軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

329 クマさん、王都に帰る

掃除を終えて、戻ってきたわたしは、バーリマさんにお礼を言いつつ、半分は自分が払ったことを伝えた。バーリマさんは少し残念そうにしていたが、「わかりました」と言ってくれる。

そして、わたしは2日後に帰ることを伝える。

明日でも良かったけど、クマの転移門のことを考えると、時間調整は必要だ。手紙やギルドカードに日付が書かれている可能性もある。流石に国王も出発した日は分からないはずだから、誤魔化せるはず。

国王とバーリマさんが会って、日付の話をするとは思えないし大丈夫だよね。

翌日、わたしとカリーナは、大きな卵を手に入れるため、鳥がいる場所に向かっている。

昨日、卵が産まれたとラサさんのところに連絡があった。わたしが欲しいと言っていたので、お願いをしてくれていたらしい。頼めば卵はお屋敷まで届けてくれるそうだけど、わたしは鳥を見たかったので、自分で取りに行くことにした。

鳥が管理されているのはバーリマさんのお屋敷から反対側にある農業地帯だそうだ。農業地帯に向かうため、湖を眺めながら歩く。湖の周辺には、いまだに多くの屋台が並んでいる。

「みんな、楽しそうだね」

「これもユナさんのおかげです」

水の件で不安にしていた住民が多かったそうだ。それがバーリマさんの宣言によって、街は活気が戻りつつあると言う。これで、また水の魔石から水が出なくなったら、暴動が起きるかもしれないね。

大丈夫だよね?

少し、心配になるが、大丈夫だと信じよう。やれることはやった。

そして、あのスパイスを売っていたお店のオジサンも、カリーナに会いにお屋敷に来た。なんでも、街に留まることを伝えに来たらしい。そして、謝罪をしたそうだ。

でも、これで安心してカレーのスパイスを購入することができる。良かった。

街の風景を眺めながら歩いていると、農業地帯が見えてくる。

「ユナさん、あそこです」

カリーナが指を差す先には小屋が建っており、小屋の側にある湖には大きな鳥が泳いでいる光景がある。もしかして、大きな鳥ってあれ?

わたしが勝手にダチョウかと思っていたけど違った。目の前の湖で泳いでいたのはカルガモだった。

でも、わたしが知っているカルガモの大きさじゃなかった。大きさはダチョウぐらいある。子供が背中に乗ることができる大きさはある。さすが異世界、鳥もファンタジーだ。

でも、卵ってそんなに産むのかな? 元の世界のだと、毎年カルガモの移動がテレビでやるから、そんなに卵を産むようには思えないけど。

まあ、異世界だし、大きさも違うし、育てているってことは産まれるんだよね。

「あれぐらい大きいと、カリーナなら乗れそうだね」

「はい。乗ったことはありますよ。頼むと背中に乗せてもらえるんですよ」

「そうなの?」

「大人はむりですが、子供なら大丈夫です。わたしも、よく乗って遊びました」

さすがに大人であるわたしは乗れないけど、子供のフィナなら大丈夫なはず。今度、フィナを連れてきてあげるのもいいかもしれない。

「でも、泳げるのが条件です。湖に落ちることもありますから、自分で泳いで戻ってこられない子は乗せてもらえません」

それはそうか。落ちたら泳げないと溺れることになる。それじゃ、泳いだことがないフィナは乗ることはできないね。でも、海で泳ぐ練習すれば大丈夫かな? あとはフィナの頑張り次第だね。

わたしは残念ながら、大人の女性だから、乗ることはできない。

あ~、大人だから残念だな。

「今度、ユナさんも乗ってみますか?」

えっと、それはどういう意味かな。きっと、聞き間違いだよね。

「ユナさんなら、乗れますよ」

「ソウダネ」

わたしはそう言って、心の中で悲しんだ。わたしは大人でないかもしれないけど、子供でもないもん。

小屋にやってくると、数人の男性が仕事をしている姿がある。わたしたちに気付くと、わたしの格好に驚かれる。

「クマ? ……カリーナ様?」

初めの視線は絶対にわたしに向けられるよね。クマだから仕方ないけど。

そんな、疑問に思っている男性にカリーナが話かける。

「卵があると聞いて、貰いに来たんですけど、ありますか?」

カリーナがここに来た理由を説明してくれる。わたしよりカリーナの方が話が進むので、任せることにする。

「連絡を下されば、お届けしましたのに」

男性が畏まったようにカリーナに言う。

やっぱり、領主の娘ってことで、みんな丁重に扱うんだね。

男性はわたしたちを小屋の中に連れていき、卵がある場所に案内してくれる。

「昨日、産まれた卵です」

部屋の奥に行くと、テレビなどで見たことがあるダチョウの卵ぐらいの大きさの卵が2つあった。

普通の卵の何個分になるかな? 味はどうなのかな?

