軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

386 クマさん、タリアさんに捕まる

くぅ~ん、くぅ~ん。

ムムルートさんから神聖樹の茶葉を貰ったり、いろいろと話していると、左手の白クマさんパペットが鳴き始める。

クマフォンの音だ。いきなり鳴くと、まるでクマさんパペットが鳴いているようにもみえる。でも、誰からだろう? クマフォンはフィナ、シュリ、ルイミンの3人しか持っていない。

「それじゃ、ムムルートさん。今度誘いに来ますから」

ムムルートさんは鳴き声を気にした様子だったけど、ムムルートさんから離れ、人がいないところに移動する。そして、未だに「くぅ~ん、くぅ~ん」と鳴っているクマフォンを取り出す。

「もしもし」

『あっ、繋がりました』

クマフォンからフィナの声がしてくる。

「どうしたの? なにかあった?」

『ごめんなさい。クマフォンを使って、ルイミンさんやシュリと会話をしようと思っても全然できなくて。壊れているかと思ってユナお姉ちゃんに使ったんです』

「それじゃ、ルイミンと会話はできなかったんだ」

『はい、できませんでした』

どうやらクマフォンはわたし経由じゃないと使えないらしい。

まあ、想像の範囲内かな。クマ装備は譲渡不可でわたし専用だし、クマの転移門はわたしじゃないと扉を開けることはできない。クマフォンはわたしの魔力で作りあげたから、わたし経由でしか使えないのかもしれない。

もし、誰でも使えるようだったら、万能アイテムになってしまう。

「それで2人はどこにいるの?」

『えっと、ルイミンさん。ここは?』

『村の外れです』

クマフォンからルイミンの声が聞こえてくる。

わたしはルイミンの家の前で合流するように伝える。ルイミンの家にやってくると、すでに2人の姿がある。

「ユナお姉ちゃん、壊れていないんですよね?」

フィナがクマフォンを握り締めながら、不安そうに尋ねてくる。

「壊れていないよ。たぶん、わたしとしか繋がらないんだね。今まで使ったことがなかったから、わからなかったけど」

「ううぅ、残念です」

「まあ、なにかあればわたしが伝えてあげるから」

「はい」

フィナは少し残念そうにする。

それじゃ、ムムルートさんに挨拶はしたし、そろそろドワーフの街に向けて出発しようかな。

「あら、やっぱりユナちゃんがいるわ」

後ろから声をかけられる。振り向くとルイミンの母親のタリアさんがいた。相変わらず、若くて三児の母親とは思えない。

「村を歩いていたら、クマさんが来たって言うから、すぐにユナちゃんだと分かったわ」

タリアさんは推理が当たったことに嬉しそうにする。

でも、そんな認識の仕方でいいの? 本物の熊を見かけた人が、「熊が来た」「熊が現れた」と言って、それを聞いた 人(エルフ) がわたしが来たと推理したら、危なくない?

まあ、本物の熊が現れたら叫び声ぐらいあげるから、大丈夫かな?

おっとりしたタリアさんじゃ心配だけど。

「もしかして、そっちの子はユナちゃんの妹?」

わたしの隣にいるフィナを、推理するように尋ねる。そもそも、わたしとフィナは似ていない。

「でも、クマさんの格好はしていないわね」

首を傾げるタリアさん。

それじゃ、クマの格好をしていたらわたしの妹になるの?

「違うよ。この子はフィナ。わたしの命の……わたしがお世話になっている子だよ」

わたしがフィナを見ながら「命の恩人だよ」と紹介しようとしたら、フィナに睨まれたので言い直した。

「フィナちゃんね。わたしはタリア、ルイミンのお姉ちゃんよ。タリアお姉ちゃんって呼んでね」

タリアさんは臆面もなく言った。

「それじゃ、サーニャさんのお姉さんなんですね」

フィナはタリアさんの言葉を疑うこともしない。

「あら、サーニャのことも知っているのね」

「はい」

普通に会話を始めるタリアさんとフィナ。そんな二人の間にルイミンが止めに入る。

「お母さん! やめてよ。フィナちゃんが本当に信じちゃうでしょう。フィナちゃん、お姉ちゃんじゃなくて、お母さんだからね」

「お母さん?」

ルイミンの言葉にフィナは驚く。

まあ、タリアさんの容姿はお姉ちゃんと言われても違和感はない。だから、その手の嘘は騙しやすい。

「そんなに早くにばらさなくてもいいのに」

「恥ずかしいから、やめて!」

ルイミンは顔を赤くしながら、タリアさんに注意する。

「それじゃ、ばれちゃったら仕方ないわね。フィナちゃん、嘘を吐いたお詫びに美味しい果物があるから、食べていって」

タリアさんはフィナの手を掴むと家の中に連れていってしまう。

「えっ、ユナお姉ちゃん?」

フィナは手を引っ張られながら、後ろを振り向いて、わたしのことを見る。わたしは首を横に振って、タリアさんとフィナのあとを追って家の中に入る。ルイミンもため息を吐くと付いてくる。

