軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

301 クマさん、デゼルトの街に着く

「それにしても、相変わらずの格好をしているな。そんな格好して暑くないのか?」

トウヤがわたしの格好を見て尋ねる。

やっぱり、暑い砂漠でふかふかの着ぐるみ姿だと誰でも思うよね。

「暑そう」

セニアさんがやってきてわたしの着ぐるみを掴む。

「でも、柔らかい」

ぷにぷに。

他人が聞いたら勘違いするようなことは言わないでほしい。わたしは何度目かわからないけど、同じ説明をする。

「特別な加工がしてあるから大丈夫だよ」

「わざわざ、そんな変な服に加工しなくてもいいと思うんだが、嬢ちゃんは変わっているな」

わたしが好きでクマの着ぐるみに加工をしているわけじゃない。神様がしたことだ。変わっているのはわたしじゃなくて、神様だ。

「あっ、そういえば、学園祭ではジェイドとメルに会ったんだって?」

「うん、あのときは驚いたよ」

二人には学園祭の解体の出し物をしているときに出会った。

「驚いたのはこっちよ。しかも、ユナちゃんと一緒にいた小さい女の子がウルフの解体までするから驚いちゃった。なのにユナちゃんは解体ができないのね」

「あの子の父親が冒険者ギルドで働いていて、教えてもらっているんですよ。わたしは新人冒険者だから、解体ができなくても仕方ないです」

わたしは新人ってところを強調する。

「新人ね」

「ブラックバイパーやゴブリンキングを倒す新人はいない」

メルさんとセニアさんが呆れるように言う。

「まして、バーボルドたちが倒せなかったゴーレムまで一人で倒すしな」

そんなこともあったね。それほど前じゃないけど、懐かしい話だ。

あのあとの話を聞けば、鉱山にはゴーレムは現れなくなったそうだ。

「でも、本当にわたしたちが倒しちゃったことにして良かったの?」

なんでも、わたしが王都に帰ったあと、住民から感謝の言葉や料理が振る舞われたらしい。

バーボルドは調子に乗って苦労して戦ったことを住民に話したらしい。

でも、戦った事実は嘘ではないので、ジェイドさんたちも止められなかったらしい。

「別にいいですよ」

わたしとしても、騒がれるのは好きじゃないから助かる。

「でも、ちゃんとユナちゃんが討伐したことは冒険者ギルドには報告しておいたから」

「ちゃんと聞いてますよ」

あれから、サーニャさんから話は聞いている。

「でも、てっきり、あの小さな女の子に解体の仕方を教えたのはユナちゃんだと思っていたけど違ったのね」

「わたしはできないから、魔物を討伐したら、ギルドやフィナに任せていますよ」

「自分でやらないと、いつまでたっても覚えないぞ」

それはわかっている。

でも、無理。

「だから、わたしたちはトウヤにやらせているのよ」

「そう、覚えさせるために」

「いや、俺はもうなんでも解体できるから、みんながサボりたいだけだろう」

トウヤの言葉に笑いが起こる。

そして、商人たちと話をしていたジェイドさんがやってきて、メルさんたちに声をかける。

「まだ、大丈夫だと思うが、魔石の交換を忘れるなよ」

「あっ、忘れていた」

「わたしも」

「俺は交換した」

なんの交換だろう?

メルさんとセニアさんは体がすっぽり隠れるようなフード付きのコートを着ている。それを脱ぎ始める。

「暑い」

「早く交換しましょう」

二人は青色の水の魔石を取り出すとフードの内側に取り付けられている魔石と交換する。そして、すぐにフード付きのコートを着る。

魔石の交換?

「ああ、涼しい」

「……なにをやっているの?」

「魔石の交換だよ。そろそろ交換しないと効果がなくなっちゃうからね」

「…………?」

ごめん、魔石の交換は見ていたから分かる。でも、その理由が分からない。

「もしかして、ユナちゃん知らないの?」

はい、知りません。

二人が何を言っているか意味不明です。だから、素直に頷く。

「このコートは耐熱加工がされていて、水の魔石で体温を冷やしてくれるのよ」

メルさんが自分の着ているコートの前を開き、内側を見せてくれる。

コートの内側に青い線が横に伸びているのが見える。この青い線はなんだろう? 水の魔石と繋がっているみたいだけど。

メルさんの話によると、コートには耐熱効果がほどこされているとのことだ。

水の魔石を付けて、魔力の糸を編みこむことによって、水の冷たさが魔力の糸に伝わり、体温を下げてくれるらしい。さっき見えた青い線が魔力の糸みたいだ。

魔石と魔石を繋げる魔力線みたいなものかな。

つまり、このコートはゲームで言う、耐熱防具になるのかな?

科学でない方法で対処するなんて、さすが異世界だね。

でも、氷の魔石を使ったらどうなるのかな?

もっと、冷えるのかな?

「そんなことをしたら、体が凍るぞ」

「それにこんな砂漠で使えば、すぐに消耗する」

氷の魔石はダメか。冷蔵庫を開けっ放しにしているようなものかな?

でも、良いことを聞いた。

お店で子供たちが着ている制服のくまさんパーカーに取り付けたい。

最近、お店に行くと汗を掻きながら仕事をしている子供たちの姿がある。暑いなら脱いでもいいよ。とは言ってあるけど、子供たちはクマさんの制服が気にいっているようで脱がない。

今度、お店の中に氷と風の魔石を使ってクーラーモドキでも作ろうかと思っていたけど、くまさんパーカーに魔力の糸を縫い込んで、水の魔石を取り付ければ、大丈夫かもしれない。

熱中症で倒れたら大変だから、クリモニアに帰ったらティルミナさんとミレーヌさんに相談してみよう。

「普通は砂漠を移動するときには絶対に必要なんだけどね」

メルさんがわたしの格好を見る。クマですが問題でもありますか?

