軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

350 クマさん、海に行く (2日目)

翌日、外を見れば快晴だ。海水浴をするには良い天気だ。

子供たちは朝食を食べると、すぐに海に行く準備を始める。着替えは各自の部屋で行う。砂浜は家の前の道を下っていけば、すぐ目の前だ。それに道はわたし専用になっているらしいから、水着の格好で歩いても問題はないはずだ。

でも、一応、砂浜まで大きめのタオルは持っていくように言ってある。

自分の部屋から外を見ていると、道を駆けていく子供たちの姿がある。それをルリーナさんやリズさん、エレナの三人が追いかける。

ノア、ミサ、シアも海に向けて走り出している。そのあとをマリナとエルが付いていく。

院長先生は最後に出ていく姿がある。

ただ、そこにはニーフさんの姿は無かった。

ニーフさんは子供たちと一緒に海に行くつもりだったらしいけど、院長先生に、

「あなたを心配している人もいるはず。こっちは大丈夫だから、顔を見せてあげなさい」

と言われているのを聞いた。そこにエレナが子供たちの面倒は自分が見るからと言う。それで、ニーフさんはお言葉に甘えて、朝早くからミリーラにいる知り合いに会いに行った。ニーフさん一人なら心配だけど、アンズたちも一緒に行ったから、大丈夫なはずだ。

そして、ティルミナさんはアンズの両親に挨拶しに行くため、ゲンツさんと一緒に町に向かっていく姿がある。挨拶をした後、二人は町を見学するそうだ。

わたしもついていこうかと言ったら、フィナとシュリのことを頼まれた。そんなわけで、今、クマビルに残っているのはわたしとフィナとシュリの三人だけになる。

「ユナ姉ちゃん。まだ~」

「ま、まだだよ」

部屋の外で待っているシュリに向かって言う。先程まで現実逃避するように外を見ていた。

そう、今、わたしは水着を着ている。どんな水着にしたのかと言えば、お腹を出す勇気は無かったので、白と黒のワンピースにした。決して、お腹が膨らんでいるわけではない。太らない体質だし(その代わりにある部分にも肉が付かない)。魔物の討伐でダイエットになっているから、太っていない。

ただ、お腹周りや、二の腕はプヨプヨして柔らかい。

ああ、引き篭もりに、水着はハードルが高すぎる。

わたしは水着を着たまま、クマの着ぐるみを着ることにする。水着姿で外に出る勇気がない。わたしがクマの着ぐるみに足を通そうとしたとき、待ちきれなくなったシュリが部屋に入ってくる。

「ユナ姉ちゃん。早く~」

シュリとわたしの目が合う。

「なんで、くまさんの服を着るの?」

「やっぱり、恥ずかしいから?」

「ユナ姉ちゃん。綺麗だよ。似合っているよ」

「はい、とっても似合っています。体も細いし、長い髪も綺麗です」

シュリに続き、フィナも部屋に入ってくるとわたしの水着姿を見て感想を漏らす。水着姿を褒められるのが、こんなに恥ずかしいこととは思わなかった。

「ユナ姉ちゃん、行こう。みんな、行っちゃったよ」

「ノア様も、先に行くって言って出ていきました」

上から見ていたから知っているよ。現実逃避をしていたからね。

シュリとフィナはわたしのところにやってくると、わたしの腕を掴み、クマの着ぐるみを着るのを妨害してくる。

「ユナ姉ちゃん。大丈夫だから、早く行こう」

何が大丈夫なのか分からないけど。シュリがわたしの腕を引っ張る。今のわたしはクマの装備はしていない。さらにクマ靴を履いていないから、踏ん張ることもできない。シュリの力に引っ張られる。

シュリ、そんなに力があったんだね。今まで、クマ装備をしていたから、わからなかった。

「わかったから、そんなに引っ張らないで」

わたしはクマの着ぐるみを着るのを諦める。シュリとフィナに手を離してもらうと、クマの靴を履き、クマさんパペットを嵌める。そして、クマボックスにクマの着ぐるみを仕舞う。

つまり、わたしの格好は水着のワンピース姿に、いつも通りのクマ靴にクマさんパペット状態になる。

クマさんパペットはアイテムボックスになっているから仕方ない。そして、砂浜までの靴を履かないといけない。だから、なにもおかしくはない格好だ。

そもそも、靴は持っていないんだから、仕方ないことだ。

はぁ、それにしても気が重い。子供たちやフィナたちに喜んでもらえるのは嬉しいけど。自分でデザインしたとはいえ、水着姿は恥ずかしい。これも、家に引き篭もって、海もプールも行ったことがないのが原因だ。わたしにとって、海水浴は未知の領域だ。

わたしは少しでも水着を隠すように大きめのタオルを肩からかける。これで、少しは落ち着く。フィナとシュリもわたしの指示に従って、タオルは持っている。

そして、準備を整えるとフィナとシュリが急ぐようにわたしの手を引っ張って、部屋の外に連れ出す。その後ろを子熊化したくまゆるとくまきゅうが無言で付いてくる。

くまゆるとくまきゅうはもしものときのための保険だ。クラーケンが現れるとは思わないけど。ここは異世界だ。警戒過ぎることはない。まして、わたしはこんな格好だし。

「ユナ姉ちゃん。早く、早く」

今にも駆け出そうとするシュリ。それを楽しそうに見ているフィナ。二人を疲れた表情で見るわたしの構図が出来上がる。

砂浜にやってくると、シュリとフィナは海に向かって走り出す。

「ちゃんと、準備運動するんだよ~」

この世界に準備運動の概念があるか分からないけど、そう口にしてしまう。

砂浜を見るとクリモニアから来たわたしたちぐらいしかいない。プライベートビーチと言っても過言ではない。この場所も町の一部になるが、主となる町は少し離れている。だから、ここまで来る人も少ないみたいだ。

