軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

375 クマさん、カレーライスを作る (7日目)

長い休暇を終え、明日には帰ることになる。最終日のお昼。今日はわたしがお昼を作ることになった。

「フィナ、そこの玉ねぎの皮剥いたら、こんな感じに切って」

わたしは玉ねぎを1つ取って、フィナに手本を見せる。

「はい、分かりました」

フィナは玉ねぎの皮を剥いて、言われた通りに切っていく。いつも家のお手伝いをしているフィナは手際がよい。

「アンズはジャガイモの皮を剥いて、このぐらいの大きさで切って」

玉ねぎと同じようにジャガイモを切って、大きさを指示する。アンズも手慣れた感じで切っていく。

わたしはニンジンを取って皮を剥いて、一口サイズに切っていく。

「うぅ、目から涙が出てきます」

フィナが目に涙を浮かべながら玉ねぎを切っている。

玉ねぎはわたしがやれば良かったかな?

わたしたちが何をしているかと言えば、カレーを作っている。

海と言えばカレーライスだ。せっかく、カレーのスパイスも手に入ったので、最終日のお昼にカレーを作ることにした。

だけど、子供が約30人、大人が約20人、かなりの人数だ。一人で作るのは大変なので、助手として、フィナとアンズに手伝ってもらっている。

いつも、これだけの量の食事を毎日作るのは大変だ。でも、毎日、アンズやモリンさんたちが食事を用意してくれていた。本当に感謝しないといけない。

だから、最終日のお昼はわたしが作ることにした。

「ユナさん。ジャガイモ、終わりました」

「うぅ、こっちも終わりました」

それぞれが切った材料を持ってくる。わたしもニンジンの下ごしらえを終える。フィナは目を擦っている姿がある。玉ねぎって涙が出るよね。

わたしは最後に豚肉を切って、下ごしらえを終える。あくまで普通のカレーなので、これ以外の材料は入れない。何より手間がかかるからね。

人数分の下ごしらえを終えると鍋に油を引いて、肉を入れて炒める。そして、肉に火が通ったところで、野菜と水を加える。

作る量が多いので鍋を三つ用意する。あと、辛さを変えるためでもある。

「それでユナさん、なにを作っているの? 野菜の煮物?」

何を作らされているか知らないアンズが尋ねてくる。

「カレーって料理だよ。前回、仕事したときに、カレーに必要なスパイスが手に入ってね。海なら、この食べ物だと思って」

「海ならカレーですか? ミリーラに長いこと住んでいたけど、聞いたことが無いです」

「別に海の食べ物ってわけじゃないけど。わたしが住んでいた場所だと。どうしてか、海で食べる食べ物として、食べていたんだよ」

もっとも、わたしは海に行ったことが無いから、実際に海の家でカレーが売っていたのかは知らない。あくまで、漫画やアニメでは海の食べ物ではカレーとラーメンが定番になっている。

海の暑いなか、本当にカレーやラーメンを注文する人がいるのか疑問に思ってしまう。でも、世間に影響されて、わたしもカレーを作っているから人のことは言えない。

「カレーって食べ物は分からないけど、ユナさんが作る食べ物は美味しいから、楽しみです」

「美味しいから楽しみにしていてね。ああ、ご飯の準備は大丈夫?」

「大丈夫です。ちゃんと炊いています」

さすがアンズだ。ご飯のことはアンズに任せ、わたしは3つの鍋を見ながら、アクを取っていく。

「ユナお姉ちゃん。わたしも手伝うよ」

「それじゃ、そっちの鍋をお願い」

アク取りをしながら野菜を煮込む。そして、良い感じになってきたので、火を止め、クマボックスからカレー粉を取り出す。

「えっと、この量だから、このぐらいかな?」

カレーのスパイスの分量は計算済みだ。

こっちが子供用の辛さを控えたカレーで、牛乳を入れてもいいんだけど。今回は入れないことにする。こっちが、ちょい辛めのカレーで、三つ目が辛口カレーにする。つまり、甘口、中辛、辛口って感じだ。わたしは中辛が口に合う。

