軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

351 クマさん、体力の無さを痛感する (2日目)

「それにしても、波は穏やかだけど。少し、子供たちが流されないか心配ね」

ルリーナさんが海を眺めながらそんなことを言い出す。

たしかにそうだ。ここの砂浜の波は比較的に穏やかだ。遊ぶには適している。

でも、小さな子供なんて、ちょっと目を離した隙に、溺れたり、波にさらわれることもある。今は波打ち際で遊んでいたり、リズさんが一緒に手を引いたりしているけど。全てに目が届くわけではない。

それに泳げない子もいるから、安全に遊べる場所を作った方がいいかもしれない。

わたしは立ち上がって、日差しが降り注ぐ太陽の下に出る。

熱い。わたしの柔肌がじわじわと焼けるような感覚に襲われる。わたしはタオルで肌を守る。それでも、足元の砂から熱が込み上げてくる。

水着姿なのにクマの着ぐるみを着ているよりも暑いって、どうなんだろう。暑さなんて感じない、クマの着ぐるみが恋しくなってくる。

「ユナちゃん、どこに行くの?」

わたしが海の家を出るとルリーナさんが尋ねてくる。

「子供たちが安心して、泳げる場所を作ろうと思って」

わたしが砂浜を歩くと、くまゆるとくまきゅうが付いてくる。さらに、くまゆるとくまきゅうの後を子供たちが付いてきて、子供たちの後ろには笑顔のルリーナさんが付いてくる。変な行列が出来上がる。

わたしは周囲を見て、プールを作るのに適した場所を探す。どこもあまり変わらなさそうだ。左右に砂浜が広がり、途中で岩山があるくらいだ。わたしは子供たちがいない砂浜に移動する。

この辺りでいいかな?

わたしは波打ち際にやってくると、クマさんパペットを前に突き出す。わたしは思い出したかのように後ろにいる子供たちに向かって注意する。

「前に出ちゃだめだからね」

わたしは再度、クマさんパペットを突き出して魔法を使う。すると海に柵のような、棒が無数に突き出る。柵の大きさは横に感覚的に25mぐらい、海側に、深さ1mほどぐらいまでの距離にしておく。時間が経てば、水位も変わってくるが、その辺りはルリーナさんたちに気をつけてもらうことにする。

柵があれば子供たちも、これ以上先に流されることはないし。波も来るから、波打ち際で遊ぶこともできる。

「ルリーナさん、子供たちはここで遊ばせてあげてください。もし、狭いようだったら広げますから」

「相変わらず、簡単に魔法を使うわね。了解、リズやエレナ、ギルを誘って、こっちで遊ばせるわ」

ルリーナさんはここから、大声でリズさんたちを呼ぶ。そのルリーナさんの声で他の遊びをしていた子供たちも集まってくる。フィナやシュリの姿もある。

リズさんとエレナはやってくると、柵があることに最初は驚いていたが、すぐにわたしにお礼を言って、子供たちと遊び始める。

ギルも子供を背中に2人乗せてやってくる。無表情で歩いているけど、重くないのかな? それにしても、相変わらずの筋肉だ。

わたしがギルを見ていると、ギルとわたしの視線が合う。

「…………?」

だけど、ギルはわたしのことはスルーして砂浜に座り、子供たちのことを監視し始める。

今のはなんだったんだろう?

「ユナちゃんのことが分からなくて、考えるのを止めただけよ」

ルリーナさんがギルの行動について説明をしてくれる。

そんなにわたしだってことは分からないものなのかな?

とりあえず、プールもどきは作ったので、これで安心して遊ぶことができる。子供たちが海で遊ぶ中、その様子を見ているフィナがいる。

「フィナは遊ばないの?」

「あのう、ユナお姉ちゃんは泳げますか?」

フィナが遠慮がちに尋ねてくる。

「わたし? どうかな。小さいときは泳げたけど。この数年は泳いでいないから」

なにぶん、泳いだのは小学生以来だ。自転車などは一度乗れるようになれば、長い間、乗っていなくても、乗れる話は聞く。でも、泳ぎはどうなんだろう?

