軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

387 クマさん、ドワーフの街に向けて出発する

わたしはフィナとルイミンを連れて村の外にやってくると、くまゆるとくまきゅうを召喚する。ここからはくまゆるとくまきゅうの出番となる。

「くまゆるちゃん、くまきゅうちゃん、久しぶり」

ルイミンはくまゆるとくまきゅうの頭を撫でながら挨拶をする。くまゆるとくまきゅうは「くぅ~ん」と鳴く。

2人にはくまゆるに乗ってもらい、わたしはくまきゅうに乗って出発する。

ドワーフの街はエルフの里より先に進んだ、鉱山があるところに街が作られているらしい。ソルゾナーク国ってわけでなく、1つの自治体になるらしい。

「本当に大丈夫なの?」

「大丈夫です。一度行っていますから」

自信いっぱいに答えるルイミン。わたしたちはガザルさんが教えてくれた道ではなく、ルイミンの案内でドワーフの街に行くことになった。

本来、ドワーフの街に行くには大きな川があるラルーズの街に繋がる街道まで戻り、そこからエルフの里がある大きな森を大きく迂回して、山を回るようにした先にある。

森には一応道はあるが、くまゆるとくまきゅうが最高速度で走るには少し道幅が狭い。だから、一度街道に出て、走ったほうが速い気がする。

ことわざでもある。「急がば回れ」だ。わたしも砂漠に行くときに近道をしようとして、道に迷ったからね。

でも、ルイミンがお父さんのアルトゥルさんと一緒に行った道が近いと言い出した。始めは渋ったわたしだったけど、ルイミンが自信満々に「大丈夫です!」と言うので、強くは断れず、了承してしまった。

王都の行き倒れ事件を知っている身としては不安でしかない。でも、クマの地図があるから、迷子になることはないし、クマハウスがあるので行き倒れることもない。

それに、本当にドワーフの街に行くのに近道になるなら、くまゆるとくまきゅうに負担をかけないで済むメリットもあり、人とすれ違うことを気にしないで済む利点もある。実際悪いことばかりじゃない。だから、ルイミンが迷わなければメリットのほうが多いとも言える。

それに急ぐこともないので、のんびりと行くのも良いかもしれない。

とりあえずは森を庭と宣言するエルフのルイミンの言葉を信じて森の中を進む。

「それにしても凄い量でした」

フィナが先ほどの出来事を思い出すように口にする。

わたしたちが村を出るためにルイミンの家を出ようとしたら、家の前にエルフの奥様たちが集まっていた。一瞬驚いたが、タリアさんが鍋などの話をしに行ったときに、わたしが来たことを話してしまったらしい。それで、エルフの奥様たちが山で採れる山菜やキノコを籠いっぱいにわたしに持ってきてくれた。

山菜やキノコに詳しくないわたしにはありがたいので、お礼を言って受け取った。いくら、貰ってもクマボックスがあるから傷まないからね。

「ユナさん、前回来たときに、嬉しそうにたくさん持って帰っていったからね。だから、みんな喜ぶと思って持ってきたんですよ」

「前にユナお姉ちゃんが、家にキノコや山菜をたくさん持ってきたのは、ここで採れたものだったんですね」

前回貰った山菜やキノコは、フィナの家に持っていったり、アンズに分けたり、海に行ったときに料理に使って無くなった。さすがに40人以上で食べれば無くなるのも早い。だから、補充できたのは嬉しかった。てんぷらにして食べようかな。