わたしはどうしようかと思って、周囲を見る。波打ち際で遊ぶ子供たちの姿がある。全員スク水で、女の子たちは胸のところに名前が書かれている。

そして、その中にはクマの格好した子供たちがいる。シュリと同様に水泳帽のくまさんの帽子を頭に被っている。後ろ姿を見れば、丸い尻尾らしき物も見える。本当にくまさんの尻尾を作ったんだね。過半数とは言わなかったけど。くまの水着を着た子は10人ほどいた。

ちなみにフィナはクマの帽子は被っていないし、尻尾もない。

なんでも、ノアと同じ水着にしたそうだ。ビキニのフリルが付いている水着だ。色は白色にしたらしい。

二人は波打ち際で遊び始める。

さて、わたしはどうしようかな?

泳ぐ気力はないし、子供たちの輪に入る元気もない。

とりあえず、休む場所を確保することにする。本当なら、ビーチパラソルとビーチチェアを用意して、のんびりするのが一番だけど。そんな物はない。

だから、第二案として、わたしはクマボックスから海の家を取り出す。海の家の外観は至って普通の海の家だ。クマ要素は1つもない。

わたしは砂浜で休んでいる院長先生を呼んで、海の家で休むことにする。

「もし、子供たちが疲れたら、そこの冷蔵庫に飲み物も入っていますから、水分を取らせて、休ませてあげてください」

大きい冷蔵庫もあるし、休憩する場所もある。わたしは院長先生と自分の分の飲み物を取り出し、院長先生に渡す。

「ありがとう。飲み物を忘れて、少し心配していたんです」

「たくさんありますから、遠慮なく飲んでくださいね」

院長先生と話していると、海の家が気になった子供たちがチラホラやってくる。そして、わたしを見ると、首を傾げている。「だれ?」「わからない」「ユナお姉ちゃんかな?」「そうなの?」「そう言われるとユナお姉ちゃんかも?」などの声が聞こえてくる。

どうやら、ハッキリとわたしとは分からないみたいだ。

わたしはクマさんパペットを子供たちの前でパクパクとさせてみせる。

「ユナお姉ちゃん?」

「やっぱり、ユナお姉ちゃんだ」

子供たちが笑顔でわたしのところにやってくる。

やっぱり、子供たちはわたしのことはクマと認識していたみたいだ。

そんなわたしたちのやり取りがおかしかったのか、院長先生が笑い出す。

「ごめんなさいね。おかしかったから、つい」

怒るつもりも、文句を言うつもりも無いけど。今のところ、笑うところあったのかな?

子供たちに水分を取るように言うと、子供たちは冷蔵庫に駆け寄っていく。後ろ姿を見れば尻尾が付いている。お尻の尻尾を見ていると、ルリーナさんが子供を連れてやってきた。

「いきなり、何を取り出したかと思ったら、変な家を出したわね」

「ルリーナさんも疲れたら休んでくださいね」

「ユナちゃんは、すでに疲れているわね」

精神的に疲れているだけだ。

「それにしても、ユナちゃん。髪がそんなに長かったのね。それに体は細いし、華奢な体をしているのね」

ルリーナさんが、ジロジロとわたしの体を見るので、タオルで体を隠す。

「子供たちが戸惑うのも分かるわ。わたしも子供たちのやり取りを見ていなかったら、この美少女だれ?と思ったわよ」

「ルリーナさんも美人ですよ」

「ふふ、ありがとうね」

ぷにぷに、ぷにぷに。

わたしはルリーナさんのお世辞は聞き流し、ルリーナさんを褒める。

実際にルリーナさんは美人さんだ。よく、こんな美人がデボラネと一緒にいたものだ。

ぷにぷに、ぷにぷに。

それにわたしと違って水着姿が似合っている。

ルリーナさんの水着はビキニだった。シンプルな白い布地で作られている。だけど、そのビキニには綺麗な花柄の刺繍がされている。なるほど、柄でなく、刺繍で個性を出しているのかもしれない。

シェリーが見たら、クマの刺繍の水着を作ったりしないか、心配になってくる。

まあ、水着を作る機会はないはずだから、大丈夫なはずだ。

ぷにぷに、ぷにぷに。

「でも、ユナちゃんは可愛い女の子と思っていたけど、あのクマの中身がこんなに腕や足が細い女の子だとは思わなかったわ。この細腕で男性冒険者を倒したり、魔物を倒したり、よくできるわね」

ぷにぷに、ぷにぷに。

ルリーナさんは先ほどから、わたしの二の腕を握っている

「こんなに柔らかい腕で、デボラネを殴ったのね。信じられないわね」

ぷにぷに、ぷにぷに。

「あのう、止めてくれませんか?」

「柔らかくて、気持ちいいから」

「ご自分の胸でも触ったらどうですか?」

エルほどは大きくないけど。ルリーナさんの胸もそれなりにある。

「自分のを触っても楽しくないでしょう」

わたしがルリーナさんの手を振りほどくと、ルリーナさんの胸が揺れる。

わたしの胸? 揺れませんよ。