「その、わたし泳げないから、教えてくれませんか?」

「わたしも~」

「わたしも教えて」

フィナがそう言うと、シュリや他の子供たちも騒ぎ出す。

やっぱり、フィナとシュリは泳げなかったんだね。クリモニアの近くに小さな川があるとはいえ、病気の母親がいたのでは、遊びに行くこともできなかったはずだ。

「でも、泳ぎならルリーナさんに教わった方が……」

わたしはルリーナさんを見るが、すでに数人の子供たちがルリーナさんに集まって、泳ぎを教わっている。リズさんもエレナも手が離せない。

これはわたしが教えるしかないのかな?

「教えるのはいいけど。わたしが泳げたらね」

泳ぎ方は分かる。でも、泳げないのに教えるのは変だ。だから、泳げたら教えることにする。誰だって、泳げない人には教わりたくはないはずだ。

フィナはわたしの条件に嬉しそうに「はい」と返事をする。本当に分かっているのかな? 教えるのは泳げた場合だよ。

本当は海の中に入るつもりはなかったけど、今回は仕方ない。水着を着たのだって、シェリーが作ってくれたからだ。シェリーはわたしの水着姿を見ると嬉しそうにしていた。あの顔を見ると、着ないわけにもいかない。

わたしはクマ靴を脱ぎ、クマさんパペットを外すと、くまゆるとくまきゅうに預かってもらう。クマ装備は譲渡不可のため、砂浜に放置しても盗まれることはない。持ち運べないのだ。ただ、くまゆるとくまきゅうはわたしの召喚獣のためか、譲渡不可のクマ装備の持ち運びができる。だから、なにかあったときは、くまゆるとくまきゅうがクマ装備を持ってきてくれる。

本当にくまゆるとくまきゅうは優秀な召喚獣だ。もし、元の世界に戻ることがあっても、くまゆるとくまきゅうは一緒に帰りたいものだ。もっとも、元の世界に帰る方法があったとしても、帰るつもりはない。

でも、新作のアニメやマンガは見たい。

くまゆるとくまきゅうにクマ装備を渡したわたしは素足で砂浜を歩く。砂浜が熱い。足の裏を焼かれるように熱い。子供たちを見れば、平気そうにしている。鍛え方が違うのかな?

引き篭もりのわたしと。毎日、動き回っている子供たちとでは、分かりきった答えだ。

そして、最後に悩んだけど、タオルを外して、くまゆるに渡す。

そして、わたしは海に入る前に軽く準備運動をする。準備運動をせずに海に入れば、足をつったりするのは目に見えている。クマ装備が無ければ、わたしなんて一般人以下の存在だ。

ちゃんと準備運動したわたしは海の中に入る。冷たい。ゆっくりと、胸ぐらいの深さのところまで来ると、泳いでみる。

おお、泳げる。体が覚えている。小学生のときに泳いだっきりだけど、覚えているものだ。

「ユナ姉ちゃん、凄い」

シュリたちが褒めるが、気恥ずかしい。ほんの少し泳げるだけだ。遠泳は絶対に無理だし、溺れている人を抱えながら泳ぐこともできない。あくまで、短い距離を泳げるだけだ。

一応、泳げることは判明したので、フィナたちに泳ぎを教えることにする。

「そういえば、ノアたちがいないけど。フィナは知っている?」

「ノア様ですか? わたしたちが来たときに、あっちの岩山に行くのが見えました」

フィナは少し離れた位置にある岩山を指す。

「マリナたちも一緒だよね」

「はい、一緒でした」

それなら、心配しなくても大丈夫かな。

わたしはフィナたちに泳ぎを教える。でも、全員は無理なので、一度クマさんパペットを嵌めると、クマボックスからビート板を取り出す。ビート板と言っても木の板だ。でも、普通の板と違って、水に浮く木材で作ったビート板だ。

ティルミナさんに相談したら、この木材を教えてもらった。その木材で作ったビート板を子供たちに渡して、使い方を教えてあげる。子供たちは楽しそうにビート板を使って泳ぎ始める。さらに遊び道具として、大きな板を出せば、その上に乗ったりして遊ぶ。

