軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

330 クマさん、お城に報告に行く

クマの転移門を使って、一瞬で王都にあるクマハウスに戻ってくる。

行くのは大変だけど、帰りは楽だから、本当にクマの転移門は助かる。瞬間移動もいいけど、これはこれで便利だ。前回みたいなスコルピオンを倒すことにも活用ができる。

さて、戻ってきたはいいけど、このまま国王に会いに行くにもあれだ。

わたしはここでも時間調整をする。

やることはたくさんある。まずはあまり使っていない王都のクマハウスの掃除をする。移動するための拠点としか使っていないため、ホコリが溜まっている。いつ、知り合いを連れてくるか分からない。フィナが泊まるかもしれないしね。

わたしは掃除や洗濯などをして時間を潰す。そして、昼も過ぎ、おやつの時間になる頃にお城に向かう。

わたしは、いつも通りにクマの格好でお城に向かっていると、後ろから走ってくる音が聞こえてくる。

なんだろう?

わたしが振り返ると、「ユナ!」わたしの名前を叫ぶと、金髪美少女が抱き付いてくる。

「ティリア?」

抱きついてきたのは制服姿のティリアだった。

「ユナ、こんなところでどうしたの? もしかして、お城に向かうところ?」

「そうだけど、ティリアは学園の帰り?」

まあ、学生服だし、当たり前だよね。

「うん。それでお城に向かっていたら、特徴のある後ろ姿が前を歩いているから、走ってきちゃった」

そんな可愛い笑顔で言われても困る。

「ティリアは歩いて学園に通っているの?」

「そうだけど」

「お姫様なのに? 馬車を使ったり、護衛に守られたりしないの?」

「行きは馬車で行くけど。帰りは友達と帰ったりするから、歩きだよ」

厳重なボディーガードに守られているかと思ったけど違うらしい。まあ、学園祭のときも居なかった。でも、馬車を使っていないのは意外だ。お姫様が一人で出歩くって良いのかな?

ティリアの父親の国王を思い浮かべると、一人でクマハウスまで来たこともある。自由な王族なのだと納得しておく。考えるだけ無駄だ。

「それでユナはフローラに会いに行くの?」

「今日は国王陛下だよ」

「お父様に?」

「仕事を頼まれてね。その仕事が終わったから報告しに行くところ」

「そういえば、ユナは冒険者だったんだよね」

そうだよ。決して、職業も種族もクマじゃないよ。人間の冒険者だよ。

「でも、お父様に頼まれるなんて、凄いね」

「そう?」

「一応、国王だから、信用していないと頼まないよ」

「たまたまだよ。わたしが持っている物が欲しかったみたいだから。そうじゃなければ、頼まれていないよ」

「そうかな? お父様、ユナのこと気にいっているよ」

あの国王が?

考えてみる。……そうなのかな?

「わたしが持ってくる食べ物が珍しいだけだよ」

「それが気にいっているからだと思うよ」

たまたまプリンを食べたせいだ。

ティリアと何気無い話をしていると、城の門が見えてくる。

「ティリア様、お帰りなさいませ」

「ただいま」

「それと、ユナ殿も一緒ですか?」

「そこで、偶然にね」

兵士はわたしの対応に慣れたものだ。驚かれることはほぼない。

たまに、違う人がいると驚かれるけど。大概、わたしを知っている人が門に立っていることが多い。

「ユナ殿が来られたら、国王陛下のところにお連れするように言われています」

「1人で行っていいの? それとも誰かが」

「自分がお連れします」

「いいよ。わたしが連れていくよ」

「ティリア様!?」

わたしを連れていこうとする兵士を止め、ティリアが申し出る。

「ですが……」

「任せて。お父様は執務室よね。ユナ、行くよ」

ティリアにクマさんパペットを掴まれ、ドナドナされていく。兵士は何も言えずにわたしたちを見送る。

トコトコ歩いていると、さらに会いたくない人に出会ってしまう。

「あら、ユナちゃんにティリア様」

「エレローラさん。また、サボりですか?」

「ユナちゃんまで、国王陛下みたいなことを言うのね。息抜きよ。それで、ユナちゃんとティリア様がどうして一緒に?」

「ユナがお父様のところに行くっていうから、連れていくところ」

エレローラさんは少し考え込むと。

「それじゃ、わたしも一緒に行こうかしら」

もう、「仕事はいいんですか?」とツッコミはしない。いつものことだ。

「別に遊びに行くわけじゃないよ。美味しい食べ物はでませんよ」

勘違いされても困るので、それだけは言っておく。

「ユナちゃんがわたしのことをどう思っているか、分かった気がするわ」

合っているよね? いつもフローラ様のところに行くと。どこからと嗅ぎつけて、毎回食べ物を食べに来るよね?

