軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

385 クマさん、エルフの里にやって来る

わたしとフィナは迎えに来てくれたルイミンと一緒にエルフの里に向かう。わたしの横ではフィナとルイミンの2人が歩いている。

「それにしてもフィナちゃんも、クマさんの門のことを知っていたんですね」

「わたしも、ルイミンさんがクマさんの門を知っているとは思いませんでした」

「知っているのはフィナの家族とルイミンの家族だけだよ」

家族全員ではないが、二人の身内だけになる。そう考えると似たような環境の二人だ。

「でも、クマさんの門のことを知るために、笑い地獄の契約魔法をするとは思わなかったよ」

「契約魔法ですか?」

「うん、ユナさんの秘密を他人に話そうとすると笑い苦しむんだよ。もう、それは苦しくて、口にすることもできないんだよ」

ルイミンは笑いながら苦しそうな表情をしてみせる。

サーニャさんとムムルートさんの笑う姿を見たけど、顔は笑みを浮かべているのに凄く苦しそうだった。あれって、何が可笑しいんだろうね。面白い話を聞いて可笑しいとか、体をくすぐられて可笑しいとか、笑い茸を食べたとか、いろいろあると思うんだけど、どのタイプになるのかな。

「初めに言っておくけど、言い出したのはルイミンのお爺ちゃんで、わたしから言ったことじゃないからね。しかも始めは死ぬ契約だったのをわたしが笑い地獄に変えたんだからね」

「でも、話したら笑い地獄なんですよね」

「話そうとしなければ大丈夫だよ」

どこかのエルフみたいに、わたしのクマさんパンツの秘密を話そうとしなければ大丈夫だ。クマさんパンツの秘密はお墓の中まで持っていってもらう。

「ユナさん、フィナちゃんはどこまで知っているんですか?」

「たぶん、ルイミンが知っていることはフィナも知っているよ。逆にフィナが知っていて、ルイミンが知らないことのほうが多いんじゃない?」

「それじゃ、わたしがルイミンさんに話したら、笑い地獄になるんですか?」

「フィナは契約していないから大丈夫だよ」

「良かった」

フィナは安堵の表情を浮かべる。

「それじゃ、フィナちゃんもクマフォンを知っているんですね」

ルイミンはポケットからクマフォンを取り出す。すると、同じようにフィナもクマフォンを取り出す。

「ユナお姉ちゃん。このクマフォンはルイミンさんやシュリと話すことはできるんですか?」

フィナは自分が持っているクマフォンとルイミンが持っているクマフォンを見る。

そう言えば実験をしたことがなかった。今まで、クマフォンを持っていたのはフィナとルイミンだけだった。しかも二人は知り合いじゃないから、試すことはしなかった。

だけど、シュリに渡すことで3つになり、フィナとルイミンが知り合った。クマフォンを使おうと思えばフィナとシュリ。フィナとルイミンが会話をすることができるかもしれない。

でも、クマの転移門のことを考えるとできるか微妙なところだ。

「ちょっと、試したことがないから、どうかな?」

「そうなんですか? それじゃ、あとで試してみていいですか? もし、お話ができるならシュリとお話ができます」

フィナが嬉しそうにクマフォンを握りしめる。

「いいけど、そろそろ村が見えてくるから、後でね」

「それじゃ、フィナちゃん。あとで試してみようよ」

「試すのはいいけど、みんながいないところで試すんだよ」

「はい!」

エルフの里にやってくると、わたしのことを覚えているのか、すれ違う人は挨拶をしてくれる。一月ほど前は結界が緩んで魔物の心配をしていたが、今はそんな心配はない。平和な光景がある。