辛口用は大人用として、少しだけ用意しておく。余ったらもったいないからね。

「ユナお姉ちゃん、なにか色が変です」

「色?」

フィナに言われて、鍋を見るが普通のカレーだ。

「驚かせないでよ」

「土っぽい色になっています。でも、独特な匂いがします」

「そうだね。鼻を刺激する匂いだね」

アンズがご飯を炊きながらカレーの匂いの感想を言う。

確かに鼻を刺激するカレー独特の匂いだ。でも、それが食欲を刺激する。

「これがカレーのスパイスだよ。ちょっと辛味があるけど、美味しいよ」

わたしは小皿にカレーを入れて、味見をしてみる。

うん、ちゃんとカレーになっている。

本当は福神漬があるとベストなんだけど。流石に福神漬を用意するのは無理だった。

「ユナさん、わたしも少し味見させてもらってもいいですか?」

わたしは2人に味見してもらうため、小皿にカレーをよそって、アンズとフィナに差し出す。2人はゆっくりと小皿を受け取り、カレーを口の中に入れる。

「あれ、辛味があって、美味しい」

「色が変だったから、不安だったけど、美味しいです」

「色はスパイスが原因だからね。今、二人が味見したのがこっちの鍋の辛さ控え目の子供用だよ。それで、こっちの鍋がちょっと辛くして、わたしの好みの味で、こっちの鍋が辛さが強めの大人用のカレーだよ」

鍋を見るとそれぞれ色が違う。辛くなる鍋になるほど、色が濃くなる。

「こっちも味見してみる?」

わたしは一番辛いカレーの鍋を指差す。

「辛いんですよね」

「辛いよ。でも、これはこれで美味しいよ」

わたしは中辛ぐらいが一番好きだ。甘口は物足りないような気がするし、辛口は辛いのでカレーを食べている気がしない。だから、個人的には中辛が一番いい。

アンズとフィナは辛口カレーに挑戦する。辛口と言っても、食べられないほどの辛さではない。あくまで、わたし的感覚で、レトルトカレーなどの表示で書かれている辛さだ。元の世界では一人でレトルトカレーを食べていたものだ。でも、メーカーによって辛さが違うのは止めてほしかった。中辛でも、辛口並みに辛いのもあった。