ちょっと、楽しみだ。

「本当に2つともわたしが貰ってもいいの?」

「はい、受け取ってください。ユナさんは明日には帰ってしまいます。わたしは待てば手に入りますから、気にしないでください」

「ありがとう」

わたしは卵の代金を男性に払ってカルガモ大の卵を手に入れる。

カリーナには「お父様が代金を支払うと言ってましたから大丈夫ですよ」と言われたが、ここは自分で払っておく。お土産なら、自分のお金で買わないとね。

でも、これで孤児院の子供たちやフィナに良いお土産ができた。みんなの驚く顔が楽しみだ。

巨大な目玉焼きかな? それともプリン? なんの料理に使ったら美味しいかな?

わたしは男性にお礼を言って小屋を出る。

でも、カルガモ大か。欲しいけど、ダチョウより育てる場所はないから無理だね。流石にクリモニアにカルガモが住める場所を作ることはできない。卵が欲しいときは買いに来ればいい。

卵を手に入れたわたしたちはお屋敷に戻ってくる。

昼食を食べ終わり。おやつにケーキを出してあげる。

「美味しい」

「本当です」

「おかあしゃま、おいしい」

「ふふ、良かったわね」

バーリマさん以外のみんなが、カリーナの部屋でケーキを食べている。カリーナの部屋でケーキを食べることになって、お茶を用意してくれるラサさんも一緒になり、リスティルさん、ノーリスも一緒に食べることになった。最後になってノーリスとも仲良くなった。

ただ、呼び方が「くまさん」となっている。これはリスティルさんが、わたしのことをクマと説明をしたせいみたいだ。まあ、わたしの格好を聞かれれば、「クマ」と答えるしかないから仕方ないけど。小さい子はみんな、「くま」って呼ぶから諦めている。

ちなみにバーリマさんは湖が戻って忙しそうに仕事をしている。どうして、仕事が増えるかわからないけど、忙しそうにしている。そんな、バーリマさんのためにわたしはラサさんに神聖樹のお茶を渡してあげる。魔法で怪我を治してあげることはできないけど、お茶を飲めば体力は回復できる。効果はクリフで実証済みだ。無理はしないでほしいけど、この世界の住民は仕事が好きだから仕方ない。

引きこもりのわたしには考えられないことだ。

そして、夜は昨日と同じようにカリーナと一緒に寝る。もちろん、くまゆるとくまきゅうも召喚する。明日には王都に帰るので、カリーナともしばらくは会えなくなる。何度も行き来したら、怪しまれるから、来るとしても、海の旅行が終わったあとになる。

翌朝、食事を済ませると別れの挨拶をする。

「ユナさん、また来てくださいね」

「来るよ」

カリーナの頭を撫でる。

「くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんにもよろしく言っておいてください」

「わかったけど、昨日の夜も今日の朝も別れの挨拶はしたでしょう」

「そうですが、言っておいてください」

カリーナは昨日の夜も、朝も、くまゆるとくまきゅうにお別れの挨拶をしていた。

「ユナちゃん、本当にありがとうね。ユナちゃんのおかげで、街は救われたわ。このお腹の子の未来を救ってくれて、ありがとうね」

リスティルさんは自分のお腹を擦る。

「無事に産んでくださいね」

「3人目だから、大丈夫よ」

産まれたら、お祝いになにか持ってきてあげないといけないね。

絵本は早いから、やっぱりぬいぐるみがいいかな?

「くまさん、いっちゃうの?」

「お母さんとお姉ちゃんと仲良くするんだよ」

「うん」

リスティルさんの手を握っているノーリスが寂しそうにする。

お母さんのリスティルさんが好きみたいだけど、弟か妹が産まれたら大丈夫かな?

下の子が産まれると母親は下の子に注意が行くから、上の子は 蔑(ないがし) ろになるって聞く。まあ、兄弟なら誰しもが通る道だ。大丈夫だと信じよう。

「今回はお世話になりました。お茶、ありがとうございました。おかげさまで体調がよくなりました」

バーリマさんの顔色が良い。今までの精神的な疲労で疲れていたのだろう。神聖樹のお茶で疲労も取れたみたいだ。

「赤ちゃんも産まれてくるんですから、仕事もほどほどにした方がいいですよ」

「はい。わたしが倒れるわけにはいきませんからね。それから、フォルオート様によろしくお伝えください」

わたしは約束する。

最後に一番端にいるラサさんを見る。

「ユナさん。また、新しいレシピを教えてくださいね。わたしも、もっと料理の勉強しますから」

「うん、美味しい料理を持ってくるよ」

わたしはみんなに見送られ、お屋敷を出る。

カリーナが街の門まで、見送ろうとしたが、それは丁重に断った。付いてこられると、クマの転移門が使えないからね。

カリーナには心の中で謝って、昨日購入した家にやってくる。もちろん、辺りを気にして、中に入った。

クマの転移門の設置場所は倉庫にする。そして、わたしはドアを開けて王都に転移する。