「ユナお姉ちゃん、ここにいる人は全員エルフなんですか?」

フィナは不思議そうにキョロキョロと周囲を見ている。

エルフの特徴である耳が長かったり、緑色の髪をした人が多い。もちろん、違う色をした髪のエルフもいるが、緑色の髪をしたエルフが多い。

「フィナちゃんはエルフを見るのは珍しいの?」

ルイミンの問いにフィナは首を横に振る。

「こんなに沢山見るのは初めてですが、街や冒険者ギルドで見ます。王都の冒険者ギルドのギルドマスターはエルフなんですよ」

それってサーニャさんのことだよね。

「サーニャさんはルイミンのお姉ちゃんだよ」

「そうなんですか!?」

ルイミンとサーニャさんが姉妹だという事実にフィナは驚く。

「わたしもこの前知ったんだけど。フィナちゃん、お姉ちゃんのこと知っているんだ」

「はい、何度かお会いしました。綺麗な人ですよね」

ルイミンは姉のサーニャさんが褒められて嬉しそうにする。将来的にはルイミンも美人になると思う。

それから、村の中心近くの広場にやってくると子供たちの遊んでいる姿がある。その子供たちがわたしのことを発見すると駆け寄ってくる。

「くまだ~」

「クマさんだ~」

「ルイミンお姉ちゃんだ」

エルフの子供たちが騒ぎ、わたしたちを囲み始める。とくにわたしの周りに集まってくる子が多い。

「みんな、ユナさんに迷惑をかけたら駄目だよ。ユナさんが歩けないでしょう」

「え~」

子供たちがわたしの腕や服を引っ張る。

「お爺ちゃん、…… 長(おさ) と約束したでしょう」

ルイミンがお姉さんらしく、子供たちを注意する。すると子供たちは「は~い」と返事をして離れていく。

振りほどくわけにはいかなかったから助かった。長であるムムルートさんの言葉は大きいらしい。

「ルイミン、ありがとう。でも、ルイミンもお姉さんらしいこともするんだね」

「お姉さんですから」

ルイミンは胸を張る。

子供たちがわたしたちから離れていくと、別のところから声がかかる。

「騒がしいと思ったら、ユナが来たのか。相変わらずの格好をしているんだな」

エルフ青年? のラビラタがやってくる。

「そっちも相変わらず、仏頂面だね」

「村に好きなだけいてもいいが、あまり村の中で騒ぐなよ」

ラビラタは一瞬笑みを浮かべると去っていく。

「なんだったのかな?」

「ふふ、あれでも村を救ってくれたユナさんに気を使っているんですよ」

「そうなの?」

「たぶん、わたしが子供たちを止めなかったら、ラビラタさんが子供たちを止めていましたよ。だから、ラビラタさんを嫌わないでください」

「別に嫌っていないよ」

別に嫌がらせを受けたわけじゃないから、嫌っていない。帰り際にはお礼も言われている。たぶん、わたしだけじゃなく、全員に対してあの態度なんだと思う。誰にでも無愛想な人っているよね。

「それでユナさん、お爺ちゃんに会うんですよね?」

「うん、ちょっと聞きたいことがあるからね」

ムムルートさんにはデゼルトの街の話を聞こうと思っている。本当にあのピラミッドを攻略したエルフのムムルートさんなのか。同姓同名同種族って可能性もある。

「それでムムルートさんに会える?」

「大丈夫ですよ。ユナさんが会いに来たら、お爺ちゃんは会ってくれます。なんたって、エルフの里を救ってくれた恩人なんですから」

「恩人って、大袈裟だよ」

「さっきも言っていたけど。ユナお姉ちゃん、村を救ったんですか?」

「ちょっと、魔物を倒しただけだよ。そんなに大騒ぎをすることはしていないよ」

「あれは、ちょっとって言いませんよ」

ルイミンが力説していると、ムムルートさんの家にやってくる。家の前では長めの椅子に座っているムムルートさんの姿があった。日向ぼっこでもしているのかな?

「お爺ちゃん、ユナさんが来たよ」

「クマの嬢ちゃん?」

「ムムルートさん、お久しぶりです」

「嬢ちゃん、よく来たな。神聖樹のお茶とキノコでも取りに来たのか?」

「それも欲しいけど。今日は別件だよ。ルイミン、悪いけどフィナに村の中を案内してあげてくれる? わたしはムムルートさんに話があるから」

「わかりました。それじゃ、フィナちゃん、行こう。村を案内してあげる」

ルイミンはフィナの手を握って駆けだす。フィナは転びそうになりながら、ルイミンに連れていかれる。

1人残ったわたしはムムルートさんと会話をする。

「それで嬢ちゃん、話とは?」

「ムムルートさん、デゼルトの街って聞き覚えありますか?」

「デゼルトの街?」

首を傾げるムムルートさん。

考え込むムムルートさん。

おでこを触れて思い出そうとするムムルートさん。

わたしはムムルートさんの脳に追加の情報を流し込むことにする。

「砂漠にある街で、湖があって、近くにはピラミッドがある街なんだけど」

「…………」

ポン。

ムムルートさんは左手の手のひらに、右手のこぶしを落とす仕草をする。

「ああ、砂漠のデゼルトの街。懐かしい話だ」

どうやら、思い出したみたいだ。反応からすると、やっぱり本人みたいだ。

「それじゃ、やっぱりピラミッドの迷宮を攻略したのはムムルートさんなの? ちょっと、デゼルトの街に行くことがあって、その街の領主様に話を聞いていたら、エルフのムムルートさんの名前が出てきたから、気になって」

「間違いなくわしだな。若いときに冒険者の仲間と一緒に作った街で間違いない」

ムムルートさんは思い出すように話してくれる。

なんでも、迷宮をクリアしたムムルートさんたちが外に出ると水が湧き出して、湖が出来上がったと言う。それで、砂漠を行き来していた人たちが楽ができるようにと休憩所を作ったところ、徐々に物を販売する者が集まり、作物を育てる者、家畜を育てる者、建物を建てる者が集まって、街ができていったそうだ。

それを管理したのがカリーナのご先祖様でムムルートさんの冒険者仲間だと言う。

「湖を中心に気温が結界によって抑えられていることを知ったわしたちは、壁を作ったりしたものだ」

「その領主様にムムルートさんのことを話したら、会いたそうにしていましたよ」

「そうか、嬢ちゃんはクアトとシアンが作った街に行ったんだな。まだ、二人が作った街が子孫によって守られているか」

ムムルートさんは懐かしそうに話す。

「それじゃ、今度デゼルトの街に行く?」

「あやつたちの子供たちを見てみたいが、立場上、村を長い間空けるわけにはいかないから無理ですな」

「それなら、大丈夫だよ。デゼルトの街にクマの門を設置してきましたから、日帰りで行けるよ」

「……嬢ちゃん、いいのか?」

「いいよ。でも、今はちょっと無理だから、今度でいい?」

「何年でも、何十年でも待たせてもらおう」

そうだよ。エルフはこういう種族だったよ。