「今日の夜にでも食べようか?」

「わたし、手伝います」

フィナも食べる気満々だ。

それから、最初は不安もあったが、ルイミンは迷うこともなくくまゆるとくまきゅうに指示を出していく。

森を通り、川を通り、山を登る。

スキルのクマの地図を見ると、ぐにゃぐにゃと曲がっているが、ちゃんと同じ方角に進んでいる。漫画みたいに同じところをグルグルと回ることにはなっていない。

たまにはのんびり移動するのもいいよね。

わたしは道案内はルイミンに任せ、危険な魔物や動物はくまゆるとくまきゅうに任せる。

フィナとルイミンは仲良く話をしている。聞こえてる単語のほとんどが、2人の共通の知り合いのわたしとサーニャさんの話になっている。

途中で休憩を挟みながら、進んでいると、ルイミンがくまゆるの歩みを止めさせ、キョロキョロと周囲を見る。

「あれ、おかしいな……この辺りにあったはずなのに」

周囲は崖があり、道がない。

「もしかして、迷った?」

「迷っていないです。ここに橋があったはずなんです」

「橋って、もしかして。あれのこと?」

わたしが黒クマさんパペットを向ける。その先にはロープでできた簡素な橋があったみたいだが、

壊れていた。

「これじゃ、通れないです」

ルイミンは壊れた橋を見て、困った表情を浮かべる。

「ここが通れないと、来た道を戻って……、それだとかなり遠回りになるし」

ルイミンは頭を抱えてオロオロとし始める。

わたしはタメ息を吐くと、くまきゅうから降りて、崖の近くまでやってくる。

「ユナさん?」

「ちょっと、離れて」

わたしは腰を下ろし、黒クマさんパペットを地面に触れさせる。そして、魔力を流してイメージする。崖から土が現れ、反対の崖まで土が伸びて橋ができあがる。

ピラミッドの地下探索のときに橋を作ったことがあるので、簡単にイメージすることができ、橋を作ることができた。

「ユナさん凄いです」

「でも、なんでクマさんがいるの?」

橋の端にある橋を支える柱はクマになっている。橋を強化しようと思ったら、クマができただけだよ。まあ、これで橋が落ちるようなことはないはずだ。

「まあ、これで通れるようになったよ」

わたしたちは橋を渡って、反対側に移動する。

そして、魔物や凶暴な動物に襲われることもなく、ルイミンが迷子になることもなく、順調に進み、夜になる。

「そろそろ暗くなってきたから、この辺りで一泊しようか」

「ユナさん、クマさんのお家ですか?」

ルイミンが嬉しそうに尋ねてくる。

「クマさんのお家は凄いですよね。野宿をしないでよくて、温かい布団があって、お風呂があって、一日の疲れが取れる最高の家です」

ルイミンは余程、王都に行くときに苦労したみたいで、クマハウスを気にいっている。

わたしはクマハウスを取り出すと、くまゆるとくまきゅうを子熊化させて中に入る。そして、お風呂にお湯が溜まる間に食事の準備に取りかかる。せっかく山菜をもらったので、少し手間だけど、野菜の天ぷらを作ることにする。

ちなみに、クマ装備をしているので、油が跳ねても大丈夫だし、クマさんパペットをしているので、手に油がかかることもない。完全防備だ。

野菜を切って、小麦粉をつけて、油で揚げる。素揚げでもいいけど、山菜があるので今日は小麦粉をつけて揚げる。

人参、ジャガイモ、ピーマン、その他もろもろの野菜がクマボックスには入っている。クリモニアはもちろん、村、王都に行ったときにたくさん買っている。だって、あとで買いに行くのが面倒だし、売っていない場合もある。あるときに買っておくのがわたしの主義だ。

そして、せっかくルイミンがいるので、食べたことがないイカの天ぷらも入れ、森と海の幸の天ぷらを作ることにする。

「ユナお姉ちゃん、わたしも手伝いますよ」

「それじゃ、わたしが揚げるから、お皿に乗せていってくれる?」

「はい」

フィナにわたしの補助をお願いする。それを見ていたルイミンもやってくる。

「ユナさん、わたしは?」

「……座っていて」

少し考えて、そう答えた。

「うぅ、酷いです」

「冗談だよ。と言ってもやることはないんだよね」

天ぷらを作るだけなので、3人でやるようなことじゃない。

「ルイミンには今度手伝ってもらうから、くまゆるとくまきゅうと休んでいていいよ」

ルイミンがチラッと、丸まった子熊化したくまゆるとくまきゅうを見る。

「うぅ、凄く惹かれる提案だけど。2人が夕食を作っているのに、わたしだけ楽しんでいるわけには……」

そんなことを言いながら、子熊化したくまゆるとくまきゅうを見ている。

「それじゃ、食事の片づけをしてもらえる?」

「……わかりました。でも、何か手伝えることがあったら言ってくださいね」

そこが妥協点となり、ルイミンはくまゆるとくまきゅうと遊びだす。

そして、無事に夕食の準備も終わり、天ぷらを食べながら会話をする。ルイミンは始めはご飯が麦飯と違って驚いていたが、美味しそうに食べていた。

「そうだ。ユナお姉ちゃん、ルイミンさんの村で何をしたんですか? ルイミンさんにいくら尋ねても教えてくれないんです。ユナお姉ちゃんが村で何かをしたっぽいことを言うから、気になって」

「だって、話したら、笑い地獄かもしれないんだもん」

ルイミンは人参の天ぷらを食べながらフィナの言葉に答える。

でも、どうなんだろう? 話したら笑い地獄になるのだろうか。

契約内容は「わたしの秘密を黙っててほしい」だ。そうなると、わたしが秘密にしてほしいと思うと契約魔法が発動するかもしれない。実際、わたしはエルフの村の出来事をどう思っているのかな。

「分からないから、試してみる?」

「いやです!」

大きな声でルイミンに断られた。実験をしてみたかったけど、駄目だったみたいだ。

「まあ、フィナなら話してもいいよ」

たぶん、わたしが許可を出すことで契約は消えたはずだ。もし、発動したらしたで問題だけど。

「ユナさんはフィナちゃんのことを信用しているんですね」

「うん、まあね。フィナのことは約束を破る子じゃないって、知っているからね。信用しているよ」

「ユナお姉ちゃん……」

「だから、フィナもルイミンから聞いた話は話しちゃ駄目だからね」

「はい」

「あっ、でも聞いたら、フィナが大変なことになるかも?」

話すってことはコカトリスのことを知ることになる。今までは驚かせると思って、自重してきたけど。知ることになれば、フィナにコカトリスの解体を頼むことができる。

「大変なことってなんですか!?」

「なんだろうね? 聞かない?」

フィナはわたしの意味深長な言葉に悩み始める。

「……うぅ、聞きたいです」

わたしは忠告したからね。フィナがそう言うとルイミンはわたしがエルフの村で何をしたかを話し始める。

ルイミンはムムルートさんから聞いた、ヴォルガラスやコカトリスのことを話す。フィナはコカトリスと聞いた瞬間、食事の手が止まる。

「……ユナお姉ちゃん。もしかして、わたしにコカトリスの解体をさせるつもりですか?」

フィナは恐る恐る尋ねてくる。

「だって、わたしできないもん」

タリアさんの真似をしてみる。

「無理です!」

フィナの叫び声があがった。

だから、知ると大変なことになるって忠告したのに。