「ほら、行くわよ」

わたしはティリアとエレローラさんに挟まれると、ドナドナされていく。そして、やってきたのはいつもの執務室。

「お父様、入ります」

中からの返事を待たずにドアを開けて、部屋の中に入っていく。

「ティリア? 今は仕事中だ。……ユナ? それにエレローラ?」

書類に目を通していた国王がティリアの方を見て、隣にわたしとエレローラさんがいることに気付く。

「ユナ、戻ってきたのか」

「つい、さっき」

嘘だけど。

「それでどうして、ティリアとエレローラが一緒にいるんだ?」

「学園から帰って来るときに、可愛く尻尾を振っているユナを見つけて。それで話を聞けばお父様のところに行くって言うから、連れてきたの」

わたし尻尾なんて、振っていないよ。普通に歩いていただけだよ。

「わたしは散歩をしていたら、可愛いクマさんを見つけたから付いてきたの」

エレローラさんはティリアの真似をして可愛く言う。

「おまえは仕事をしろ!」

「しているわよ」

散歩していたって言った口が言いますか。国王はわたし同様に呆れている。

「わかった。ユナを連れてきてくれたことに感謝する。二人とも下がっていいぞ」

国王は面倒臭そうに手首を振って、エレローラさんとティリアを部屋から追い出そうとする。

「なに? 2人っきりで、なにをするの? ユナちゃんはまだ、子供よ」

「お父様!」

「し・ご・と・の・は・な・し・だ。エレローラ、貴様も知っている件だ」

「冗談よ。そんなにむきにならなくても」

「おまえが馬鹿なことを言うからだ。娘に悪影響を与えるから、馬鹿な発言はやめろ」

もう、遅いと思うよ。すでに悪影響は受けているよ。いつも、こんなことをティリアの前で言っているから、ティリアの発言もそんなことになるんだね。

あのおっとりした王妃様より、エレローラさんの影響を絶対に受けているよね。

その点、シアは良い子に育っているから、良かった。シアはどちらかと言うと真面目なところがクリフに似ている。ノアの方が離れて暮らしているのにエレローラさんに似ている。やっぱり、血なのかな?

「それじゃ、わたしも残って、話を聞いてもいいわよね?」

「ずるい。わたしもお話が聞きたいです」

「荷物を運ぶ仕事を頼んだだけだ」

「それじゃ、残って話を聞いてもいいですよね?」

ティリアは国王を見る。そんな国王はわたしを見る。

「どうなんだ?」

「なんで、わたしに聞くんですか?」

「普通の報告だけなら、問題はない。だから、おまえさんに聞いている。あとで、俺のせいにされても困るからな」

もしかして、ピラミッド事件のことを知っているの?

「なんで、そう思ったの?」

「時間がかかり過ぎだ。おまえさんのクマなら、もう少し早く戻ってくると思っていたからな」

たしかに、冒険者を待ったり、ピラミッドの地下を探索したり、上の迷宮を潜ったりした。さらに時間調整で街には二日残った。

普通に考えれば、戻ってきているはずだ。

「でも、そこは街を見物していたとか」

「それなら問題はないな。俺は遅いから、なにかあったと思って、2人を部屋から追い出そうとしただけだ」

国王はわたしのために二人を追い出そうとしていたんだね。確かにピラミッドのことはおおっぴらに話すことはできない。

でも、ティリアを追い出すってことは何かあったと白状しているようなものだ。でも、なにも無いと言えば、残って話を聞かれる。どっちも同じことになる。それにティリアに知られて、学園で話されても困る。

「ティリア、ここは冒険者としての仕事だから」

「やっぱり、なにかあったのか……」

「なにか、あったのね」

国王はやっぱり的な表情をする。エレローラさんは、どこかのおばさんのように楽しそうにする。

ああ、エレローラさんは若く見えるけど、おばちゃんか?

「ユナちゃん。今、なにか、変なことを考えなかった?」

「カンガエテイマセンヨ」

人の心を読まないでください。

「わかった。とりあえず、ティリアは部屋を出ろ」

「え~」

「え~じゃない」

「それじゃ、エレローラはどうして残るの?」

「当たり前だろう。とんでもない話を俺1人で聞いてどうする。ユナ担当は必要だろう。それにエレローラはユナの依頼内容を知っている」

えっ、なに? そのわたし担当って、そのフレーズ、どこかで聞いたことがあるよ。

「わたしもユナ担当になります」

ならないでいいよ。

それにお姫様がわたしの担当になって、なにをするのよ。

動物園のクマじゃないんだから、餌とかいらないよ。

「わたしだって、話を聞きたいです。みんなで隠しごとなんてずるいです」

「そんなんじゃない。ユナとの約束だ。それを守るだけだ」

約束。その言葉で思い出すのは、魔物1万のことやクラーケンのことだよね。どうやら、国王はこれからわたしが行う出来事も黙ってくれるらしい。

思っていたよりも義理堅い。

「それではわたしが、ティリア様の分もちゃんと、ユナちゃんのお話を聞いておきますね」

エレローラさんは国王の許可も下りているので、部屋にある椅子に座る。

「ズルいです。わたしもお話が聞きたいです」

ティリアがわたしの服を掴む。伸びないけど、引っ張るのは止めてほしい。

わたしは助けを求めるように国王を見る。

「おまえが判断しろ」

「ユナ……」

ティリアがわたしの目を見つめてくる。

「…………」

わたしは諦めたようにため息を吐く。

「誰にも話さないでくださいよ」

「ユナ、ありがとう。誰にも言いません」

断っても、あとで絶対に聴いてくるタイプだ。それなら、諦めて約束を守らせた方がいい。

ティリアは嬉しそうに椅子に座り、わたしもそれに続く。

「エレローラさんも黙っておいてくださいね」

「大丈夫。わたし口は堅いから。あっ、でも愛するクリフには話すから」

「いや、話さないでください」

国王とわたしは同時に溜め息を吐く。国王もエレローラさんには苦労しているみたいだね。この世界は男性が苦労するのかな? クリフも苦労しているみたいだしね。