ぷかぷかと浮かべば、フロート代わりにもなる。子供たちの遊び道具にはちょうどいい。

極めつきは、クマの形をした乗り物だ。

プカプカと浮かぶ木でできたクマ。取り合いにならないように三つほど出す。クマの乗り物を出すと、子供たちは嬉しそうに乗る。

そして、そんな感じで、わたしの水泳の授業は始まったけれど、すぐに終了することになった。わたしの体力に限界が来てしまったのだ。泳ぎ方を教えたわたしは、海の家で倒れることになった。泳ぎは覚えていたけれど体力が無かった。

「ユナちゃん。冒険者だよね。いつも、山を走ったり、魔物と戦ったりしているよね」

ルリーナさんに呆れた視線を向けられる。

「わたしをお姫様抱っこしたわよね」

「前も言ったけど魔法だから。魔法を使わなければ、子供の体力にも勝てません」

「それには同意ね。子供たちの遊ぶ力って、どこから来るのかしら」

でも、ここまで体力が無いとは思わなかった。

わたしはくまきゅうを枕にしながら、体を休ませる。

「ユナお姉ちゃん、大丈夫ですか?」

フィナが飲み物を持ってきてくれる。

「うん、少し休めば大丈夫だよ。だから、フィナも遊んでおいで」

「わたしも少し疲れたので、休みます」

フィナはそう言うとわたしの隣に座る。シュリは孤児院の子供たちと一緒に遊んでいる。楽しそうで良かった。即席プールでは子供たちとルリーナさん、リズさんといったメンバーが楽しそうに遊んでいる。

わたしが横になって休んでいると、騒がしくなる。

「これはなんですか!?」

声からすると、ノアのようだ。海の家を出したときにはいなかった。フィナの話では岩場の方に行っていたと言っていた。どうやら、戻ってきたみたいだ。

「ユナさん、どうかしたんですか!」

倒れているわたしを見つけるとノアとシアが駆け寄ってくる。

「なんでもないよ。体力を使い切って、倒れているだけだよ」

「体力って、ユナさん。冒険者ですよね」

ルリーナさんと同じことを言われる。まあ、普通は冒険者をやって、魔物を倒していることを知っているノアからすれば、そう思うよね。

でも、それはクマさんチートのおかげであって、わたしのスペックなんて、一般人以下だよ。とは流石に言えない。

「ノアはいままで、どこに行っていたの? 近くに居なかったみたいだけど」

「はい、あっちの岩山のところで釣りをしている人がいたので、見たり、泳いだりしていました。岩山の反対側にいたので、こんな家があったのは気づきませんでした」

「ユナさんが作ったの?」

「みんなが休憩できるようにと思ってね」

シアの問いに答える。まあ、主にわたしと院長先生しか使っていないけれど。みんな、少し休むとすぐに遊びに行ってしまう。体力があるのか、海が楽しいのかはわからないけれど。たぶん、両方だろう。

「ノアたちも疲れたら休んでね。強い日差しの中で休むのは良くないからね。それと冷蔵庫に飲み物が入っているから、しっかり水分を取るんだよ」

「はい。喉が渇いていたので、家まで戻ろうかと思っていました」

「それで、泳げるようになったの?」

「はい、お姉様に教わって、少しだけ泳げるようになりました」

「それでミサは?」

ノアとシアの二人しかいない。ミサとマリナたちの姿が見えない。

「ミサはマリナと泳ぎの特訓中です。わたしの方が先に泳げるようになったから、頑張って泳げるようになりたいそうです」

「学園に行ってからも教わるけど。入学前に泳げると授業も楽になるから、練習することは良いことだよ」

マリナたちが一緒なら、大丈夫だね。

もし、戻ってきたらプールのことを教えればいい。

ノアとシアは冷蔵庫から飲み物を取り出すと、わたしの側で休憩をする。

ノアの水着はフィナと同じフリルが付いた色違いの水着だ。フィナが白に対して、ノアは青色だ。シアの学園の水着は競泳水着の感じだ。

そして、お昼はどうしようかと思っていると、砂浜が騒がしくなる。人がたくさん砂浜にやってきた。それも大人ばかりだ。

なに? わたしはクマ靴とクマさんパペットを装備する。