軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

327 クマさん、紹介状を書いてもらう

朝、起きるとカリーナはわたしに抱きついて寝ていた。寝る前に抱きついていたくまゆるはカリーナの横で丸くなって寝ている。解放されて嬉しいのか、寂しいのかはくまゆるしかわからない。

ちなみにわたしの腕の中ではくまきゅうが気持ち良さそうに寝ていた。

とりあえず、全員起こすことにする。

そして、朝食を食べ終わり、出掛けようとしたらバーリマさんに執務室に来るように言われた。なんでも、今回の件でいろいろと話したいことがあるそうだ。カリーナも付いてきたそうにしていたが、バーリマさんの許可がでなかった。

「ユナさん、あらためて、ありがとうございました。感謝の言葉もありません。カリーナにも笑顔が出るようになりました。これも全てユナさんのおかげです。この数日間、カリーナは自分を責めていました。わたしたちがいくら声をかけても自分が悪いと、自分の部屋で泣いている姿もありました。親として自分の娘1人、慰めることも、心を救うこともできませんでした。でも、そんなカリーナの心をユナさんが救ってくれました。本当にありがとうございました」

初めて会ったときのカリーナは、切羽詰まったような感じだった。でも、カリーナは頑張ろうとしていた。そして、カリーナは小さな体で頑張ったと思う。

魔物を前にしても逃げ出さなかったし、泣き言も言わなかった。子供なら、怖がって行きたくないと言ったかもしれない。自分勝手な行動をしたかもしれない。でも、カリーナはそんなことはなかった。ちゃんと自分の役目を分かっており、わたしたちの邪魔はしなかった。

そのことをバーリマさんに話すと、とても嬉しそうにした。

「それで、ユナさん。ギルドカードをお借りしてもよろしいですか? 今回の件をギルドカードに記入をさせてください」

依頼は国王扱いになるけど、ジェイドさんたちと行った依頼のことなのかな?

わたしはバーリマさんにギルドカードを差し出す。受け取ったバーリマさんはギルドカードを水晶板上に乗せて、水晶板を操作する。操作は簡単に終わり、ギルドカードはわたしのクマさんパペットの口に戻ってくる。

「ユナさんはスコルピオンの件は知られたくないようでしたので、クラーケンと同じように処理をさせてもらいました」

「つまり、ギルドマスターとか偉い人しか分からないってこと?」

「はい。もし、討伐記録の証明を問われる場合がありましたら、わたし及びフォルオート様がなさってくれると思います」

「国王陛下が?」

「この手紙をフォルオート様にお渡しください。今回のことが書かれています。もしかすると、スコルピオンを見たいとおっしゃられるかもしれませんが」

つまり、手紙にはスコルピオンのことが書かれていることになる。バーリマさんに嘘の報告を書いてもらうわけにもいかないし、今回は仕方ない。

でも、あの国王のことだ。絶対に見せろって言うよね。国王が言いふらすようなことはしないはずだから、その辺りは安心はできると思う。今のところ王都でわたしが一万の魔物を討伐した話もクラーケンを討伐した話も広まっていない。ただ、エレローラさんには間違いなく知られることになるよね。そうなると連鎖的にクリフにも知られることを意味する。

また、クリフになにか言われるかな?

「それで、ユナさんにはフォルオート様と別にお礼をしたいのですが」

「お礼なら国王陛下から貰うから大丈夫ですよ」

国王からはお金を貰う予定になっている。それにはクラーケンの魔石の代金も含んでいる。どうせ、国から出るお金だ。国王なら痛くも痒くもないはずだ。

「いえ、それは魔石を運んでくることが、依頼の内容だったはずです。水晶板を探すことや魔石の交換は別件です。さらにユナさんは大きなスコルピオンを倒しています。このまま、お礼もせずに帰すわけにはいきません」

「別に気にしないでいいよ。スコルピオンがいたのはバーリマさんも知らなかったことだし。素材を売ればお金になるし、魔石の交換はカリーナに付いていっただけだし」

魔石の交換では、ほぼ何もしていない。くまきゅうの上に乗って、カリーナの指示に従って付いていっただけだ。

「それとこれは別です。ユナさんは自分が凄いことをしたことに自覚を持った方がいいですよ」

言っていることは分かるけど、恩着せがましくするのは好きじゃない。これが汚い商売をする商人が相手なら、遠慮なく要求するけど、カリーナの父親だし、悪い人じゃない。

でも、わたしがいくら断っても、バーリマさんは話を聞いてくれない。お礼がしたいと言う。

今日は商業ギルドに行って、クマの転移門を設置する家を購入するつもりでいた。

クマの転移門の設置場所を考えた結果、街の中に家を購入することにした。ピラミッドの中とか、砂漠の中とか考えたりしたけど、魔物や人の目を考えると作れない。そうなると、街の中に小さな家を購入して、その中にクマの転移門を設置した方がいいとなった。

そこでわたしは良いことを思いつく。

「それじゃ、商業ギルドに紹介状を書いてくれませんか?」

「商業ギルドに紹介状ですか?」

「ちょっと、この街に家を購入しようと思って。ほら、わたしって、その、こんな格好でしょう」

わたしは自分の格好をバーリマさんに見せる。

「クマさんですね」

「だから、宿屋に泊まるときも、変な目で見られるから、街に来たときに泊まれる家でも買おうと思って」

「えっと、普通の格好をすることは」

普通はそう考えるよね。でも、わたしはその質問に即答する。

「しませんよ」

したいけど、宿屋に普通の格好で泊まる勇気はない。クマ服を脱げば、普通の女の子より弱い存在だ。自宅ならまだしも、宿屋で普通の格好なんて怖くてできない。それに宿屋じゃ、クマの転移門が置けないしね。