でも、ブリッツたちと会ったときは、教えてくれなかったけど、知らなかったのかな?

それとも、砂漠を歩くときの常識だから、教えてくれなかったのかな?

まあ、クマの着ぐるみの話をしたときに、暑くないことを話しているから、教えてくれなかったのかもしれない。

「それじゃ、わたしはそろそろ行くね」

「ユナちゃん。本当に行っちゃうの?」

「ちょっと、急ぎだからね」

前の町の様子を見れば、まだ緊急事態じゃないみたいだけど、国王からは早めにって言われている。

くまゆるとくまきゅうは速いから、通常よりもかなり時間を短縮できたけど、早い方がいい。手遅れになったら、困るからね。

わたしはくまきゅうに乗る。

「ユナちゃん。荷物を届けたら、時間はある?」

「しばらくは街を見学しようと思っていますから、ありますよ」

まだ、海に行くには大丈夫なはずだ。

街に着いたら、一度フィナに確認をした方がいいかな。なんだったら、クマの転移門を設置して、一度戻るってこともできる。

「それなら、一緒に食事でもしましょう」

「そうだな。今回のお礼に奢らせてもらうよ」

ジェイドさんたちにご飯をご馳走してもらうことを約束する。とりあえず、どんな食べ物があるか分からないけど、ワームは食べていないことが分かっただけでも安心だ。でも、この世界にはわたしが知らない食べ物もあるから、食べるときには気をつけないといけない。

「そのときは美味しいものをお願いしますね」

ジェイドさんたちと別れたわたしはくまきゅうを走らせる。

目印となる柱があるから道に迷うこともなく、砂漠を進む。ときおり、商人や冒険者とすれ違う。まあ、すれ違う場合は、通り過ぎるのを待てばいいだけなので、追い抜くよりは楽だ。

今回も商人と冒険者を見つけたので、砂丘の裏に隠れて商人たちが移動するのを待つ。

そして、途中で一泊して、次の昼には街が見えた。

砂丘の上から見える街は壁に囲まれ、中央にはオアシスのような湖もあり木々も見える。でも、湖の大きさからして、水は少ないかな?

大きな湖に対して、水が少ないように見える。

もしかして、国王が言っていた魔石が壊れたせいなのかな?

そして、砂丘の上から気になるものが見える。

「あれはピラミッド?」

街から離れた位置にピラミッドらしきものが見える。

距離があるから、ハッキリと分からないけど、あの三角はピラミッドだと思う。

まさか、異世界でピラミッドを見ることができるとは思わなかった。

砂漠にしろ、ピラミッドにしろ、元の世界で引き篭もりだったわたしじゃ、絶対にエジプトまでピラミッドを見に行こうとは思わない。

クラーケンの魔石を渡したら、ピラミッドを見学しに行こうかな?

でも、ピラミッドの中って入れるのかな? ミイラとかいないよね?

わたしはデゼルトの街に向けてくまゆるを走らせる。そして、どうやって街の中に入るかを考える。

くまゆるで行くと間違いなく驚かれる。でも、歩いて行ったとしても、どうやってここまで来たかと尋ねられても答えることができない。

それなら、驚かれても、くまゆるで乗って行った方が説明が楽なので、くまゆるに乗ったまま街に向かうことにする。そして、街の入口に到着すると予想通りに門番をしている者たちはくまゆるに乗ったわたしが現れると驚く。

「クマ!?」

「じょ、嬢ちゃん。そのクマはなんなんだ」

門番の二人は後ずさりする。

これがクマを初めて見る普通の反応だよね。ちょっと、安心する。メルさんやセニアさんの反応がおかしいんだよね。

「わたしのクマだよ。なにもしなければ大丈夫だよ」

「本当か?」

「召喚獣だから、消すね」

安心させるためにくまゆるから降りて送還する。

「召喚獣なんて、初めて見たぞ」

「俺は見たことはあるが、クマは初めてだ」

驚いているが、わたしは早く街の中に入りたいので街の中に入ろうとする。

「入ってもいい?」

「ああ、構わない。でも、住民が驚くから、街の中でクマは歩かせないでくれ」

そのぐらいは理解しているので了承する。

まずは宿屋の確保かな?

そのあとに領主のバーリマさんのところに行けばいいかな?

前の町と同様に宿屋の確保が難しかったら困るからね。

「宿屋ってどこにありますか?」

まだ、呆けている門番の人に尋ねる。

「ああ、宿屋か? そうだな。いくつかあるが、わかりやすいのは、この大通りを進めば大きな宿屋があるから、すぐにわかるはずだ」

あと、領主の家と冒険者ギルドの場所も聞いておく。

領主の家は中央の湖の近くにあり、家も大きいから行けば分かると言う。冒険者ギルドは宿屋と同じ通りにあるらしい。

あとは聞いておくことはないよね。

「嬢ちゃんはなにしにこの街に来たかわからないが、今この街は問題が起きているから、早めに出ていった方がいいぞ」

もしかして、魔石が壊れていることを言っているのかな?

やっぱり、問題になっているんだね。

「うん、知っているよ」

「そうか。なら、いいが、それと嬢ちゃん。もう1つ聞いてもいいか?」

「なに?」

「その格好はなんだ?」

「クマだよ」

それ以外の返答は持っていないので、答えると街の中に入っていく。