ジェイドがこの街にいるんだ? それにその子供たちはメルの娘か?」

わたしたちのほうを見ながら言うけど、わたしは入っていないよね?

「そんな年じゃないよ」

メルさんはクセロさんの髭を引っ張って否定をする。

「ふふ、それはすまない。あと、そっちのエルフの娘は見覚えがあるな」

「ルイミンです。前にお父さんと一緒に剣を買いに来ました」

「ああ、エルフのアルトゥルと一緒にいた娘か」

2人の会話を推理すると、どうやら前に武器を買いに来たとき、クセロさんのところで買ったみたいだ。

世間は広いようで狭いね。これでガザルさんの師匠がクセロさんだったら、狭すぎるけど。

「もしかして、剣を買いに来たのか?」

「今日はお母さんに頼まれて鍋を買いに来ました」

「……鍋か……本当なら俺が作ってやりたいが、武器専門でな」

謝罪をするがそれは仕方ない。同じ金属を扱うが、分野が違う。近くても作り方が違う。

「嬢ちゃんたちのことはわかったが、どうしておまえたちまでいるんだ。仕事か? それとも俺が作った剣を折ったのか?」

「折ってませんよ。今回はトウヤの剣を作ってもらおうと思って」

ジェイドは少し離れたところでわたしたちのことを見ているトウヤに視線を向ける。

「トウヤの? それで、どうしてあいつは1人であそこにいるんだ?」

クセロさんはチラチラとわたしたちのほうを見ているトウヤに視線を向ける。

これが某ゲームだったら「トウヤは仲間に入りたそうにしている」とかになって、「仲間にする」「仲間にしない」ボタンが出てきそうだ。

ジェイドさんは、そんなトウヤを見て、小さくため息を吐く。

「トウヤ、いい加減にこっちに来い!」

ジェイドさんは「仲間にする」ボタンを選んだ。

トウヤはジェイドさんに呼ばれると嬉しそうにやってくる。どうやら、1人で寂しかったらしい。

「まあ、詳しい話は店のほうで聞く」

クセロさんは歩き出し、その後をわたしたちも付いて行く。

クセロさんのお店は大きく、石造りで作られている。お店の中から鉄を叩く音が聞こえてくる。

そして、中に入ると、壁などには剣やナイフが飾られている。

ゴルドさんやガザルさんのお店にも飾ってあったけど、数が多いような気がする。ミスリルの剣もあるのかな?

「それで、トウヤの剣を作ればいいのか?」

「お願いできますか?」

「そこにある剣じゃダメなんだな」

壁に飾ってある剣に目を向ける。

「ミスリルの剣をお願いしようと思って」

「ミスリルか。数日前なら断ったが、ジェイドの頼みなら作ってやらないこともない。でも、トウヤに扱えるのか? 作っても扱えないなら、俺は作らない。そこらにある剣で我慢しろ」

「ギリギリってところかな。あとはトウヤ次第だと思っている」

「ギリギリか。ジェイドがそう言うなら、とりあえずは見てやる。それから、作るか判断する」

見てやるって、なにをするのかな?

ガザルさんがナイフを作ってくれたときみたいに、手を見るの?

漫画とかでは血豆ができるほど、剣を振っているとか、手の皮膚が硬いとか、判断したりすることもあるけど、そんな感じなのかな?

もし、それが判断基準なら、わたしのプヨプヨの柔らかい手では絶対に作ってもらえないよね。

頼んだのがガザルさんで良かった。