軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

326 クマさん、バーリマさんに報告する その2

魔石を交換したわたしたちは、街に戻ってくる。街の中に入り、バーリマさんの家に向かって歩いているけど、街の雰囲気がいつもと違う。

まず、すれ違う人が少ない。自慢じゃないけど、わたしが道を歩くと視線を集める。それが少ない。

「なにか、あったのかな?」

「分かりません」

わたしたちは急いで屋敷に戻るために、湖の近くにやってくる。すると湖の周辺には人だかりができていた。みんな、湖を見ている姿がある。

「いったい、なんなんでしょうか?」

「もしかして、水が増えたことに気付いたとか?」

「でも、ついさっきですよ。いきなり、増えたことはわからないと思います」

まあ、普通に考えればそうだけど。それ以外に湖に集まる理由が思いつかない。でも、カリーナの言う通りに水が増えたと言っても、そんなに簡単に目視して分かるほど、湖の水が増えたとは思えない。

見た目で分かるようになるのは早くて数日はかかるはず。実際に見ても、はっきり言って分からない。

「クマ? とカリーナ様」

住民の一人がカリーナに気付く。正確にはわたしの存在に気づいてから、カリーナに気付いたって感じだ。カリーナの名を聞いた他の住民もわたしたちの方に視線を向ける。

「カリーナ様、湖の水はどうなったんですか?」

「バーリマ様はしばらく待てと仰いましたが、どうなんですか? 湖は元に戻ったのですか?」

「カリーナ様!」

住民たちが迫ってくる。わたしは一歩、カリーナを守るために出る。

「今はわたしからお答えすることはできません。でも、なにがあったのですか? わたしは今まで街の外にいたので、なんでみんなが湖に集まっているのか分からないのですが」

「水柱が上がったんですよ」

住民が興奮するように答える。

水柱って水柱だよね。水が噴き上がるような。

「みんな湖の水が復活したんじゃないかと思って、湖に集まっています。バーリマ様に尋ねに行った者もいますが、しばらく待つように言われています」

う~ん、水柱か。普通に考えれば魔石を交換したのと関係があるのかな?

それ以外に思い付くことがない。カリーナを見ると、少し考え込んでいる。

「わかりました。しばらくすればお父様より、お話が聞けると思います。それまではしばらく待ってください」

カリーナは住民に頭を下げると急ぎ足で歩き出す。わたしもそのあとを追いかける。

「カリーナ、どういうことなの?」

「詳しいことは、お父様に報告してからお話しします。お父様はわたしたちの報告を待っています。遅くなると住民が家に押し掛けてくるかもしれません」

カリーナはそう言うと駆け出す。

屋敷に戻ると屋敷にも人だかりができていた。

「すでに人が集まっているね」

「はい。これでは中に入れません」

集まっている理由は先ほどのと同じだと思う。バーリマさんのお言葉を聞くために待っているみたいだ。湖の住民と違って、少し殺気だっているようにも感じる。近づくと危険なので、遠くから様子を見る。

「騒いでいる様子はないみたいだね」

住民たちは暴れることもなく、屋敷の方を見ている。

でも、見つかって面倒なことになっても困る。とりあえず、カリーナには熱を和らげてくれるコートのフードを被るように言う。

「ユナさん、どうしましょうか?」

普通に行って通してもらうことは出来ると思うけど、囲まれる可能性もある。裏から入ろうにも屋敷を囲むように人がいる。

「これは仕方ないね」

「ユナさん?」

わたしはカリーナをお姫様抱っこする。

「ユナさん、なにを!?」

「しっかり、掴まっていてね」

わたしはカリーナをお姫様抱っこしたまま走り出す。そして、助走をつけて跳ぶ。

「わああああああああああああ」

カリーナが叫ぶ。

その声で住民が上を向く。

「あれはなんだ?」

「鳥だ」

「いや、クマだ」

「くまさんよ」

「空飛ぶ熊だ!」

住民が叫ぶ中、わたしは住民を飛び越え、さらに塀まで飛び越えて、お屋敷の塀の中に着地する。

着地は綺麗に成功して、頭に10.0が並ぶイメージが浮かぶ。クマさん装備があればオリンピックで金メダルも夢じゃないね。まあ、どう見ても反則だけど。

塀の向こう側では「クマが跳んだ」「クマは跳ばないぞ」「絶対にクマだった」「だから、クマは跳ばないって」

わたしを見た派と見なかった派が言い争っている。あと、角度によっては分からない人もいるかもしれない。そもそも、あの一瞬でよくわたしの格好がクマだと分かったことに感心する。