二人は辛口カレーを一口食べる。

「か、辛いです!」

フィナは叫ぶ。わたしは用意してあった水を渡す。フィナは受け取ると一気に飲み干す。

「う~、辛かったです」

フィナには辛口カレーはまだ早かったみたいだ。でも、アンズは大丈夫みたいだ。 塩辛いのに慣れているのかな? だけど、違う辛さだよね。

「確かに辛いけど、ご飯と一緒に食べると美味しいかも」

「パンに付けたり、うどんと一緒に食べても美味しいよ」

カレーパンやカレーうどんも食べたいな。今度、作ろうかな。

でも、ミリーラの町なら、エビや貝やイカを入れた方がいいかな。シーフードカレーを作るのもいいよね。

ご飯もちゃんと炊け、わたしたちは出来上がったカレーとご飯を持って子供たちが遊ぶ砂浜に向かう。

海の家にやってくると、海辺で遊ぶ子供たちを呼ぶ。

「ごはんだ~」

「お腹減った」

子供たちが集まってくる。

「今日はユナちゃんが作ったのよね」

「わたしも手伝ったよ」

ティルミナさんの言葉にフィナが訂正する。

「ユナちゃん、フィナは役に立ったかしら?」

「どこにお嫁に出しても大丈夫なぐらい、役に立ちましたよ」

「あら、そう? でも、そんなことになったらゲンツが騒ぐわね。でも、ユナちゃんが貰ってくれるのなら大丈夫かしら?」

「お母さん!」

フィナはポコポコと恥ずかしそうにティルミナさんを叩く。

わたしは笑いながら、テーブルの上にカレーが入った鍋と炊いたご飯を乗せる。

「それでユナちゃん、なにを作ったの?」

「カレーって食べ物ですよ。ちょっと辛いけど、美味しいですよ」

わたしは一列に並ぶように言い、子供たちから先に配ることにする。隣にいるフィナがお皿にご飯をよそうとわたしがカレーを入れる。子供たちには甘口カレーだ。

「変な匂いがするよ」

「鼻がムズムズする」

「スパイスの匂いだよ。スパイスは体に良いから、遊び疲れたときにはいいよ」

子供はお皿を受け取る。そして、隣にいるアンズがコップに水を入れて渡す。カレーには水が必要だ。何だかんだで、辛いからね。

「お代わりもたくさんあるから、たくさん食べてね」

子供たちの分を配り、ノアたちの番になる。

「ユナさんの手料理、楽しみです。でも、手伝わせてくれなかったのは意地悪です」

「だって、ノアもミサも、料理はできないでしょう」

「そうですが。野菜を洗うぐらいならできます」

いや、いらないから。

「シアはできるの?」

「う~ん、スリリナにたまに教わるから、手際は良くないけど、できるよ」

貴族だから、その手のことはしないと思っていた。

「それで、辛い食べ物だけど。三種類あるけど、どれにする?」

「一番、辛くないのでお願いします」

「わたしも」

ノアとミサが甘口を選ぶ。

「それじゃ、わたしは二番目に辛いやつにしようかな」

「お姉様、少しだけ、食べさせてもらってもいいですか?」

「それじゃ、ノアのお皿に少しだけ、乗せようか?」

「いいのですか?」

わたしはメインは甘口、少しだけ、中辛をよそってあげる。そして、ノアたちの後ろに並んでいたマリナとエルは中辛を選ぶ。

その次にやってきたのはルリーナさんとギルだ。

「ユナちゃんの新しい食べ物、ちょっと楽しみね」

「ルリーナさんは辛いのは大丈夫ですか?」

「もちろん、辛いのは大好きよ」

「それじゃ、辛いのにしておきますね」

わたしは辛口カレーをご飯の上にかける。辛口、第一号だ。

「ギルも辛いほうでいい?」

「辛くないやつ」

「…………」

わたしは辛口カレーをよそおうとした手が止まる。

「ギルはこんなに図体がでかいのに、辛いのは苦手だからね」

予想外の言葉がルリーナさんの口から出てきた。

「体の大きさは関係ない」

ギルが体の大きさと辛さが好きなのは否定する。

まあ、確かに関係はないよね。アンズは辛いのは大丈夫だったし。それにルリーナさんも大丈夫みたいだ。体と性別は関係ない。

とりあえず、ギルには甘口カレーをよそってあげる。

それから、モリンさんとカリンさん、エレナは中辛を選ぶ。

「わたしは辛いのは苦手だから」

セーノさんにニーフさんは甘口、フォルネさんにベトルさんは中辛。

院長先生とリズさんには甘口。辛口に挑戦する人がいないね。

「ゲンツさんは辛口でいいよね」

「俺も辛くないやつでいい」

ゲンツさんまで、子供用のカレーを選ぶ。

ティルミナさん、フィナ、シュリも甘口を選ぶ。まあ、ここは仕方ない。思いのほか辛口カレーに挑戦する人が少なかった。余ったら、牛乳を入れれば、辛さを抑えられるかな?

そして、一斉にご飯を食べ始める。

聞こえてくる声はどれも「美味しい」って言葉だった。子供たちもお代わりする子もいる。パンに付けると美味しいので、クマボックスからパンを出してあげる。

途中からクリフが来たから辛口カレーを渡してあげたら、美味しそうに食べていたので、少し悔しかった。まあ、食べられないほどの辛さじゃないけど、リアクションは欲しかった。

ちなみにグランさんは甘口。マスリカは中辛、イティアは辛口だった。

カレーライスを食べた結果、全体的に好評だった。

ティルミナさんに「お店に出すの?」と言われたが「出しませんよ」と言っておいた。さすがにこれ以上、食べ物を増やしてもお店が大変だし、スパイスの流通も大変だ。定期的に運ぶとしても、運賃が高くなる。

わたしがクマの転移門で毎回買ってくるにしても手間だし、カリーナに見付かったら面倒なことになる。

でも、スパイスなら長持ちするから、大量購入すればいいのかな? たしか密封して、冷蔵庫で保存すれば大丈夫だったはず?

もしくはクマボックスに入れておく手もある。