「それに家が欲しいと言っても、この格好だし、年齢的に信用してもらえるかもわからないし、変な場所や変な家を押し付けられても困るし」

転移門を設置するため、言い訳をしてみる。

それに今まで家の購入はクリモニア以外、他の人の力添えを借りて購入している。王都ではグランさんやエレローラさん。ミリーラの町ではアトラさん。ラルーズの街ではレトベールさんに家をもらった。エルフの里ではムムルートさんの許可をもらった。だからこそ問題なく、クマハウスを建てたり、家を買ったりできた。

だから、この街に家を買うならバーリマさんの紹介状があれば、トラブルもなく購入できるはずだ。

「住むわけでもないのに、それだけのために家を購入するのですか?」

「小さい家だよ。カリーナにも会いに来るって約束したし」

「それなら、わたしの家に泊まってくださっても構いませんが。それなら娘も喜びます」

それだと、宿屋と同様にクマの転移門の設置ができない。

「街に到着する時間も分からないし、迷惑にもなるかもしれないし……」

えっと、他に言い訳を……。

「迷惑なんてことは。…………そうですね。わかりました。しつこく誘うのもあれですので、商業ギルドに紹介状を書かせてもらいます」

バーリマさんはいきなり考えを変えて、商業ギルド宛に紹介状を書いてくれる。やっぱり、クマの格好をした女の子は家に入れたくないと思ったのかな?

そう考えると、少し悲しい。

そして、バーリマさんは紹介状を渡してくれる。

「ありがとうございます」

「いえ、多少なり、お礼ができてよかったです」

わたしはバーリマさんに商業ギルドの場所を聞いて部屋を出る。さっそく、商業ギルドに向かうことにする。カリーナが廊下に立っていた。

「お父様とは、なんのお話だったんですか?」

「報酬の話だよ。スコルピオンを倒したから、そのお礼だって」

「それなら、わたしも一緒に話を聞いても良かったと思うんですけど」

「そこは大人の汚いところを見せたくなかったんじゃない? もしかすると、わたしがバーリマさんにいろいろ要求するかもしれないでしょう」

人によっては無茶なお礼を言い出すかもしれない。

「ユナさん、お父様にいろいろと要求したんですか!?」

「してないよ。いらないよって言ったら、バーリマさんに怒られちゃったよ。自分がしたことに自覚を持った方がいいって。良い、お父さんだね」

わたしがバーリマさんを褒めると、カリーナは満面の笑顔で「はい」と返事をした。

それから、予定通りに家を購入するため商業ギルドに向かっている。わたしの横にはカリーナが歩いている。

「別についてこなくても、黙って帰ったりしないから大丈夫だよ」

わたしが出かけると言うと、カリーナが付いてきたのだ。出るときに「帰ったりしないですよね」とか聞かれたりした。

「それじゃ、どこに行くんですか?」

疑うようにカリーナは尋ねてくる。

そんなに信用ない?

でも、家を購入すると言うと、バーリマさんみたいに「家に泊まってください」と言われても困る。だから、黙っていたけど、嘘を吐ける状況でもない。

「商業ギルドだよ。ちょっと、欲しい物があってね」

「欲しいものですか? それはなんですか?」

「家だよ。今度、来たときに泊まるためにね。宿屋に泊まると、こんな格好だから、いろいろと面倒だからね」

「それなら、わたしの家に泊まっていってください」

やっぱり、こうなった。だから、黙っていたんだけど。

「それだと、迷惑がかかるからね。もし、街に来たときに迷惑じゃなかったら、そのときは泊まらせてもらうよ」

「迷惑じゃありません。家は絶対に不要になりますよ」

「そのときは、そのときだよ」

カリーナの誤魔化しも上手くいき? 商業ギルドにやってくる。

ちなみに商業ギルドに行く間に、子供たちに囲まれる事件が起きた。わたしはカリーナをお姫様抱っこして逃げたら、またカリーナに怒られることになった。

跳んでいないのに、なぜ?

「ここが商業ギルドです。良いお家があるといいですね」

カリーナの案内でやってきた商業ギルド、冒険者ギルドから意外と近い距離にある。

「バーリマさんの紹介状もあるし、大丈夫だよ」

「もしものときはわたしも頑張りますね」

「カリーナは頑張らないでいいよ」

「な、なんで、ですか!?」

少し怒った感じで抗議をしてくる。わたしはその理由を説明する。

「カリーナには、今から親の権力を使う子供になってほしくないからね。カリーナにはただ命令するような大人じゃなく。ちゃんと考えて、指示を出す大人になってほしい」

「わ、わかりました。黙っていることにします」

カリーナにしろ、ノアにしろ、小さいときから親の権力は使わずに育ってほしいものだ。大人になれば親の力は自分の物になる。子供のときから、命令や自分の言いなりにさせることは、あまり覚えない方がいい。大人になったとき、他人を思いやる気持ちが無くなってしまう。

でも、バーリマさんや今のカリーナを見れば大丈夫だと思う。でも、今回は商業ギルドで権力を振り回されても困るので、カリーナには黙ってもらうことにする。

それにバーリマさんの紹介状もあるし、大丈夫なはずだ。