わたしはカリーナを降ろす。

「ユナさん 跳ぶなら跳ぶと言ってください。怖かったです」

地面に立ったカリーナは足が震えていた。

「漏らした?」

「漏らしてません!」

カリーナはポカポカとわたしを叩く。大丈夫そうだ。わたしはカリーナに謝って、お屋敷の中に入る。お屋敷の中に入るとラサさんが待っており、すぐにバーリマさんのところに連れていかれる。

「カリーナ」

「カリーナ、お帰りなさい」

バーリマさんにリスティルさん、息子のノーリスまでいる。

「お父様、お母様、ただいま戻りました。それで、お聞きしたいのですが、水柱が立ったとお聞きしたのですが、本当ですか?」

「ああ、その説明をする前に報告を聞かせてほしい」

「わかりました」

カリーナは水の魔石を無事に交換したこと。水がちゃんと湧き出して、元に戻ったことを話した。

「そうか、カリーナ。今回はいろいろと苦労をかけたな」

「いえ、元はわたしが水晶板を落としたのが原因です」

「ユナさんもありがとうございました。ユナさんが居なかったらと思うと、この街は未だに魔石がなくて困っていました」

バーリマさんは深々と頭を下げる。

「それで、お父様。水柱が立ったってどういうことですか?」

わたしにはなんのことかわからないけど、カリーナには分かっていたようだった。

「カリーナも知っていると思うが一年に一度、お祭りがあるだろう」

「はい。湖が噴水のように水を噴き上げ、街全体に水が雨のように降る」

「そうだ。その現象が少し前に起きて、街が騒ぎになっている」

「ですが、お祭りは……」

「あれは起きる理由があるんだ」

バーリマさんが言うには、この街には一年に一度のお祭りがあるらしい。そのときには決まって間欠泉のように水が噴き上がり、街全体に湖の雨が降るらしい。

昔は杯を感謝の気持ちを込めて清掃するのが目的だった。杯を清掃するには一度魔法陣を止める。そして、再度、魔法陣を起動すると間欠泉のように水が噴き上がる現象が起きると言う。

それが、のちに街のお祭りになっていき、それと同時に領主(イシュリート家)としての力を誇示するためのものになっていったらしい。

そして、今回は魔石を交換するために魔法陣を止め、再起動したことで水が噴出して、それを見た住人が湖に集まり、理由を聞くためにバーリマさんの家に人が集まったみたいだ。

「そして、カリーナが戻り次第、広場で今回のことを話すことになっている。湖が元に戻ったことが話せることをホッとしているよ」

たぶん、わたしが知らないだけで、いろいろと文句やクレームがあったのかもしれない。想像するだけでも怖いね。

「お父様……」

バーリマさんは今回のことを住民に説明しにいくために席を立つ。それと同時に母親のリスティルさんも立ち上がる。

「わたしも行きますわ」

「だが、お腹が……」

リスティルさんは妊娠をしている。

「大丈夫よ。それにあなたも怪我をしているでしょう。今回は良い報告をしに行くのですから、危険はありませんよ」

「それなら、わたしも行く」

「僕も……」

「カリーナ、ノーリス……、わかった。皆で行こう」

わたしはもしものことを考えて、気付かれないように見守ることにした。

それから、街はバーリマさんの言葉によって、湖が元に戻ることが説明された。街は活気づく。湖の前には屋台が並び、あらゆる場所でお祭り騒ぎになった。

ちなみに隠れていたら、子供に捕まって大変なことになったのはみんなには秘密だ。

「ユナさんも行きましょう」

「カリーナは元気だね。今日の今日だよ」

「くまゆるちゃんが乗せてくれましたから、疲れていませんよ」

くまゆるとくまきゅうに乗っていたから、疲労もないみたいだ。

わたしはいろいろとあって疲れたよ。

「それに、水が元に戻って嬉しいですから」

カリーナはわたしのクマさんパペットを掴むと、引っ張る。

「ほら、ユナさん、行きますよ」

わたしはカリーナと一緒に喧騒の街に向かっていった。

その日の夜、精神的に疲れたわたしは寝る準備をする。体はそれほど疲れていないけど、カリーナに連れまわされた。クマの格好は目立つし、ジェイドさんに会うし、いろいろと精神的に疲れた。