わたしたちはタリアさんが出してくれた果物を食べながら、話タイムに突入してしまった。

父親のアルトゥルさんは仕事で、弟のルッカは森に遊びに行っているのでいない。だから、暇つぶしに誘われたみたいだ。

「フィナちゃん、たくさん食べてね」

「ありがとうございます」

甘酸っぱい果物を食べる。この果物をケーキに入れても美味しいかも。

「そういえば、ユナさん。フィナちゃんから聞きましたが、ドワーフの街に行くんですよね」

「あら、ユナちゃん。ドワーフの街に行くの?」

果物を食べていると、ルイミンが尋ねてくる。

「ちょっと、遊びにね」

「わたしは、てっきりエルフの里に遊びに来たのかと思っていました」

ルイミンは少し残念そうにする。

「今度、あらためてフィナと一緒に遊びに来るよ」

フィナとルイミンも短い時間で仲良くなったみたいだし。

「約束ですよ。でも、ドワーフの街か、懐かしいな」

「行ったことがあるの?」

エルフがドワーフの街に? エルフとドワーフって仲が悪いんじゃなかったっけ?

「大丈夫だったの?」

「お父さんと一緒だったから、迷ったりはしてませんよ。1人じゃ、迷子になっていたかもしれないけど……」

わたしが聞きたいのはそこじゃない。

「エルフとドワーフって仲が悪いから、エルフがドワーフの街とか行っても大丈夫かなと思って」

「エルフとドワーフって仲が悪いんですか?」

尋ねているのはわたしのほうだよ。

「違うの?」

「聞いたことがないです。前にドワーフの街に行ったときも、優しくしてくれましたよ」

どうやら、わたしの常識はここでは通用しないみたいだ。わたしが読んだ漫画や小説だと、エルフとドワーフって仲が悪い作品が多いんだよね。いがみ合っているシーンが多い。

「ユナさん、わたしも一緒に行ってもいいですか? 街を案内しますよ」

「ルイミンが?」

王都でのルイミンを見ていると、迷子になる図しか思い浮かばないんだけど。

「あら、いいわね。ルイミン、ついでに新しいフライパンと鍋もお願い。あと、包丁も新しい物が欲しいわね。そうだ。近所のみんなにも聞いてこなくちゃ」

「お母さん?」

タリアさんは1人で言うだけ言うと、立ち上がって、部屋から出ていってしまう。

それをわたしたちは黙って見送る。

「えっと、これって、つまり」

どういうことなのかな?

「わたしも行くことになったみたいです。その、お母さんがごめんなさい」

ルイミンは申し訳なさそうに謝る。

「別に一緒に行くのはいいけど。お父さんの許可とかをもらわないでいいの?」

「それは大丈夫です。ああなったお母さんは止められないです」

ルイミンも苦労しているみたいだ。

「でも、フライパンと鍋か」

ドワーフと言うと武器や防具が頭に浮かぶけど、そんなことはないんだよね。

ゴルドさんとガザルさんが武器や防具がメインだから気づかないけど、金属系の加工の仕事もしている。

「フィナ、わたしたちもティルミナさんに買っていってあげようか?」

クリモニアでももちろん売っているけど、ドワーフの街で買うと本場の良い物って気分になる。

それに、フライパンや鍋にも良し悪しがあるしね。

材質の種類があって、重量、焦げ付かないとか、熱の伝導率が良いとか。いろいろと種類がある。

ドワーフの街で選ぶのもいいかもしれない。うん、いい考えだ。

でも、フィナを見ると少し言い難そうにして口を開く。

「えっと、その、わたしもお母さんから頼まれています」

「そうなの?」

「はい、いろいろと頼まれました」

さすが主婦。すでにフィナにお願い済みだったみたいだ。

「それなら、わたしは孤児院やアンズたちに買っていってあげようかな」

「それも頼まれています。孤児院で大きい鍋が欲しいそうです」

なにか、先回りされている。

でも、孤児院なら大きな鍋とかは必要かな。大量に料理を作るなら、大きな鍋のほうが手間がなくなる。

わたしも自分用に買っていこうかな。買うならクマハウスの数だけ必要になる。予備を考えれば、もっと必要になる。一つ、クマボックスに入れておけば、使い回しはできるけど、洗ったあとに仕舞ったりするのが面倒くさい。できればそれぞれのクマハウスに常時置いておきたい。

タリアさんが用意してくれた果物を食べながら話していると、タリアさんが戻ってくる。

「ルイミン。これがリストね」

タリアさんがルイミンに数枚の紙を渡す。ルイミンはその紙を見ると表情が変わっていく。

「お、お母さん、多いよ」

ルイミンがテーブルの上に紙を置くと。一番上に注文主の名前が書かれており、その下にフライパンや鍋、包丁、その他もろもろと商品名や大きさなどが細かく書かれている。そんな紙が何枚もある。

「だって、みんな欲しいって言うんだもん」

だもんって、見た目は若いから似合っているけど。実際は100歳以上なんだよね?

「ちゃんと、お爺ちゃんからアイテム袋を借りてきたから、大丈夫よ。あとお金ね」

そう言って、アイテム袋とお金が入った袋をルイミンに渡す。

「お爺ちゃんはみんなで囲って食べられる大きな鍋が欲しいって」

「ううぅ、お爺ちゃんまで」

ルイミンはテーブルにうな垂れる。

どうやら、ルイミンが一緒に行くことが確定したみたいだ。