白クマに着替えて、くまゆるとくまきゅうを召喚する。相変わらずもふもふ具合がいい。くまゆるとくまきゅうを抱いているだけで、疲れが癒えていく感じだ。

くまゆるとくまきゅうからエネルギーを貰ったわたしは布団に入る。すると、ドアがノックされた。

「ユナさん、起きてますか?」

「カリーナ? 起きているよ」

ドアに向けて声をかけるとカリーナが枕を持って入ってくる。

「どうしたの?」

「その一緒に寝てもいいですか?」

「別にいいけど」

カリーナは嬉しそうにベッドにやってくる。枕を持参しているのに断れるわけがない。

「ユナさん、白いです」

カリーナに白クマバージョンを見られる。

「寝るときはね」

普通のときも着るけど。疲れを取ってくれる白クマがパジャマ代わりになっている。

「可愛いです」

「カリーナの格好も可愛いよ」

カリーナも白色の可愛らしい寝間着を着ている。

わたしより、ずっと可愛い。

「ユナさん、帰ってしまうんですよね。そうなると、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんともお別れなんですね」

カリーナは小熊化したくまゆるとくまきゅうを撫でる。

そこにはわたしは入っていないの?

クマさん泣くよ。

「ユナさんと会えなくなると思うと寂しいです」

ちゃんとわたしも入っているみたいで良かった。

「また、来るよ」

「本当ですか?」

「うん、スパイスも買いに来るし、カリーナに会いに来るよ」

クマの転移門を設置をすれば一瞬で来ることができる。それには設置場所を考えないといけない。

「本当ですよ。約束ですよ。わたし待ってますからね」

「約束するよ」

わたしの言葉に先ほどまで、暗い表情をしていたカリーナが花が咲くような笑顔になる。

「くまゆるちゃん、くまきゅうちゃん。また会おうね」

「「くぅ~ん」」

「うぅ、でも、やっぱりお別れは寂しいです」

くまゆるとくまきゅうを抱きしめるカリーナ。

「それじゃ、良い物をあげるよ」

「良いものですか?」

わたしはクマボックスから、くまゆるぬいぐるみとくまきゅうぬいぐるみを取り出す。それを見たカリーナは目を大きくして、ぬいぐるみを凝視する。

「これはなんですか?」

「くまゆるとくまきゅうのぬいぐるみだよ。知り合いの子供たちには人気があるんだよ」

カリーナはくまゆるぬいぐるみを持ち上げる。

「わたしにくれるんですか?」

「大切にしてね」

「ありがとうございます」

カリーナはくまゆるぬいぐるみとくまきゅうぬいぐるみを抱きしめる。その横では放り出されたくまゆるとくまきゅうがいる。ぬいぐるみに負けて悲しそうにしている。

「でも、どうしましょう。ぬいぐるみを抱いたら、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんが抱けません」

「それなら、今日はくまゆるとくまきゅうを抱いたらいいんじゃない?」

「はい、そうします」

カリーナはベッドから降りて、ぬいぐるみをテーブルの上に置いてくる。そして、戻ってくると、くまゆるとくまきゅうを抱いてベッドに倒れる。

「ユナさん、お話を聞かせてください」

「お話?」

「はい、ユナさんが暮らしている街とか、どんな場所に行ったとか、どんな魔物と戦ったとかお話を聞かせてください」

「う~ん、それじゃあね。…………」

わたしはちょっとしたお話を始める。

そして、しばらく話していると、隣から静かな寝息が聞こえてきた。どうやら眠ってしまったみたいだ。そして、カリーナが無意識に抱きついているのはくまゆるだった。わたしは寂しそうにしているくまきゅうを呼び寄せると、抱き抱える。

「おやすみ」

わたしも今日の疲れを取るために眠りに就く。